12 お土産をしこたま買わないと旅行した気分にはなれない
「ナゼ……モシヤ、ニンゲンハ、ワレラノオモッテイルホド、ヨワクハナイノカ……ダトスレバ……、アネ、ウエ……オキヲツケテ……」
砂と消える直前、ホルスはそう言い残した。
姉上……?
人間に気を付けろということは、まだ更に深層にそいつが待っているということか?
それとも……。
「安らかに眠り給えよ、我が友よ」
師匠は消えゆくホルスに祈りを捧げていた。
ホルスの亡骸のあとには、二つのアイテムがドロップする。
【ロゼッタの黒衣】
基礎防御値:物理99
◎種類:コート
◎スキル
【適正領域】:自身の半径1メートル圏内の環境情報を、任意のものに変化、維持する。
【夜警のメセクテト】
◎種類:勲章
◎スキル
【飛翔】:魔力を消費し、飛行する。
「うーん? この性能の付き方は、なんだかヴァンくんらしくないね。スキルはスペシャルだけど、一つだけだし、それに多分その一つも固定ぽい。どちらも何の特性も付いてない。これはもしかして……僕のLUCが参照されてしまったのかな?」
どうやらそうらしい。
俺のスキルより、師匠のパンチの方が後にヒットしたのだろうか?
「う……ごめんよヴァンくん。僕としたことが……まったくそんなことまで頭が回っていなかったよ……」
汗をたくさん垂らしながらいたく申し訳なさそうにする師匠。
ぜんぜん大丈夫です。
「せめてコレは貰っておくれよ」
「師匠がドロップさせたものですから、是非師匠が貰ってください」
「…………わかった、じゃあ、貰うね」
師匠はおとなしくその二つを受け取る。
しかしすぐに、したり顔でそのままこちらに寄こしてきた。
「たしかに僕のものにした。だから後は自由だよね。ヴァンくん、キミにプレゼントをあげるよ」
「…………、じゃあ、貰いますね」
俺は苦笑しながら、それを譲り受けた。
「うんうん、なかなか似合うと思うよ。黒いロングコートに銀の厳つい勲章が良い感じに映えてるし、それにマントもアクセサリーもグッドだ」
それらを身につけた俺を見て、師匠は満足げに頷いていた。
まるで晴れ着姿の娘に見とれる父親のよう。
でも実際、けっこう様になってきている気がする。
ここに最初に来たときは、親父のお下がりの擦り切れた漁師服上下セットで、いかにもモブって感じだったのに。
着せ替えをそれなりに満喫すると、俺たちはダンジョンを更に進む。
次の9層ボス階である66,672階を目指す為だ。
「さっきのホルスの方が9層ボスの超弩級ドラゴンよりはるかに強いから、最早ヴァンくんの特訓は終了したと言っても良いし、そういう意味ではわざわざ倒す必要もないんだけどね。でも……ほら、家族へのお土産を持たせてあげたいし」
「覚えててくれたんですね」
「逆に忘れるはずなくないかい?」
「当り前にそう言ってくれる師匠が大好きです」
「照れるな」
弩級階までの残り6層は、一人前とお墨付きを貰えたおかげで、俺と師匠で遠慮無くツーマンセルできたので、サクサク進んだ。
結晶氷翼鉱竜は、それはそれは立派なドラゴンで、一見とても強そうではあったのだが、すぐ前にもっと巨大なホルスと対峙したばかりだったのと、そのホルスが極めてあっけなかったこともあって、まったく驚く事無く瞬殺した。
「【黄金世界】!!」
――グオオオオオオオ。
という断末魔と共に、アイテムがドロップする。
【呪われたマハ・マーヤナの鈷=天の楼閣(Lv.99)】
基礎ダメージ値:物理20、魔法(氷結)75
装備に必要な力:STR『SSS=5』、INT『SSS=5』
◎発動特性
【氷雷の天魔師】【氷結属性追加】【STR上昇】【氷竜の加護】【氷竜の婚姻】【魔法の極意】【INT上昇】【確率防御無視】
◎スキル
【氷結晶剣】
【Ice Class9・超常結晶】
【Ice Class8・氷晶乱吹】
【Ice Class7・永久凍土】
【Ice Class7・吹雪弾】
以下、反映したステータス。
====================
◎ステータス
STR《腕力》 :SP=4
TEC《技術》 :SP=4
INT《知力》 :SP=4
CON《信仰》 :E
VIT《体力》 :SP=4
AGI《俊敏》 :E
◎装備
・武器メイン【呪われたイコン・ヴェーダの聖槍=天の楼閣(Lv.99)】
サブ【呪われたマハ・マーヤナの鈷=天の楼閣(Lv.99)】
・防具肩【呪われたヘル・パ・ヘルドの太陽マント=天の楼閣(Lv.99)】
胴【ロゼッタの黒衣】
・指1【会心の指輪】
・指2【カラビラリング】
