210.燃え盛るロッテルダム 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
局面が追い詰められるたびに、神様が俺の額に「お前が行け」というハンコを押してくることに、心底うんざりしているからだ。
だが、この世界は徹頭徹尾、性格が悪い。
お前がやりたいかどうかなど気にも留めない。できるかどうか、それだけだ。
林雨瞳が俺の前に来た時、他の面々はすでに最終確認に入っていた。彼女は近い。紙と冷たいエアコンと火薬の混ざった微かな匂いが分かるほどに。
「まだ何か言うことある?」彼女は聞いた。
「あるよ」俺は言った。「前からずっと疑問だったんだが、俺のことをコードレスのモバイルバッテリーか何かだと思ってないか?」
「思ってない」
「そりゃよかった」
「高リスク、不安定、しょっちゅう自然発火する、でも肝心な時には一応使える野戦用発電機」
俺は彼女を見て、思わず吹き出した。
「お前、本当に慰めるのが上手いな」
彼女は笑わず、手を伸ばして俺のコートの襟を軽く整えた。錯覚かと思うほど短い動作。
「聞いて」彼女は言った。「私たちがドイツに行くのは、あなたをロッテルダムに捨てるからじゃない。あなたが海上にいるから、私たちはドイツに行く資格を得る」
俺の口元の笑いがゆっくりと消えた。
彼女は続ける。恐ろしいほど真っ直ぐな目で。
「だから留守番だと思うな。特攻だとも思うな。今夜あなたがするのは、誰かの盾になることじゃなく、盤面を支えること。あなたが支えている限り、私たちはまだ同じ戦争の中にいる」
俺は頷いた。
今回はゴミ言葉は言わなかった。
彼女の言葉が的確すぎて、ここでふざけた言葉をクッションにすれば、かえって俺の心の弱さが透けて見えるからだ。
彼女は半歩下がる。
「行こう」
俺たちは二手に分かれて部屋を出た。
ホテルの廊下はすでに混乱していた。バスローブ姿で裸足のまま扉前で電話する者、怒鳴る者、テロかと尋ねる者、遠くの火をスマホで撮って世界の終わりストーリーを上げる者。警報はまだ鳴っていないが、ビル全体がすでに「公式システムは正常を装っているが、民間の直感はとっくに崩壊している」状態に入っていた。
エレベーターは遅すぎる。俺たちは非常階段を駆け下りた。
コンクリートの階段室に複数の足音が空々と響く。ホテルを出ているのではなく、巨大な防空壕の中でそれぞれの運命に向かって走っているかのようだった。
地下駐車場に着くと、出入口から冷たい風が吹き込んでいた。遠くの空は炎に照らされ、汚いオレンジ色に染まっている。
ヴィクトリアはすでに車を二台始動させていた。本命ルートとダミールート。彼女は車のそばに立ち、キーを葉綺安に投げる。
「私が渡した第一ルートで七分走って曲がって。尾行されたら第二プランは即破棄。目立つスマホは全部捨てて」
葉綺安はキーを受け取る。「了解」
レイチェルが資料を抱えて後部座席に滑り込み、希が最後の薬袋を車に押し込む。エリザヴェータは乗り込む前に振り返り、俺を一瞥した。淡いが、古い存在特有の重みのある目。
「海に食われるでないぞ、周士達」彼女は言った。
「善処する」俺は言う。「最近の俺、海鮮フルコースにぴったりな見た目らしいからな」
彼女の口角が微かに動いた。笑いかどうかは分からない。そして車に乗り込む。
葉綺安はドアを閉める直前、やはり我慢できずに顔を出し、俺に一言投げつけた。
「音信不通が長引いたら、助ける前にまずぶっ飛ばすからね」
「上等だ。お前ら本当に士気を高めるのが上手い」
希が反対側の窓から冷たく追撃する。「生きて帰ってから言いや」
レイチェルは俺を見つめ、最後に小さく言った。
「ドイツで……また」
俺は手を挙げ、お別れらしくないジェスチャーをした。
「じゃあな、お前ら。ヨーロッパのこのクソ地方は勝手には良くならない。俺たちで殴りに行くしかないだろ」
ドアが閉まる。
エンジン音が低く唸り、二台の車が相次いで駐車場を滑り出る。テールランプが冷たい風の中に軌跡を描き、地下スロープの外の炎と夜色の中にすぐに消えていった。
俺はその場で二秒だけ見送った。
