第二章 完
「クッソ!これに成功すれば俺は無罪放免だよな!??そうだろ!??契約したよな!??」
「そうだから早く行け」
反社会的団体?のボス?が、俺達によって襲撃された地下の拠点に入っていく。
ここまでは作戦も順調だ。
「悪い人でも、、捨て駒にするのは、、気分良く無いわね、、」
「緊急脱出装置もあるらしいし。気にしなくて大丈夫だよ」
俺達と多数の冒険者、冒険者ギルドの職員の人達は、あの襲撃した拠点の近くに来ていた。
そして彼らのお陰もあり、推定UFOの修理も完了している。
イリカと彼らに鉄とかを運んでもらい、俺が能力で壊れた箇所を修復するって感じで。
「••••••••••それに••••無償で••••勇者達に協力しちゃったわよ••••••亜紀くんのこともあるけど••••」
イリカはボソッとそう呟く。
壊れている黒い石も、握りしめていた。
「••••この作戦が成功するといいね。その亜紀くんのためにも」
「••••なんでそんな他人事なのよ。亜紀くんはほぼ無料で私たちの世話を見てくれたじゃない」
「?。ああ。店員の男の子の事。ぱっと思いつかなかった」
あの男の子の名前、亜紀というのか。
初めて知った。
もしかして、こう言うのが駄目なのだろうか。
「••••••一緒に二千五百円、渡したじゃない••••その宿が、壊れていたら••••」
ここで、ボスが操作する地下施設が空中に浮かび上がる。
その形は本当にUFOだ。
直後、転移システムによって消えた。
「そろそろ作戦が開始されます。皆さん。プロテクト市を代表して、ご協力感謝致します」
mini black boxから副支部長な声が聞こえる。
もう俺達の出番は無い。
あとは他の人たちに頑張って貰うだけだ。
「ねえ!大空千晴くん?ちゃん!?達!」
「うお」
「う、うわ!?なに!なによ!この辺の市民全員、避難してるんじゃないの!?」
「キミ達の作戦は失敗するよ!!今のままだったらね!」
——
『『闇の三叉戟』』
石の巨人は闇魔法を使う。
巨人の手元に、先端が三又に分かれた黒く巨大な槍が現れる。
巨人はそれを手に持った。
『貴様の足止めする能力は褒めてやろう!しかし!本当に退屈な相手だ!!』
追加で、槍を持っていない拳を巨人は構える。
その拳から何十体もの生物が発射された。
生物達はソニックブームを発生させながら、街全体に飛んでいく。
「う、何だよ。またか••••「完璧展開」、ぐわ、血が」
岩永の周囲に、白い半透明な膜が現れた。
それは岩永を中心に広がっていく。
膜に生物達が激突する。
その一部は、発射された時点で黒い粒子となっていた。
更に膜にぶつかった生物も血と黒い粒子となり、消えていった。
『では、死ね!!貴様と仲の良い連中の復讐を!!楽しみに待っているとしよう!!』
巨人は岩永の目の前に瞬時に移動する。
このまま、槍を無防備な岩永に向けて、刺す。
「二度目の、、殉職、、」
岩永の胴体に、三叉戟の先端が突き刺さる。
巨大過ぎるあまり、胴体の半分が消し飛ぶ。
「飲み友達、、、社長、、住民達、、、葬式、来いよ、、これ、遺言な、、」
『ハハハ!任せておけ!私がその葬式に突撃してやろう!!他の連中は全力で対抗するかな!』
槍は黒い粒子となって消える。
それと共に、胴体が消えた岩永は血を吹き出しながら倒れ込む。
ピクリともしなかった。
巨人は、そんな岩永から目を逸らした。
街全体を見渡し出す。
『しかし、巣を荒らしているというのに、勇者共も人間共もかかって来ぬな。逃げ惑うばかり。窮鼠猫を噛んでくれないか、、でなければ皆死ね』
巨人は遠くの逃げている人々に目をつける。
これらの幾つもの集団に向けて、拳を向けた。
「我!覇王也!弱き者よ!かかってくるがいい!『凄い風』拳!」
「神速っス!」
ハ•オウは、巨人から離れた位置で拳を放つ。
この爆発で、辺りの建物が吹き飛んだ。
『む!!悪く無い攻撃力!!無防備な私に直接当たりさえすれば!ヒビは少し入る!!しかし!それだけだ!それ以上はあるか!?』
嬉しそうに、巨人は拳をハ•オウの方に向ける。
