『星』が来る日
キャシィの中にひとつの感情が生まれたのは、フレイラが意識を失ってからのことだった
常に優位に立っているこのシスターを
優しい表情で接してくれるこの修道女を
出来ることならば自分の手で殺してやりたい
仲間だと思っているこの修道女を裏切り、絶望と共に屠りたい
フレイラを殺せば神父との戦いは不利になる
しかしこのシスターは味方としては戦力にならない
(少なくとも、シスターの能力を知らないキャシィからしてみれば)
戦力にならない以上、殺しても差し支えはない
答えは決まった
このシスターを殺す
『仲間意識』を持ちながらも、結果としてキャシィはシスターの意に反する行動を起こすことになった
「……ナイフなど持ってどういうつもりです?」
「死をじっくり味わってくれ」
キャシィのナイフがシスターの両目を切り裂く
「───ぁアアアアアアアアッ!!」
ソーニャはこの同士討ちを止めようとするが、
「このナイフはお前のことを忘れない」
視界を奪われて発狂するシスターの心臓にトドメの一撃が入り、
「……がふッ」
『同士討ち』はそのまま幕を閉じた
キャシィがナイフを引き抜くと同時に傷口からは血が溢れ
シスターは静かに死を実感する
「……神の導きでここに来た……けれど……
私の運命は……神に呪われていた……と、言うのですか……?」
・・・
「確実に世界は変わりつつある
これこそが……果ての果てさえ貪り尽くして得た力だ
数多の犠牲に涙を流しながら何度も繰り返される戦争!
戦争のために改造された幼き少女!
金儲けのためならば倫理すら砕き散らす悪徳な身売り!
クニを滅ぼすほどの力で人々を脅かすヤクザ紛いの悪党!
国に魂を奪われた哀れなる忠義の獣!
強すぎる復讐心ゆえに人のまま人の域を越えた女!
生きるために必死ながら親友を守るという矛盾した娘!
そして……人の心を持たぬ殺人鬼……!
全ては私のためにあったのだッ!!
あの日……あの悲劇の時代から……全ては私の想定通り!
不老不死、圧倒的な力を振るい権力を持ち全てを蹂躙し……
世界を裏から操ってきた……その仕上げの時だ!!」
怨嗟の怪物に成り果てながらも神を信仰し続けてきた男の壮大な計画は
言葉通りクライマックスを迎えようとしていた
不死の呪いを受けた神父に人々の罪が集い
その罪はエネルギーとして無限に増幅していく




