↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/293

第二十九話 黒田と夕食





「キミ。動物園を打ち切ってまで、ここに来る?」


「ごめん。予約取っちゃってて」


「うーん••••まあ、奢りだしね!楽しみー!」


 あの後、黒田と三時間近く動物園を見て回った。

 そして今、俺達はレストランに来ている。

 

 ここはプロテクト市の中心部にあるレストラン。

 近くの窓からは、周囲を照らす街灯や光を漏らす闘技場が見える。


 ちょっと高級めな所なので、あらかじめ予約を取っていた。

 だから流石に、ぶっち切りは出来なかったのだ。


「恐れ入りますが、ご注文はこの電話からお願いいたします」


 ウェイトレスの人が、テーブルの上に置いてある電話に手を向ける。

 ついでに、彼女はメニューを俺達の前に置いていく。

 

「電話って!珍しいね!ボク、これで注文するの初めて見たよ!」


「俺も初めてかも。所でまず、何を食べたい感じ?おすすめはこのおすすめコースらしいよ。」


 メニューを開き、黒田に見せる。

 ぶっちゃけここもデート雑誌に書いてあった所で、その上自分でも下調べしてあった。


「ボクもそれにしよっかな!楽しみー!」





「これ美味しい!よく分かんない味するけど!」


 黒田はスプーンで、前菜のゼリーを掬う。

 そのまま、食べる。

 これを見ながら、俺もそのゼリーを口に入れた。


 ゼリーは少ししょっぱめで、旨味も感じる。

 何かの出汁を固めた感じだろうか。

 かなり美味しい。


「さっすがおすすめコース!ボクも他の人におすすめしたくなっちゃう!大空千晴くんみたいにね!なんちゃって!」


「本当にね。これだったら他の料理も期待出来そう」


 こう下調べでは出てこなかったゼリーを食べながら、考える。

 

 俺はこのタイミングで、黒田のプライベートについて聞く予定だった。

 夕食まで行けば、ある程度話せてはいるだろうから。

 その作戦は現在ガタガタになってしまったが。



 しかし、このレストランには来てもらっている。

 条件も揃っていた。

 だったら、迷惑にならない程度にチャレンジしてみよう。


「そう言えば、そっちはこういう所に来た事がないんだ」


「まあそうだね。金もないし」


「寝る暇も無いほどバイトしているって聞いたのに。夢のために貯めている、みたいな感じ?」


「うーん。ま、色々」

 

「そっか」

 

 誤魔化された。

 無理に聞くのも良くないし。

 この話題は諦めよう。



 いや、後一回だけ。

 俺の渡した五十万がある。

 その分の使い方を聞くのは、平気なはず。


「と言う事は、親御さんに仕送りしていたりするの?俺の五十万も全然使って無さそうだけど」


「そんなにボクのこと気になる?••••じゃあさ!キミが恥ずかしくなるぐらいの言葉で!ボクを口説いてみてよ!そしたら教えてあげよっかな!」


 ニヤニヤしながら、黒田がそう言う。


 口説くか。

 最初に聞いたのは俺だし。

 やった事はないが、頑張ろう。


「分かった。やってみる••••••グヘヘへ。ここまで付き合うなんてよ!つまり!そう言うことだよな!ゲヘヘ!一夜の過ち的な事しようぜ!グヘヘへへ!」


「!!?。なんでそれが出力されんだよ!あの闇よりも黒くて美しい髪だーとか!この夜景よりも綺麗な瞳だよーとかさ!もっとこうあるでしょ!!」


 黒田は大笑いし始める。


 俺の見た中で唯一の口説き?成功例だったのに。

 これは駄目だった。

 

「••••まあ、少なくともボク達に家族なんていないよ。生まれた時からずっと一人」

 

