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199.瓦解  2

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

しかも、背後にドイツ国防軍全軍と、地獄の半分と、今にもバラバラになりそうな邪悪な工場一棟を丸ごと引き連れているつもりで走らないといけない。


「行くぞ!」馬三娘に怒鳴り、崩れた壁から先に飛び出す。


右前方の、まだ完全には崩れていないドイツ兵二人が補給に入ろうとしたところへ、神崎の射撃が先に届く。乱射じゃない。短く、真っ直ぐで、性格の悪い二つの点射。一発目は低く撃ち、相手を伏せさせ、二発目をすかさず高めに重ねて、頭を土嚢の向こうへ押し戻す。この無口な日本兵は、今や泥に刺さった血の滴る銃剣みたいなものだ。道が必要なところに、ためらいなく貫通孔を開ける。


俺と馬三娘は、さっき切り開かれたばかりの火線に沿って前へ走る。左には爆風で倒れた果樹の柵《さく》、右には履帯《りたい》に踏み荒らされた泥道。ナチスの祭壇はまだ背後で崩れ続けており、一枚の鉄板が飛んできて頭上を掠め、泥と雪に突き刺さって半分だけ地面から突き出た。後方では誰かがドイツ語で怒鳴り、ハーフトラックの機関銃も再び火線を引き直そうとしているが、その火力はもう二日酔いだ。狙えている瞬間と狙えていない瞬間が入り交じっている。


これが、呪術核心をぶち抜いた結果のもっとも現実的な効果だ——世界が一斉に停止するわけじゃない。敵の火力網全体が、一寸《いっすん》ずつ千切れていく。


……一寸ずつでも、十分人は死ねる。


左後ろから弾丸が一発、泥を噛《か》むように飛んできて、俺のすぐ脇の地面を爆ぜさせた。反射的に右へ体を逸《そ》らし、肩に走った痛みに思わず罵声が出そうになる。サブマシンガンをそちらへ向けて一連射ぶん投げる。当たったかどうかは知らない。だが、そっちの火は一拍遅れた。


馬三娘が左側から抜き去っていく。足が泥を踏んでいないかのような速さで。今の彼女はもう負傷者にも、ただの借り物の体にも見えない。葉 綺安(イェ・キアン)の身体は元々切れ味の良い動きをするが、馬三娘が内側に入るだけで、その一歩一歩に古い舞台の刀馬旦《とうばたん》が足拍子を打つような邪気が宿る。右手がわずかに上がり、千里追魂《せんりついこん》が指の間から滑り出る。黒い閃光が一閃し、崩れた壁の陰から顔を出そうとしていたドイツ兵の喉元に、暗紅色の一点が咲いた。奴は悲鳴を最後まで出す暇もなく、後ろへ倒れた。


俺は息を切らしながら走り、それでも口だけは動かす。


「その技をもう少し早く出してたら、俺の肩に穴は開かなかったんだが!」


馬三娘は振り向きもしない。


「一発食らった方が頭は冴える。」


「この時代錯誤な目覚まし方よ。」


「効けばいい。」


前方の接近線も、決して綺麗なものじゃない。


ジャックと神崎忠明が引いているのは、大軍の救援路じゃない。バストーニュ市街の縁に積み上がった炎と瓦礫とドイツ軍の封鎖線の中から、無理やり裂き出した、まだ塞がっていない裂け目だ。裂け目は細い。二人分——まだ死に切っていない二人分が潜り込めるのがやっとだ。その少し外側では、ドイツ軍の外周火力は崩れながらも、まだ完全に失われてはいない。さらに遠くでは、一輛のパンターがまだ生きている。砲塔の回転はさっきより鈍いが、完全停止には至っていない。反対側の樹林の奥からは迫撃砲の試射音も途切れていない——さっきほど正確ではないが、観測兵の片目だけがえぐり取られたような精度はまだ残っている。


