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いきなり異世界…

都に迫る危機。


なり振りなどかまえない。



「天一から大体の話を聞いている。 我らも天界から都の様子や、楠葉の事など見て、案じている……。 しかしながら、 楠葉の力は、我ら神将を統べるにあらず。

だが、 都の危機を考えるのであれば……。

とやかく悩んでもいれぬ」


闘将である六合が口をひらいた。


私を含め、皆六合の話に耳を傾ける。



「楠葉の力を信じ、 使役に下った天后始めとする他の神将と、運命を共にしようと思う……」



そう言い、私の前に歩み寄る。そして……。


「我、十二神将六合。 楠葉を主とする」


森に響く声。 木々がざわついた。



他の神将は、少しの戸惑いを感じている。


しかし、都の危機や、天帝の后や主神はおろか、四神を使役にしている私。


皆、使役に下る道を選ぶこそ、己の役目。


都の危機もある。


迷いはない。


そう判断したのか、十二神将全てが、私の

前にに膝まづいた。



「楠葉、 そなたを主とする」



神々しい光景が目の前に広がる。


同時に、また新たな決意と恐れ、私の中で

入り混じり、交差した……。



何にせよ、十二神将全てを統べる者になった私。


邸に戻り、お師匠様に報告しなければ。


他の神将も、白虎、朱雀の他は一度天界に

戻った。



私は夢か現か。 そんな感覚でいた。


しっかりしなければ。


そう自分に言い聞かせ、帰路に着いた。


いつもの道を進む。



ふと……。 一条戻り橋にさしかかろうとした時、橋の向こう側に人影を見た。


市女笠を被った、身なりの綺麗な人物であろう女の人が佇んでいた。



特に気にも留めず、私は橋の中ほどまで歩みを進めた。




と……。


橋の向こう側の人物がこちらを向き、何やら声を発してきた。


距離があったので、聞き取れない。


何やら私に向かって声を発しているのか。


しかし、顔見知りではない……。


私はそのまま歩く。




丁度、その人物との距離が近くなった時


「楠葉様でいらっしゃいますね……?」


私を見て、はっきり声をかけた。



市女笠から少しだけ、顔が見えたが、やはり知らない人物だ。


一歩、私は後方へ下がった。


気を抜いてはいけない。


「どちら様で……?」



良からぬ気を感じた。



「突然にお声がけ、 ご無礼承知。貴女様が陰陽師の見習いと聞きまして、 お声をおかけ致しました……」



何故私の事を知っているのか。



「……何か、ご用件がおありでしょうか?」


私は、己の素性を和えては認めずに、その人物に尋ねた。



白虎、朱雀の気配を感じるが、気を緩めてはいけない。



「四神を統べるお方……。 お噂を耳に致しまして、 お待ち申しておりました……」



妙である。


私が今日、この道を通る事を知っていたのか

……。



いいや、 知らないはず。



名前を承知しているのは別として、四神を

使役している事など、誰も知らないはず。



私はこの人物に集中した。



「四神を統べるお方、 どれ程のお力をお持ちしているか。 興味を覚えまして……」



市女笠から見える口元が、薄く笑っている

様な……。



私の中に緊張が走る。



(落ち着きなさい)



朱雀の声がした。



私は荒くなりつつ呼吸を整える。



「色々とご存知のご様子……。 しかしながら、 先を急ぐ身。 失礼致します……」



胸の動悸を抑えつつ、私はその人物の前を

横切ろうとした。



その時……。



「四神を統べる者。 この世になければ、何の意味もなし……」



小さな声が耳に響く。



目の前を横切る私に向かい、不敵に笑った。



瞬間ーー



私は何かに吸い込まれるかの様に、身体の

自由を奪われてしまった。


身体がちぎれそう……。


大きな何かに包まれた……。


強い何かにより、呪も使えない。


声すら出ない……。自分が倒れていくのが分かる。


遠のく意識の中、あの人物の笑う声が微かに聴こえる様な……。





……身体に走った衝撃。


私は虚ろ気に意識を取り戻し、呆けたままであったが、ゆっくり身体をお越し立ち上がろうとした……。




突然、 私の耳に凄まじい音が響き、思わず両手で耳を塞ぎ、思わずうずくまってしまった。



音がやみ、再び立ち上がろうとし、橋につかまった。



……。



何かがおかしい?


私は膝をついたまま、辺りを見渡す。





目の前に映る物に愕然となった……。



「こ、ここは……」



先ほどの人物はもちろん姿などない。


それどころか、自分の姿があの橋から消えてしまったと言うべきか。



私の目の前に広がる景色は、私が知る物、一つすらない。



自分がいたはずの橋も、様相がまるで違っていて、夢を見ているのか。


何もかもが説明すらできない物であった。




「ここは、 何処……。 誰か……」



絞り出した声は、再び凄まじい音にかき消されてしまった。



橋の上を歩く人達、私を不思議そうに見ていく……。



見た事もない衣を皆着ていた。



男の人は、烏帽子など被っていない。


女の人においては、ヒラヒラした衣から、

恥ずかしくないのか、足を出している。



市女笠も被らず……。



(どうやら、異世界に飛ばされたらしい)



ほっとする声が聴こえた。



(白虎!)



目頭が熱くなったが、白虎の言葉に呆然となった……。



(異世界……。 ですか? それは……!)


(そう。 平安の世界よりもずっと後の世)



朱雀が話した。



(あの……。 それは? )



状況を呑み込めない。



平安の世ではない世界に来てしまった?



頭の中が混乱する。



一体何故、どうして……。



その場から動く事すらできなくなってしまった。







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