鞍馬山。
私達はひたすら鞍馬山を目指し歩いた。
そして日暮れ前、やっとの事で山の付近に辿り着いた。
閑散とした風景、寂しげな山。春の美しき光景とはまるで違う山……。これも天狗の仕業なのであろうか。
「ようやく着きましたね」
「何処にいるのかな? 天狗」
山を見上げお師匠様と晴保様が口を開く。
何とも気楽な物の言い方であった。
「さて……、登りましょう」
そう言ったお師匠様の顔が急に真剣になる。
「あちらからお迎えに来て頂けた様ですね……」
扇子をパチンと閉じ静かに言った。
「わざわざ迎えに来てくれたんだ。 ご苦労様だね」
山の方を見やると、僧の形をした大きな男と、陰陽師らしき男がこちらを向いて立っているではないか。
全身黒ずくめの僧らしき男は、威嚇する様に睨んでいる。
「我らの邪魔立て致す奴等はそなたらか?」
「邪魔立てなどしてはおりませぬ。 都を守る為に参上致しました」
涼しげな声でお師匠様が話した。
濃紫色の衣をまとった陰陽師らしき男は 「それが邪魔立て致すと言う事よ」
「失礼だけど邪魔してるのはそっちだよ?」
「黙れ。 今すぐ立ち去られよ」
「そうは行きません。 申し訳ないですがそこを退いて頂けますか?」
「何⁉︎ 立ち去らぬのか? なれば致し方あるまい。 力づくで去ぬかせるとするか。 なぁ、兄弟」
「ほう。 お二人はご兄弟ですか? 僧と陰陽師とお見受け致しましたが……」
「どうでも良い。 怪我せぬうちに帰れば良いものよ……」
私は素早く四神に語りかけ、闘いに備えた。
「ですから帰りませぬ。 帰れと言うなら……」
「力づくで倒すまで……」
お師匠様と晴保様が口を揃えた。
「どうするよ、鬼形 奴らは帰らぬと申すが」
「鬼丸 よ。 我らで相手を致そうぞ」
鬼形と名乗った陰陽師が、鬼丸と呼んだ僧に話しかけた。
「では……」
そう言うや否や鬼形と鬼丸がじりじりこちらに向かってくる。
「お師匠様、我々も……」
私の声かけに頷き、晴保様と印を結び、何やら呪を唱え始めた。
「臨・兵・闘・者・階・陣・列・在・前」
九字護身方。
晴保様に呪をぶつける鬼丸をかわす。
「甘いね」
ひらり身を翻し、鬼丸に呪を飛ばした。
呪と呪とのぶつかり合いの中、私は四神を配置し加勢させるが、中々思う様に動けない。
凄まじい光と轟音がとどろき、お師匠様と晴保様も呪を繰り返す。
ようやく鬼形が力強い呪で動きを封じこまれた。
すかさず青龍が炎を吐き、白虎が砂を巻き上げ、完全に息の根を止めた。
「おのれ!」
鬼丸の叫び虚しく鬼形がやられ、やがて鬼丸もお師匠様により縛り上げられた。
「観念しなさい。 貴方の主の所へ行くのを止めたからですよ」
砂を払いながらお師匠様が鬼丸に冷ややかな声で言った。
「うぬらめ……」
「さて……。 行きましょうか」
そう言うや私達は再び歩き始めた。
今度は本当に天狗の元へ……。