拳の内部には翼を持った馬達が装填されていた。
「おっしゃー!!チャンスっス!やっちゃってください!!烈さん!ホワイトちゃん!」
巨人の背後の空中に、ひらめ達が突然現れる。
ひらめは月下烈を肩車しながら、ホワイトを抱えていた。
「オレの主武器!ロケットランチャー!!ちゃんと合わせろよ!ホワイト!!」
月下烈はロケットランチャーを肩に担いでいた。
そして、引き金に指をかける。
「••••わかった。『凄い風』」
「『凄い風』!直後に調節したロケットランチャー!」
ロケットランチャーの弾が発射される。
この反動で、三人は後ろに吹っ飛んでいく。
「速度を維持したままの転移システム!で緊急脱出!!おおお、金!金!まだ金稼ぎたい!俺は!!」
『何事だ!?突然魔力が!』
巨人の目の前に、UFOが急に現れる。
次の瞬間、強烈な衝撃が巨人の正面に走る。
同時に、後ろの爆発が巨人を襲う。
それにより、巨人の胴体にどでかい穴が空く。
全身にもヒビが入った。
『何てことだぁぁぁぁ!!私の積み重ねてきた物が!!!壊れてしまった!!!うぉうぉうぉう!!!ハハハ!!しかし!未だ無意味!!限定解除!』
巨人の頭部が、引っこ抜ける。
それからは手足も生えた。
残った胴体は、街へ倒れていく。
『ハハハ!この体のスペックは巨大な時と変わらんぞ!!!さあ!これから先!作戦はあるのか!?なければ皆殺しだ!!ハハハ!』
「『凄い風』拳』」
急に現れた千晴が拳を振るう。
この爆発で、頭部のヒビが更に割れる。
外部から、男の姿が少しだけ見えた。
『おお!また貴様か!!突然現れるとは!あの勇者の能力か!便利な能力だな!が!全く足りない!全く足りていないぞ!!ハハハ!』
笑顔で男は、巨人に拳を構えさせる。
千晴を狙っていた。
『いいや足りているよ。ごめんね!こんな強引な手段とってね!『全てを有する闇』!』
黒田は何かを叫ぶ
隣には物を投げた後のようなポーズをするイリカがいた。
直後、巨人の内部に黒い玉が出現する。
その玉は巨大化し、男を巻き込む。
『これは!!まさか!!死ぬ!これは死んでしまう!!だかこれはこれで!ギリギリ壊された感が強い!!悪く無い!悪く無いぞ!!!!』
玉は、一気に小さくなっていく。
男は手足をジタバタと動かし、足掻いていた。
『故に!!悔しい!!死ぬ前に!強いて言うならば!!我儘を言うならば!!』
玉はミリサイズになる。
男も頭以外が取り込まれた。
『完全な状態で!!!やられたかったぁぁぁぁぁ!!!!!』
玉は、大爆発を起こす。
男の全身は黒い粒子となり、溶けていく。
この爆風で、空中の千晴も遠くへ吹き飛んでいく。
——
ネミノス?との戦闘から、約二日経った。
天気は快晴。
窓から太陽の光も入ってくる。
外出日和だった。
にも関わらず、俺は個室のベットの上で寝ている。
全身包帯ぐるぐる巻きだった。
絶賛、入院中である。
爆風と落下の衝撃で、全身複雑骨折を起こしたのだ。
凄く痛い。
だが、後一週間もあれば退院出来るらしい。
他人の魔力を流して再生力を増させる治療を、俺は副作用なしでやれたから。
やったね。
「ここまで怪我して••••よく頑張ったな••••大空とオルキデが二人でトドメ刺したって聞いて、。オレ、ちょっと嬉しくなっちまった、、会ったばっかってのに、、」
病室にはホワイトとイリカ、師匠とひらめの四人が来ていた。
お見舞いがてら、報酬を渡す為との事。
何故退院してからでは無いのかは謎だ。
用事でもあるのかな。
「すまん、、ちょっと無理だ、、オレ、、報酬の話、高田、やっとけ」
「自分が育てたとでも感じてるんスかね!?この恩覚えてといて下さいよ!では!会長達!報酬の話っス!!」
ひらめは大声で叫ぶ。
師匠の鞄に手も突っ込んでいた。
「討伐協力の分と口止め料も含め!報酬の百万円と!出来る範囲で!一度だけ!何でも願いを叶える権利贈呈っス!!」
ひらめは笑顔で三つの札束を机に置く。
そうして、まず俺の方を見て来た。
先に言え、というのだろうか。