「本当に。それならごめん。聞いちゃって」


「キミが謝らなくていいよ。だからこそ自分の為だけに動けるから」


 黒田は平然とそう言う。


 思い返せば、ホワイトも同じ事を口にしていた。

 この世界には、あのホワイトと同種族らしき人もいるっぽい。


 だが、微妙に話を逸らされた気もする。

 知れたしいっかって感じではあるけど。

 

「融解羊のスープです。イチジクのジュレと合わせ、召し上がってください」


「おー!良い匂いのスープ!」


 ウェイトレスの人がやってきて、料理を置く。

 黒田はすぐスプーンを持ち、スープを食べ始めた。


「上手い!でも何これ!スープに許されざる食感!」


「スープなのに食感が羊肉。初めて食う。不思議」





「いやー。美味しかった!あとはデザートだね!」


 主菜の六浪羊のステーキを食べ終わる。

 少し酸っぱいソースが掛かった、絶妙に固い肉のステーキだ。

 結構美味しかった。


「デザートか。どんな感じなんだろう」


 メニューには、デザートはティラミスと書いてあった。


 ティラミス。

 色々あるし、異世界型のティラミスでも出てくるかもしれない。


 これを持ってきて貰う為、俺は電話をかける。

 すぐデザートは来る事になった。


「でさー。大空千晴ちゃんは、もう女装しないのかなー?あんなに可愛い可愛いって他の人から見られてたのにー!」


「もうしない予定だから。触れないで」


「えー!また見たーい!ボクは!」


 俺は、もう女装をする気はない。


 確かに開放感はあって、良かったと思う。

 だが、別にそれ以上でもそれ以下でもない。

 お金も相当かかるし、姉ちゃんやホワイトに言える趣味でもない。

 

「ボクがお金を出してもいい!また見たーい!」


「良いです。本当に」


「えー!残念ー!」


 このタイミングで、ウェイトレスの人が来た。

 黒田の注意が逸れる。


「こちら、デザートのティラミスになります。


「おおお!これ、黒くて白いね!」


 俺達の前に、ティラミスが置かれる。

 これは、白い部分に黒い粉がかかったものだった。

 よく見るティラミスだ。




—




 電話で会計する旨を伝え、レジへ行き、お金を払った。

 二人でニ万円近くした。

 冒険者ギルドで他にも働いていなかったら、かなりキツかっただろう。


 

 こうして、もう俺達の宿屋の近くまで来ていた。

 今度こそ、解散だ。


「今日はありがとう。バーとかまで案内してくたりして。色々学べたし、楽しかった」


「こちらこそ!今日はありがとう!大空千晴くん!楽しかった!」


 自分から人の事を知りにいくことで、より黒田の事が知れた。

 大雑把な性格や家族の事、人間関係や黒田の現状など。

 色々だ。


 これで、俺は黒田に情が生まれた、のだろうか。

 今一分からない。

 まあ、行けたかな。

 


