十二神将
天一の案と力を借り、私は残る神将と
対話する事ができた。
狐の森、私の故郷……。
半分の神将が揃い、残る神将を天一が
呼び寄せた。
辺りが光に包まれ、光の中に影が浮かぶ。
私は息をのんだ。
胸の宝玉を片手で握り、もう片方の手は
拳をつくる。
緊張感。
表せぬ程、心が震えた。
私の目の前に、神将が並ぶ。
「神将揃いましたね。 使役に下った者達も
改めて主 にご挨拶を……」
その言葉に、神将が従う。
天一、天后、朱雀以外は、人の姿では
現れていない。
言うなれば、初対面にもなる。
厳かな雰囲気の中、十二神将が並んだ。
迫力……。
圧倒されてしまう程の迫力がある。
一気に心が砕けてしまう。
それでも自分を奮い立たせ、神将を見つめ
た。
「十二神将主神、天一。 楠葉を主とする
者」
天一を皮切りに、各々挨拶する。
「十二神将天后」
「十二神将、青龍。 楠葉、改めてご挨拶
致す」
闘将青龍。
真っ青な瞳、黒い髪を逆立て、紅の衣を
まとう。
いつも私を護る四神の一人。
「十二神将、朱雀。 楠葉に会うのは二度目
です」
笑顔で朱雀が言った。
「十二神将、 白虎。 人の姿では初めて
お目にかかる」
四神白虎。
土色の瞳、白銀の髪、銀に輝く衣をまとう。
「十二神将、 玄武」
少し無口そうな感じである。闇を操る。
黒い髪は短く、真の黒に近い衣をまとう。
四神が全員姿を表した。
いつも気配を感じ、私を護る四神。
改めて、感慨深く感じた。
そして……。
「十二神将、六合 初のお目見え
感謝致します」
丁寧な口調でそう言い、頭を下げた。
平和の神。若い青年と言った感じである。
ほとんどの神将も私とさほど年齢は変わらぬ
様にも思えるが、なんせ神の末席に位置
する者……。
相当な時代を生きているのだろう。
六合は、紅い瞳をし、緑の衣をまとい、
体格が良い。
「十二神将、 こう陣 お初に
お目にかかります。 楠葉」
低くも、よく通る声。闘いの神らしい
出で立ち。
金色の瞳、輝く髪を肩までのばし、黄金色
の衣。腰には鱗でできた紐を巻いている。
「十二神将、騰蛇 」
荒々しさが感じる火の神……。
紅い瞳、紅い衣。
背中には羽がある。
闘争心を表に出し、私をじっと見る。
「十二神将、太陰よ。 初めてまして」
白虎と同じ風将。
フワフワと白い衣が風で揺れる。
大きな扇子を手に持ち、微笑む。
黒髪を二つに結び、肩までのばしている。
女神……。
「十二神将、太裳 我は天帝
の文官。 そなたをずっと見ておった」
白髪、長いヒゲ、片手に杖を持つ文官。
土色の衣をまとう。
威厳に満ちた瞳は、私の心を見抜く様で
ある。
「十二神将、 天空。 この日を待って
いました」
顔立ちの良い青年。
土色の衣を短くまとい、物腰柔らかな
雰囲気。
霧や黄砂を操る神……。
「ご挨拶は済みました。 皆、神の末席に
名を連ねる者です。 主として、 神将を
統べるのであれば、 お覚悟が必要。
楠葉、 堂々となさって下さい」
森に天一の声が響く。
うつむいてしまう私を、促す天一。
「私は、 陰陽師楠葉。 この森で生まれ
ました。
運命に従い、 都に迫る危機を救う為に
集まって頂きました。
……私に、 主の器、力は及ばぬ事は分かっております。
しかし、都にはびこる悪しき者に立ち向かう
べく、 皆さんのお力が必要です。
どうか、どうか私の使役に下り、 悪しき
者と闘って下さい……!」
神に向かい、何を言って良いか分からない。
けれど私は、切に願った。
都の為に、十二神将の力が必要だと……。