第八十二話 二日目 後半
「久しぶりに誰かとよく話したな、、ちょっと寝るわ。超久しぶりに。ありがとな、、大空」
「こちらこそ!おやすみなさい!」
師匠は車の上で寝転がり、目を閉じる。
すぐに、寝息を出し始める。
師匠のこんな姿は、初めて見た。
相当仲良くなれた気がする。
いえい。V。
そうだ。
ついでに行ってみよう。
今の調子なら、仲良くなれるかも。
車の上から飛び降りる。
すぐに、裏の扉から車の中に入る。
「お。大空千晴くんじゃーん。何か用?」
そこにはイリスがいた。
まだ白衣を着たまま、椅子に拘束されている。
「話がしたいと思ったので。そっちは大丈夫ですかね?」
「全く問題ゼロ。拘束されてて暇なんだよね、私。対話したいから、敬語も要らないよー」
いえい。
仲良くなれそうだ。
だったらついでのついでに、ホワイトの過去の事を聞き出せないだろうか。
「でさでさー。凄くね?魔力収納機。前、帝城で全身変身機を出したやつ」
「へー。そんなのがあるんだ」
「そうそう。あるんだよー。で、その魔力収納機は私の能力の『収納』を再現したものでさ。魔力を貯蓄する機能も、より広い空間に干渉する機能も付ける必要があってさ。あの作戦の為にだけに作るには面倒過ぎる奴だったんだよー」
何かイリスは自分からベラベラ色んな事を話し始めた。
この人、今だけで色んな情報を流失させている気がする。
大丈夫なのだろうか。
「へー。凄い。凄そう。頑張ったというか」
「そうそうそう。凄いんだよー。努力してさー。やっぱ賞賛されると承認欲求が満たされるね。もっとやってよ」
「凄い。凄そう」
まあ、仲良くなれそうだしヨシ!
ついでにイリスは色々雑そうでもあるし、俺が聞きたい話題にも答えてくれそう。
「そう言えば、捕まっているのにここまで平然としても大丈夫なの?俺達はイリスを助けに来た人を退ける立場だけど」
まずはジャブでもある。
それと、イリスが平然と出来るほど他の幹部の力に自信があったりしたら、怖いし。
「ま、気にしなくても、何とかなるっしょって思ってるからねー。私は重要だし。いつか反勇者同盟の連中が、助けてくれるよ」
「そうなのか。信用しているんだ」
「いやー。それが違うんだよー。あいつらさー」
「ついでに、少しホワイトとの関係についても教えて欲しいというか」
「それは無理。でもさー。あいつさー。私が訴えてもで動いてくれなくさー。冷たいんだよねー。可哀想だーつってんのにさ」
「そっか。酷そう。冷たそう」
「そうなんだよ。酷いんだよー。根拠ははっきりしてんのが腹立つわー。誘った時からあんな奴だったけどー。ムカつくわー」
—-
いえい。
仲良くなれた。
こう思いながら、車の裏から出る。
流石にそろそろ戻らないと、ホワイトが寂しそうな感じになる時間だった。
「そこの多様な奴らの記憶に残っていく大空くん!!風呂に入りたくはないか!?絶賛空いているぞ!」
直後、見張り役の男性が駆け寄ってきた。
顔は怒ったような笑みを浮かべている。
「確かに入りたいかもです。少し汗も掻きましたし」
昼は結構動いたし。
体臭も気になるし。
余裕があってら、風呂に入りたかった。
「だったら、あっちで俺達が朝に入ろうとコソコソ作った風呂に入ろう!そして有咲の野郎も呼び出してくれ!あいつ勝手にサボりやがった!見張り中なのによ!何やってんだよあのクズ野郎!」
「分かりました。ついでに呼んできます」
「『凄い火』!!世界ごと燃えてしまえ!!有咲!わたし達が真面目に見張りしてんのに!あんな協調性なかったかな!許さん!」
そして近づいて来た耳の長い女の子も、その辺の木を燃やしながら、そう叫ぶ。
全体的に二人は怒っているっぽい。
二人とも、こんな怒りっぽかった性格だっただろうか。