これが日独の戦力差の一番厄介なところだ。


心臓を刺し貫いても、残った鋼鉄と訓練だけで、最後の最後まで噛みついてくる。


前方の低い壁の向こうから怒鳴り声が上がり、ドイツ軍のサブマシンガンが二連射、斜めに火線を切り込ませてきた。ちょうど、俺たちがジャックの火線に合流しようとするルートを塞ぐ角度で。俺と馬三娘はほとんど同時に地面に伏せ、弾丸が頭上を掠めて果樹の枝をへし折る。枝と砕けた雪がまとめて顔に落ちてきた。口の中の泥を吐き出しながら横を見ると、ドイツ兵が二人、半壊したガレージと石壁の間に陣取っていた。いやらしい角度で、俺たちをこの泥の上に釘付けにする布陣だ。


ジャックも気づいたらしく、すぐそちらへ一連射浴びせる。


だが相手は歴戦の兵だ。身のこなしが早い。乱れながらも頭を引っ込め、すぐに火線を上げてくる。崩れかけているとはいえ、まだ撃てる。ドイツ軍が実体化してから一番厄介なのはここだ——崩れ始め、リズムを外し、生気を失いかけているのが目に見えても、倒れきるその一秒前までは、古びた教範通りにこちらを殺しに来る。


鉄と煙の味がする息をひとつ飲み込み、低く言う。


「あいつらを落とさないと、ここから先には進めない。」


馬三娘は隣にしゃがみ込み、半分だけ火光に照らされた顔で言う。


「左はお前。右は妾《わらわ》。」


「随分とチームプレイっぽいこと言うじゃないか。」


「勘違いするな。」冷たく鼻で笑う。「お前が一人も倒せないのが、一番困るだけだ。」


口の端を吊り上げる。左肩が動くだけで足が攣りそうだ。


「なら、よく見ていろ。」


二つ数えてから、半身を起こし、左側の遮蔽物に向けてサブマシンガンを一連射浴びせる。殺すためじゃない——頭を伏せさせるためだ。案の定、左のドイツ兵はすぐに頭を引っ込める。その瞬間、馬三娘が右手側から滑り出た。


走る、というより——低く、這い、切り込む。地面から生えた影がそのまま形を変えたような動きで、三歩で死角に入り込む。右側のドイツ兵が銃口をこちらへ向けようとした瞬間には、千里追魂が先にそこへ届いていた。


今度は喉じゃない。


眼窩《がんか》だ。


黒い棘《とげ》が眼窩に吸い込まれ、奴の頭がのけ反る。体が震え出す前に、馬三娘はすでに刃を引き抜き、体を反転させながら死体に蹴りを入れて左へ弾き飛ばす。ちょうどそのタイミングで俺も二連射目を放つ。左のドイツ兵が身を引っ込めたあと、自分の仲間の死体に押される形で半寸《はんすん》ほど姿勢を崩す。その半寸——そこに弾を叩き込む。弾丸は壁の角と奴の首の間を抉《えぐ》り、血と灰が混ざり合って壁に汚い花を咲かせた。


「行くぞ!」と怒鳴る。


今度は誰も俺たちの進路を塞がない。


低い壁を乗り越えると、その先は救援火線が作ってくれた最後の隙間だ。右側では倒れたモミの木が崩れた壁に寄りかかり、根元に人ひとりが辛うじて潜れる隙間を作っている。その先が、ジャックたちが押し上げてきた遮蔽物の帯だ。問題は、その隙間がまるでドラマにならないことだ。隣には爆破で半分吹き飛んだハーフトラックの残骸が転がり、めくれ上がった鉄板がまだ噛みつこうとしている口みたいに開いている。さらにその奥、街角の外れにはパンターが一輛引っかかっている。砲塔は傾いているが、まだゆっくりと角度を探っている。