「俺は••••いいや。姉ちゃんの居場所は言えないんでしょ?」
「そうっスね!!機密に入るっスから!言えないっス!けど、他に何でも言って良いっスよ!?何でも!」
「まあいいや。大丈夫」
それなら、百万円をもらえただけで満足だ。
これで趣味探しもしやすい。
更に、俺の駄目な点を直すことにも使えるかもしれない。
「そうっスか••••じゃあ次はホワイトさん!何でもいいっスよ!出来る範囲で!」
「••••••••••紀元前の歴史を教えてほしい。図書館のどこにもない」
ホワイトは嫌そうに呟く。
ひらめはにっこりした。
「無理っス!機密に引っかかるし!自分も知れないことが多いから!!けど!自分で導くのはありかも!この世界には所々過去の痕跡が残されてるらしいっス!例えばここのデカい壁とか!あれは対ネミノス用らしいので!後は自分で見つけて欲しいっス!」
「•••••••わかった」
「次はオルキデさんっスね!じゃんじゃん願いを言ってください!出来れば簡単な奴で!」
その笑顔のまま、ひらめはイリカの方を見る。
イリカは暗い顔だった。
「••••嘘は、つかないのよね?」
「当たり前っスよ!直轄地のために働いてくれた人を邪険に扱うのは!勇者連盟自体の信用度にも関わるスからね!入院中の岩永支部長のお言葉っス!!」
「••••だったら••••勇者の中に••••死体を操る能力を持っている奴がいるわよね••••そいつの名前と、居場所を教えて欲しいわ」
イリカは恐る恐る、という感じだった。
これを聞き、ひらめは頭を抑える。
「••••••••あー。あ!あいつっスね!児戯の勇者!光原育!死体を条件付きで操る!でも、あいつも居場所は言えないっスよ!社長直属の奴なんで!機密っス!」
「••••••分かったわ」
イリカは頷く。
直後ニコニコしながら、ひらめはイリカに近づいて行く。
「なんでイリカさんはそいつが気になるんスか!後学の為教えて欲しいっス!一緒に戦った仲っスから!是非!」
「••••••••言いたくない••••」
「あ、うっかり地雷踏んじゃったっス!会長!嫌われそうな自分にフォローをお願いします!自分また嫌われたくないっス!勘違いしてただけなんス!!」
「自分が悪いんだし、普通に謝った方が良いんじゃない?」
「正論っスね!オルキデさん!まじごめんっス!」
「••••いいわよ••••別に」
「もう終わりです?そろそろ時間です。退出お願いします」
看護師の人が入って来た。
もう面会時間の終わりっぽい。
「ああ、、お前ら、さっさと行くぞ!」
「さらば!会長!また今度!早く治るといいっスね!」
「••••••はやくなおって」
「そ、その、言うの遅くなったけど、、大空、投げ方悪くて、、ごめんさい、、早く元気になって貰えれば、」
「あ!大空!保険なしのお前の分の医療費はオレが払っとくぞ!金の事は気にせず、ちゃんと安静にして!健康になれよ!じゃあな!」
四人は個室から出て行った。
あれからまた、一時間ぐらい経った。
包帯を変え終わり、ナースさんも出ていっている。
なので、かなり暇だった。
近くの窓から病院の中庭を見る。
木や花が適度に生えた綺麗な庭に、包帯を巻いている人が多く歩く。
中庭を歩いている男性と目が合う。
男性はこちらに、ありがとうと言いながら手を振る。
俺も手を振りかえす。
あの男性は怪我をしていたにも関わらず、UFOを修理するための材料を運んでくれていた。
恐らく、そのせいで悪化したのだろうか。
まあ、どうでも良い。
俺が原因の要素も少ないし。
宜しくないが、関係ないからいっか、って感じだ。
これの原因も結局、相手の事をよく知らないからな気がする。
店員の男の子の名前を知らなかったように。
蛇吉の行動原理も、分からなかったように。
イリカの事もよくよく考えれば全然知らない。
年齢も、家族構成も、何をされて復讐したいのかも、何も。
まずは、ここを改善だ。
趣味探しと力getより優先で。
何か色々遠回りしている気もするが。
「ねえ!黄昏ちゃってる大空千晴くん!」
「うお」
