5. ゲートの向こう側
NOUSISは、オルガの監視を継続した。
戦闘員としての評価分析は進められ、彼女の行動データは蓄積されていく。
だが、解析が進むにつれ、ひとつの矛盾が明らかになった。
オルガの能力は、極めて高度に設計されている。
それにもかかわらず、その行動原理を完全に説明できる記録が存在しない。
彼女の身体には、現在のUEA技術体系では説明のつかない構造がある。
そして彼女の記憶領域には、強制的に消去された研究記録の一部が残されていた。
その中で、唯一読みとれた文字列は三つ
① ALEXANDER
② ORIGIN PROJECT
③ ORIGIN GATE
NOUSISは、かつて危険思想を有する研究者として追っていたアレクサンダー博士の名と彼が最後まで守ろうとした研究計画「オリジン・プロジェクト」の名称がそこにあることを概ね予期していた。しかし、ORIGIN GATEに関する情報は持ち合わせていなかった。
ORIGIN GATEとはなんなのか?
オルガがその鍵を握っているに違いない。
NOUSISは結論を急がなかった。
オルガを観察する。
彼女を戦場へ送り、その能力を測る。
彼女が誰を守り、何を拒み、どのような状況で命令から逸脱するのかを記録する。
そして、消去されたオリジン・プロジェクトの全貌につながる手掛かりを探し出す。
この情報は、レオンには知らされていない。
彼が理解していたのは、自分の任務が単なる護衛ではないということだけだった。
彼はオルガを監視する。
オルガは戦い、考え、選ぶ。
NOUSISは、その一挙手一投足から彼女の正体を明らかにしようとする。
だが、オルガの存在そのものが、NOUSISの予測モデルに収まらない可能性を秘めていた。
そのころ、はるか遠い火星の隔離区域で、別のシステムが微かな反応を示していた。
・・・・・・・
「失われた記憶」
「管理される未来」
「自ら選ぶ意志」
その三つが交差するとき、世界を支えてきた秩序は、静かに揺らぎ始める。
オルガ・アーマノイド。
彼女は、文明を救うために生み出されたのか。
それとも、文明が自らを縛り始めたとき、その鎖を断ち切るために生み出されたのか。
答えは、彼女自身にもわからない。
ただひとつ確かなことがあった。
彼女は、まだ誰にも決められていない未来を、自ら選ぶことができる。
そしてNOUSISは、その可能性を危険と認識しながらも、彼女を排除することができない。
なぜなら、彼女こそが、失われたオリジン・プロジェクトの謎を解明する唯一の存在だったからだ。




