第八十一話 二日目 前半
大きな車で森の中を進む。
そこでは、異変が起き出していた。
「喰らえよ。ちっ。また来るか」
師匠がハンドルを握りながら、片手で窓からロケットランチャーを放つ。
ロケットランチャーは魔獣らを消し飛ばした。
「••••••まだすごいいる。けど、三時間ぐらいしたらいなくなる。『森の光芒』」
今、大量に魔獣たちが森から押し寄せてきてた。
それらの対処に俺達は追われている。
その量は余りにも多い。
一部を丸ごと消し飛ばしも、すぐに他の魔獣や人間によって埋められるほど。
だが、それらは車を狙っている訳ではなかった。
全部が何かから逃げるように、大移動している。
何かやばそうだった。
「『現象支配』!ねじ曲がれ!魔法よ!わはは!我が守りだけだと思うな!燃え尽きろ!!『凄い火』!」
車に飛んできた風魔法に、女の子が能力を使う。
風魔法は車の後ろにそらされた。
そのカウンターで、女の子は大きい炎を放つ。
周りの魔獣が燃えた。
「おら!見ててくれ!大空くん達!曲芸じみてて面白いぞ!!とう!」
直後男性が扉を開け、車から飛び出した。
元の席には魔力の込められた石が置いてある。
「あちょちょちょちょ!「全身交換」!帰還」
男性は双剣を使い、空中で近付いてきた魔獣を切り刻む。
その勢いで進み、他の魔獣を切り刻む。
次の瞬間には、車に現れた。
石は消えている。
けれど、こうしてもすぐに魔獣の群れはやってくる。
途切れることはない。
「••••こりゃキツいか。おい。お前ら。車を止めるぞ。個々は対して強くもない。凌ぐぞ」
「ふふふ!見せてやる!筋肉!!」
急ブレーキで、車が止まる。
男性が真っ先に飛び出す。
彼は魔獣を切り刻む。
今度は現実に、地上で攻撃していた。
「は。全員殺す」
師匠も車から降り、ロケットランチャーを乱射する。
魔獣や人間が吹き飛ぶ。
俺も車から降りた。
「自分もやります。『凄い風』、『凄い火』に「無限」と、」
「無限」の能力を使いながら、魔法を使う。
これで魔獣たちが来る方向に、風が吹き、炎が出る。
だけではなく、「無限」により自動でこれが永遠に繰り返される。
これでドンドンと、動物たちは亡くなっていく。
かなり便利である。
周りにも置いておこう。
「ナイス!大空くん!だが!強い魔獣は俺が倒す!せっかく来たんだ!功績あげないと!」
「大空、、やっぱ成長してんな••••」
「•••••••『光線』」
「ありがとうございます!『凄い風』『凄い火』『凄い火』」
更に風や炎を展開する。
少し強めの魔獣は、風で足止めしている隙に、ホワイトのレーザーや男性の双剣投げで亡くなる。
突如、とある魔獣?がこの壁を抜けてくる。
目が三つ、尾が三つの狸だった。
魔力感知でレーザーを避け、炎も風も余り効いていない。
「••••••••」
今回は、全身鎧の人が入る。
ノーガードで狸の突撃を受けた。
全身鎧の人は、無傷だった。
そして、西洋剣で狸を叩き潰す。
狸は粒子と共に消えた。
「、下がってろ。オレが丸ごと片付ける。喰らえよ」
車の上から師匠がロケットランチャーを乱射する。
全てが吹き飛ぶ。
「もう大丈夫そうか。『凄い火』」
辺りの魔獣は全員息がなくなった。
新しくやってくる魔獣も俺の炎や風で、亡くなっていく。
「ちくしょぉぉぉ!!俺の活躍が薄いぃぃ!、ショック!!うええん!ぐえ!」
「田中!暇になったからって泣くな!遠距離攻撃担当のわたしの護衛をやれ!」
「怒られた。やりますよーだ。俺が」
——
二日目の夜になる。
魔獣らの群れは、もう来なくなっていた。
ついでに周囲には虫すらも居なくなっている。
そんな今日はSランク冒険者の人達が見張り担当ぁった。
だから、俺はあるところに来ている。
「師匠ー!今空いてますか!?」
