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俺くんは国際交流委員34「海水浴4・ふたりはあっという間にラッシュガードを脱ぎ捨てた」

少し休んだ後、委員長は、「もう少し遊ぶ?」と言ってアロハを誘った。

アロハは俺の方を見て、「オレクン ダイジョウブ?」と言った。

俺は「だいぶ落ち着いた」と返事した。


ふたりは、あっという間にラッシュガードを脱ぎ捨て、海に向かって走りだした。

驚いた俺は、「すぐ夕方だから、早く切り上げろ」と叫んだ。

その言葉が彼女たちに届いたかどうかはわからない。

ただ、まぶしい笑顔が俺に向けられた。


オレンジ色が混じりつつある日差しの中で、ふたりは自由奔放に泳いでいる。

波間を縦横無尽に泳ぐアロハの体の表面を水が滑る。

委員長はアロハに水を掛けたり、急に飛びついたりする。

人魚がふたり、海の中で戯れている。


やっぱり海に来てよかった。


髪を濡らして、ふたりは海から上がってきた。

アロハの家に戻り、俺が先にシャワーを借りた。

その後、作業場で網をつくろっているおじいちゃんと夕涼みをしながらふたりを待った。

おじいちゃんのうちわを使う様子が、とてもさまになっている。

自分もいつか、こういう人になれるのだろうか。


その日の夜、浜辺で小さな花火大会が予定されていた。


しばらくして出てきたふたりを見て、俺は驚いた。

ふたりとも浴衣姿で、下駄まで履いている。

いつの間に用意したの?


「花火大会の定番でしょ」と委員長はしなを作った。

「ポーズはいらない」と俺がすぐに却下すると、「照れないの!」と言って、委員長は俺の肩を叩いた。

アロハはちょっと俺をにらんだ。


どうして?

何か気に障った?

おじいちゃんが、声を出さずに笑っている。


浴衣姿も良かったが、ふたりからはいいにおいも漂ってくる。

この状況は、男子なら全員惑わされるに違いない。

花火大会でも俺は、保護者的な立ち位置にならざるを得ないのか?

委員会活動も困ったものだ。


委員長は、手に袋を持っている。

何が入っているのかな?

委員長「これは後のお楽しみ♡」

若干、不審を感じる俺だった。

アロハはニコニコ笑っている。


花火大会の会場へ向かう。

このあたりには、夏の海水浴客相手の民宿などもあり、お金を出し合って、毎年小さな花火大会を催していた。

夏休みに入ると、夜7時30分から海岸で花火が上がる。

天候次第の小規模なものなので、県外の人にはあまり知られていないのだが、たまたま訪れた海水浴客には、夏を感じさせる催しだった。

俺も、小さいころから見ていたので、夏と言えばこの花火大会をイメージする。

全部で50発ぐらいの花火が、間隔を置いて打ち上げられる。

数が少ないので、20分もかからずに終わってしまう。

大きな花火は上がらないし、高さも、このあたりで一番大きな宿の頭を超える程度だった。


でも、それがいい。

地味でささやかだけど、この町と夏の思い出に合っている。


浜辺には家族連れのグループがけっこう集まっていた。

子供たちが、いつ始まるかとソワソワしており、あちこち駆け回る子もいた。

母親が、「落ち着きなさい、もうすぐ始まるから。」と、子供をなだめている。

待ちきれずに、持参した小さな花火を楽しんでいる家族もいた。

アットホームでのどかな花火大会だ。


近所のおじさんたちが協力して会場整理にあたっていた。

手に交通整理用の大きめのライトを持ち、お客さんが花火の発射台に近づかないようにしている。

発射台は、波打ち際近くに仮設で作られた砂山だった。

昼間見た時には、なぜここだけ砂が盛り上がっているんだろうと思ったが、発射台だった。


俺たちは道路沿いの土手に座り、花火が始まるのを待っていた。

海沿いを走る道に灯る街灯が、砂浜に沿って湾曲している。

遠くにある空港の誘導灯の微かな光が、白く点滅して見える。


アロハと委員長の顔は、街灯のオレンジ色に暗く照らされていた。

アロハにとっては、初めての打ち上げ花火。

胸の前で手の指を組み、夜空を見上げている。

ドキドキしている様子が、はたから見てもわかった。

「かわいい」という言葉を、思わず言いそうになって、あわててのどの奥に押し込めた。

でも、この後、心の中で何度もつぶやくことになるのだが。


浜辺の砂山の向こうに、発射台らしいものがかすかに見える。

そこから、人の影が離れた。

いよいよ、花火がうち上がる。


俺の左手が、誰かにそっと握られた。

アロハだった。

アロハは暗い空を見上げている。

その目に、期待と少しの不安の影が映った。

委員長も、空を見上げていた。

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