第二十八話 黒田と観光
「我覇王也。敗北」
「覇王様!!!魔法、能力抜きの接近戦を挑まれて負けるなんて!!Sランク冒険者の称号は捨てちまえ!!大空さんはよく頑張りましたね!」
「勝利!V!」
退院してから一ヶ月経った。
リハビリも終え、現在は師匠の所で修行している。
「流石オレの弟子!成長速度抜群だぜ!やるな!!」
「す、すごいわね、、大空、、」
「ははは!嫉妬すんなって!オルキデも超成長してるじゃねえか!この条件ならオレにも勝てるぐらいにはよ!やるぜ!」
そんな中、今日はハ•オウさんと模擬戦をしていた。
師匠が頼んでおいてくれたのだ。
ハ•オウさんも一度共闘した仲だからと、快諾。
それ以来、ちょちょくこれを行なっている。
「あの、すいません。そろそろ時間で。宿に戻ります」
「おう!じゃあな!また明日!」
「が、頑張って」
「今日もありがとうございました!失礼します!」
—-
宿に帰って来た。
その入り口には、亜紀くんが立っている。
「大空さん!お疲れ様です!着替えは用意してありますよ!持って来て!」
店員の男の子は、右橋亜紀、と言うらしい。
名前は聞いたら教えてくれた。
「••••はい。既に準備しておきました。はい」
そして俺に着替えの服を渡して来た人は、俺をナンパしてきた男性だ。
亜紀くんは色々あって、そこら辺をトボトボ歩いていた男性やその他部下多数を雇ったらしい。
皆、住み込みで色々していると聞いた。
「流石!東口さん!無駄に真面目!もう休み時間にしていいよ!」
「••••ち、、はい。分かりました」
男性は舌打ちをしかける。
だが、すぐ去っていく。
一方、亜紀くんは笑顔でこちらを見てきた。
「大空さんは!!これからデートなんですよね!成功すると良いですね!」
「?。何でそう思ったんですか?」
「だって、毎日ファッション誌とデート雑誌を見ていたじゃないですか!服も気合い入ってます!これだけ頑張っているだけで、相手方も大喜びですよ!」
一応、この辺りはちゃんと頑張った。
俺から誘っておいて恥をかかせるのはあれだし。
だが、デートではなかった。
友達と遊ぶ的な感じっぽい。
ぶっちゃけ、これも初めてだった。
「そうだと嬉しいですね。頑張ります」
「行ってらっしゃいませ!」
—-
銭湯に一度寄った後、約束した場所に来る。
集合時間の十五分ぐらい前ではあった。
「おはよう!大空千晴くん!今日はいっぱい奢って貰っちゃうね!」
「おはよう。そこは任せておいて。後、これもあげる」
「え?これ、くれるの?」
謎にやる気がありそうな黒田に、これを渡す。
予め準備しておいたものだ。
「うん。薔薇の花だって。綺麗じゃない?」
薔薇を渡すと、女の人の気分は良くなるらしい。
by色んなデート雑誌。
「え、えー、、まあ一応貰うけど••••」
あれ。
多くの雑誌に書いてあったから、この世界だとそうなのかなと思ったが。
何か微妙な反応。
いや、たまたま黒田に刺さらなかっただけの可能性もある。
次は喜んでくれると良いな。
「ま、まあ!まず!予定を聞こう!ボクをどう楽しませてくれるの!」
「最初は喫茶店の【水玉】?って所に行って、昼ごはんを食べる予定かな。美味しいらしいよ」
「え、それって••••」
「?」
「やっぱりここって••••」
「?。何か嫌いだった?」
「いや、そんな事ないけど••••」
喫茶店の前に着く。
ここは、街の中心部からかなり離れた場所にあった。
周りは閑散としている。
「?。じゃあ入るね」
ドアを開ける。
中も良い感じに穏やかな雰囲気で、落ち着いていた。
ここで店員の人が近づいてくる。
「お二人様ですね。こちらの席にどうぞ」
案内され、窓際の小さい席に座る。
暖かい日差しが、俺たちに当たった。
黒田とは向かい合わせになる。
「やっぱここじゃん••••昼はカップル専用で有名な!」
黒田は体を乗り出し、コソコソとそう言ってくる。
どうしたのだろう。
「?。何か駄目だった?雰囲気もいいし、料理も美味しいよ」
「••••ボクたちそんな仲良くないじゃん••••まあいいよ。奢りだし」
デート雑誌で発見したのだが、駄目そう。
あんまり好みに合わなかったかな。
別にカップルでは無いし、良くない?とは思う。
「無料のドリンクです。是非二人でお飲みください」
丸く大きいグラスに入った飲み物が、テーブルに置かれる。
グラスには二又に分かれたストローが、一つだけ刺さっている。
つまり、完全にカップル用だった。
「うお、こんなのも来るのか」
「流石にボクもこれは、、」
完全に予想外だった。
知り合ったばかりなのに、ここまで行くのは宜しくない。
でも、まだ大丈夫。
「それならメニューを見ない?一人用の飲み物があるはず。奢るよ」
この前、下見した時はあった。
特に林檎ジュースが美味しいのだ。
「お。準備いいねー。どんなのがあるかなー。って」
俺が机の上にメニューを広げる。
だが、二人で飲む用のしかなかった。
「???。前はあったはず、、」
急いでメニューをペラペラ捲る。
飲み物、食事、全てが二人前の物しかない。
何で。
下見した時は、ちゃんと一人用もあったのに。
違う。
当然だ。
これ以上他人を巻き込むのはどうかなと、下見は一人でした。
だから、夜しか下見ができなかったのだ。
不味い。
やっちゃった。
「ごめん。色々勘違いしてて。ここには全部二人用しかないっぽい」
「••••まあ、完全に任せたボクも悪かったよ。初心者って言ってたしね。ボクのおすすめに連れてってあげる」
デート雑誌。
黒田は女性っぽいし、これらを参考にしたら良いかなと思ったが。
駄目そう。
先の予定も大体そこを参考にしたから、アドリブにも限度がある。
とりあえず、残りのジュースをカブ飲みした。
黒田に案内され、路地裏にあるバーにやってきた。
バーの扉にcloseと書かれた板が掛かってはいる。
「わーたしだけー見つめーて!!!••••今のボクの歌!超上手くない!!?親父さん!何点!」
「72点。歌が下手なアイドル一歩手前」
「低い!ひっくすぎでしょ!ボクの歌!大空千晴くんに完敗じゃん!」
「俺の勝ち。いえい」
「煽られた!!だったら次は一番得意な曲!!もう一度!」
そのバーで、カラオケバトルをしている。
カウンターの裏にいる65歳ぐらいの男性に歌を聞いてもらうと、点数を出してくれるのだ?
