第二十六話 作戦会議
洞窟は激しく揺れ動く。
それは俺達が立っていられなくなる程。
『お前達は特別に送ってやろう!!ここから先は私も手加減無しだ!そちらも全力で戦い!私を粉砕してみろ!うへへへ!!』
洞窟内には、テンションの高い男の声が響いた。
大丈夫かこの人。
次の瞬間、俺たちは四人とも空中に放り出されていた。
下には森が見える。
「うべべべべ」
あまりの風圧に顔が引き攣る。
凄まじいスピードで、飛んでいった。
非常に大きい壁にぶつかる。
最初に見たプロテクト市のやつだ。
だが何かがクッションとなり、怪我はない。
そのまま、地面に着地する。
謎のクッションは少しの血だけを残し、黒い粒子となって消えていった。
「••••••みて」
ホワイトが、飛んできた方角の空中を指差す。
そこには、石の巨人がいた。
大きさは大体百メートルだろうか。
背中に大きな黒い羽が生えているのが特徴的だ。
『懐かしい壁だ!あいつらはまだ居るのか!?粉々にしてやろう!!!』
巨人は消えた。
衝撃が走る。
壁の一部に、大穴が空いた。
穴のあった場所に、巨人が立っている。
『我が名はネミノス!貴様らが言う所の『色欲』!出てこい勇者等!いざ勝負だ!ハハハ!!』
巨人の動きは、全く見えなった。
あんなに巨大なのに。
不味い。
「おい。お前ら。無事出れたか。疲れているとこ悪いが、冒険者ギルドまで連れてくぞ。ひらめもホワイトを持って着いてこい」
突如現れた師匠は、両腕で俺とイリカを持ち上げる。
本日二度だった。
「烈さんじゃないスか!あいつそっち系統の、」
「その話は後だ。高田。行くぞ。「神速」」
——
師匠に、冒険者ギルドの四階へ連れて来られる。
そして、椅子に座るよう促された。
この部屋内にはすでに何人も座っている。
一方窓から見える街では、警報らしき不協和音と避難を促す放送が流れ続けていた。
それを聞いた多くの人達が、警察官に誘導され走って逃げている。
何か凄い事になっていた。
「我、覇王也。何用か」
「突然、用も言わずに呼び出すとは!無礼千万ですね!冒険者ギルドも落ちたものです!!頭の悪い馬鹿な覇王様もお怒りです!!」
直後筋骨隆々の男のSランク冒険者の人と、闘技場の関係席に座っていた少年も部屋に入ってくる。
彼らもすぐ席に座った。
「無礼も承知で。緊急事態ですので。今回は怒りをお控え下さい」
部屋の一番奥には、女性が立っていた。
岩永支部長?を闘技場から無理やり引っ張っていった人だ。
「これら机の上に現在プロテクト市を襲撃中である石の巨人、その簡単なデータを置きました。月下烈氏の解説の前に、予め目を通すように」
データを言われた通りに見てみる。
個体名:ネミノス
種族:
能力:「領域」「変異」可
使用可能魔法:一部闇魔法
経歴:紀元前276年、完全の勇者、陋劣の勇者、無償の勇者によって爆散。その後、
簡単というか、かなり中途半端だ。
その後、で終わらないで欲しい。
というか「変異」?とは。
「おーす。説明を預かった月下烈だ。よろしく。一部穴抜けは機密だってのと、オレに見る権限が無かったからカットしといたわ。戦闘能力についちゃあ全部公開してあるから安心しろ」
次は師匠が話し始める。
何か、かなり準備が良いような。
「そんで、詳細な解説だな。こいつの能力は『領域』。己を周囲に拡張して、操作するってやつだ。「変異」も出来る。というか今その状態だ。だがデータよりは不完全な形態だな」
「変異」とは。
もしかして、皆は知っている感じなのだろうか。
まず、一緒に来た三人に目を向ける。
ホワイトは書類をガン見していた。
イリカとは何故か目が合う。
ひらめは「透明」になって消えかけていた。
「高田。おい。逃げんな。逃げたら勇者資格剥奪だぞ。で、そこの洞窟行ってた四人。何かしら追加情報あるか?」
『なんだ貴様!!完全の奴の猿真似か!!??時間稼ぎにもならんぞ!!つまらん!!うおー!!!全員で来い!!』
突如街全体から、爆撃音が聞こえた。
窓から外を見る。
街の何十箇所から、煙と黒い粒子が上がっていた。
とんでもない。
『ハハハ!!やっぱ嘘だ!!うぉうぉうぉう!』
「今は気にすんな。ここならある程度は問題ない。そこの四人、このデータに無いこと知ってんなら言え。言い終わったら逃げてもいいぞ。高田以外」
「え~~~。ダメなんスか~~。良いじゃないっスか~~。こんな早い対応出来るの、自分が情報送ったからでしょう~~。功績を認めて、逃げたいっス~~~」
「••••••今飛んできている爆撃の弾は、洞窟内にいた動物達だと考えます。その動物達と同じく、弾は黒い粒子となって消えていたので」
「わ、私はないわ••••••逃げる気も••••」
「••••••わたしも。どっちもない」
ホワイトは逃げる気は無いらしい。
やっぱりか。
「意外とやる気あんな••••まあ、さっさと作戦案を出すぞ。岩永が潰れる前にな。まずはオレのだ。岩永の許可もあるし、これが基本プランだな」
