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迷いと決意

神将半分を、一応は使役に下してはいる。


しかし、あちらの力が相当な物であれば、

太刀打ちなどは難しくなる……。


(やはり、十二神将全て揃わねば……)


青龍の突然の言葉。


(全て下すと言うのですか……⁉︎ 半分で

何とかなると……!)


語気を強めて食い下がる。


(楠葉、少し落ち着け……。 俺たちも あの時はまあ、大丈夫だろうと思った。

しかし、今日の事で奴らはまだ本気では

ないと感じた……。 様子を伺いつつ、仕掛け

てきている。 そうなるとやはり、神将全て

の力を持ってかからねば、 勝算はない)


白虎が弱気な発言をした。


(あちらには勝てぬと……?)


私は冷静さを保つ。


( 今日のは小者だ。 問題は黒幕。 左大臣を

操り、 都を乗っ取らんと画策している

奴だ。 色々厄介な奴らが出てくるから、

忘れていたが……)


青龍の言う通りである。


(では十二神将全てを使役すれば、 勝てると

言うのですか……?)


(……)


(楠葉の器では、 まあ難しいわね。 全て

使役しろなんて。 でも、 方法はそれしか

ない……)


朱雀がさらりと私に現実を突き付けた。


使役すれば勝てる訳ではなさそうだ。

器、私の主としての力が伴ってからこその

神将……。


重い空気が流れた……。



翌朝ーー。


「おや? どうしました? 暗い顔をして」


朝げの時間、お師匠様が尋ねた。


「い、いえ……。 申し訳ありません。 少し

考え事をしていました」


「しっかり食べなければ、 身体に障りま

すよ?」


優しい眼差しで気遣ってくれた。



庭を見やり 「今日も気持ちのいい陽気です

ねぇ。 桜が咲き始めてきました」


のんびりと言った。


都に迫る危機を、まるで感じさせない晴れた

空。春の風が庭の花々を揺らす。


土の中から新しい命を宿した芽が、もうすぐ

顔を出すだろう。


花と土の香りがほのかに部屋に漂う。


「さて、 これからどうした物か……。

確かに神将半分を使役し、楠葉の持つ力も

高まりつつあります。 しかし、 まだ足りないのもしかり……。 神将も、主の力も」


お椀に箸を置きながら、お師匠が私を見て

言った。


「青龍や朱雀の言う通りです。 色々と

足りません……」


うつむいてしまう。


「現実は現実です。 天一にお話してみては

いかがでしょう? 神将の事は神将に聞かねば

分かりませんし」


その通り。


なんにせよ、尋ねなければ話は進まない。


お任せではあるが、分からない事は聞く

しかない。



「平和に見えるこの都に、 悪しき物が

はびこる。 止めねばなりません」


お師匠様は庭を眺め、真剣な顔をした。



私は後片付けの後、自室にこもった。


(神将天一、 私に主としての力が足りぬのは

分かっています。 しかし、 一刻と都に

危機が迫っています。 どうか私にその力を

貸して下さい……)



神将天一に問いかける。


しばしの沈黙……。そして、天一の気配が

した。


(楠葉、貴女の主としての器、まだまだ

未完成です。 ですが、仰る通り都の危機は

勢いを増しています。

時を待っている場合ではありません……。

残る神将に自ら対話をしてみては……?

神将も、事態は承知しています。けれど、

貴女が主として見込みのある者か、 思案しているのも事実……。 まずは対話をしてみる

事が大切と思います)



迫りくる危機と、己の使命。

悩むが、後戻りはできない。

進むのみ……。



しかし、弱気にもなる。

認めてもらえるのか。


不安な気持ちが胸に宿る。


最近は、こんな気持ちばかりだ。



「おや、 また暗い顔ですねぇ」


私の顔を覗き込み、お師匠様が言った。


「色々とありまして……」

「器ですか……。 楠葉に求められる物は

多過ぎます。 しかし、 使命でもある。

主として神将を使役し、 都を護る。

混乱し、悩むのも無理ありません。

ですが……。 本気で神将を統べるのであれ

ば、 弱気な気持ちではいけません。

不思議な力、運命(さだめ) に従う者として、

自分を信じるのです」



お師匠様の言葉に、強い思いを感じた。

私の中に芽生えた気持ち。


忘れてはいけない……。


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