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俺くんは国際交流委員12「それを世間では、へそ曲がりって言うのよ。へそ曲がりさん♡」

次の日の朝、教室に入ると、アロハと委員長が楽しげに話をしていた。


アロハは自分の席に座り、委員長はその隣の俺の席に座っている。

俺に気づいたふたりは、そろって小さく手を振った。


どーゆーこと?

また何かたくらんでる?

俺の体の中を、警戒警報が駆け巡る。

決して油断するなと。


知らない人から見れば、俺は、日米の美人さんふたりに手を振ってもらっている果報者だ。

しかしその実態は、何をたくらんでいるかわからない美少女ふたりに翻弄され続ける俺くんである。

今日も何か良くないことが起こりそーだ。


ごく平凡な日々が続いた中学時代。

高校生活とは、こんなにも刺激的なものなのか?

ある時は痴漢疑惑で危うく退学の危機。

またある時はカエルとなって逆さ平泳ぎ。

さらにある時は近所の不審者。


女子に関わることが、これほど苦労することだとは、ついぞ知らなかった。

美少女も考えものである。


中学時代に戻りたい。

この時俺は、ふと、そう思った。

あの平凡が懐かしい。


いよいよ郷愁の念まで(きざ)してきた。

これでは高校生活3日目にして、スクールカウンセラーのお世話になるのか?

そんな鬱々とした感情を抱きつつ、とにかく俺は歩みを進めた。

一歩を踏み出さねば、学校生活は始まらない。


ふたりのそばに近づいた俺は、委員長に、「何?」と冷たく聞いた。

委員長が座っているのは、俺の席である。

できればホントは、近づきたくないし、話しかけたくもない。

しかしそこは俺の席。

早くどいてくれないかなー。


委員長は答えない。

妙なスマイルを、俺に送ってくる。

もっとせないのは、アロハだ。

かわいい笑顔が浮かんでいる。

アロハの中の俺の位置が、イマイチわからない。


犯罪予備軍に対して、笑顔は向けないよね。

自分の胸もとを凝視したヤツに、手は振らないよね。

解せぬ。

どー考えても理解不能だ。

アロハの中で、俺という存在の何かが変化したのだろうか?


こうして俺の高校生活3日目は、疑心暗鬼から始まった。


しかし、座らぬわけにもいかぬ。

朝のショートホームルームが始まってしまう。

俺は何も言わずに委員長を手で「シッシッ」と追い払った。

いやいやながら委員長は、席を立つ。

やっと俺は、自分の席に座ることができた。

委員長は、アロハの隣に立った。


彼女たちを無視して、わざと黒板の方を向くと、突然委員長が言った。

「俺くん、おはよ」

俺「ん」(「おはよう」という返事の代わり)

委員長「ずいぶん冷たい返事ね。今日はどーしてそーなのかなー。」

俺「べつに。」

委員長「はい、来た、『べつに』攻撃。そんなにへそを曲げないの。」

俺「べつに曲げてねーよ。ただ、なぜかちょっと、腹が立つ」

委員長「それを世間では、へそ曲がりって言うのよ。へそ曲がりさん♡」


今日の委員長は、様々な武器で俺にちょっかいを出してくる。

ハートマーク付きの甘い攻撃。

こういうのを、ハニートラップというのだろうか。

こんな攻撃を受けるのは初めての経験なので定かではないが、恐らくそうなのだろう。


しかし、可愛く言ってもだめだ。

それはいまの俺には通用しない。

アロハの転校を、まったく教えてもらえなかった。

俺は、仲間はずれが大嫌いだ。


委員長は平気な顔で続ける。

「アッ、それでさー、俺くん。まだアロハに正式に挨拶してないでしょ。いま、しちゃいなよ。ちょーどいーから」

俺の目の端で、アロハもコクコクうなずいている。

俺は、何が「ちょーどいー」のか判然としなかった。

だからどう対応したものか考え(あぐ)み、そのまま固まっていた。


委員長「俺くんは国際交流委員なんだから、当然、アロハのサポートをしなくちゃでしょ? だから、ちゃんと挨拶しといたほーがいーよ」


それもそーだなーと思い始めた俺は、仕方なくアロハの方を向いた。

委員長のよからぬ作戦に乗ってしまっている予感もする。

アロハが急に愛想よくなった理由もまだわからない。

まだまだ警戒を解くわけにはいかぬ。


ふと、気が付くと、クラス全員がこちらを見ている。

俺がどういうふうに挨拶をするのか、興味津々のご様子である。

お前たち、今日も何やら楽しそーなことが起こる予感がしてるだろ。

他人はのんきだね。

自分には、関係ないからね。

当事者は、大変なんだよー!


しかしここは仕方がない。

俺は、国際交流委員だ。

係りとしての務めを果たさねばならぬときがある。

それが今だ。


今か?

ホントに?


タドタドしく「ハウドゥユドゥ マイネイムイズ」

そこまで言って、俺は突然アロハに(さえぎ)られた。

アロハ「ストップ! セイノゥモァ! アイノウユアネイム。ユーアーオレクン!」(「もう、名前は知ってるよ。俺くんでしょ!」)

俺「オレクン?」

アロハ「イエス! ドーユーアグリーウィズディス?」(「そー。アタリでしょ!」)


※ここから先は面倒なので、日本語。

俺「どーゆーこと?」

アロハ「委員長があなたのことを、いつも『俺くん、俺くん』って言ってるから!」


その日から俺は、クラス全員に、名前で呼ばれなくなった。

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