「約束通り!お礼欲しいな!アドバイスは役に立ったでしょ!?」
突然現れた黒田は、そう言った。
黒田は役に立つアドバイスを渡す代わりに、俺が誰にも内容を言わず、その上何かしら願いを叶える事を求めて来たのだ。
これの前払いとして、風魔法の使い方も教えてくれた。
約束は守らなくては。
「分かった。出来るなら俺がやれる限りで言って欲しいけど」
「うーん!そうだね••••••」
黒田はニヤニヤし始めた。
何も言われるのだろうか。
分からない。
思い返せば、黒田の事も全く知らない。
年齢、出身地、誕生日、使える魔法、ホワイトの関係など。
偶々話せる範囲にいるし、関係性も薄い。
その辺が少しでも知れれば、ホワイトの過去探しも手伝えるかも。
「黒田はどうやって俺たちの作戦を把握した感じなの?作戦会議の場にはいなかったでしょ?」
「え、今それ聞く?••••いや、ボクは聞き耳立ててただけなんだけど、、」
黒田は少し小声でそう言う。
しかし、すぐにニヤニヤ顔に戻った。
「まあ!それでさ!キミ!ボクにさ!百万円!その半分くれないかな!ただ忠言をして!トドメを刺しただけのボクに、ね!!ちょうだいよ!」
「いいよ」
「え、そんなあっさり?」
「後、退院してから、一日だけでも何かしない?色々俺の奢りでいいからさ」
黒田は目を見開く。
これは黒田にも利点があるし、了承してくれないだろうか。
他人を巻き込むことになってしまうが。
ホワイトもイリカもある程度会話した後、二人きりになった時に少し自分の事を教えてくれた。
これを試してみたい。
「••••••••••キミ•••ほぼデートじゃん••••••誘うにしても、もうちょっとあるでしょ••••」
確かにデートだ。
更に俺はこれが未経験だったような。
だからこそ、頑張ろう。
これで黒田の事を知れたら良いな。
—-
「こちら岩永。お久しぶりです」
「ちぃっすちっすー。お疲れ。岩永。話は聞いた。やばかったらしいな」
「いえ。そちらも相当面倒な相手だったと」
「そうだなー。ま、だるい相手ではあったな。とりあえず、詳細を報告してくれ。お前から直接聞きたい」
「••••『色欲』の復活が確認出来ました。結界が無くなった一週間の間に、封印が外部から破壊されたのだと、考察します」
「はぁ。そうか、、こんの忙しい時期に。封印は内部から破れるもんじゃないだろうしよ、、他の場所にも監視を付ける必要があんのかぁ。はぁ」
「自分の管理不十分で。本当に申し訳ありません。責任は私が」
「その辺は責任に問わないわ。隠蔽がてら竜族共に管理してもらっていたしよ。ヨシ!暗い話終了!!岩永、酒は用意してるか!?」
「無論ですが、急過ぎじゃないすか?こちとらまだ病み上がりですけど」
「撃退記念!リモート飲み会だ!騒ぐぜ!!二人だが!!」
「死者が、死者が何千人も、、俺のせい、、目から酒!!!直接摂取!!ゴクゴクゴク!!!」
「お前は同期の中でも一番才能ねぇもんな!!功績もあんまし上げてないし!出世も遅い!無理なもんは無理!!潔く諦めろ!!」
「真実は人を傷つける!!いや、同期は全員死んだ!俺が一番の出世頭!!!ぐおわあー!!」
「超不謹慎!そしたらコッチの方はどうなのよ!副支部長とか女だろ!?口説いてストレス発散しちゃえよ!!うぇーいってよ!!」
「この話!!七回目!行く所に行けば、セクハラですよ!!そう!俺がその行く所!許さん!だが逮捕出来るほどの行為ではない!!」
「無礼講無礼講!スーパー無礼講!今日は何でも叫んでいい日!!」
「長生きし過ぎて!!全員子供のようにしか思えなくなってしまい!!そう言う目で見れません!!あとこれ言うの十回目!!」
「おお!残念だ!ワタシもそれなんだけどな!悲しいな!!アハハ!!それはそれで楽しいがな!悪い経験じゃない!」
「この父性!!俺も悪くない!!••••••ごほん。完全に未確認ですが、一部追加で伝えたい旨が、、」
「いいぞー。何でも言え!無礼講、無礼講!」
「すいません。少しでも理性は残ってます?社長」
「微妙に残っている!もうピンピンだぜ!何でも来い!!」