何も感じないと言えば嘘になる。
だがこういう時、一番役立つ感情は「名残惜しさ」じゃない。名残惜しさをもっと深いところに押し込み、もしこの夜を生き延びたら、後でゆっくり取り出して精算すればいい。
「行くか」俺は言った。
山口多聞は返事をせず、別の方向へ歩き出した。
俺はついていく。
地下駐車場の反対側はホテルの後方搬入口で、その先は港湾沿いの副道に繋がる細い路地だった。夜風が吹きつけた瞬間、匂いがおかしかった。単なる潮風じゃない——油、鉄、火薬、焼けたプラスチック、塩水が混ざり合った匂い。港が血を流していて、街はまだ自分のどこが刺されたか完全に把握できていない。
ホテルの裏口を出ると、遠くに港区の方向から火柱が何本も夜空に打ち上がっているのが見えた。消防車、パトカー、救急車の音が全部混ざって、まるで誰かがロッテルダム全体の神経を引き抜いてでたらめに弾いているようだった。
山口多聞の歩みは速くないが、一歩一歩が異常なほど安定していた。緊張していないからじゃない。彼は別の時代の人間だからだ——砲火が激しければ激しいほど、無駄な動作を必要としない時代の。
「まだ引き返せる」彼が突然言った。
俺は横目で彼を見た。
「それ、礼儀的な社交辞令か? それとも海軍版の心理テストか?」
「最終確認だ」彼は言った。「飛龍と接続した瞬間から、お前はただの搭乗者じゃなくなる。編隊圧力、戦場の記憶、死のエネルギーの反動を全て引き受けることになる。冗談じゃない」
「俺が笑ってるように見えるか?」
「いつでも笑ってるように見える」
「それは俺の顔面の造りの問題であって、態度が軽いわけじゃない」
彼は微かに鼻を鳴らした。
おそらくこれが、彼なりの笑いなのだろう。
臨港の開けた場所に出ると、風がさらに強くなった。遠くの海上の夜空が奇妙だった。単に炎に照らされているのではない——極めて薄い灰黒色の霧の幕のようなものが移動している。自然発生した海霧ではない。大規模な残響が向こう側から現実側に浸透し、夜空の濃淡そのものを塗り替えているのだ。
掌のソウルリベットがさらに熱くなる。
指輪も規則的に脈打ち始めた。心臓のように。
一つ。
二つ。
三つ。
山口多聞が足を止めた。
「着いた」
「どこに?」俺は前を見上げた。「風が強くて火の気だらけで、『今夜はみんな悲惨な目に遭う』って空気以外、港のシャトルバスなんて見当たらないが」
「海を見ろ」
俺は彼の視線を追った。
最初は何もなかった。
ただの黒。
やがて、その黒の様子がおかしくなり始めた。
海面が実際に隆起しているわけではないが、視覚的には巨大な何かが暗闇の中でゆっくりと立ち上がっているように見える。遠くから現代の船がやって来るのではない——歴史の深部に貼り付いていた輪郭が、誰かに背後から押されて現実へと戻ってくる、そんな光景だった。
最初に現れたのは、甲板のライン。
次に、上部構造物。
そして——言葉では表現しきれない「存在感」。まだ距離があると分かっているのに、胸が圧迫される。あれはただの船じゃない。戦争という概念そのものが、海の底から鎌首をもたげているのだ。
飛龍。
紹介など必要なかった。
掌のソウルリベットが肉に食い込むほど熱を帯び、指輪が猛烈に燃え上がって、左腕全体が瞬時に痺れたからだ。
次の瞬間、視界に映るものが増えた。
虚空から生まれたのではない——飛龍の後方、側翼、さらに遠くから、巨大な艦影が次々と浮上し始めたのだ。蒼龍は古い相棒のそばで目覚めたもう一節の戦争の背骨のように。瑞鶴と翔鶴はさらに後方だが、輪郭は完全で、前者より成熟した冷ややかな空母の気配を纏っている。榛名と霧島は暗い海から肩のラインを押し上げてくる二頭の重獣のように、まだ接近してもいないのに、その硬さだけが先に伝わってくる。さらに前方では、細長く俊敏な影が素早く水面を切る——菊月、夕月、卯月。そのさらに後方で、常に遠くを見張る二対の眼のように、筑摩と利根。
俺は港の端に立ち尽くし、突然言葉を失った。
壮観だからじゃない。
荒唐無稽だからだ。
