198.ナチスの祭壇 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
入口から、ついにドイツ軍がなだれ込んできた。
まずは歩兵三人——ドアを抜けた瞬間に左右へ展開する。後ろには爆薬包を提げた工兵と、火炎放射器のホースを担いだ奴が続く。アレを見た瞬間、頭皮が粟立った——ここで本当に火を放たれたら、敵が攻め込んでくるまでもなく、俺も馬三娘も仲良く蒸し焼きだ。
俺は足元のドイツ兵の死体を掴み、入口に向かって思い切り突き飛ばし、ついでに銃弾をばら撒く。先頭のドイツ兵が脚を撃たれて崩れ落ちる。後ろの火炎放射兵が前に出ようとした瞬間、俺は残りの二発をそいつの背中のタンクに向けて撃ち込んだ。
貫通はしなかった。
だが、少なくとも一瞬怯ませることはできた。
次の瞬間、上から落ちてきた共振架の破片が運良くそいつの肩に直撃した。体勢を崩した火炎放射兵を、隣の工兵が即座に後ろへ引き摺っていく。ドイツ軍にパニックの様子はない——そこが一番厄介なんだ。この実体化した化け物どもは、瓦礫に潰されようとプログラム通りに撤退しやがる。
弾切れの銃を放り捨て、消防斧を握り直す。
「来いよ。」歯を食いしばり、入口の前に立ちはだかる。「今日ここに入ってくる奴は、全員薪代わりにして燃やしてやる。」
下の馬三娘は、ついに主樁の前に到達していた。
近くで見ると、あの杭はさっきよりもさらに悍ましい。地底に打ち込まれた暗赤色の鉄杭に見えるが、表面を覆っているのはただの錆じゃない——乾いては再び濡れることを繰り返した、血の錆の層だ。鉄のタガの間には符紙、布切れ、歯、骨の関節が挟まり、神経のような黒い細い糸が上へと伸びて、あの邪心に繋がっている。これは心臓を支えているんじゃない——供物を捧げているんだ。まるで、このナチスの祭壇全体が、この一本の釘を中心に回っているかのように。
馬三娘は杭の前に立ち、頭上にある人工の邪心を一瞥すると、ゆっくりと口角を吊り上げた。
それは笑みじゃなかった。
長年刑場に立ち続けた老い首斬り役人が、ようやく斬るべき首を見つけた——そういう表情だった。
彼女が口を開いたとき、その声は低く、俺に向けたものというより、主樁そのものに語りかけているようだった。
「屍を借りて陣を養い、鉄を借りて魂を繋ぎ、一城の戦火を薪にする。この手の代物は、妾の時代でも下の下よ。」
言葉が落ちるや否や、彼女は千里追魂の刃を返し、自分の掌にひと筋引いた。
深くはない。
だが、十分だった。
血が黒い棘に滲み込んだ瞬間、千里追魂全体が目を覚ましたように、切っ先の暗紅色の部分が直接輝きを放った。光というより、真っ赤に焼けた烙鐵を夜の闇に沈めたような、そんな禍々《まがまが》しい輝きだ。周囲の空気が瞬時に冷え込み、中央の邪心さえも激しく収縮した。
借り物の人の皮を纏ったその姿を見ていると、葉 綺安という存在が一歩後ろへ押しやられ、前に立っているのが本当に馬三娘なのだと分かった。
憑依などという生易しいものじゃない。
これは、退駕の前に自ら最後の一仕事をしに降りてきた——そういうことだ。
入口から火が来た。
一気に流れ込んだわけじゃない。ドイツ軍がようやく角度を見つけ、第一層の外殻の破口から斜めに火炎を噴き込んできた。炎は鋼板と骨組みを舐めながら層を成して這い降りてくる。熱波が第二層まで一気に押し寄せ、古い符紙が数枚その場で黒焦げになった。空気は焦げ臭く、焼けた髪の毛特有の、胸が悪くなるような甘い臭いが混じる。
