25 ガチャの価値は
というわけで色々あったがホムンクルスの作成に取りかかる。
二億コインとLv.99の傷薬を【瞳のガチャガチャ】の中に投入し、レバーを回した。
「あの傷薬……、我が家の宝刀よりレベルが倍以上高いんだ」
スティーヴンが悲しいことを呟いた。
顔を見たらむしろ清々しく、ぜんぜん悲壮感とかは無かったが。
「ホムンクルスってどんなのかしらね? まあでもきっと生まれたてのスライムみたいなフラフラで弱々なのに決まってんでしょうけど。仕方ないからスーパーエリート上位種のこのフレイア様が、人外種のよしみで色々教えてあげようかしらね」
「え? スーパーエリートホームレスのフレイア様?」
「言ってないわよッ! だれがホームレスなの!? 泣くわよ? 泣いちゃうわよ!?」
「だいいち教えるって何を教えるんだよ?」
フレイアってあんまりものを知らなそうだけど。
「ふふふ、私には超必殺魔法である火炎魔法があるの! なんとレベル7の紅蓮炎弾を使えるのよ! すごいでしょ!」
「あー、俺をぶっ殺そうとしたあの時の魔法ね」
「わ、悪かったわよ! いつまでいじめるの! ……それにあんたにとっては違うかもだけど、一般的にはレベル7てほぼ最高ランクの魔法なんだから! 教えるから! ホムンクルスにそれを教えてあげたいの! それでセンセーって言われるの!」
どうやら近ごろみんなにイジメられすぎてて誰かに慕われたくて仕方ないらしい。
まあ好きにしろよ。
――ガチャガチャガチャガチャ。
なにやら楽しげなギミック音と手応えがしたかと思えば、直後――
ガチャン。
と、丸いカプセルが輩出された。
俺はそれを拾い、切れ目があるのに気がついて、半分に開いてみる。
すると、光が溢れ、中から何かが飛びだしてきた。
飛びだしてきたそれは女の子だった。
少し耳が尖っている。肌は白く顔立ちは可愛らしい。髪は長く、輝く鋼色である。
服装はなぜかメイド服を着ていて、胸が大きく、胸元は開いていた。
「か、かわい……」
そしてエロい。そこはかとなく。
「「むぅっ――!」」
近くで二名ほど何かしら不機嫌そうな呻きをあげていたが、まったく気にならないレベルで可愛い。そしてエロい。
皆の注目の元、ホムンクルスはゆっくりと立ち上がり、そしてこちらを見た。
俺と目線が合った。
「へえーホムンクルスって、感じぜんぜんしないけど……。すごいじゃない、ほんとに普通の人間と変わらないわ」
フレイアが近寄っていって嬉しげにホムンクルスの肩を叩く。
どうやら自分の弟子になる奴が至極真っ当な姿恰好をしていることが嬉しいらしい。
「私フレイアよ、よろしくね」
ホムンクルスはそのフレイアの方を見て、真顔で告げた。
「とても気色悪いので気安く触らないでくれますか」
「え……」
しーん。
重苦しい雰囲気に包まれる。
「あ、あはは、ずいぶんと気丈な子のようだね」
間を取り持つようにスティーヴン。
「気色わる。わたくしのことについて言及しないでもらえます?」
一閃! なんかとんでもない奴が出てきちゃったぞ。
それから誰も一閃されるのが怖くて口を開かなくなる。
みんなが非難気に俺の方を見てきた。
おまえが喋れ――
そういう圧力を感じる。
う……、一閃されたくない。されたくないが……しかし制作者として仕方がない。
「よ、よお……、はじゅめまして」
緊張のあまり思いっきり噛んでしまった。
彼女はゴゴゴゴゴと迫力をもってこちらに視線をやり、そして口を開く。
「ふふっ、とってもお可愛らしい。はじゅめましてっ。どうですか? わたくしも真似してみましたっ」
最高の笑顔と愛想が返ってきた。
みんなから別の意味の非難の視線も飛んできた。
「あなたがご主人様ですねっ。ふつつか者ですが、どうぞ末永く、よしなに」
ホムンクルスは礼儀正しく、スカートの裾を持ち、挨拶をした。
前屈みになるので、とっても大きなものがはっきりと見える。
「どうしました? わたくしのここがお気に召してくれたのですか?」
彼女は俺の視線に気付いたらしく、両腕で挟んで、更に見やすいような姿勢をとってくれた。
とても嬉しい。嬉しいのだが周りの視線が気まずすぎるのでとりあえずやめてくれますか。
「にーちゃんがデレデレしてるー」
「お兄様、そんなに大きいのが良いのでしたらアリサのがございます! 見てください!」
「あら、お可愛らしい、マスターのご家族のかたですね? どうぞ、よろしくお願いいたします」
ホムンクルスは存外にも俺の家族に笑顔を振りまいた。
どうやら何やら俺たちには見えない何かで、俺の血縁関係を判別できるらしい。
なんだろう、魔力とか? 案外個々人で色とかなにやらで個性があるのかもしれん。
ていうか、アリサ、公衆の面前でそういうはしたないポーズをとるのはやめなさい。
「あ、あの……」
「金輪際話しかけないでと先ほどあなたには申し上げたばかりですが、なにか?」
ああっフレイアが半泣きになった!