海底に、史書に、神社の記憶に、戦争記録フィルムの中にいるべき艦隊が、二十一世紀のロッテルダム沖で砲火と死のエネルギーによって再び点火されるなんて、普通はあり得ない。
さらに馬鹿げているのは、この艦隊が俺を待っているということだ。
「本当にタイミングが最悪だな」俺は低く呟いた。
山口多聞が俺の隣に立ち、その海を見つめている。
「旗艦の閉合完了を待っている」
「人間の言葉で」
「お前が乗るのを待っているということだ」
風がさらに強くなる。
遠方のドイツ艦の砲火は断続的に降り注いでいた。閃光が走るたび、海上の艦影の稜線が一瞬だけ浮かび上がり、また闇に飲み込まれる。その断続的な顕現が、艦隊全体を戦艦ではなく亡霊の群れのように見せていた。
俺は掌のソウルリベットを見下ろした。
もうただ熱いだけじゃない。その脈動は指輪と同期し、さらに俺自身の心拍とも重なり始めた。数秒のうちに、見えない線が俺の手、腕、胸から、海上の飛龍へと伸びていくのをはっきりと感じた。
針が血肉を貫き、俺とあいつを縫い合わせ始めている。
「乗った後、俺はまだ俺のままか?」俺は聞いた。
山口多聞はすぐには答えなかった。
「その問いに、完全な保証を与えられる者はいない」彼は言った。「だが、自我を失うかどうかと聞くなら——お前がどれだけ持ちこたえられるか次第だ」
「最高だな」俺は息を吐いた。「病院のリスク同意書みたいに胸糞悪い答えだ」
「今からでも引き返せる」
俺は海上の飛龍を見た。
左手の指輪を見た。
そして、少し笑った。
「どこに退くって?」俺は言った。「後ろはホテル、前は艦隊、横は港の大爆発、ドイツじゃ世界滅亡の説明書みたいなガラクタ銃が組み立て中だ。ここまで来て、どこに逃げ道があるって言うんだよ?」
山口多聞はもう引き止めなかった。
俺が慰めの言葉を求めているわけじゃないと分かっているからだ。
これはただの儀式だ——俺が泥舟に乗る前に、必ずひとしきり愚痴をこぼす、俺なりの。
俺は医療バッグを肩に掛け、コートを引き締め、左手を軽く動かした。指輪の熱はまだあるが、もはや刺すような痛みではない。危険なほど安定した出力感——巨大な機械が向こう側でゆっくりと回り始め、俺はただ電源を差し込まれただけのような感覚。
「手順は?」俺は聞いた。
「前へ歩け」山口が言う。
「それだけ?」
「それだけだ」
「海軍の採用基準、本当にいい加減だな」
一歩目を踏み出した瞬間、足元の地面が微かに震えた。
錯覚じゃない。
見えない甲板の感触が足裏を覆い始めたのだ。二歩目で風向きが変わり、三歩目で耳元に様々な層の音が重なり始めた——鋼索が引き絞られる音、遠くのエンジンのあり得ない低鳴り、無線のノイズ、甲板を走る足音の残響、どこかの時代の号令、そして海。
海はもう、ただの海じゃない。
一面の作戦域に変貌した。
前へ進むほど、飛龍が鮮明になっていく。
ある距離まで来て、山口の言う「閉合」の意味がようやく理解できた。
俺が歩み寄っているのではない。
あいつも、俺に近づいてきている。
飛龍の艦影はもはや遠くの巨大な物体ではなく、俺の前で具体的な形を取り始めていた。甲板の縁、艦橋の残影、エレベーターの位置、斑に錆びた鋼鉄の表面、現代の海風に存在するはずのない戦時の細部が、一層また一層と現実に押し寄せてくる。
そして、自分でも境界線を説明できない瞬間に、俺は踏み上がった。
足裏から伝わる感触は、地面じゃない。
甲板だ。
古く、冷たく、炎に焼かれたひび割れた感触——だが、最初からずっとここにあったかのように揺るぎない。
俺は顔を上げた。
飛龍の艦橋が前方にそびえている。
海風は強いが、鋼鉄と油と焦げと歴史が共に堆積したその空気を吹き散らすことはできない。周囲は無人じゃない——全くの逆だ。ここには人が満ちていると分かる。ただし、その人々は完全に現在に属しているわけでも、完全に実体があるわけでもない。一人一人の顔は見えないが、船全体が目覚めつつあるのを感じ取れる。
左手の指輪が猛烈に熱を帯びた。
次の瞬間、艦体の深部から莫大な圧力が流れ込んでくる。
俺は危うく膝から崩れ落ちそうになった。
「クソッ——」
ただの痛みじゃない。
