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次はウチが




「カルミア様、この者らは如何いたしましょう」

「魔封じの腕輪をつけて連れて行く。まだ使い道があるからな」



 カルミアは足元に倒れている3人を見る。この3人は教皇から生かして捕えろと言う命令が出ていた。理由は、恐らく王太子達と同じだろう。




「そこで死んでいる女はどうします?」

「死体では意味がない。森にでも捨てておけ」

「はっ」



 最後まで聖女ツユキのそばを離れなかったメイド、確かミウと言ったか、彼女は呪いによって呆気なく命を散らした。効くまでに随分と時間を要したが、かかってしまえば呆気ないものである。


 

 呪いには魔法と同じように使う呪法、モノや場所に長期的な呪いをもたらす呪印、道具や人形を媒介に相手を呪う呪物、といった様々な方法が存在する。


 アキメネスの邸は人が少ないため人形を媒介にした呪物を使った。庭師の老人、料理人の大男、医師の女は死なないよう苦しめたが、このメイドは必要ないため人形を通して背中を刺した。生半可に苦しめるよりかは慈悲があるだろう。





「……私は、いつから人を殺すことに躊躇いがなくなったんだろうな」



 騎士に引きずられていくメイドを見て、カルミアはそう呟いた。





 __




「で、こいつどうする?」

「どうするって死体だぜ。適当に捨てておけば野獣が喰って処理してくれるだろ」

「だな」



 そう言ってメイドを捨てると、騎士共は己の持ち場に戻っていく。






 そうして草木の音しか聞こえなくなった頃、その指がぴくりと動いた。



「だぁ〜……いってぇ。あの野郎、引きずりやがって」


 ミウはむくりと起き上がると懐から小さなぬいぐるみを取り出した。



「聖女サマ……アンタの治癒、ちゃあんと効きましたよ」


 ぬいぐるみは裂け、2つに破れた小さな宝石が顔を出していた。

 


 この宝石は魔法石と呼ばれるものだ。

 魔力を溜める性質があり、魔石を握って魔法を使うと、溜めた魔力を使って魔法を発動することができる。魔法使いにとっては少しの魔力が生死を分けることもあり、お守りとして魔力を込めた魔法石を持ち歩く人も多い。


 ツユキはこれに己の魔力を込めてぬいぐるみに入れ、お守りとして皆に渡していた。これがツユキの治癒魔法を代わりに使ってミウを癒したのである。




 

 本来魔法石は触れ合うほどの至近距離の魔法しか感知できない。

 しかしミウが負傷した時、胸元に入れていた魔法石も破れて中の魔力が周囲に広がっていたために、魔法石の感知範囲が大きく広がっていたのだ。

 それが霧散していたツユキの治癒魔法を感知し、さらに魔法石がかろうじて原型を止めていたために治癒魔法の発動が成功。

 

 この奇跡が重なったことでミウは致死レベルの傷から生還することができていた。




「シラン、山賊、ジジイ……ぜってえ助けに行くから待ってろ。聖女サマ……次は、ウチが助ける番っす」





 __





 聖堂騎士共が去り、静かになったアキメネス家の邸跡。

 誰もいないことを確認したミウは瓦礫の中を漁り出す。



「……これかな?」


 何やら線の描かれた瓦礫を手に取ったミウは少し開けた場所にそれを置く。

 それに魔力を流すと辺りの瓦礫が揺れ始め、いくつもの破片が勢いよく集まってきた。



「よーし、さぁどうだ、と」



 瓦礫が集まった先、そこには一つの魔法陣が出来上がっていた。


 魔法陣は壊されても再形成される、その原理を利用すればいくら邸が壊されようとも魔法陣だけは無傷で取り出せる。



「……違うこれ部屋の洗浄の魔法陣だ」



「はいハズレこれ調理場の魔法陣」




「うーん、これ薬の保存の魔法陣か」





 しかしこの邸には魔法陣が多すぎた。目的のものが見つかるまでミウは瓦礫を拾っては魔力を流すという作業を繰り返す。




「……おい待て、この魔法陣なんだ……?」



 遂には知らない魔法陣まで出てきてしまい、ミウはため息を吐く。

 早く助けに向かいたいと気持ちは焦るが、急がば回れと自分に喝を入れ、また瓦礫の山に向かう。




「……!!、っしゃあ!ビンゴ!!」



 そして、ついに目的の魔法陣を見つける。

 その魔法は転移。しかもそれはハルヴェスト王城の地下に繋がるものである。

 これは有事の際に王家が王城から逃げるために使うものだ。王族は逃亡経路として転移魔法陣を一つ、好きな場所に設置する権利を持っている。この魔法陣はもちろん、アイルズの設置したものだ。


 もちろん今まで有事など起こったこともなく、普段の移動はエレクティオが行っているためこの魔法陣が使われるのは今回が初めてだ。まさか初使用が破壊されてから、しかも一介の侍女が使うことになるとは魔法陣も思っていなかっただろう。

 


(まあ、魔法陣に心があればの話っすけどね)


 

 ミウは魔法陣に乗る。一瞬、強い光が視界を覆い尽くすと、次の瞬間にはあたり一面真っ暗な空間に切り替わった。すぐ隣から水の流れる音が聞こえる、あとちょっと臭い。

 あの魔法陣は王城の地下水路に繋がっていたようだ。



 ミウは地上に出る道を探す。尤もここは王城の真下、地上への道が堂々と空いていたら容易に侵入を許してしまうため、どの道も厳重に隠されている。そのため風魔法を使い壁の中に通路がないかを探す必要があった。



(ココいけそうだな……)


 壁の奥に細長い空間がある場所を見つける。


 近くに罠の類がないことを確認し、ゆっくり壁を取り除く……つもりが、石を少し押しただけで壁がガラガラと大きな音を立てて崩れてしまった。

 心臓が跳ね、冷や汗が出たのは言うまでもない。



 ミウは壁の中にあった空間に転がり込み土魔法で穴を閉じる。風魔法を広げ警戒するも、とりあえずこちらに向かってくる気配はないようで少しほっとした。




 

 細長い空間を進んでいく。途中、また壁で塞がれていたところがあったため風魔法で消音してから壊して進んだ。

 大丈夫、同じ過ちは繰り返さない。



 そうして壁を壊しつつ進んでいくと、空間が広くなった。

 その場所は太く頑丈な檻が左右に並ぶ物々しい空間だった。

 



「ここは……地下牢っすか」



 ここは主に政治犯や要職に就いていた貴族が犯罪を犯した際に入れられる地下牢である。

 と言っても、かつてこの国が統一される以前に造られた場所なので、今は使われていない。



「誰だ」



 ……使われていない、はずなのだが。

 聞き慣れた声にミウは頭を抱え、声のした方へ向かう。

 そこには想像通りの人物が魔封じの腕輪をつけ牢の中に座っていた。




「ミウ!?」


「……なんでココにいるんすか、エレクティオサマ」







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