俺は歯を食いしばって突っ込んだ。消防斧を横に薙ぎ、最初のドイツ兵歩兵の肩と首の境目に叩き込む。奴が横に倒れた瞬間、後ろの工兵が顔を上げた——そいつを火線の方へ蹴り飛ばした。炎の舌が巻き付き、二人まとめて燃え上がる。悲鳴がついに上がった。よし。少なくとも、この連中はまだ完全に死に切ってないらしい。
だが、それも半秒の話だ。
後ろからまた二人が補充される。
頭が沸騰しそうだった。こいつらは殺しても殺しても湧いてくる修理工みたいなもので、一人倒れれば次の奴が工具を引き継ぐ。
「馬三娘!」斧を振るいながら怒鳴る。「今日中に刀を入れなかったら、俺が先にくたばるぞ!」
返事はなかった。
彼女はただ、一歩前に踏み出した。
踵が着地した瞬間、核心坑全体が彼女の拍子に合わせて沈み込んだような感覚があった。
そして彼女は千里追魂を水平に構え、主樁へと照準を合わせた。肩、肘、手首——一本の直線に揃える。
上の邪心が狂ったように脈打ち始めた。四本の吊りチェーンが今にも千切れそうなほど張り詰め、四隅の共振架が一斉に金切り声を上げる。周囲の骨柱が一本また一本と震え出し、灰黒色の粘液が汗のように亀裂から大量に滲み出してくる。第一撃は拍動を乱しただけだった——だが第二撃がまだ入っていないというのに、こいつはもう自分の死を知っている。
こういう瞬間に、世界はたいてい間の悪い笑い話を一つ用意してくる。
たとえば、入口で俺に斧を叩き込まれたドイツ兵が吹っ飛んで、隣の共振架に激突した。架が傾き、砲弾の薬莢と胸骨の破片がバラバラと奴の頭の上に降り注ぐ。まるで先祖が位牌の中から転げ落ちて自分の子孫を叩いているみたいで、滑稽極まりない光景だった。
だが笑う余裕はない。
次の瞬間、馬三娘が刀を入れた。
刺したんじゃない。
釘を打ったんだ。
千里追魂が彼女の掌から送り出されるその一動作は、恐ろしいほど清潔だった。駆け引きなし、迷いなし。命数をとっくに定められた釘が、ようやく自分が打ち込まれるべき場所を見つけた——そんな動きだった。
プツッ。
音は驚くほど小さかった。
銃声の比じゃないほど、静かだった。
だが、その一撃が入った瞬間、ナチスの祭壇全体が、内側から誰かに思い切り半拍分止められたようだった。
本当に、半拍だけ。
中央の邪心が先に硬直した。
次に、主樁の周囲にある黒い糸が全て同時に張り詰める。四本の斜支柱が一瞬にして耳を劈く金属音を放ち、まるでこの構造物の骨格を全て同時に限界まで折り曲げたかのようだ。その次の瞬間、千里追魂の刺突点から暗紅色の亀裂が走り出し、主樁を這い上がってあの鉄の心臓の中へと侵食していった。
目の前のあの塊の中で、何かが目覚め——そして何かが死んだ。
爆発したのは、炎じゃなかった。
制御不能そのものだった。
まず上の邪心が急激に落下した。
チェーンが一斉に荷重を受け止め、四本のうち二本がその場で断ち切れる。パキンという音じゃない——鎖全体が血を抜かれたように白く変色し、亀裂が走り、灰色の鉄屑となって地面に散った。四隅の共振架が連鎖的に乱れ、それまで規則正しかった振動が無秩序な痙攣に変わる。骨片、薬莢、鋼片が四方八方に噴き出した。床の紋様は焼けた烙鐵で一周焼き付けられたように、外へ外へと発光し、亀裂が走り、崩れていく。
核心坑の灰霧が逆流した。
風じゃない——逆流だ。