「••••大空、、あ、ああ。空いてるぜ、」
車の上で寝転び、火魔法を明かりとして本を読んでいた師匠。
俺が近づくと、本を急いで隠し、起き上がった。
「あの、久しぶりに修行を付けて欲しいというか。色々見て欲しいところがあって。良かったですかね」
「••••いいぞ。大空。見せてみろ」
許可を貰えたので、色々やる。
『領域』と合わせて使う武人流や、『変革』での武器の操作、「交換」やら『支配』の使い方やらだ。
師匠から見てどうかも、知りたくもあった。
「これで最後です。どうですかね?」
「••••何も言う事ねぇ、完璧だ、成長したな、、使いこなしてるぜ。魔力を、」
いえい。
良かったっぽい。
「••••大空はやっぱ出来るわ、、」
「ありがとうございます!ですが!師匠のお陰でもあるというか!基礎は師匠が作ってくれました!」
「、言ってくれるな、、オレも、、嬉しいわ、、修行したもんな、、」
師匠は呟き、空を見上げる。
満点の夜空が、そこには広がっていた。
少し俺から目を逸らす感じでもあった。
「所で、、その、オルキデはどうなった?気になるんだ」
「自分もあんまり知らなくて。カルミナ市で一緒に四天王とかと戦ったまでしか」
「••••••そうか」
師匠は残念そうに呟く。
もしかして、イリカと会いたかったのかな。
それで、謝りたかったとか?
「何か伝言があったら言ってください!イリカと会えたら、伝えておきますよ!」
「いや、いい、、オレの自己満でしかねぇから、、だが、済まんかったな、大空、殺しに行って、裏切っちまって、、」
「いや!全然!師匠にも都合があったんだと思います!ですが!何で!最強になろうと思ったのか!その帰結として弟子を取ったのか、少し気になります!」
ここで聞いてみるチャンス。
一緒にいた期間も長いし、あとは事情を知るだけで友達になれるかも。
師匠の事は全然知らなかったし、聞いてもいなかった。
「知りたいか、大空、、元の世界にいた頃の話までもどるぞ、?」
「はい!気になります!」
「直球で言われると、照れんな、、」
師匠は顔を少し赤くする。
しかし、すぐいつもの顔になり、また空を見上げた。
「オレは、まあ、自分で言うのもなんだが、日本にいた頃は無双してたんだ。鉄パイプ持って、同じヤンキーもヤクザもボコって。追い詰められても、全部パクれっから。最強になれるって思って目指してたんだ」
「けど。ある日ガリ勉と馬鹿にしてた兄貴と大喧嘩になった。殴り合いにまでいっちまった。あんま喧嘩した事のない兄貴とだ」
「そんで、オレは負けた。兄貴はオレと才能は同等だったんだ。だからこそ男女の筋力差がデカかった。オレは才能と工夫さえあれば、無視できると思ってたのに」
「ま、当時のオレは挫折して。ちゃんと勉強するようになった。そんで努力して当時は珍しかったが、女だてらに良い大学にも行けた」
師匠は淡々と語る。
平然と言っていた。
というか、師匠がいたのは結構古い時代っぽい?
俺が元の世界にいた頃は、ヤンキーもヤクザもあんまりいなかったし。
勇者ごとに、元々いた年代は違うのだろうか。
「ま、通って一年も立たないうちに事故にあって、死んじまった。努力も無駄になった。だが気付けば魔力と、兄貴とも違う能力を得て、この世界に来てた」
「それ故に、最強を再び目指しだしたんだ。二度目のチャンスが出来た。この世界だと全部魔力次第で男女差もない。時間もある。今度こそ、努力して、夢を、叶えるってな、、」
車の上でまた寝転がる師匠。
手足も伸ばした。
「結局お前らに会う直前に、四天王、『墓荒』のウリエルに負けてよ。プランを変えることにしたんだ。ただ特攻して戦うだけじゃなく、教えて、育てて、殺し合ってみようって」
その四天王と戦ったのが、ひらめの言っていた護送任務の時なのかな?