まあ、見張り役は大変なのかもしれない。
それか、色々初心者の俺が性格を読み違えたのかも。
「それなら、すぐ行ってきまーす!」
「お願い!大空くん!俺たち、有咲見たら、殺しちゃう!!」
—-
車に入り、着替えを取った。
そして、池に着く。
いつの間にか出来ていた。
その池は火魔法で温められ続けられており、湯気も出続けていた。
予め、水魔法で体を洗い。
風呂に入る。
湯気の中で、全身鎧の人っぽい人間の背中が見えた。
「大空千晴!風呂に入りまーす!体を水魔法で洗ったので!」
「••••••••」
ここで、全身鎧の人とも仲良くなれたらいいな。
まだこの人とはあんまり話せていない。
その上、裸の付き合い?も試してみたかった。
より簡単に友達になれるかもしれない。
「呼んでましたよ!他の人たちが!何で風呂入ってんだって!」
「••••••••一族••••ひいては帝国のため••••」
池の中を歩き、その背中に近づく。
短髪のその人は、振り向く。
何か肩幅が思ったより狭かった。
「??。女の人?」
「••••••責任取って、同族として、やらない?結婚まで」
そこには、赤い瞳をした17歳ぐらいの少女がいた。
すぐに裸のまま、俺に体を絡めて来る。
俺の体に柔らかい箇所も当たった。
「いや、あの、すいません。無理というか。少なくとも今はしたいことがあって。
18になるまで、そうする予定はない。
というかお互い会ったばかりでこんな関係になるのは宜しくないと思います。
「••••もう一族は壊滅した。『無限』を使えるのは、わたし達しかいない••••同族として、帝国のため、復興、しよう」
「?。俺の能力は、他人の魔力のコピーで。『無限』も使っている人の真似しただけですよ?」
「••••わたしに隠す必要は、ない。同族だから、普段はカラーコンタクトでまでして、隠しているかも知れないけど••••」
少女は、そう言う。
??。
どういう意味?
「いや、本当で。魔人族っぽくもなれるというか。はい」
目の前で魔力を変える。
少女の赤い瞳の中に、黒い瞳になった俺が映る。
すぐ、少女は止まった。
「それと、やるにしてもまずは友達からでお願いしたいです。やる系統はそれからでも、」
まだ少女は動かない。
微妙に胸が当たったままだった。
「ぐおおお!!忘れろ忘れろ忘れろ!!」
「おおお落ち着いて!!おおお!」
急に、少女は俺は頭突きを喰らわせようとしてくる。
その前に、顔を押さえた。
「ぐおおお!!久しぶり久しぶり久しぶりの人肌人肌人肌!温かい温かい温かい!!好きになる好きになる好きになる!!」
「おおおお落ち着いて!落ち着いて!」
更に少女は荒ぶり出す。
俺は頑張って押さえる。
「どうした!大空くん!また思い出に残るような事を有咲の野郎にしたか!?は?誰?不審。殺すべきか?」
「ふははは!我が目は万物を見ぬく!裸怖いけど!え、誰!?きみ、誰!?不審者!?怖!燃やす!」
これらの声を聞き、男性と女の子がやって来た。
少女はちらっとそちらを見る。
「有咲有咲有咲!!どっか行って行って行って!」
「有咲?え、女だったのか?」
「え、有咲、女だったの?、わたしの、心、」
二人は目を見開く。
???。
「知らなかったんですか!?かなり仲良さそうだったのに!?」
「あんま仕事以外で付き合いねぇんだよな。俺ら。お前は変な小説ばっか読んでる。有咲は単純に分からないし」
「ふ、ふははは!田中もすぐ飽きるのに気色悪い謎の趣味ばかり!わたしも着いて行けてない!寂しい!!」
何か、あんまり仲良くなかったっぽい。
いやそれより少女だ。
「復興復興復興!!んー!んー!んー!」
「ちょっ!ちょっと暴走が!冷静になって!そこまで行くと警察ですから!」