ホムンクルスは命じれば、自身のスペックをこちらに明示できるらしい。
「はい、どうぞご覧になってくださいませっ」
彼女の目の前に魔術表示があらわれる。
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◎種族:エルフとサラマンダーの混血種
◎ステータス
STR《腕力》 :BB=5
TEC《技術》 :SS=5
INT《知力》 :SSS=5
CON《信仰》 :E
VIT《体力》 :AAA=5
AGI《俊敏》 :E
◎装備
防具頭:呪われたリボン(Lv.99)
胴:呪われたメイド服(Lv.99)
脚:呪われたブーツ(Lv.99)
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「……既にアホみたいに強いんですけど」
フレイアがなぜか非難気に呻いた。
「エルフとサラマンダーのハーフなんだな」
「はい、マスター。それによりエルフの高TECとサラマンダーの高INTを併せ持っています」
なるほど、雑種強勢ってやつか。
「……ていうか、――あ。」
更に見ていくと、次のような表記も見つかった。
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◎所持スキル
【FIRE Class8・炎獄星】
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「…………………………レベル、はち」
皆がそっと、フレイアを見た。
「…………はち」
先ほどまで生まれたてのひよっこに自慢のレベルセブン魔法を教えて気持ちよくなるんだと息巻いていたフレイアは、真っ白な灰みたいになっていた。
「えと……元気出せよ。ほら、一応レベルセブンの魔法は未修得だし、教えてやれることは出来るぞ…………一応」
「マスターがそう言うのでしたら、教えてもらってやっても構いませんよ。わたくしの最高魔法にはなり得ませんが、セブンは未修得ですし。一応」
「ええーん一応一応ってうっさいのよ! えええーん! 教えるの楽しみにしてたのにいい!! ばかあー!! どーせ私なんて、どーせ私なんてえー!!」
フレイアは大泣きして走り去っていった。
雲の遠くの端でうずくまっている。しばらくソッとしておこう。
「それにしてもホント、むちゃくちゃ強いな、おまえ」
「ありがとうございます。けれどそれもマスターのお力です」
「というと?」
「わたくしたちホムンクルスのスペックは、マスターのLUCを参照し、抽選テーブルを決定しますので」
「昔からにーちゃんは引きが強いからなー」
「さすがです、お兄様」
お決まりのよく分かっていないけど雰囲気で褒め称えてくる妹弟ズ。
俺もよく分かってないけど納得したふりで喜んでおくことにした。
「良い機会だし、もう一体ほど作っておこうかな?」
「え? ちょっと待ってくれ、我が主。それは良い考えだがしかし、ホムンクルス生成には二億コインとレベル99アイテムが必要なはずだろ? そしてキミが持っていたそれはさっき使ってしまったはずだ。もしかすると俺を当てにしてくれているのかもしれないが、残念ながら如何にキング家といえども二億コインなんてとても……いや、そもそもレベル99のアイテムなんてもうこの世のどこに」
「よし、コインとアイテム、準備完了!」
「まだもってたんかーい!!」
スティーヴンがいつになくワンパクなツッコミをしてきた。
余程驚いたらしい。
「キミは一体いくら持っているんだい? そもそもなんでレベル99をそんなにポンポン――……いや、いつまでも驚いていても仕方ないな。いいかげん慣れなくては。OK、作ってくれ」
ハアハアと荒い息で彼はGOサインを出した。
俺はガチャガチャする。
すぱああーん。
生まれた。
「我がマスターよ、私はホムンクルス。どうぞご自由に寵愛くださいませ」
今度はやたら勇ましいのが生まれた。
黒髪ポニーテールで、全体的にスラッとしている、やっぱりメイド服を着た美人顔だ。
スペックを確認すると、先ほどの彼女とは違い、体術寄りの性能をしていた。