砲塔が動いているのを見た瞬間、頭皮が粟立《あわだ》った。


「急げ!」馬三娘に怒鳴る。


彼女に言われるまでもない。全身を低くして、先に隙間へ滑り込む。俺が続こうとしたまさにその時、遠方のパンターがようやく砲撃を放った。


正確な射撃じゃない。


だがパンターの砲弾は、外したところで十分人を不幸にできる。


砲弾は俺たちを直撃せず、左後方のナチスの祭壇外周の泥道に逸れて着弾した。だが、爆圧で巻き上げられた土と雪と鉄板と骨の破片が、神様がシャベルで地表をひっくり返したかのように周囲一帯を叩きのめす。全身の感覚が前方へ跳び、視界が一瞬暗くなり、耳の中には再び低い唸《うな》り声だけが残った。背後の崩れた壁がまとめて崩落し、ちょうど俺たちの背後の逃げ道を丸ごと埋めた。


それはそれで、悪くない。


あのドイツ兵どもが追ってこようとしたら、まず自分たちの尻拭いから始めないといけない。


歯を食いしばって前へ這う。倒れた木と崩れた壁の間で胸骨を擦りながら前進する。半分ほど抜けたところで、腕を乱暴に引き掴まれた。反射的に引き金に指がかかりかける——その瞬間、聞き慣れた口調が俺の耳を殴った。


「味方に撃つな、バカ野郎!」


ジャックだ。


奴に思い切り引きずり込まれ、泥の隙間から背後の浅い塹壕《ざんごう》へと転がり込む。着地した直後、神崎忠明の銃火が俺の頭上をかすめ、さっきまで俺たちが潜っていた隙間の出口に狙いを集中する。後から突っ込んで来ようとしたドイツ兵を押さえ込むためだ。実体化後もまだ動ける日本軍兵士が二人、すかさず前へ出る。一人が煙幕を投げ、一人が射撃で蓋《ふた》をして、接近口を完全に封鎖した。


馬三娘は俺より半秒遅れて中へ入ってきた。


誰かに引きずり込まれたわけじゃない。自分の足で、滑るように。膝を一点、掌《てのひら》を一点つき、さっきまでの撤退と爆撃がまるで彼女の時間から削られていないかのような姿勢で落ちてくる。だが、その顔色は明らかに変わっていた。


青ざめたわけじゃない。


借り物の力が残り少なくなったときに、どうしても隠せない暗さが滲《にじ》んでいる。


一目見ただけで分かった。


「まだ持つか。」


馬三娘は立ち上がり、まず千里追魂の切っ先についた灰黒い汚れを払ってから、斜めに俺を見やった。


「お前がまだ死んでいないうちは、持たせる。」


「その言い方、妙に心温まるな。」


「もう一言でも無駄口を叩けば、今ここで体を返す。」


即座に口を閉じた。


この老いた亡霊は、冗談を言うような性格じゃない。


ジャックは隣で弾倉を交換しながら、じっと馬三娘を見ている。その表情はなかなかのものだ。恐怖ではない。あまりの怪異を見過ぎた結果、「今日はドイツ語を喋るパンターさえ出てこなければ何が出ても驚かない」と腹を括《くく》った顔だ。それでも堪《こら》えきれずに訊ねる。


「で……今、俺と喋ってるのは、まだ葉 綺安(イェ・キアン)で合ってんのか?」


馬三娘はゆっくりと首を傾け、口の端を吊り上げた。


「西洋鬼子《せいようきし》。試してみるか?」


ジャックは、ほんの一秒も迷わず首を振る。


「いや、今日の『新しい現実』はもう定員オーバーだ。」


息を整えながら、言わずにいられなかった。


「安心しろ。今の彼女は、さっきの心臓よりよっぽど安定してる。」


ジャックは俺の肩の血を見て、次に顔に積もった灰と泥の層を見て、口の端を引き攣《つ》らせた。


「そのザマで冗談が出てくるとは、本当にゴキブリみたいな野郎だ。」


「冗談じゃない。健康報告だ。」


ちょうどそのとき、神崎忠明《かんざきただあき》が近づいてきた。


頭から爪先まで、炭の山と血溜まりを転がってきたような姿だ。軍刀の刃からまだ何かが滴《したた》り落ちている——誰のものかは知らない。こいつは俺が生きているかどうかも確認せず、ナチスの祭壇の中で何を見たかも訊かず、ただ一度外を見て、次に俺を見て、言った。


