24 二億コインとレベル99
フレイアとスティーヴンを家の建設予定地――というか雲、に案内した。
下から「あの雲だよ」と教えると、ぽかんとされたけど、上にあげたらものすごく興奮しだした。
「ここをクランの拠点にしないか?」
スティーヴンに言われて、いやだからここ自宅建設地だってと思ったけど、でも案外それも良い気がしてきた。
「というわけで家とは別に雲地をもうひとつ作って、そこにクラン拠点を建てたいと思います!!」
妹弟ズとミネットを含めたみんなに宣言する。
「それは、いいけど……スティーヴはともかく、なんでフレイアがここにいるの」
もの凄く不快そうにミネット。
フレイアは胸を張って
「手伝ってあげるわ! ありがたく思いなさいよね!」
と言いだしてミネットはイラッとしていたが、俺がこっそり
「家も無く、貧乏神と評判がたち、それでもプライドだけは捨てきれないおかげで行く当てがどこにもない可哀想な子なんだよ」
と教えてあげたら
「なら……もう、仕方ないね」
ってすぐに納得してくれた。
基本的に俺の周りは良い奴しかいないようだな。
「でも残念ながらこのサラマンダーは労働力としてはあんまり役に立たなそう」
ミネットは率直な感想を述べた。
それには俺も素直に同意だ。
「たしかにな。何も出来なそうな感じするよな」
「にーちゃん、つまりこの人、態度はデカいのに役立たずってことなの?」
「しっ! クレイグ、違うわよ。役立たずじゃなくて、邪魔者なの。わかる? 役立たずはただの無害、でもこの人はその上お兄様を馬鹿にするしうるさいから有害なのよ? わかる?」
「なんかあんたの周りのやつみんな私にヒドいんだけど!?」
まあ身から出た錆だな、諦めろ。
しかもわりとどれも的をついた意見だぞ。
うーん、でもそうだな。
スティーヴンも戦いならともかく、その他の肉体労働が得意って感じにも見えないし。 ちゃんとした労働力は他に用意する必要があるだろう。
特に当初より建設するものも増えたわけなんだし。
でもまた酒場で人集めってのもなー……。
「うーん……」
そんなこんなで、俺は悩みながらなにか良い方法はないか亜空間ポケットの中を探ってみた。
「んっ? これは――」
「えっきゃっなになに――? 今ソレあんたどこから出してきたの?」
なんとなく良さげに見えたアイテムを中からとりだしたら、お決まりの反応をくれるフレイア。
「……巨大なフラスコ……みたいだね」
スティーヴンの言うとおり、俺が出したのは、巨大な箱に、巨大なフラスコが付いている代物だった。
あと一番下にはレバーみたいなものも付いている。
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【瞳のガチャガチャ】
◎設備系アイテム
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という名前であるらしい。また設備系のアイテムか。
えーと、それで効果は……?
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◎200,000,000コイン及び、Lv.99のアイテムを使用し、魔工生命を生成する。
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「ホムンクルス!?」
ミネットが驚く。
またヴァンちゃんが変なの出したあーって顔をしていた。
「ホムンクルスか……それは思いつけなかった。でも良い案な気がするな。よく働いてくれそうだし」
「フツーはホムンクルスなんて作れないから、思いつけなくて当然っていうか、思いつく必要がないんだけよ。もー帰ってきてからのヴァンちゃんにはほんとビックリさせてくるなあー」
「え、いや、その程度のリアクションなの? ミネット、あんたも十分すでにおかしいわよ。このぶっ飛んだアイテムいったいなんなわけ? どこでこんな貴重なものを手に入れたのよ?」
「そもそも、いやそもそもだ、二億コインってなんだい? Lv.99のアイテムなんて俺ですら見たことないし、この世のどこにも存在しな――」
「コインはこれ……っと。あとまあ、Lv.99アイテムは適当に使わなそうなの選んどけばいっか。……それで、ここにコインとアイテムを入れれば良いみたいだな。――ほいっと」
亜空間ポケットから適当なのをチョイスしてガチャガチャに入れようとする俺を、スティーヴンとフレイアが止める。
「え――なに、ちょっと待ちなさいよ! なんで二億コインなんてぽんっと出せんの――ってか、そのアイテム見せなさいよ!」
「お、俺も良いかな? ちょ、ちょっと……」
二人は俺の出したアイテムを協会のブレスレットで確認し、そして唖然とした。
「れ、レベル99の傷薬……?」
「これ、どこで……?」
「うーん?」
俺は分からないので素直に首を傾げた。
「そこらへんのモンスター倒してた時とかに出たのかも?」
呪われてないし、多分こっち来てからっぽい気がした。
「「いやいやいやいやいやいいやんなバカな!」」
揃って同じような顔で同じように手を横に振る二人。すごい息ピッタリだ。
「いいかいヴァンくん……、いやリーダー! 我が主よ!」
「どれかにひとつにしてくれ」
「我が主!」
それにするのか。……まあいいけど。
「いいかい、俺のキング家に代々伝わるこの誉れ高き”紅蓮の炎熱剣”――”ファイアブランドー”ですら、Lv.47なんだ!」
「え? ……47? たった?」
嘘だろ?
