第四十七話 鎮圧
イリカは柱に押し出され、壁にぶつかった。
それにより、体が圧迫される。
「『範囲融合』!邪魔よ!」
すぐに、コンクリートと空気を融合させ柱を消し、脱出した。
イリカからは、フレジアがホワイトに歩いて近づいていく姿が見える。
「••••『まあまあな風』」
風を吹かせ、ホワイトはフレジアを妨害する。
このタイミングで、イリカもフレジアを倒そうと鎖を投げた。
「何やってるのよ!ホワイトにもラミちゃんにも近づけさせないわ!」
「『変革:雉』『変革:長刀』」
突如、フレジアの足元から石の雉が飛び立つ。
この雉は羽を広げ、鎖を妨害する。
それを横目に、フレジアは鞘から刀を引き抜く。
その刀の刃は、鞘の何倍も長かった。
フレジアは長刀を振るう。
刀は伸び続け、ホワイトの脇腹に当たりそうになる。
「••••『森の光芒』。おそい」
「『変革:短刀』『変革:猿』」
ホワイトとフレジアの間に、光の柱が降り注ぐ。
伸びた刀に直撃するコースだ。
だが突如刀は一気に短くなり、光の柱を避ける。
追加で、フレジアの足元から石の猿が出現する。
その猿は羽を失った雉と共にイリカを襲う。
「は!この程度!意味ないわよ!」
走り出していたイリカは、石の猿を蹴り飛ばす。
この猿は雉を巻き込みながら、フレジアの方へ飛んでいく。
まるごと、それらはフレジアの刀に切られた。
「喰らいなさい!」
隙にイリカはフレジアの懐に入り込む。
その腹を殴った。
「•••••••ぐ」
それに反応できず、フレジアは吹き飛んでいく。
少し倒れこんだ。
「大丈夫!?ラミちゃん!」
「•••••••私は••••••私は••••」
それを横目に、イリカは倒れていたラミに近寄る。
ホワイトも近付いて来た。
「••••早くにげよう。ちはるが足止めしてる」
「久しぶりね!ホワイト!だったらどっちも私が背負うわ!!」
(いや恩着せがましく言うなよ。お前が巻き込んだんだろ。おれらを)
(そ、そういわれれば、そうね、、)
巻き込んだ事を後で謝ると決め、イリカは涙を流しているラミに手を伸ばす。
次の瞬間、フレジアの周りの壁から鉄の柱が二本生えた。
鉄の柱はラミの方へ向かっていく。
「『凄い水』『森の光芒』。一本やって」
ホワイトは水を大量に出し、二本の鉄の柱にぶつける。
これで時間を稼ぎ、その内の一つを光魔法で消し飛ばした。
「わ、分かったわ!」
ラミの前にイリカが立ち塞がり、柱を殴る。
鉄の柱はあっさり壊れた。
「••••誰も逃さないわ。『変革:牢獄』」
突如、ラミの周りの床から檻が現れる。
檻の下には鉄の柱が着いていた。
柱に押し上げられ、檻は天井の方へ浮かびあがる。
「ラミちゃん!!やめなさい!」
イリカは怒って檻に付いた鉄の柱を蹴る。
鉄の柱が折れる。
だが、檻は天井に付いたままだった。
「『変革:狼』『変革:大猩猩』『変革:駝鳥』『変革:蛇腹刀』」
狼とゴリラ、ダチョウが一匹ずつ地面から生えてくる。
この動物達は全て鉄で出来ていた。
まず、ダチョウが凄まじい速度で突撃してくる。
同時にフレジアは天井のラミヘ蛇腹刀を振るう。
「どういう能力なの!?これ!どっから出てきてんの!?」
(こいつの能力は触れた物の性質と形を変える『変革』。お前は触られないようにしろよ。おい)
「本当!?なら気をつけるわ!」
イリカは鎖を振いながら、体を一回転させる。
これで、まず蛇腹刀を鎖で弾き、蹴りでダチョウを粉砕する。
直後、狼とゴリラが同時にイリカへ襲いかかってくる。
またイリカは拳を構えた。
追加で、ゴリラの頭から黒いレーザーが飛び出す。
イリカにはそれが直前まで見えなかった。
「『束ねた闇』。これで終わりよ」
「『光線』••••あぶない」
イリカの背後から光るレーザーが放たれる。
黒いレーザーは相殺された。
「また。あなたは本当に鬱陶しいわ。『変革:犬の群れ』『変革:猿の群れ』『変革:雉の群れ』。」
フレジアの周りから、大量の犬や猿や雉らが現れる。
それらは、イリカの視界を埋め尽くす。
「たぶん、あいつは触れたものを変える能力。周りはこわすから、ほんたいはお願い」
「やっぱり!分かったわ!私が近接挑んで、浮かばせたまま!ボコボコにすれば良いのね!」
「••••そうかも。直接触れないように。『凄い光』」
ホワイトは光の玉を投げる。
その爆発と爆風は、飛んできていた空中の雉の群れを吹き飛ばした。
「今よ!は!」
光の玉が爆発した直後、イリカは鎖を振る。
鎖はヒュンと音を出し、爆発の砂煙を真っ二つに分ける。
すぐ、イリカは走り出す。
犬や猿を踏みつけ、フレジアに近づいて行く。
「なんか黒い線を出す魔法は!見えれば簡単に避けられるわ!降参しなさい!」
「あなたの使う、その意味不明な技術も近づけなければ何も出来ないわよ。お母様から似たような技を聞いた事があるわ。『変革:二重壁』」
「むしして行って。『灯滅する火』」
「わ、わ、分かったわ!」
イリカの目の前の床が、突如盛り上がり始める。
すぐ後に、ホワイトから火の粉が飛んで来た。
この火の粉は巨大化し、猿や犬を巻き込み、出る前だった地面ごと溶かす。
そして、フレジアの目の前に、イリカは着地した。
(おい。直接は殴んなよ。お前は耐性ねぇからな)
(分かってるわ!これで対策にもなるわ!)
