14-微かな声
放課後。
拓海は、昨日足を運んだ街を、今日も歩いていた。
──黒パーカーの少年を、探して。
(あいつは、絶対に……普通じゃない。)
目を凝らして、
人混みの中に異物を探す。
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世界は、今日も滑らかに回っている。
まるで一枚の絵の上をなぞるように、
NPCたちは”それらしく”振る舞っている。
同じ歩き方、
同じ表情、
同じタイミング。
全部が、あまりにも予定調和だった。
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(……やっぱり、どこか薄っぺらい。)
(全部、上っ面をなぞってるみたいだ。)
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そして、
ふと、前方に目を向けたとき。
黒パーカーの少年が、
駅前の大通りを横切る姿が見えた。
──拓海を、見た。
確かに、こちらを、見た。
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拓海は、反射的に駆け出す。
人々を押しのけ、
信号無視すれすれで道路を渡り、
ひたすらに少年を追った。
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少年は、逃げない。
ただ、ゆっくりと歩いていく。
それでも、拓海が追いつくことはなかった。
一定の距離を、絶妙に保ったまま。
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やがて、少年は、
古びた路地裏の入口で、
一度だけ、拓海を振り返った。
そして、ぼそりと呟いた。
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「……ここは、浅い。」
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それだけ言い残して、
少年は、路地裏の奥へと消えた。
追いかけたときには、
もう、そこには誰の姿もなかった。
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拓海は、荒い息を吐きながら、立ち尽くした。
(……浅い、か。)
言葉の意味は、まだ、はっきりとは分からない。
だが、
少年の言葉は、
拓海の心のどこかに、確かに突き刺さった。
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この世界は、作られている。
人間たちは、プログラムのように動いている。
そして──
見えない部分は、最初から、存在していないのかもしれない。
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拓海は、空を仰いだ。
夕焼けに染まる空さえ、
どこか作り物めいて見えた。