「外周封鎖が緩み始めている。だが、まだ全部は崩れていない。動けるなら今すぐ動け。」


正しい判断だ。


今の状況を整理すると——ドイツ軍は崩れているが、崩れ切っていない。ナチスの祭壇は廃《すた》れたが、反噬《はんぜい》の霧がまだ周囲を薙《な》いでいる。味方の接応線は届いたが、それはバストーニュ市街の縁から無理やり食い破った一時的な裂け目に過ぎない。この息のうちに撤退しなければ、パンターと残存のハーフトラックと散り切れていない歩兵が再集結した時点で、また郊外に封じ込められる。


外を見る。


遠くでナチスの祭壇が全体として内側へ崩れ込んでいる。灰霧と炎が交差しながら渦を巻く。さらに遠くでは、さっきまで精確に刻んでいたドイツ軍の迫撃砲火力軸が今や犬の喧嘩みたいに乱れており、何発かはナチスの祭壇外周の歩兵群に自分たちで着弾させている。さらにその奥、さっきまで咆哮《ほうこう》していた88ミリ砲はもう沈黙し、傍に立っているドイツ軍砲兵が数人、夢の中から蹴り起こされて自分が何者か理解できていない木偶《でく》のように、ふらふらと立ち尽くしている。


そしてバストーニュ市街の方向では、あれほど人を窒息させていた攻城のリズムが緩んでいた。


止まってはいない。だが、緩んだ。


それで十分だ。


さっきまでのように整然と噛み合っていなければ、俺たちはこの息を持ち帰ることができる。


「体育館まで撤退か?」ジャックが訊く。


首を振り、肩の焼けるような痛みを堪えながら、まず一息吸う。


「主軸は使えない。ドイツ軍の火力網は乱れているが、パンターとハーフトラックの残存ノードはまだ生きている。来た道をそのまま戻ったら、また捕捉される。」


林 雨瞳(リン・ユートン)の地図が頭の中で素早く展開する。


排水路、住宅街の裏手、旧プール外周フェンス、そこから体育館の外線へ切り込む。出城のとき全部は通らなかったルートだ。今となっては、それが逆に価値を持つ。ドイツ軍が混乱しているとき、混乱が深いほど、主軸から外れた薄暗い角には気を回す余裕がない。


神崎忠明が頷く。同じ結論に至っていたらしい。


「住宅帯の裏手を行く。」彼は言った。「主街は捨てる。迫撃砲の修正は今は狂っているが、ハーフトラックはまだ主軸を掃射できる。」


ジャックは地面に唾を吐いた。


「最高だ。俺が一番嫌いな住宅街の近接戦闘じゃないか。」


俺は横目で見る。


「お前、全部の戦闘が嫌いじゃなかったか。」


「そうだ。ただし、ランク付けはしてる。」


「今日は何位だ。」


「ドベだ。」


馬三娘(マー・サンニャン)が傍でそれを聞いていた。冷たく吐き捨てる。


「生きている者というのは、本当によく喋る。」


俺は返した。


「喋らなかったら、ここまで生きていない。」


彼女は鼻を鳴らして、それ以上は続けなかった。


背後でナチスの祭壇がまた大きく崩れた。


今度は局所じゃない——内層全体がついに沈下した音だ。その振動が地面を伝って足の裏まで届く。遠くでまだ散り切れていないドイツ兵たちが、同時にさらに明確な失拍《しっぱく》を見せた。走りながら膝から崩れ落ちる者、銃を構えながら照準の仕方を忘れた者、骨格を抜き取られたように横へ倒れ込む者。即座に全滅というわけじゃない——だが、これで十分だ。


