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時間停止の少女、魔法学校に入学する。  作者: エスパトローネ
エリカ・ホワイトと変わらずの石

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7 買い物と親戚

 店を出ると、アルバンがコーンアイス3つを両手に持ちながら、私たちのことを待っていた。


「ほれ、このミントはエリカの分、このバニラはサミーの分――そして、このチョコはおいらの分だ。今日は暑いからな」


 アルバンはそう言うと、大きなアイスクリームを手渡してくれた。

 私たちはすぐそばのベンチに座り、アイスを少しずつ舐め始める。

 サミーは溶けかけたアイスに焦ったのか、途中から急いでかぶりついていた。


「そんな急がなくていいぞ」


 アルバンが優しく言うが、サミーはアイスに夢中だった。


 ▽ ▽ ▽


 次に買いに行ったのは、羊皮紙と羽ペンだった。

 文房具店には魔法が掛かっている羽ペンやインク等も置いてあり、サミーは虹色に光るインクを見つけては、意気揚々と購入していた。

 私はというと、こんなところで無駄遣いもできないため、普通に学校指定の羊皮紙と羽ペン、インクを購入する。

 それにしても――


(普段使いのノート代わりに、羊皮紙を使うなんて――とんでもない贅沢ね)


 羊皮紙は文字通り羊の皮をなめし、薄く削って作られる。

 そのため、マジックレスの世界で一般的なパルプ紙より高価なはずだが――ここの羊皮紙は、あまりにも安価だった。


 まぁ、安すぎたら商売にならないだろうし。

 魔法かなんかで、コストを大幅に削減でもしているのだろう。

 そう考えておこう。


 羊皮紙、羽ペンときたら次は教科書だ。

 フローラ&ブライト書店という本屋には、アルバンですら手の届かないところまで、びっしりと本がつみあげられていた。

 どうやって手に取るのかと疑問に思ったが、欲しいと思ったら下に降りてくるようである。


 そう思っていると、書店の一角に「お買い得! ハルフォード新入生セット」と書かれたPOPを見つけた。

 どうやら、お安くまとめ買いできるようになっているようだ。


 私はサミーに声をかけようと見回すが、当のサミーは分厚い本に顔をうずめていた。

 とりあえず近づき、声を掛ける。


「みてサミー、あの本お買い得そうよ?」


 私はサミーの肩をポンポンと叩き、声をかける。


「あー、うん」


 サミーは返事こそしたものの、どこか上の空だった。

 何がそんなに面白いのだろうと思い、私は本の表紙を見た。


 表紙には、「呪いのかけ方、解き方~友人をうっとりさせ、最新の復讐法で敵を困らせよう~」と書かれていた。


 呪文の本のようだが、いかんせんタイトルが物騒すぎる。

 そんなにニールに腹を立てているのか――と思ったが、まあうまくいくとは思えない。

 魔法界を知ってすぐの子が、呪いをマスターできるわけがないだろう。

 本当にそうなりかけたとして、その時止めればいい。


 それから、私は雑に紐で括られている教科書のセットを、レジのもとまで持っていった。

 お金を支払うと、アルバンが言った。


「サミー、買うものを買ったら次に向かうぞ? まだ買うものは、たくさんあるからな」


 アルバンはサミーの首根っこを掴むと、そのままレジへと運んでいった。

 サミーは例の物騒な本も買おうとしていたが、アルバンに止められたようだ。


「僕、どうやってダミアンに呪いをかけたらいいか考えてたんだ」


 店を出たあと、サミーはそう言って抗議した。

 アルバンはサミーの頭に手をのせ、ゆっくりとたしなめた。


「……それが悪いとは言わんが、あの本はお前さんにはまだ早い。それに、マジックレスの世界ではよっぽどのことがない限り魔法を使っちゃいかんのだ」


 アルバンはサミーの背中をバンバン叩き、次の店へと急かす。

 サミーは少々心残りがありそうだったが、アルバンに背中を叩かれては歩かざるを得ないようだった。


「ねえサミー、ダミアンって誰?」


 ついきになった私は、背中をさすっているサミーに尋ねた。


「僕のいとこだよ。一緒に住んでる」

「……その様子だと、仲はよくなさそうね」

「最悪だよ」


 サミーは忌々しげに首を振った。

 どうやらサミーが預けられている親戚は、彼のことをよく思っていないようだ。

 まあ――やせ細った体と、みすぼらしい服装を見るに――「ただ仲が悪い」、だけでは説明不足だろうが。


 その後も大鍋や秤、望遠鏡など手紙に書かれている物を購入していく。


 私はリストを上から辿り、買っていないものを確認した。


「あと買ってないのは……杖ね。アルバンさん、杖はどこで買えますか?」

「杖はアンダーソンの店に限る。ここらでは一番の杖職人だ。っと、そういえばまだおまえさんらに入学祝を買うておらんかったな」

「そんな、案内までしていただいているのに」

「それにサミー、おまえさんは今日誕生日じゃないか。……そうだ。サミーにはフクロウなんてどうだ? うん、それがいい。フクロウだ。他の動物に比べて役に立つ。手紙なんかを運んでくるしな。エリカもフクロウでいいか?」


 アルバンは名案だと言わんばかりに大きな手をポンと叩く。

 サミーは目を輝かせていたが、私の脳裏に昨日の惨状がよぎった。


「お気持ちは嬉しいんですが……私はフクロウは遠慮します。あまり良いイメージがないので」

「ん? そうか……ならエリカは別のもんだな。ほれ、サミーこっちだ」


 アルバンはサミーを引っ張り、フクロウを専門に扱っている店に入っていく。

 二十分もしないうちに、サミーは大きな鳥かごを抱えて店から出てきた。

 籠の中には、雪のように真っ白なフクロウが、羽に顔をうずめてぐっすりと寝ている。


「あ、ありがとう、アルバン」

「礼はいらん。さて、次はエリカだが……」

「アルバンさん、私は大丈夫です。別に誕生日というわけでもありませんし」


 私へのプレゼントを考え込むアルバンに対し、私はそう言った。


「そうか? でもそれじゃあ少し不公平じゃないか?」

「それでは私の誕生日が来たら、その時プレゼントをください。今プレゼントを貰って、誕生日にまた貰ったら今度はサミーが不公平ですので」

「お? そうか……確かにそうかもしれん」


 アルバンは納得したのか、気を取り直して言った。


「それじゃあ最後に杖だな。アンダーソンの店に向かおう」

ここまでお読みいただきありがとうございました。

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