地底の何かが突然栓を抜かれ、溜まっていた死の気配が一気に噴き上がってくる。その霧が周囲の骨組みに触れると、骨組みは細かく爆ぜる音を立てた。ケーブルに触れると、外皮が層を成して膨れ上がり、裂けていく。外から突入しようとしていたドイツ兵歩兵に触れると——奴のヘルメットと外套の表面に、その場で灰白色の膜が浮かび上がった。
俺は半歩後退し、深く息を吸うことすら躊躇した。
そのドイツ兵の顔の皮膚が、乾いていくのが見えたから。
燃えているんじゃない。乾いているんだ。
濡れた泥が突然水分を失ったように。
「クソ……」
馬三娘は千里追魂を主樁に刺したまま、振り返りもせず、冷たく言い放った。
「ぼさっとするな。」
その一言が、俺を茫然自失から引き戻した。
そうだ、まだ終わってない。
これは勝利のカットシーンじゃない——この呪いの機械が自分自身を食い始めた場面だ。
内層が先に崩れ、外層が即座に追随する。第一層の軽油エンジン、蓄電箱、呪術回路が同時に過負荷に陥り、ランプが狂ったように赤、黄、白と明滅する。外からはドイツ軍工兵と機関銃班の怒声が一層乱れ、ハーフトラックのエンジン音が急上昇と急降下を繰り返す——アクセルを踏み込んでいるのに、離し方を忘れたような音だ。さらに遠くでは、88ミリ砲の轟音が上がったかと思えばすぐ軌道を外れ、着弾点が完全にズレた。迫撃砲の落下地点も乱れ始める。観測網ごと誰かに一気に歪められたかのように。
バストーニュの内外、一帯が同時に崩れ始めた。
体育館北口の外では、神崎忠明が壁際に張り付いたドイツ軍工兵を一刀で斬り倒したところで、向かいのハーフトラックの機関銃が突然、空へ向かって乱射を始めるのを目撃した。まるで射手が一瞬にして照準の感覚を丸ごと失ったかのように。
街角のパンター戦車の砲塔も、不気味に半秒間停止し、その後まるで何かに引っかかったようにゆっくりと傾いていく。
ジャックは遮蔽物の後ろで新しい弾倉を装填したところで、向かいのドイツ兵歩兵が走りながら突然踏み外したように膝から崩れ落ちるのを見た。
林 雨瞳は地図を見つめていた。しっかりと押さえていたはずの指先が、テーブルの下から伝わってくる奇妙な振動を感じ取る。彼女は静かに、低く言った。
「当たった。」
Lac de la Haute-Sûre方向では、山口多聞が飛龍号の残影が投げかける冷たい光の中に立ち、バストーニュと郊外の境界で炎と灰霧が同時に巻き上がるのを見届けると、ついに手を下に向けて押し下げた。
「窓を掴め。」
ただ一言だけ言った。
俺は目の前で邪心が崩れていくのを見ていた。ナチスの祭壇の内外が、同時に痙攣し始めていた。
主樁の亀裂はまだ這い上がっている。
一寸、また一寸と、鉄板、肉の膜、骨の節、そしてその中に巻き込まれた布切れへと食い込んでいく。一寸進むたびに、邪心が一度痙攣する。脈打つんじゃない——死の直前の、全身を貫く断末魔の痙攣だ。周囲のチェーンが次々と荷重に耐え切れなくなり、鋼梁が変形し始め、核心坑の上方から絶え間ない歪み裂ける音が響いてくる。この機械の肋骨を誰かがペンチで一本ずつ引き抜いているような音だ。
外のドイツ軍も、ついに乱れた。
一人の歩兵が第二層へ踏み込もうとした。手がドア枠に触れた瞬間、腕全体が泥を塗り付けたように乾燥し、亀裂が走り始めた。奴は一瞬呆然とし、次の瞬間前のめりに倒れる。ヘルメットが先に地面を打ち、続いて肩、背中、外套が灰を降り積もらせるように崩れ落ちていく。完全に砕け散るわけじゃない——層を成して剥がれていくんだ。奴の形を保っていた何かが、内側から引き抜かれていくように。