俺たちの二撃《にげき》は、あの呪いの機械の背骨を、本当に断ち切った。


神崎忠明が手を上げた。


「行くぞ。」


余計な言葉は一切ない。


接応小隊が即座に動き出す。先頭の二人が火力で押さえ、中間が人員を護衛し、後方をジャックが殿《しんがり》を務める。教科書通りの動きだ。英雄の凱旋《がいせん》なんかじゃない——呪いの腹の中から這い出してきた半死人二人を、防衛線まで引きずり戻す作業だ。合理的で、みっともない。だが戦場で生きたまま終わる撤退というのは、もともと格好のいいものじゃない。


俺たちは住宅街の裏手に沿った爆破で崩れた低い壁を伝い、バストーニュ市街の方向へと切り込んでいく。右手側には時折、主街の外縁に残ったハーフトラックの残骸が見える。まだ動いているものもあれば、酔っ払いのように壁に寄りかかって止まっているものもある。さらに遠くのパンターがまた一発咆哮したが、着弾点は一本通り分ずれており、もともと崩れかけていた建物を一棟潰しただけだった。迫撃砲もまだ鳴っているが、サイコロで着弾点を決めているような精度だ。


Lac de la Haute-Sûreの方向から、また重砲の音が重く響いてきた。


大きくはない。だが、正確だ。


山口多聞《やまぐちたもん》のあの老いぼれも、どうやら局面を読み切ったらしい。たった一発、それだけで、前方の崩れた壁の向こうの陰が半息《はんいき》だけ照らし出された。その光の中に補充しようとしていたドイツ兵の一組が浮かび上がり、ジャックと神崎忠明の火力が同時に被さる。路地の一角がまた、きれいに掃除された。


俺の頭の中には、ただ一つの言葉だけが残っていた。


今日の借りは、とんでもなく大きい。


だが——少なくとも。


俺と馬三娘は、ドイツ軍の外周封鎖を突破し、本当に接応小隊と合流した。


接応小隊と合流したからといって、状況が楽になったわけじゃない。


ただ「外で死にかけている」から「撃ち合いながら走って、帰り道で死なない」に格上げされただけだ。


ジャックに低い壁の後ろから引きずり起こされた瞬間、左肩の銃創が残した焼けるような痛みが、ようやく本格的に仕事を始めた。命が吊り下がっていた間は、痛みも順番待ちを知っていた。だが仲間と合流した途端、番号札を手に入れたとばかりに、思い切り一発叩き込んでくる。左腕全体が一気に痺《しび》れて重くなり、濡れた砂を半袋分肩の窪みに詰め込まれた上に、鉄線で骨に二周巻きつけられたような感覚だ。


ジャックが俺を一瞥《いちべつ》し、口の端を引き攣《つ》らせた。


「電車に轢《ひ》かれた直後みたいな歩き方だな。」


息を整えながら返す。


「ありがとう、その診断は非常に専門的だ。」


「どういたしまして。本当は死体みたいと言おうとしたが、口がまだ動いてたからな。」


神崎忠明《かんざきただあき》は俺たちを無視した。先頭を歩きながら、刀の峰《みね》で崩れた壁を一度叩く。音は短く、釘を打ち込んだように鋭い。


「前進。止まるな。」


接応に来た日本軍地上部隊の実体化残存兵たちが即座に前へ出る。掛け声もなければ「突撃!」みたいな芝居もない。ただ硬く、火力を前へ押し込んでいくだけだ。二人が左、一人が右、一人が中央を押さえ、もう一人が倒れていた木製のドアを蹴り飛ばして即席の遮蔽物《しゃへいぶつ》にする。普段なら格好悪い動きだが、バストーニュ市街戦がここまで進んだ今、まだプログラム通りに命を一列に並べられること自体、どんな熱血よりも価値がある。


俺と馬三娘(マー・サンニャン)は中間に挟まれて後方へ引かれていく。


護衛じゃない——管理だ。


俺たちは今、一人は半壊、もう一人は表面上まだ立っているが、その安定感の端《はし》っこに亀裂が入り始めている。葉 綺安(イェ・キアン)の体は鉄じゃない。馬三娘がどれだけ強引に憑依《ひょうい》していても、借り物の骨と肉は生きた人間の規格だ。合流時よりも顔色が一段暗くなっており、額の血の筋も乾いていない。彼女らしい冷笑でさえ、今は少し無理をして維持しているように見えた。


