13-異物の影
放課後、拓海は、通い慣れた通学路を歩いていた。
だが、今日はいつもと違う。
──いや、違うのは、世界の方だ。
井上との違和感。
街を歩く”同じ動き”の人間たち。
そして、あの、
“パターンの外側”にいた存在。
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(……もう一度、見つける。)
拓海は人混みを縫うように歩きながら、
周囲を注意深く観察した。
交差点、駅前、商店街──
どこを見ても、似たような動き、似たような表情。
笑うタイミングも、立ち止まるタイミングも、
まるで同じプログラムをなぞっているようだった。
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(……やっぱり、こいつらは”作られてる”。)
心の奥で、静かに確信が育っていく。
本物は、どこだ──。
そんなことを考えながら、
ふと、駅の向こう側に目をやったときだった。
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視界の端に、
黒いパーカーを着た少年の後ろ姿が映った。
──間違いない。
昨日、すれ違った、あの存在だ。
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拓海は、反射的に走り出した。
雑踏をすり抜け、
人々を押しのけながら、
ひたすらに、黒パーカーを追う。
(待て──!)
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だが。
少年は、曲がり角をひょいと曲がったかと思うと、
その先にはもう、誰の姿もなかった。
足音も、影も、匂いさえも、消えていた。
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拓海は、息を切らしながら立ち尽くす。
そこに残っているのは、
ただ静まり返った路地裏と、薄暗い夕焼けだけだった。
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(……絶対に、普通じゃない。)
(この世界の「外側」を、知ってる奴だ。)
そう思った瞬間、
背筋にぞわぞわとした寒気が走った。
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この世界は、何かがおかしい。
それはもう、疑いようのない事実だった。
だが──
何がおかしくて、
どこまでがおかしいのか。
それを知るには、
まだ、もう少し踏み込まなければならない。




