表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/50

罪人の歌

「私だって……ここまで生き抜いてきたんだ……

お前なんかに負けるものかァァァ───ッ!」


飛び道具は効かない


到達するまでに防がれてしまう


かと言って接近戦でも勝ち目はない


だが、ここまで来て『死ぬ』ために戦うことなどあってはならない


それはこの旅の全てを否定することになる


「絶望的な状況にあっても気丈に振る舞うのがお前の信念か

なるほど、人間には不似合いな高潔さを持ち合わせているな

その気高き心があるからこそ、世間から爪弾きにされてしまったということだろう

キャシィもお前も……」


「それは違う……どんな相手にも勝って帰るのが私なんだ……

アンタみたいなヤツには理解出来ない……」


フレイラはキャシィがやったように神父へ接近しようとする


「……中々の俊敏さ……だが……!」




・・・




「……あの……クソ野郎……何で……、何で……よりにもよって……」


キャシィは、恐らく生まれて初めて『神』に問うた


誰も救えぬ神に何の価値があるのか、と


キャシィはこれまでに数多の命を奪ってきた


そして今、神父が同じことをしている


そんな理不尽と歪みの中で『神』にどれほどの意味があるのか、と


己を利用した神父を必ず絶望の淵に落として殺と決めた幼き日のキャシィ


その絶望の最適解こそが『殺人鬼』である


神に救いを求める愚かな男を絶望させるには


神の救いなどないことを実感させるのが一番だと思っていたからだ


何の罪もない人間を無造作に殺し、死体の山の頂で笑うキャシィの


その真の快楽は神父の絶望する顔を想像することだったのだ


しかしこの神父はとうの昔に理解していた


神は救わない、罰するだけの存在なのだと


ならばこれまでの行為は神父にとって何の意味もないことだったのか


それどころか自分は、あろうことか……ほんの少しでも『救い』を期待してしまっていたのか


ソーニャという哀れな人間が無事に幸福な人生を送るという『救い』を


「……く……クソつまんねぇ……つまんねぇンだよッ!!」


キャシィはソーニャの破片を手に集める


もう暖かさすら残っていない悲劇の残骸を……


「……ああ、お前の分まで戦えってことかい……

分かってる……分かってるよ……だが……

ああ……くそ……どうしちまったんだ、アタシは……!!」


涙を浮かべながら神父を見上げるキャシィ


と、同時に───


ほんの一瞬だけ目前を通過する黒い影


何かが地面に叩きつけられる音


しばらくして少しずつ伝わってくる生暖かい感覚


「……これは……」


神父に向けていた視線を戻す


落ちてきたその『塊』が何なのかを理解するのにかなりの時間を要する


分かっているはずなのに


それしかないはずなのに


認めたくないからか


理解が追いつかない


「……お前……そんな冗談……いつ覚えやがったッ!!」


冗談ではない


だが冗談だろう


とてもとても悪い冗談だ


ところどころ骨が露出している褐色の肌


生気のない紫の瞳


血に染まった髪


原型をとどめていないが、どう見てもそれは彼女だ


そして神父の一言が……事実だという確信を持たせる


「……殺してしまったか……やはりこの力は吸血鬼の私とて扱いきれん……

あまりに強大すぎて……いらぬ殺生をしてしまった」


「てッ……!」


てめぇ───ッ!!


声にならない怒り


目の前の塊は……フレイラは……手違いで殺されたというのか


「ほう、殺人鬼の分際で死体アレルギーでも持っているのか?

まさか仲間を殺された怒りで私に復讐を誓うようなタイプではあるまい」


「……アタシはこれまで何万人殺してきたか……

てめーの言う通りの殺人鬼さ……だがな……

てめーを殺せなかった上に……『仲間』を二人も失ったアタシ自身が憎いぜ!

殺人鬼としてみっともねー……てめーに人生狂わされた挙げ句バカ踊りかよボケがァァァ───ッ!!」


キャシィはソーニャの破片を持ったまま、再び神父に立ち向かっていった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