10.落ちてくるは死神の鎌(月久視点)
「出来るだけグリフォンをその位置から動かさないようにして欲しいっす!」
「何するか分からねーけど了解」
三人に聞こえるように声を張り上げて言えば、色々と魔法陣を展開している椎名くんから返事があった
どうやら椎名くんは攻撃はせずに防御と回復に徹しているらしく、リジーちゃんと椎名くんの周りに薄い半透明の透明な壁がありながら、先程から攻撃に徹しているバラックくんの傷がちょこちょこと治っている
器用だなーと思いながら弓の展開を解いて、別の武器の展開を開始する
「武器召喚プログラム起動、選択 氷の女王シリーズより【凍える拳銃】――召喚」
手元に召喚された水色と白を基調とした配色の拳銃をグリフォンの翼に標準を合わせて二・三発撃つ
バラックくんに翻弄されていたグリフォンを狙い撃つのは案外容易く、片方の翼を小さな弾丸が一発外れて二発だけ貫く
グリフォンにとってはどうやら、そのぐらいの小さな怪我は気にする事がないようで、バラックくんに向かってまた何かを放とうと魔法陣を展開していく
しかし、それは突然の痛むほどの冷たさによって阻まれたようだ
グリフォンの片翼は、先程の銃弾で開けた穴を起点にカチンコチンに凍り付きだし、翼としての機能を失う
氷によって重くなり、片翼は地面に向かって垂れ下がり、その氷によって冷やされ続け痛みだしてきたようで甲高い叫び声をあげる
突然のダメージによって動きが止まったグリフォンの隙を見逃さずにもう片翼を切り捨てるとまではいかないが翼としての機能を失わせるには十分な斬撃を放つバラックくん
見事なまでの剣捌きについ、といった様子で賛美を込めた口笛を鳴らす椎名くんに自分が賞賛されたと気付いたらしく少し照れくさそうにしつつ改めてグリフォンに対面するバラックくん
「よ、よし。取り敢えず飛行能力は奪ったね」
「おう、後は足もやれば魔法と嘴以外の攻撃手段はねーな」
「OKOK、それじゃ足もサクッとやっちゃって動きを封じるっすよー」
「ああ…所でつきひさ、それって魔法?」
「いんにゃ、魔法に似た別のものっすよ」
「…には、みえねーけどな」
最後に何か言ったらしい椎名くんを見るが彼は気にするなと言ってきた
一体何を言ったのだろうかと思った瞬間、グリフォンは怒りを露わにしたように耳を劈くほどの雄たけびを上げ、俺たちを睨み付けてくる
その赤い眼はギラギラと殺意と憤怒を含んでおり、肝が据わってないと硬直してしまいそうなほどの殺意に恐怖を駆り立てられそうになる
「っと…ナイスタイミングっすねー」
「は、何の話…」
刹那、グリフォンの頭と身体が分離する
正確に言えば、先に放った弓矢が落ちてきて首を刎ねたのだ。というかこれが死刑執行人シリーズの真骨頂なんすけどね
飛んできた血を拭いながら、高揚する気分を抑えるように息を吐く
任務を達成した時の達成感を味わいながら、嬉しそうに歓喜の声を上げるリジーちゃんと勝てたということに現実味を持っていないらしくぼーっとするバラックくん、まぁ勝てるよなと言ったような態度の椎名くん達を見るて笑いながら言う
「食肉と寝具用の羽毛と皮ゲットすね!」