少女は唇を凄い近づけてくる。
これ以上行くと、始まってしまう。
「んー!ぐえ」
「あ、そい。また記憶に残ったな!大空くん!ぐぐぐ!悔しい!あと何やってんだ有咲。仕事中だぞ。落ち着けよ」
短剣の裏で、男性が少女の頭を叩く。
少女は風呂に沈んだ。
この中から、うぼぼぼぼと言う声が聞こえる。
「あ。急いで拾い上げないと。溺れ死んじゃう」
「蘇生はわたし達がやる!有咲に文句も言いたい!大空は服着て戻って!裸にドキドキする!全てが見えてる!」
「死なれるのはな。上げるか。面倒くさいな有咲。俺は適当に鎧着せてぶん殴りたい!!」
—-
「ただいまー!帰って来たよー!ホワイト!」
何やかんやあって、車の中に帰って来た。
色々あったが、今日だけで様々な人と仲良くなれた気がする。
師匠もイリスも全身鎧の人とも。
いえいって感じ。
全身鎧のは、微妙に恋側に行っちゃった気もするが。
「••••••いっしょにねよう」
「了解!少し狭いけど!失礼!」
後部座席で寝転んでいたホワイトは、そう呟く。
本を読んでいた。
俺はその横に頑張って入る。
すぐ、ホワイトを抱きしめた。
「••••きょうは、わたしがうえにいく」
前からベットで寝る時はこんな感じだった。
普段はこの後、ホワイトも俺の背中に手を回すのだ。
そうやって寝ると、かなり温かさを感じるのだ。
つまり、今日はいつもとはホワイトの行動が違う。
そのまま俺は仰向けにされ、その上に本を脇に置いたホワイトが乗ってくる。
微妙にホワイトが重かった。
「•••••ちゅー」
ホワイトが、軽く唇を合わせてくる。
今日はこれをしたかったのか。
なるほど。
温かいし、まあいっか。
「またちゅー」
再び唇を合わせる。
今度は舌が入ってきた。
温かいが、まあ良くない。
「それは駄目!まだ早い!」
首を振り、唇を放す。
やるにしても、これは18歳以降だ。
この年齢でやるのは駄目だと思う。
するとホワイトは少し口角を上げた。
「••••ちはる」
「うぉううぉううぉう」
ホワイトが、腹の上でガタガタする。
内臓に衝撃が来た。
だが、何処かホワイトは楽しそう。
口角が上がっていた。
それなら、良かった。
「またちゅー。ほんもよみたい••••めいわくだったら、ごめん」
「ちゅー。そんな事ないぜ。良いよ」
また唇を合わせる。
今度は舌が入ってはこないものの、非常に長かった。
その上、本を顔の横に開き、俺に見せようとしてくる。
かなりの無茶振りだ。
だが、俺は全力で目を横に移動させ、本を読もうとする。
多分ギリギリいける。
こんな感じで、夜が明けていく。
—-
寝ていた俺とホワイトは目を覚ました。
窓からは朝日が刺す。
この中で、車のドアがドンドンと叩かれていた。
直後、ドアが開けられる。
師匠だった。
「大空とホワイト。Sランク冒険者の連中を知らねぇか。魔力感知にも反応がない、、いや、お前ら、前よりベタベタしてんな、、」
師匠は少し焦った顔をしていた。
が、俺たちを見て目も見開く。
一方、ホワイトも目を見開いていた。
「••••••ちかくにはいない」
「自分は昨日の夜、あの人たちが勝手に近くに作っていた風呂場で見ました。それからは分からないです」
「••••分かった。じゃ、見に行くぞ。大空、案内してくれ。ホワイトも出来るなら着いて来てくれ。オレは待つから、」
扉が閉められる。
すぐホワイトが起き上がり、服を整える。
俺も髪や服を整えた。
そうして、車から出る。
俺の案内で師匠と風呂場まで行く。
「マジか、、やべぇな、何だこれ、」
「••••••したい••••」
「••••••••」
風呂場には、三人の亡骸が転がっていた。
一人は首を剣で切られ、一人は体を燃やされ、一人は何かで頭を潰され。
何で。