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第四十六話 vs四天王







 男性に逃げる事を咎められる。

 更に、男性は一歩下がる俺をより強く睨んできた。


「何よ!お前!離しなさい!」


 一方、イリカは駆け出していた。

 拳を握り、男性へ向かて。


 どうしよう。

 言っている事を信じるのなら、あの男性は四天王らしい。

 そして、四天王は聞く限り師匠にも勝てるらしい。

 

「••••「神速」」


 イリカと共に、一度男を殴り飛ばす。

 その隙に、三人で逃げる事に決めた。 


「神速」で男の横に移動する。


「貴様は勇者か。初めて見る顔だ」


 男は少女を持ったまま、俺のパンチを片手で防ぐ。

 直後少女を投げ捨て、もう片方の手で殴ってきた。


「ぐ!」


「何よこの石!」


 俺は相当なスピードで吹き飛んでいく。

 内臓も軋む。

 すぐ壁に激突した。


 一方イリカは、突如現れた石の柱と邪魔される。

 それに吹き飛ばされた。

 この柱はフレジアの足元から伸びている。

 

「黒髪の方は殺す必要はないわ。私が説得すればいい。だから、追撃は辞めなさい」


「何を言っている。雷人族と目撃者は例外なく全員殺せ。それが魔王様からの命令だ。お前も同じ命令が出ているだろう」


 男は呟く。


 もしかして、この分だとフレジアも敵なのだろうか。

 だったら、覚悟を決めよう。


「••••魔人族の分際で」


「は?貴様。なんて言った?」


「「身代わりの術」」


 能力を「再生」にしていた為、内臓の怪我はすぐ治った。

 だから、「身代わりの術」で男の不意を打ちに行く。


 この技に男は反応出来なかった。

 俺は男の脇腹に蹴りを入れる。

 先程イリカが開けた穴から、男は外に吹き飛んでいった。

 

「片方は俺が引き付けておく!だから二人とも!早めに逃げて!」


 木の枝をポケットから出す。

 何が起こるか分からないと、常備して置いて良かった。

 

「「身代わりの術」」


 また同じ技を使い、道の真ん中に立っている男の前に移動する。

 そして、木の枝で頭を刺しにいく。

 もしこれで殺せれば、ホワイト達も逃げやすいだろう。

 

「ぐ、あの女、、後で殺す。『壊層』」


 だが、木の枝はその男に近づくごとに、壊れて黒い塵になっていく。

 男の頭に接触する前に、木の枝は完全に塵になってしまった。


 多分、能力だ。

 だがどう言う能力なのか。

 男の周囲に広がった魔力の層に触れる度、枝が塵になっていく。


 ならば、ここは「再生」だ。

  塵になるより早く、治せば良い。


「常人流奥義「死指」」


 その上男が体勢を整える前に、なるべく致命傷を与えたかった。

 指をピースにする。

 

「致命打を狙うか!『壊翼』!」


 突如男に黒い翼が生えた。

 俺のピースが目に入る寸前で、男は猛スピードで飛び立つ。


「貴様、何の能力だ。俺の魔力感知もすり抜け、何故か回復もする。更に瞳の色の変化••••他者の魔力を奪う能力か?『壊笏』」


 空を見る。

 細長く黒い棒を持った男が、飛んでいた。

 

「だが、俺には勝てんぞ。死ね」


 男が棒を構え、俺に投げてくる。


 相当なスピードだ。

 しかしかなり離れていたから、普通に躱せた。

 一方、その棒が少しでも当たった地面は、粉々になり黒い塵となって消えていく。


「この技は防御が不能だ。当たった箇所全てを粉々にする。どれ程魔力を込めようとな。『壊笏』」

 

 また黒い棒を投げてくる。

 俺は避けた。


 この隙に俺はまたポケットから木の枝を出す。

 そして、枝をを投げる。

 男は避けもしない。


 近付くごとに木の枝が、粉々になり黒い塵になっていく。

 この木の枝も男に接触する前に消えた。

 

「『壊笏』。俺の能力はありとあらゆる物を壊す。お前は死を待つ事しか出来ん。諦めろ」


「『まあまあな水(ウォーター)』」


 水魔法も試してみる。

 だがこれも男に近づく事に、黒い塵になってしまった。


「『壊笏』。お前は絶望する事しか出来ん。早く死ね」

 