喉が干上がった。
これが、呪術核心に致命傷を与えた後の反応だ。
「バン」と一発で全滅するんじゃない。
支えが失われ、最も酷使され、最も近く、最も無理をして耐えていた部分から順番に崩れていく。
「馬三娘!」下に向かって怒鳴る。「その刀、深さは十分か!」
主樁の前に立つ彼女の半顔は、灰霧と暗紅の裂光に照らされて影になっていた。借り物の体が、今この瞬間はむしろ彼女自身のものに見える。斬るために請われて降臨した邪神のように、全身から凄みが滲み出ていた。千里追魂の柄尻に手を当てたまま、彼女は俺の問いにただ一言返した。
「深いかどうか、こいつ自身が知っている。」
次の瞬間、彼女は千里追魂をもう一度、深く押し込んだ。
その一撃で、主樁はついに限界を超えた。
中段から、口のような亀裂が走って裂け開く。噴き出してきたのは炎でも血でもなく、細かな砂を含んだ大量の灰黒色の熱霧だった。それが噴き出した瞬間、核心坑の上の邪心が一気に沈下し、四本の斜支柱が同時に崩れ飛ぶ——二本は吹き飛び、二本は捩じ切れた。四隅の共振架が根元から叩き折られたように弾け、骨片、鋼片、薬莢の破片が四方へ炸裂する。
俺は腕で顔を庇ったが、薬莢の破片が額を掠め、焼けるような一筋の痛みが走った。
上の邪心は、もはや脈打っていない——崩れていた。
工業的な外殻はまだ持ち堪えようとしているが、内部の呪術骨格が先に自分自身を食い潰していく。鉄板が捲れ、肉の膜が裂け、骨の節が爆ぜる。ハンマーで内側から砕かれた腐った心臓のように、全体が下へと崩落しながら、ナチスの祭壇全体を道連れに完全崩壊へと引きずり込んでいく。
分かった。
この一刀は、決まった。
しかも、徹底的に決まった。
内層、外層、ドイツ軍の警戒網、バストーニュ内外の火力リズム——全てが同時に崩れ始めた。
まるで誰かが、死人と鋼鉄を継ぎ接ぎして作ったこの呪いの機械の電源コードを、ようやく引き抜いたように。
目の前の邪心が半尺沈んだ。
たった半尺だ。
だが、その半尺が世界全体を道連れに引きずり下ろしたような重さを持っていた。
灰黒色の熱霧が主樁の裂け目から狂ったように噴き上がり、鋼鉄の梯子、坑壁、チェーン、ケーブルを伝って四方八方へ這い散っていく。煙じゃない。蒸気でもない。触れたものすべてが乾き、亀裂が走り、崩れ落ちていく。隣の骨柱が最初に喰らった——腕の骨の表面に蜘蛛の巣のような細かい亀裂が走ったかと思うと、パキッという音と共に真っ二つに裂け、中に詰まっていた黒い糸と髪の束が腐った内臓のように滑り落ちてくる。上の太いケーブルが霧に舐められると、外皮が膨れ上がり、裂け、最後は血を抜かれた蛇のようにだらりと垂れ下がった。
入口では、突入してきたドイツ兵歩兵が霧の縁を踏んだ。
奴は自分のブーツを見下ろす暇しかなかった。
次の瞬間、ブーツの表面から色が失われ、ズボンの裾、ゲートル、膝と順番に白く変色していく——まるで誰かがサンドペーパーで下から上へと擦り上げているように。奴がまだ状況を把握できないうちに、頬に一筋の亀裂が走り、皮膚が剥がれ落ちて、あまりにも乾きすぎた肉が露出した。さらに次の瞬間、奴は膝から崩れ落ちた。銃が地面を打ち、ヘルメットが転がり、体は底を抜いた灰袋のように崩れ落ちていく。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




