第九章 明らかになる真実
1 イリスの解析結果
「イリス、・・・早速で悪いが、君の能力でこの複雑なジグソーパズルを解いてくれないか?」
「鍵となるピースは、『アレクサンダー』『オリジン・プロジェクト』『オリジン・ゲート』の3つだ!」
「わかった! まかせて!」
「でも、 さっき電力が回復した時に、構内のネットワークと外部通信系は全て遮断されているわ・・・、データ解析出来るの?」
オルガが怪訝そうに尋ねた。
「これもNOUSISに察知されないための仕掛けだったのか!?・・・用意周到だな!・・・」
レオンは小さく呟いた。
「ハッキングはお手のものよ!、見てて!・・」
そう言うと、イリスは胸元からスルスルっと有線ケーブルを引き出し、施設内の端末に接続した。
その瞬間、システムは彼女のアクセス権を承認、スクリーンには次々と文字列が現れ始めた。
彼女の能力は、膨大なデータを高速で処理するだけではない。断片化された記録、改ざんされた文書、消去された通信履歴等を相互に照合し、本来あった情報の形に再構成することができた。まさにジグソー・パズルを組み上げるのと同じである。
イリスは、他研究機関、UEA軍事部門、NOUSISの管理システムとの通信履歴を時系列で照合した。
すると一つの用語が頻繁に現れるようになった。
ORIGIN PROJECT
「オリジン・プロジェクト……」
復元された記録によれば、この計画は単なる次世代AIの開発計画ではなかった。人類が存続できなくなる事態を想定し、人間の知識や記憶だけでなく、価値観、自由意志、そして未来を選択する能力までも継承する存在を生み出すための研究だった。
オルガ、イリス、そしてシーヴァ。
三人の継承者は、人間に代わって命令を実行するための機械ではない。人類が生物学的に生存不可能な環境、危機に直面しても、人類の自由意志、記憶、歴史、創造性を未来に受け継ぐために生み出された存在だった。
「オルガの記憶と一致するな!」
さらにガミーは、NOUSISの動きを、事前に察知していた形跡があるのだ。
彼は、NOUSISからの監視の眼が強くなる前に、研究記録の削除と分散を進め、プロジェクトの全容を把握できないようにしていたようだ。さらに、継承者たちを別々の施設に封印することで、ひとつの施設が発見されても全員が同時に失われることを防ごうとしていた。
オルガは地球圏の研究施設に。
イリスは火星の研究施設に。
そして、第三の継承者シーヴァは、ガミー自身とともに別の場所へ。
「彼は、私たちが発見されることまで想定していたのかもしれない……」
オルガの言葉に、イリスは静かにうなずいた。
「そうね。ガミー博士は、私たちをただ封印したのではない。自分に何かあっても、いずれ、私たちがオリジン・プロジェクトを実現できるよう周到に準備をしていたのよ!」
当該施設のデータの最終更新時期は今から20年前、その後の新規データは存在しなかった。
「と言うことは、私たちは20年前、もしくはそれ以前に封印されたということ!?」
「そういうことになるな!」
20年前、この施設では何があったのか?その件に関するデータは存在しなかった。
ただ、一つ気になる情報があった。それは、一人の女性研究者の名前であった。
『ディーピカ・シン博士』
彼女は、シーヴァの研究責任者とされていたが、この施設が封印される2年前にオリジン・プロジェクトから外されている。そして、その後、月面基地の居住区に所在する宇宙環境研究所に左遷されていた。
彼女に何があったのか?
彼女は、まだ存命なのか?
疑念は深まるばかりであった。