・指3【イブリースの囁き】
・耳1【亜空間のピアス】
・勲章【夜警のメセクテト】
◎発動特性
※《常時》
【絶魔の結界】【被ダメージ減少】【物理ダメージ上昇】【VIT上昇】【潔癖の怨嗟】【確率被ダメージ無効】【オート回復】【確率スキル発動】
【会心の心得】【確率ダメージ無効】【魔法弾発射】【ID率上昇】【DIQ上昇】
【被ダメージ減少】【TEC上昇】【確率被ダメージ無効】【オート回復】【確率スキル発動】【回復率UP】【オートゲイン】【コインドロップ】
※《メイン武器時》
【炎氷の天魔師】【閃光属性追加】【物理ダメージ上昇】【会心の心得】【STR上昇】【INT上昇】【禍根の怨嗟】【被ダメージ減少】
※《サブ武器時》
【氷雷の天魔師】【氷結属性追加】【STR上昇】【氷竜の加護】【氷竜の婚姻】【魔法の極意】【INT上昇】【確率防御無視】
◎所持スキル
※《常時》
【隠されしもの】【盲目なるもの】【見つめるもの】【頂くもの】
【亜空間ポケット】
【適正領域】
【飛翔】
※《メイン武器時》
【壊滅世界】【黄金世界】【不遜世界】【四季世界】
※《サブ武器時》
【氷結晶剣】【Ice Class9・超常結晶】【Ice Class8・氷晶乱吹】【Ice Class7・永久凍土】【Ice Class7・吹雪弾】
====================
以下、目新しい特性の詳細。
【氷竜の加護】:氷結魔法使用による効果を上昇。及び同魔法による被ダメージを全吸収。
【氷竜の婚姻】:氷結魔法の全ての使用資格を満たす。
【魔法の極意】:魔法エネルギーの上昇。
【確率防御無視】:攻撃時、40%の確率で防御無視。
以上。
どうやら聖槍と今回手に入ったヴァジュラは、同時に使用することはできないらしい。
ヴァジュラは両端が尖っている手のひらサイズ程の金属棒である。
詳細を見るに、魔法が使えるようになる、魔法性能寄りの物理武器といった感じか。
手にとり、スキル【アイスソード】を発動すると、ヴァジュラの先端が氷りだし、またたく間に結晶の長刃ができあがった。
「おお、カッコいいね。普段は鈷だけど、武器化すると氷の長剣になるのか」
「しかも氷結魔法も使えるようになるみたいです。レベルナインってありますけど、これってどれくらいの強さなんでしょうか?」
「うーん、わからないな。自慢じゃないけど僕はまったく魔法が使えないからね!」
もの凄く堂々と、まるで長所の如く師匠は言い放った。
すごい、引け目を感じさせないこの態度。俺も見習わなくては。
超弩級ドラゴンの遺骸は、ホルスと違って消えることはなかった。
師匠曰く、ホルスが特異なケースであるらしい。
俺たちはあせあせと遺体をさばくと、それらの肉を亜空間ポケットに収納して、アジトへと帰還した。
大猟である。
アジトに着くと、師匠にドラゴンの肉を半分ほどお裾分けようとしたが、
「いいんだよ、みんなで食べてくれ。ヴァンくんのご家族にも、いつか挨拶に行きたいなあ」
そう言って、断固として受け取っては貰えなかった。
「卒業だよ」
師匠は言った。
「お家に帰りな。みんなが待っているよ」
夜は二人で、囲炉裏の火を囲って、師匠秘蔵のハチミツエールを呑んだ。
「僕はいつかこのダンジョンを完全踏破してみせるんだ。冒険はまだまだ続くんだよ」
そう誇らしげに、師匠は珍しく強気な自分語りをした。
それで珍しく酔っ払って、やがて俺より先に寝落ちした。
「僕は君を弟のように思っているよ……寂しいよ……」
寝言が聞こえた。
師匠の優しさに触れて、嬉しい気持ちになった。
そしてやっぱり、俺も少しだけ寂しくなった。
翌朝、俺たちは転送装置の間に向かう。
二人でガシッと健闘をたたえあい、俺はひとり転送床に乗った。
これから、師匠が第一層に俺を転送してくれる。
一方通行の、この装置で。
「これをキミに」
青い石の付いた首飾りを手渡された。
「いつか、また会おう」
もう一度、ガシリと挨拶をして、師匠はパネルを操作した。
俺の乗る床に、魔法の光が走る。
その光が全てを包んでいって、視界がふさがれていく。
師匠が――見えなくなっていく――
「いつか、会おう! 会いに行くよ! 会いに来てくれ!」
最後に見えた彼は、目を真っ赤に腫らして大粒の涙をボロボロと流していた。
どうやら今回は(私にしては珍しく)街にたどり着けそうです。
読んでくださりありがとうございました。
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