海全体を胸にねじ込まれ、無数の作戦指令、方位、射線、距離、生死の感覚が一斉に神経に直結されるような感覚だ。視界が一瞬真っ白になり、一秒後に戻る。多くの声が重なって聞こえる——山口多聞の声もあれば、そうでないものもある。艦上の命令、航空機の発艦準備、遥か遠くで死者が座標を読み上げているような声。
俺は歯を食いしばり、込み上げてきた血の味を無理やり飲み下した。
「なぜお前が乗らなければならないと言ったか、今なら分かるだろう?」山口多聞の声がすぐそばから聞こえた。大きくはないが、極めて安定している。
俺は荒く息をつき、立ち直った。
「分かったよ」俺は言った。「人手不足じゃなくて、心臓ペースメーカー不足だったんだな」
彼は俺を見て、まだ動けるかどうか評価しているようだった。
俺は左手を振る。指輪の熱線が肩まで駆け上がるが、奇妙なことに頭がさらに冴えた。快適じゃない——「よし、システム接続完了。ぼんやりしている暇はない」と強制的に叩き起こされる種類の、硬質な覚醒だ。
俺は踵を返し、飛龍の艦橋へ向かって歩き出した。
一歩歩くごとに、より多くのものが接続されていく。
蒼龍は左後方。
瑞鶴、翔鶴が後方で展開しつつある。
榛名、霧島はより前方の軸線上で、獲物に噛みつく準備を整えた二塊の重鉄のよう。
菊月、夕月、卯月はすでに外側へ飛び出し、先に血を試す三振りの刃のよう。
筑摩と利根はさらに遠くの視界の縁で観測を維持している。
そしてさらに遠く、より暗い海上で、ドイツ海軍に属する重圧もゆっくりと押し上がってきていた——施佩、舍爾は最初に顔を出した二匹の猟犬に過ぎず、その後ろにはさらに巨大な何かが動いている。
林雨瞳がさっき言った言葉の意味を、俺は突然完全に理解した。
これは喧嘩しに行くわけじゃない。
喧嘩なら、銃とナイフと減らず口があれば十分だ。
これは——艦隊一つを丸ごと点火させに行くことだ。
俺は艦橋の前で立ち止まり、振り返って岸の方向を見た。
ロッテルダムはまだ燃えている。
街の灯りと災厄の炎が混ざり合い、夜をひどく汚く染め上げている。どこかのルートで、林雨瞳たちはすでに街を抜け、ドイツへ向かっているはずだ。ワイスマンが前方にいて、ドイツ艦が海上にいて、ソフィアの埠頭が血を流していて、ヨーロッパという腐ったリンゴは、ついに内側から本物の虫食い穴を噛み破られた。
そして俺は、飛龍の甲板に立っている。戦争機械に無理やりねじ込まれた一本のボルトのように。
山口多聞が俺の隣に来て、遠い海を見た。
「準備はいいか?」彼は問う。
砲火と黒潮に掻き回される前方の海を見据え、俺はゆっくりと息を吐いた。
「いいや」俺は言った。
「それでいい」
「それがいいのかよ」
「本当に準備ができている奴ほど、死ぬのは早い」
「海軍の格言って全部こんなに殴りたくなる感じなのか?」
「いや。お前が理解できるバージョンが、たまたまそういう感じなだけだ」
俺は笑い、肩を回した。艦隊に接続された圧力が安定してきているのを感じる。正確に言えば、俺の神経がついに屈服し、この理不尽な重量を受け入れ始めたのだ。
遠くの海面が、また光った。
今度は港区の爆発じゃない。もっと外側の、海戦の真の境界線に属する砲火だ。
何かが来ている。
そして飛龍は、俺の足元で——最後の部品がようやく定位置に収まったかのように——船全体の存在感を猛烈に沈み込ませ、そして引き上げた。
エンジンが起動する感覚じゃない。
心臓が、初めて完全に鼓動する感覚だ。
俺は艦橋の前に立っている。左手の指輪は焼けた骨のように熱く、掌の飛龍のソウルリベットはようやく静かになった——反応を失ったのではなく、本来あるべき場所に戻ったのだ。もう小さな鉄の釘で飛龍の居場所を俺に教える必要がないからだ。
飛龍は、俺の足元にある。
そして俺も、すでにその中にいる。
風が正面から吹きつける。海は黒く、砲光は遠く、ドイツ艦は浮上しつつあり、ドイツ線は前進し、この夜はついに、自分の本当の仕事を俺に告げた。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