「ま、でも、キミはボクよりバーの人達に感謝しないとね。途中からあの人の情報通りに動いていたでしょ?」


「はい。その通りです。良く分かったというか」


「結構分かりやすかったよ。最初のキミはボク自身のことは考えてなかったから」


 確かに、最初は雑誌に書いてある事をそのまま行っていただけだけだった。

 黒田の言う通りだ。

 反省。


「次他の人とする時には、相手個人がどう思うかもよく考えようね。じゃないと、どんな頑張りも誰の為にもならないからさ。ボクの言えた事じゃないけど」


「分かった。直す。今日は本当にありがとう」


「うん。ならいい。じゃ、最後に、と」


 黒田は突然手を広げ、こちらを見た。

 真っ黒な瞳と目が合う。


「ボクがこれ、何して欲しいって思ってるか分かる?デートの終わりにする事」


 ??。

 何だろう。

 デート終わりにする事。



 もしかして、あれかな。

 デート雑誌で読んだ。


 だが、少し恥ずかしいし、駄目な気もする。

 いやでも、外国だと普通らしいし、この世界でもそう言う感じなのかも。


「分かった。これで良い?」


 俺も手を広げる。


 黒田は頷く。

 合っていたっぽい。

 やったね。


「••••うん。そのまま」


 そのまま、黒田とハグをする。

 温かい。


「••••••ん、ん!??」


 そして、軽く唇を合わせる。

 さっき食べたティラミスの味がした。


「ちょ!ちょっと待って!そこまでじゃない!抱きしめるだけ!ボク!これファーストキスだから!」


「••••ち、違った?」


 もしかして違ったのか。

 勘違いしていた。

 やばい。


「••••••ごめん••••本当に•••••」


 あまりにもこれは洒落にならない。


 というか、俺も家族以外とは初めてだった。

 思ったより失った感もある。


「••••はぁ。ボクの言い回しも悪かったし。まあいいよ」

 

「••••ごめん••••」


「••••ま。誰でも最初は間違うから。ボクももう街を出るのに何やってんだって感じだから。じゃあね。大空千晴くん。今日はキミと遊べて楽しかった。また今度」


「••••ごめん。じゃあね。俺も楽しかった」


 黒田は手を振りながら、去って行く。

 すぐ見えなくなった。




—-




 宿屋の一室に、帰ってきた。

 俺達の部屋だ。

 未だ明かりがついている。


「••••ただいま。ホワイト。そっちは何か収穫あった?」


 ここにいたホワイトは、ベットで寝転び本を読んでいた。

 今日は【プロテクト市歴史 多種多様な魔法の流入の及ぼす影響】と【街中鈍行恋愛模様】を読んでいる。


 

「••••••まあまあ••••そっちは楽しかった?」


「••••楽しかったと言えば楽しかったかな。学べることも多かったし」


 黒田のお陰だ。

 俺の間違ったスケジュールにも付き合ってくれたのもあるし。

 本当にありがたい。


 なのに、最後は失敗してしまった。

 あのミスは洒落にならない。


 黒田には悪い事をした。

 猛省。


「••••••こっちきて」


「?。どうしたの?良いけど」


 ホワイトは起き上がり、ベットに腰掛ける。

 こうして、自分の隣を叩いた。

 何だろうか。


 言われた通り、俺はホワイトの隣に座った。


「••••••わたしをみて」

 

「?。良いよ。どうかしたの?」


 ホワイトの方を向く。

 その白い瞳と、少し見つめ合う。



「ん••••あまい」


「?••••!?。!?!?」


 ホワイトと唇が軽く触れ合う。

 特に味はしなかった。


「わからない事があったら、わたしにきいていい。一緒にかんがえよう」


 目を見て、ホワイトは言う。

 その手首には俺が作った蛇吉柄のミサンガを、付けていた。


 もしかして、俺が凹んでいるのを見て、慰めてくれているのだろうか。


「••••••それと、ちはるが他のとするよていのあること••••余裕があったら••••ふたりでしよう••••••」


 次は顔を逸らし、ホワイトはそう言う。

 声もいつもよりボソボソ気味だ。  


 多分、慰めてくれているっぽい。

 そっか。


「分かった。なるべくそうするね」


 ちょっと、良い気持ちになる。

 自分の為にしてくれて。

 本当にありがたい。

 

「••••うん••••一緒によもう」


 ホワイトはベットにまた寝転がり、本を立てる。

 俺も一緒に寝転がり、その本を見た。


 最近、これをよくやっている。

 一緒に本を読んで、最後には感想を伝え合うのだ。



「へー。五属性魔法と全く同じ事象を起こす違う魔法を使ったとしても、五属性魔法の方が71%近く魔力消費が少ないのか。初めて知った」


「うん。それで、この現象がじんかく面に影響をおよぼしてる可能性があるらしい。その魔法はより魔力を使うから、よりみずからの身をささげてる感じがあって、意識のズレもうまれる。まえのあたりにかいてあった」

 

「面白いね。魔力の消費量の違いが似た行動でも異なる意識を与えるのか。これが歴史に影響も与えるんだね」









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。