亜紀くんの宿でも、こんな感じのニュースは流れていたし。
「、、本当に、すまん、、お前らには悪い事をした、、弟子を取るのは辞める、だが、、今から変わろうとは、オレは思ってねぇ、、すまん、」
師匠は空を見ながら、謝る。
目だけはこちらを向いていた。
だが、俺はあんまり気にしていなかった。
「ぶっちゃけ、自分も師匠の事自体はどうでも良かったというか。前までは道具としか思ってなかった点もあるというか」
「••••、ま、だろうな、、」
少し師匠の眉はふにゃっとなる。
多分、落ち込んでいるっぽい。
「だからこそ、今回色々知って、仲良くなりたいと思ったというか。仲良くなりたいです。色々してくれて感謝しているのは本当で、」
「大空、、」
師匠の顔を覗き込み、そう言う。
すると、師匠の顔が赤くなっていく。
直後、急いで師匠は顔を逸らす。
「••••、卑怯だぜ、、、大空、、その顔で、その言動、、最近男旱りな、オレには、、効くぜ、、、」
男ひでり?
つまり、恋愛系のことだろうか。
男ひでり。
もしかして、この反応って恋愛に関係しているのか?
たまにされるけど。
「、あの高田が、ベタ惚れするだけは、、ある、、ごほん。一応知っとけよ。最近のあいつ。誰かのためかもしれんが、やる気出しまくってんだ。積極的に情報を集め出してよ」
「師匠。すいません。話が少し逸れるんですけど、惚れるって要は恋していた感じなんですかね?自分に?」
「ん?気づいてなかったのか?あんだけ分かりやすかったってのに」
ひらめってそうだったの?
だから、やけにベタベタしてくるし、妙になんでも命令してくれとか言って来た感じなのか?
思い返せば、別れる時色々して欲しいとか言ってたし。
何か部下になりたいんだなーとは思っていたが。
今までよく分からず、スルーしていた。
「はは。あいつもかわいそうだぜ。マジで。ま、自業自得でもあっか。大空も。やっぱり。勇者らしいぜ。ほんとに」
だったら、悪い事をした。
散々人の気持ちを利用している。
今度あったら、何かするか。
というか、やはりあの反応は恋愛方面の奴だったのか。
思い返せば、こっちに来る前日に告白してきた書記も、たまにひらめも同じ反応をしていたのような。
なるほど。
じゃあ、確かっぽい?
他にもカルミナ市の少女とかやっていた。
いやでも、ユアも俺に微妙に似たような反応をしていたような。
謎だ。
「少し、話すか。修行と関係ねぇ事。そっちは時間はあるか?」
「全然あります!自分も久しぶりに!話したいです!」
まあ、とりあえずはいっか。
考えるのは後回しで。
仲良くはなれそうだし!
口角を上げている、師匠の隣に座る。
いえい。
「ま、でだ、大空。オレはお前らに感謝の言葉も伝えたかったんだ。お前らのお陰で、何故か役員候補になったしよ。権限上がれば、強い奴と戦う機会も増える」
「?。役員候補?そんなのがあるんですか?」
「ああ。そういや、お前の姉ちゃんもなってたぞ。役員ほぼ確実だってよ。後少し変わるだけでな」
「姉ちゃんも!どんな感じか教えて欲しいです!」
「お前、姉大好きだな、、ま、教えてやるぜ。勇者連盟の役員は、前役員が指名する感じでなれんだ。会社全体で選ばれた役員候補の中からな。本人が指名しなきゃ役員は続投だ」
師匠は色々話してくれる。
星空の中で、こうやって夜が更けていく。




