俺くんは国際交流委員33「海水浴3・そんなにはしゃぐと危ないよ! 」
俺たちは部屋を借りて、着替えをした。
女子の準備は時間がかかるものだということを、改めて知る。
ようやく部屋から出てきたアロハと委員長は、2人とも顔が真っ白だった。
日焼け止めは、そこまでの厚さが必要かと思うほどだ。
「日焼けが気になるなら、やっぱり海はやめようか」と言いたかったが、言うと怒られるのでやめた。
おじいちゃんは、「アロハをよろしく頼みます」と言って、頭を下げた。
アロハも頭を下げた。
外に出ると、また強い日差しに焼かれた。
アロハと委員長は水着の上にラッシュガードを着ている。
でも、この方がいい。
これでないと、事件が起こる。
委員長は日傘を差し、アロハは麦藁帽をかぶっている。
俺たちは、サーフショップでボードを借りた。
ボードにもいろんな形とサイズがあるものだ。
持ってみると、意外に軽い。
浜辺では、アロハ先生による砂の上での講習が始まった。
ボードの各部分の説明。
パドリングの仕方。
ボードの上での体の位置と身のこなし方。
波への対応の仕方。
沖へ出る時の注意。
ボードへの立ち上がり方。
砂の上でもボードに立つのは意外に不安定で、コツが要る。
さすがにアロハは、扱いに慣れている。
水をかく手や腕の動きがしなやかだ。
実際に波に乗る前から、アロハはサーフィンが上手だろうなと感じさせた。
いよいよ海に出る。
腰までつかる程度の浅さなので、泳げない俺も、委員長のボードを支えてあげたり、押してあげたりした。
女子ふたりはとても楽しそうにはしゃいでいる。
委員長のパドリングの水が、俺の顔を直撃する。
絶対わざとだろ。
そんなにはしゃぐと危ないよ! 委員長!
案の定、ボードから落ちた委員長は鼻に水が入ったらしく、しょっぱいような痛いような変な顔になっていた。
いつも俺をイジメる罰が当たったのだろう。
それにしても、この状況は、男子にとって、とっても目の毒(眼福)だ。
波間に浮かぶサーフボード。
その上に乗る美少女たちのお尻やその他が俺のすぐ目の前にある。
水にぬれたラッシュガードが、逆にその下をくっきりと浮き上がらせる。
夏の海は、危険な場所だった。
奇跡的に委員長がボードの上に立った。
俺の方を見て、ポーズを決める。
次の瞬間には波に足を取られ落水。
その瞬間、夏の海の強い匂いが、俺の鼻腔の奥を刺激した。
俺に向かって手を伸ばす委員長。
「大丈夫?」と声は掛けるが、その手を無視し、心の中でほくそ笑む俺。
俺っていつからこんなにひねくれ者になったのだろう。
相手は委員長限定だが。
☆☆☆☆☆
サーフィンの練習を続ける2人を後に、俺はひと休みすることにした。
女子の日傘を差し、麦わら帽子を頭に載せて浜辺に座る高校生男子。
視線の先には、美しく波と戯れる2人の少女。
不審者?
通報案件?
いやいや、俺くんは国際交流委員。
委員としての役目で、ふたりを見守っている。
決してイヤラシイ目で見ているのではありません。
クラスメイトが海の危険とヤローたちの動物的本能にさらされないように、監視監督しているのです。
ヨコシマな気持ちはありません。
たとえて言うなら、保護者目線です。
そんな俺の気持ちをよそに、ふたりは無邪気に遊んでいる。
ボードの不安定さと、波の浮遊感が、少女たちを楽しませていた。
アロハは本気でサーフィンをしていない。
今日はあくまでも委員長の練習に付き添い、見守るようすだった。
それにしても、いつまでサーフィンやってるんだろう?
もうそろそろ2時間ぐらい経つけど。
ふたりとも、意外に体力があるんだなぁ。と、俺は感心して見ていた。
ふたりがやっと海から上がってきたとき、俺はうつらうつらしていた。
あまりにもまぶしい日光と海の反射と美少女たちと……
この世ならぬ感覚が、俺を包んでいた。
あまりに暑くてまぶしいと、人は眠くなるのか?
ボーっとしている俺に、委員長が珍しく飲み物を買ってきてくれた。
さすが委員長、気が利く人だ。
それを飲んで、俺はひとごこちつくことができた。
首筋にあてたボトルの冷たさが気持ちいい。
熱中症気味だったのかもしれない。
アロハが心配そうに俺の顔をのぞき込んでいる。
海から上がったふたりも体温の上昇を感じたらしく、アロハは上に着ていたラッシュガードを脱ごうとした。
それでは上半身が水着姿になってしまう。
なにしろビキニなのだ。
俺はあっという間に正気に戻り、それは刺激が強すぎるからやめなさいと止めに入った。
海には、ナンパ野郎がうようよしている。
私のことは止めないのと怒る委員長。
暑かったら脱げばと答える俺。
冗談よとやわらかく笑う委員長。
やはり委員長には笑顔が似合う。
ふだんのキリッとした表情もいいが、それが笑うことによって少し崩れるのもいい。
言わないけど。
最近、委員長の行動とそれに対する俺の反応が、めんどくさくなってきた。
なぜだろう?
俺が勝手に借りていた日傘は、委員長に奪われた。
優しいアロハは、麦藁帽を奪わない。
今は委員長とアロハが傘の陰に入っている。
水着姿の美少女が二人、俺の隣で肩を寄せ合って楽しそうだ。
俺は幸せ者であることに、改めて気づく。
委員長が買ってくれた天然水は、もう温かくなっていた。