だが、口だけは揺るがない。


「坊主、足を引きずるな。」彼女は低く言った。


「そっちこそ、もうすぐ退駕《たいが》しそうな顔を引っ込めてから文句を言え。」


彼女の目尻が跳ね上がる。


「今退いたとしても、お前みたいな出来損ないを回収するくらいはできる。」


ジャックが弾倉を交換しながら首を傾けた。


「一言も分からないが、まだ互いに嫌い合う元気があるなら、それは朗報だ。」


俺は鼻を鳴らす。


「嫌い合ってるんじゃない。これが職場の雰囲気だ。」


「お前たちの職場文化、最悪だな。」


「ようこそ。」


俺たちは住宅街の裏手に沿った、均等に腐り果てた道をバストーニュ市街方向へ後退していく。


左側には爆破されながらも完全には崩れていない民家の裏壁が並び、壁の穴から時折、ひっくり返った食卓、乳母車《うばぐるま》、半空中に揺れるランプシェードが見える。右側は履帯《りたい》と砲弾と灰霧に交互に踏み荒らされた泥地で、本来なら菜園、柵、小屋があったはずの場所が、今は全部混ざり合った汚い汁になっている。


ナチスの祭壇崩壊後に噴き出した灰黒色の反噬《はんぜい》が、地形に沿って外へ這い広がっていた。速くはない。だが執拗《しつよう》だ。水に似ているが、水よりずっと性質が悪い。


鉄に触れれば鉄を白く変色させ、木に触れれば木を乾裂《かんれつ》させ、まだ完全に散り切れていないドイツ軍の実体に触れると——まるで誰かが、貸し出していた殻を一層ずつ回収し始めたかのようだ。


俺たちの右前方十数メートルで、ドイツ兵歩兵の一人が倒れた。


走っていた。走り方もまだ標準的で、ライフルもしっかり抱えていた。それが突然よろめき、自分の足に躓《つまず》いたように見えた。次の瞬間、倒れたんじゃない——崩れた。まず右脚のズボンが萎《しぼ》んだ。中の骨と肉が一緒に消えたように。続いて腰、肩、頭。ヘルメットが先に落ち、体全体が前へ崩れ落ちて、見苦しい灰の層になった。隣の別のドイツ兵が引き起こそうと手を伸ばしたが、外套《がいとう》に触れた瞬間、外套と手の半分が一緒に乾いた黒泥《こくでい》として砕けた。


ジャックが一言漏らした。


「神様。」


俺は歯を食いしばって前を向いたまま言う。


「神様じゃない。俺たちがさっき、あいつの心臓をぶち抜いた結果だ。」


「その言い方、まともな世界の言葉で頼めないか。」


「今日のまともな世界は、朝から有給を取っている。」


遠く、主街方向から不穏な砲声が響いた。


撃ったのは確かだ。だが、外れた。


88ミリ砲の音はここ数日で耳に胼胝《たこ》ができるほど聞いた——重く、直線的で、硬い。街の背骨に釘を打ち込むような音だ。だがこの一発は明らかにおかしかった。発砲音はあったが、着弾点が論外なほどずれている。修正誤差じゃない——観測網全体が突然、頭の半分を失ったかのようだ。続いて迫撃砲が住宅街の反対側から二発落下し、一発は空き地に、もう一発は自軍の側面の崩れた壁の後ろに着弾して、ドイツ兵二人を転がした。


その瞬間、俺の中でようやく何かが下りた。


決まった。


本当に決まった。


ナチスの祭壇に叩き込んだ二撃《にげき》は、拠点一つを潰しただけじゃない——ドイツ軍の実体化を支え、重火力を引き、指揮網を繋いでいた機械全体の腰を断ち切ったんだ。


だが、この成功は安堵《あんど》をくれない。


制御不能《コントロール・アウト》はスイッチじゃないからだ。


それは、蔓延《まんえん》する。


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