なんで47なんだよ。
そこら辺のやつ適当に倒すだけでも普通に99のが出るじゃん。
「本当だ、嘘じゃない」
スティーヴンの浪打だった形状の長剣――それを確認してみたら、たしかに47と表示されていた。
「……しょぼくね?」
「それさすがに傷つく!」
「すまん!」
「いいよ!」
ちなみにそのファイアブランドーだが、付与スキルも見てみたら、なんと、
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【与スタン値上昇】:攻撃ヒット時に与えるスタン値が1%上昇
【火炎属性追加】:攻撃に7%の火炎属性を追加する。
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の二つだけだった。
しかも数値があまりに低い。
1%と7%って……。もはや誤差の範囲じゃん。意味あるのかそれ。
「ふふふ、このファイアブランドーの自慢は【火炎属性追加】特性が付いていることだ。その昔、国を襲った巨大レッドスネイルがいたんだがそれを先代が倒し、国を救った英雄となった。その際にドロップしたのがこの剣なのさ。それ以来、この剣を超える代物は出たことがない」
自慢げにそう述べるスティーヴン。
「……たしかに、素晴らしい一品ね。さすがはキング家に伝えられし剣。レベルが47で、それに二つも特性が付いてる。しかもそのひとつがなんと属性追加だなんて。そうそうお目にかかれるものじゃないわ」
「だろう?」
フレイアが冷静に評価し、それに対しスティーヴンがニッと歯茎を見せる。
俺はそのやり取りを前に、横のフレイアに助けを求めた。
正直いって、ちょっとしたカルチャーショックに陥っていたのだ。
なんていうか、俺の知っている装備談義ではない。
かつて師匠と交わしていた時には、属性追加が一つ付いたくらいでわざわざ大騒ぎしない。
そもそもそれがスタート地点なのだ。
武器において最大のダメージソースとなる特性は【属性追加】と【天魔師】の二つである。
【○○の天魔師】:攻撃にそれぞれ25%の○○&○○属性を追加する。
【○○属性追加】:攻撃に50%の○○属性を追加する。
故に、まずそれら揃ってが付いてなければ問題外で即廃棄対象となる。まあ俺は一度もそんなのは出たことなかったけど。師匠が結構出してた。しかもどちらかでも数値が40を切ってたらゴミ。即廃棄。
で、その条件満たしてやっと次の本番とも言える厳選ラインに立てる。
【物理ダメージ上昇】【会心の心得】【確率防御無視】【STR上昇】等から最低二つは欲しい。
【物理ダメージ上昇】:基礎ダメージ値に50%の物理ダメージを加算する。
【会心の心得】:***のA以上の者にクリティカル発生率を20%上昇、クリティカル時のダメージを30%増幅する効果を与える。
【STR上昇】:STRを50ランク上昇。
特に【会心の心得】は別の特性との兼ね合いで爆発的にダメージを増やせるので、入ってなければ高確率で廃棄対象となる。
でも【会心の心得】はどうやら上位特性であるらしく、師匠曰くそうそう出るものじゃないので、普通は【クリティカル率上昇】を狙うらしい。
という感じ。
まとめると、俺たちは天の楼閣では、【属性追加】【天魔師】を揃え、それに【会心の心得】を重ねられた上で、さらにその上に有益特性をどれだけ付けられるか――
という厳選を行っていた。
つまり厳選レベルが、違いすぎる。
率直にいえば、今目の前で彼らが行っている会話は、そのレベルが低すぎた。
「……そのファイアブランドーは、間違いなく、滅多にお目にかかれないであろう名品だよ」
既にミネットは、なんとなく察しているのだろう。
諭すように、しかし端的に、そう述べた。
「そうか」
――これは神器だ。いや奇跡と言ってしまってもいい。まさかこんな、究極装備が……しかもたった一度の試行で……?
かつて師匠が言っていた台詞の意味が、今初めて理解できた。
「我が主、是非、キミのその槍も見せてはくれないだろうか? きっとその槍の性能も捨てたものではないはずだ」
「…………いいよ」
俺は見せることにした。
いつかのミネットの言葉もあったし、実際彼女は見せない方がきっと良いよ――といったような目でこちらを見ていたけど、
俺は見せる。
だって、こいつらはこれから俺のクランのメンバーになるのだから。
俺はおまえらを受け入れる。
だからおまえらも、受け入れてくれるだろ?
「――――――――――――ッ!!!!!!??!」
二人は、そしてある程度察していたはずのミネットも、言葉を失っていた。
「なんだ……これは……?」
「これを……どこで?」
「ドロップしたんだよ。ダンジョンでモンスターを倒したら」
「ま、まさかあ……」
スティーヴンとフレイアの二人は腰を抜かしていた。
「昔からにーちゃんは引きが強かったからなーうんうん」
「さすがですね、お兄様!」
たぶん詳細は分かっていないのだろう妹弟ズが、雰囲気だけでそう言った。
「そういうレベルじゃ――」
スティーヴンはその二人に対し、真面目に反論しかけたところで、
「ふふ……ふははははっ――そうだな、さすがは、……さすがは、我が主だ! まいった! まさかここまでとは!!」
なにやらおかしくなったのか、そう笑いだし、肩をすくめた。