イリカは自らの拳に目を向ける。
そこには鎖が巻かれていた。
「道中で練習したのよ!あれを!簡単に動けなくする方法を!」
鎖を巻いた手でフレジアの顎にアッパーをしかける。
フレジアは苦悶の表情を滲ませながら、空中に浮かぶ。
イリカはまたすぐ拳を構える。
「は!これで終わりよ!」
落ちてくるフレジアのみぞおちにパンチを喰らわせた。
今度は、フレジアが転がっていく。
「うぇ、はっ、はっ、はっ」
フレジアは青白い顔をし、地面で倒れる。
みぞおちを殴られたからだ。
一方、他の猿達はホワイトの光魔法で消し飛ばされていた。
「大空と仲よしそうだから!この程度で済ませてあげるわ!反省しなさい!!ラミちゃん!大丈夫!?」
イリカはフレジアを睨み付けた後、すぐ天井を見る。
檻の中で、ラミが泣いていた。
「••••『まあまあな風』」
突然、イリカが風で吹き飛ばされる。
すぐ後に、イリカの頭のギリギリを黒い棒が通って行った。
「え!どうしたの!?ホワイト!?」
困惑しながら、イリカは辺りを見回す。
黒い翼を生やした長髪の男が、いた。
四天王の男だ。
イリカが空けた大穴の所から歩いて入ろうとしている。
「••••ちはるは」
「能力をポンポン変える奴の事か。奴なら殺した。俺の奥義でだ」
晴れ晴れとした表情で、男はそう言う。
それを聞き、イリカは衝撃を受けた。
「え、え、え、、また、、私の、せい、?」
「はっ、はっ、本当に殺した、の?」
「貴様、、あんな大口を叩いておいて、、それか」
男は倒れ伏すフレジアを見、目を見開く。
だが、わざとらしく口角をあげた。
「はは!貴様は所詮プロトタイプだ!結局貴様は一人では何も出来ん!その分際だ!はは!」
「あなた、も、奥義の、目撃者を、消して回っていた、分際で、何を」
「黙れ。『壊粉』」
男は手に黒い粉を出現させ、フレジアに投げ付ける。
倒れていた為、避けられなかったフレジアはもがき始めた。
「いた、い、いたいわ、」
全身から黒い粒子を撒き散らしながら、その場でジタバタと体を動かす。
一方、イリカは拳を握りしめた。
「殺してやる!!!なんで!足!動かないのよ!!」
(ハハハ!!マジか!笑える!!あいつマジか!!あと辞めとけ!あいつの能力が発動中だ!近づくだけでお前は消えんぞ!ハハハ!)
(エムのせい!!?ふざんじゃないわよ!!あいつを殺してやる!!動かさせなさい!!)
(おれは関係ないかもなぁ!お前が怖気付いてるだけかも!ヒヒヒ!、いや、痛ぇなおい。)
どうしようともイリカの足は動かない。
だから、イリカは自らの足を全力で叩き始める。
相当の痛みを感じた。
「その状態で、動かないでいろ。即死させてやる。俺はさっさと我が祖国に帰りたい。『壊笏』」
男は手に黒い棒を出現させる。
そして、投げる為に、体を捻った。
「ごわぁぁぁぁ!」
次の瞬間、男は吹き飛ぶ。
背中をくの字にし、ビルの地面を転がって行く。
「おー。威力は想像以上。流石車」
「透明」になっていた電気自動車が姿を現す。
その運転席には千晴が乗っていた。
「お、大空!!ぶ、無事だったのね!良かった!本当に!」
「少し待って。今、トドメ刺すから」
千晴はまた車のアクセルを踏み込む。
何とか立ちあがろうとしている男の方へ、車が急発進する。
魔力を纏った車は、ビル内全てを粉砕していく。
「待て!少し待て!壊れる!落ち着け!降参だ!抵抗はしない!」
男は手を伸ばし、千晴に語りかける。
直後、男の正面に車が突っ込っんだ。
車の表面は男に近づくごとに黒い塵となったが、動く事には何ら影響がない。
また男は地面を転がっていく。
腕は折れ、付けていた黄色い石のアクセサリーも粉々になった。
「凄い頑丈。それなら、こう、タイヤの位置を調整して、と、」
少しハンドルを切りながら、千晴は車を加速させる。
車のタイヤで頭を踏み潰す気だった。
「ま、魔力集約器が!!あああ!!目撃者を殺す任務さえなければ!!魔力集約器さえ無ければ!!ああああ!!クソ!!!『重力破壊』!」
男はそう叫ぶ。
突如猛スピードで、男は吹き飛び出した。
男はビルの内壁に激突する。
「ぐ、、貴様!!!絶対に許さん!!次会ったら必ず殺す!!!覚えていろ!!」
「『光線』。あ。避けられた」
男と接触した衝撃で、ビルの壁に穴が開く。
穴から男は外に出、さらに不規則に彼方へぶっ飛んで行った。
これにより、レーザーも躱されてしまう。
「魔王様!本当に、申し訳、ありません!!先程ののは、言葉の綾で!!作戦は、完璧で!イレギュラー、さえ、無ければ!無ければ!!!」
最後に叫び声が、ビルないに響いた。