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30/48

俺くんは国際交流委員30「スポーツ大会3一進一退の攻防」

卓球の試合時間が迫っていた。

俺たちは、急いで格技場へ向かった。


決勝戦は、3試合同時に行われる。

他のメンバーの試合経過も気にしつつ、自分の試合に集中しなければならない難しい状況だ。

俺はシングルスに出場した。


試合前の乱打で、相手も卓球の経験があることを感じた。

強めに打った球も、平気な顔で返してくる。

さすが決勝戦、それなりの相手が勝ち上がって来ている。

徐々に俺は燃えてきた。

卓球で燃えるのは、何年ぶりだろう。

中学一年の時に、卓球部の先輩を打ち負かした時以来だろうか。


試合開始。

相変わらず応援がいないので、試合は静かに進む。

格技場に響くのは、ボールの音と、審判のコールの声だけ。

バレーの試合とはまるで違う。

地味だ、地味すぎる。


俺の試合相手は、ラケットさばきが上手で、サーブも回転をかけたりかけなかったり、角度をつけたりつけなかったりと、変幻自在な球を繰り出してくる。

バシバシ打ってはこないが、非常にいやらしくてやりにくい相手だった。

ミスが少ないため、試合に勝つというよりは、負けにくいタイプだ。


試合途中、場内がざわついた。

ふり返ると、アロハと委員長が来ている。

ふたりは俺に手を振った。

やっと来たか、応援団。

俄然やる気が出てきた俺だった。


それにしてもやりにくい相手だ。

俺の強打をかわしてくる。

変な回転をかけてくる。

俺のミスを待っている。

俺は改めて、試合に集中した。


こういう戦法の相手には、短気になってはいけない。

こちらも粘り腰で戦い、チャンスがあれば勝負する方がいい。

勝負をしかける一方で、チャレンジしすぎると自滅する。

その加減が難しい、戦いにくい相手だった。


これは、応援する方も同じだったろう。

一進一退がずーっと続く、ジリジリするような試合展開に息が詰まる。

連続ポイントが取れないため、根負けした方が負けだ。


俺の試合の途中で、他の試合の結果が出た。

シングルスは取ったが、ダブルスは負けた。

この試合で勝負が決まる。


1ゲームずつ取った3ゲーム目も、相変わらず一進一退が続く。

それでも、やっとマッチポイントまでぎつけた。

俺のサーブ権。

これが取れれば優勝だ。


「ガンバレ、オレクン!」

静まり返っていた格技場に、それは突然響き渡った。

アロハの応援の声だった。


俺はうなずいて、それまで使っていなかったサーブを繰り出した。

勝敗を決する時のために取っておいたのだ。

左後ろから前にラケットを素早く振り出し、スピードを加えるとともに、ボールに回転をかけた。

武士がさやから刀を抜くときの動作と同じ、一撃必殺のサーブ。


ボールは卓球台を対角線に飛んでいく。

初めて見るサーブに、相手の返球は甘くなり、ボールが高く浮いた。

シマッタという相手の表情を横目に、俺はラケットを思いっきり振った。


これで決まりだ!

優勝はもらった!


……はずだった……


スローモーションで後ろに通り過ぎるボール。

今度は俺の方が、シマッタという表情をする番だった。


ああいう時って、時間の流れがゆっくりになるんだね。

だって、スローモーションになるんだよ。


俺は決め球を空振りしていた……


試合に負けてベンチに帰る俺に、わずかな数の応援団は、どう対応していいかわからない表情だった。

それを察して、俺もいたたまれない気持ちになった。

みんな、すまない。

勝てた試合だったのに……

勝ち気にはやった俺の負けだ……

俺は力なくベンチに座った。


委員長とアロハは、意気消沈する俺に寄り添ってくれた。

委員長は、「俺くん、お疲れ!」と、笑顔で元気に声をかけてくれた。

アロハも、「ガンバッタネ、オレクン!」と優しく励ましてくれた。


帰りのホームルーム。

委員長を先頭に、ホームルーム委員が、段ボール箱を持って教室に入ってきた。

委員長「担任の先生から、差し入れのアイスでーす! みんな、好きなもの取ってっていーよ!」

クラスのみんなは一斉に教壇に駆け寄り、アイスに群がるアリとなった。


いちばん最後に残っていたアイスの味は、ほろ苦かった。

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