エデンの園から奈落の底へ
「みっともない……実にみっともないぞ……」
「クッソ……黙れェェェェェ─────────ッ!!」
キャシィは凄まじい勢いで神父の懐に潜り込む
飛来する岩を避けながら───
微かな風から感知出来る衝撃波を避けながら───
野生の勘を頼りにしながら──
「ぐぅッ、邪魔をするな小娘が! 」
「だったらこのアタシを止めてみろッ!!」
「ぐぬぅぅぅぅあああああ!!」
キャシィに攻撃が一切当たらず、神父は取り乱していた
たかが人間のくせに
自分が人間の頃に至れなかった領域を軽々と踏み越えているこの小娘を憎たらしく感じていた
同時に疲弊していた
吸血鬼化した肉体でさえ、世界全体に影響を与えるこの能力には耐えられないというのか
「小娘に何が出来るッ小娘にィィィ───!!」
叫ぶ神父の体に衝撃が走る
いつの間にか、キャシィの脚が神父の心臓を捉えていたのだ
「ぐおぉあッ!」
そこで、神父は久方ぶりに痛覚を感じた
あの日、あの時───
もう二度と味わうことはないと思っていた『痛み』を確かに神父は感じたのだ
「たかだか吸血鬼になったくらいで強くなった気になってんじゃねーよスットボケ野郎!
てめーみたいな軟弱メンタルのゴミなんざ何万回でも殺してやるぜ!
いいか、てめーの弱点を教えてやるからその腐り果てた耳の穴をかっぽじって聴けッ!!」
キャシィは神父の耳の穴をナイフで斬り広げる
「てめーは力に溺れたザコだ!
神だか何だか知らねーが……てめーはザコだ!」
「ほざけッ!!」
岩と岩で押し潰そうとするが、キャシィはギリギリのところで避ける
「確かにその力は強大だよ、今のアタシだってギリギリだ
だがな……そろそろてめーの体の方が悲鳴を上げちまうぜ
力に溺れた代償は……今てめーを確実に蝕んでいるってことだッ!」
吸血鬼となり、全てを賭けてまで得た力を持ってしてもキャシィを殺せない
その焦燥感から、全力を出そうとする神父
だが、
「……だから無駄だって言ってんだ」
途端に神父の体から大量の血が噴き出た
「ぶぐぅぉぉぉぉぉッ!」
そして、浮いていた岩も次第に落ちていく
世界規模の『異変』が静まっていく
神との契約が絶たれていく
「ああ……そんなバカなッ……バカなァァッ
く、くそォォォォォ!!」
当然、神父やキャシィも例外ではない
落下がはじまる
キャシィは
「……てめーの目論見……もう神とは出逢えねーよ
永遠に地獄の隅で喚いてろ……このクズ野郎が」
そう呟いて、落ちていく神父の心臓にナイフを突き立てた