 また棒を避けながら考える。


 男の飛行スピードも相当速い。

 だが、何故か全く俺には近付いて来なかった。


 その上、「変異」は使えなさそうだ。

 目撃者を消す必要があるのに、道路の真ん中でこんなチマチマした戦法を取っている。


 ならば、色々出来そうだ。

 想定よりも圧倒的な強さでもないし。

 とりあえず今のうちににビルから離して、ホワイト達が逃げやすくしよう。

 あの二人なら、フレジアは大丈夫だろうから。


「『壊翼』」


 俺も翼を生やす。

 結界で空中を走るのもありだが、男の飛行スピードには随分負けている。

 だから、これで男の気を引く。


「俺の『破壊』も使えるか••••だが、俺の魔力は奪われていない。つまり、お前の能力は他者の魔力のコピーか。そして、瞳の色の変化も考えると、同時に使用可能なの一つまでだ。違うか?『壊笏』」


 俺はこれで生やした翼で飛ぶ。


 と言うより、翼は制御装置だった。

 力を抜くと、何処までも飛んで行くのを翼で抑えている。

 

 とりあえず、そのまま飛ぶ。

 先程見た男の飛び方を真似て。

 これで棒は避けられた。


「無言か。質問には答えるのが礼儀だろう。何か言ったらどうだ。いや、成る程な」


「『壊笏』」


 俺も棒を出した。

 これで威嚇も出来る。

 男が言うにはこれは防御不能らしいし。


「雷人族共は愚かだったな。自分達が狩る側だと勘違いした者共の命乞いは傑作だった」


 飛び上がった俺から一定距離を保ちながら、男はそう言う。 


 男の方が飛行速度が速く、俺は追いつけない。

 その上、三次元的な移動法で、ビルからは決して離れ過ぎないようにしている。


「特に愚かなのは、市長代理と労働組合トップの兄妹だな。市長代理の男は目の前で市長を消してやったのに必死で他の連中を逃がそうとしてきた。結局何も救えなかったがな」


 けれど、この男は何がしたいのだろう。

 何故か時間を稼ぐような事をしてきている。


 言っている事と違った。

 目撃者は消さなければいけないはずなのに。

 何のために?


「労働組合トップの女の事は、本当に笑えるな。雷人族の行方不明事件の犯人が自分だと考えられていると、欠片も思っていなかったんだ。ただ俺がわざとそんな殺し方をしたんだけなんだかな」


 俺は昔姉ちゃんと格闘ゲームをした時を思い出す。


 あの時の姉ちゃんは遠距離タイプのキャラを使い、遠くから俺のキャラをチマチマ攻撃し続けていた。

 そして、隙があれば色んな方法で煽り、俺が怒って突撃してくるのを待っていた。


 もしや、この男もその戦法の使い手なのだろうか。


「そんなあなたでも、俺からは逃げるんですね」

 

 こう言う時は、逆に煽るべきだ。

 もし煽りが成功すれば、相手が冷静さを欠いてくれるかも。

 それで、ビルからも離れて欲しい。


「はは!逃げるに決まっているだろう!お前にあの女の愚かさの全貌を!事細かに伝えたいからな!」


 男は近づく俺から離れ、笑いながらそう言う。

 煽りは失敗した。


「あの女はな!労働者共が自分の思い通りに動いてくれると思い込んでいたんだ!愚か極まれりだ!そんな事が出来る知能があるなら、とっくにこの街から脱出している!何故そんな連中に対して、自分が何か出来ると思えたのか!!理解不能だ!!」


「魔人族の分際で」


「は?何だ貴様。『壊笏』」


 俺は翼を振るわせ、その棒を避ける。 


 反応があった。

 これで行こう。


 フレジアの煽りを真似た甲斐がある。

 煽りも同じだった。相手の事を考えればいける。


「やっぱり魔人族。たかが魔人族。所詮魔人族」


「あの女は低脳!俺に利用され絶望して死ぬだけの道具!魔王様の計略の駒!『壊笏』!」


 明らかに怒っているが、男は未だ冷静である。

 ビルから離れずに俺から逃げていた。


 もっと煽ろう。

 この人にはヘイトスピーチが効く。


「平均的に知能の低い魔人族は自分では何も出来ない!魔王様も頭が悪い!結局バレてる!所詮は魔人族!」


「貴様。殺す。『壊水』」


 突如男は小さく黒い袋を手元に出現させる。

 その袋の口を明け、空へ向けた。


 袋の口から黒い水が溢れ出した。

 水は上空一体全てを覆い尽くす。


「我が一族の奥義だ。決して避けられん。苦しみ抜いて死ね」


 大きな水の塊が降ってくる。

 この塊は、周りのビルを粉々にし黒い塵にしながら、落ちてきた。


 これを飛んで避けるのは難しい。

「神速」を使う暇もない。


 やばい。

 煽り過ぎた。

 

 




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