師匠は全体を見回す。
更に少し言葉を溜めた。
「オレがあいつに突撃するから。その隙に全員で逃げる。のみ!それにすんなら、作戦会議終わりでお前らもハも全員逃げて良いぞ」
「烈さん~~。あの巨人相性悪いっスよね~~。それに、ただ戦いたいだけっスよね~~」
「我覇王也。弱き者に背中は見せぬ」
「愚かな覇王様は!自分たちを受け入れてくれたこの街をこれ以上壊されたく無いとおっしゃっております!それは自分も同じ意見です!大反対です!」
「ちっ、そうか。だったら他。オレのプランに賛成は居ないか?」
俺は師匠のプランに賛成だった。
ホワイトと逃げたい。
一応、イリカも連れて。
見えない速度で動く巨人は、ドラゴンを思い出す。
あんな思いをするのはもう嫌だ。
しかし、ホワイトは山田という警官や店員の男の子とも仲良さそうだった。
だから逃げる気も無いのだろう。
ならば、最大限頑張るしかない。
約束もしたし、責任も取らないと。
巨人を出現させたのも割と俺達のせいだし。
「誰もいないか••••そしたら他作戦。何か案あるやついねぇか」
「勇者連盟、の、社長、か、役員達、が、増援に来るまで、全員、で、時間、を、稼ぐの、は、どうです、か?総動員、すれば、死者、も、少なく、住みます、、例え、巨人、に、有効、な技、を打てる、人が、少なくとも、、」
蛇のような目をした男性が、ボソボソ言う。
男性の机には、プロテクト支部ギルドマスターと書いてある紙が立ててあった。
「そいつら全員ヤボ用だ。で、岩永が時間稼ぎに出ていっている現状。で、有効打ありそうなのもオレとここのSランクの奴ぐらい。時間稼ぐのも無理があんな」
「完全に詰んでるっスね~~。皆んなで逃げるのはどうっスか~。命は大事にするもんっス~~」
本当に詰んでいる。
少なくとも俺は、あの男相手に出来ることはない。
基礎スペックが違い過ぎる。
「我、覇王也。挟み拳プラン。どうだ」
「出たー!!覇王様のクソ脳筋乙プラン!!覇王様は両側から衝撃を与えることで、より強い衝撃を内部に発生させようと考えています!けどこれを採用するほどここにいる人たちは愚かじゃ無いぞ!!」
「いや、プラン自体は悪くないな。片側はオレの主武器で良いかもしんねぇが、もう片側はどうすんだ。お前のパンチなんてあれに当たんねぇぞ」
「我、覇王也。言葉など要らぬ」
「覇王様は、その通り過ぎて何も言えないとおっしゃっております。知能指数が低いですね」
これを聞いて、思い出した。
ワンチャンいけるかもしれない。
言ってみよう。
「••••UFOっぽいのがこの街の地下にありませんでした?今日、警察官の方たちが走り回っていた原因の。それを片側にぶつけるとか、どうですかね」
「お。大空。そうなのか。どうなんだ?副支部長?」
「はい、存在します。反勇者同盟傘下の反社会的団体が移動式機密飛行物体、略してUFOを所有していました。しかし。一部損傷が激しい上、操縦出来る人材の不足などの観点から、使用は不可能かと」
「はいはーーい!そのUFOの設計図と、操縦出来る人なら知ってるっス!!その出所は内緒っス!!探るのも厳禁っスよ!!」
「あー。分かったよ。ま、じゃあ、すぐ修理さえ出来りゃあ行けるって訳だ。そしたら大空。お前、『領域』使えるか?それで直せるんじゃね?」
「少し怪しいので、今試してみます」
『領域』は己の体を拡張して操作するものだと、言っていた。
ここで座っている椅子は俺だ、と思ってみる。
俺、動け。
椅子がガタッとした。
やったね。
次に円形の椅子になってみろと思ってみる。
なれた。
いえい。
行けそう。
「これと追加で二つの物を合体させられる『融合』も使えるようになったので、恐らく修理できると思います」
「成長したな。大空。なら直せる可能性は高いな。で、操縦出来そうな奴は誰だ。緊急脱出装置が付いてりゃあ、やってくれる可能性はあるが」
「それはさっき挙げた反社会組織のボスっスね!!取り調べ無しの無罪放免を餌にすれば、飛びついてくるはずっス!!勝利が見えて来たっス!!」
作戦が固まって来ている。
これで、行ける可能性が少しでも増えた。
「なるほど。悪く、は、ないです、これから、先、は、この作戦に、肉付け、していき、ましょう」
「我覇王也。悲しみを抱くもの也」
「覇王様は自分の作戦が採用されて嬉しいけれど、全て蚊帳の外になったことが悲しいとおっしゃっております!我儘で自己中ですね!!自分は賛成です!」
「時間が有りません。手伝って下さる大空さんは下で待機している冒険者の連中を含め、直ちにUFOの場所へ向かって下さい。案内はこれから渡すmini black box を通じて、私が行います」
「わ、私も大空に着いて行って、手伝うわ、、」
「はい。了解しました。貴女にもmini black boxを渡します。これにおいて残りの作戦会議も行いますので、走りながらでも参加をお願いします」