結果として、バトルに俺は勝った。
V。
「羊肉の小籠包よ~~。美味しいわぁ」
52歳ぐらいの女性が、箸と皿を持って来てくれた。
俺は黒田の熱唱を聞きながら、多分小籠包を食べ始める。
「弾ける希望!でーででーで!かけていく感情!友情!!恋情!愛情!!」
バーに来るのは初めてだ。
だから、黒田がcloseを無視した時は緊張したが。
意外に色々体験が出来ている。
「どう?ノアちゃんと遊ぶのは。楽しい?」
「もご、もごご」
突然、女性が話しかけてきた。
あまり食事中にそれをしないで欲しい。
急いで、小籠包を噛む。
「ノアちゃんは今日のことを相当楽しみにしてたのよね。もっと仲良くなれるかもって。ずっと寝ずにバイトしてるのに、今日だけ休みを取って」
「••••え、そうなんですか」
そこまで。
もう黒田に迷惑を掛けるだけだし、解散にしようと思っていたのに。
予約していた所もあるが、そこも今なら修正出来るから。
「あなたもノアちゃんと良い関係になりたいのよね?でも、今日は失敗した。隠したがりのノアちゃんがわざわざバイト先に来るぐらいだもの」
「••••はい。おっしゃる通りです」
「お節介なおばさんに任せなさい!あの子自分のこと全然話さないから!分からなくても仕方ないわ!このメモにはノアちゃんが好きそうな所を書いたの!持って行きなさい!」
「ありがとうございます。試してみます」
「親父さん!今のは何点!」
「93点。下手くそな演歌歌手レベル」
「やったー!!勝った!!ね!千晴くんはどう思う!?煽った人に負けちゃってさ!ざまぁないね!」
「待って!あれは初めて歌う曲だったから!もう一度やれば変わるから!」
「やって見てくださーい!出来るもんならね!」
「一人二本ずつ、フワフワ羊の串焼きをください」
財布を出し、屋台の店員の人にこう伝える。
屋台はバーのあった路地裏から出てすぐの所にあった。
「はい、フワフワ羊の串焼きをそれぞれ二本、、は?黒田!?黒田!?に連れ!?あのドケチバイトテロ女に!顔良くて奢ってくれる連れ!?」
「え、は?え、酷くない!?ボクの印象なんなんだよ!」
「クソケチバイトテロ女だけど••••」
「もういいよ!早くちょうだい!あっちに行こう!大空千晴くん!」
黒田は走って、座れそうな家の窪みに向かう。
そこに二人で腰掛けた。
「もう、なんなんだよって••••美味しい。これってこんな美味しかったんだ。高いだけあるね!」
「本当にね。美味しい」
串焼きを食べ始める。
黒田は相当喜んでいた。
良かった。
黒田は時々、羊肉の串焼きを食べたそうに見ている、というメモのお陰だ。
ありがたい。
これなら、解散しなくても大丈夫そう。
「でも、やっぱキミ。顔良い扱いなんだね。歩いてるだけなのに、チラチラ見られてるよ。じゃ!これに対する感想をどうぞ!」
「へー。そうかもね。美人で有名な姉ちゃんの弟だったし」
そんな話を聞いたことがある。
クラスメイトの人が美人だーと言っていた。
「そうか。ふーん••••」
と答えたら、黒田は急に悩み始めた。
何故。
もしや地雷を踏んでしまっただろうか。
ホワイトも前、こんな話題に引っかかっていた。
だったら、バーの人から貰った情報を出す。
話を逸らそう。
「だったら動物園に行かない?ここから近いよ」
「いいね!早く行こう!ちょっと気になってたんだよね!」
黒田は笑顔になる。
流石はメモ情報。
良かった。




