187.探り合い 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
一列の足跡だ。
遊歩道脇の湿った泥の上に、浅く残っていた。森の中から現れ、また森の中へと戻っている。問題は、その足跡が現代のブーツのソールではなく、鉄の鋲で噛み付いたような、古くて重苦しい靴跡だったことだ。
深くはない。誰かが今しがた歩いたというより、地面がある瞬間に、かつてどう踏みにじられたかを無理やり思い出させられたような跡だ。
希がしゃがみ込んでそれを見た。
「これ、イベントの運営がやったの?」
「もし運営がここまで細かくやってるなら」俺は言った。「あいつらは内務省を乗っ取るべきだな」
葉 綺安は足跡の出入りする方向を見つめ、低い声で言った。
「今朝ついたものじゃない」
「ああ」俺は言った。「今朝になって『見えるようになった』って感じだ」
その時、森の奥から突然、極めて軽い音が響いた。
パァン。
短く、乾いた音。誰かが遠くで木を弾いたような音。
だが、俺の体は一瞬でそれが木じゃないと理解した。
ライフルだ。旧式。距離が遠く、森に音の大半を食われているから、こんなに軽く聞こえるだけだ。
同じ瞬間、遊歩道の十数メートル前方で、木立の境界線をカメラで撮ろうとしていた中年観光客がふと動きを止め、半歩横に避けた。
撃たれたからじゃない。
彼の目の前の空き地に、突然一つの人影が現れたからだ。
米軍。
少なくともシルエットはそう見えた。鉄帽、ジャケット、その後ろ姿。完全な実体ではなく、湿気に浸された古い写真が、現在の空気に無理やり貼り付けられたような感じだ。
現れたのはたった二秒。
すぐに二発目の銃声が続いた。
その人影の胸が弾け、全体が後ろに倒れ込んだ。まるで1944年から直接伸びてきた見えない手に突き飛ばされたようにして、そのまま消滅した。
遊歩道にいた数人の観光客は一瞬呆然とし、続いて誰かが笑い声を上げた。パフォーマンスだと思ったらしい。スマホを構えて撮り始める者もいた。
地元のホットドッグ屋台の親父だけが森の中をちらりと見て、低い声で悪態をついた。まるで街灯がまた壊れたのを見た時のような反応だった。
「見た?」希の押し殺した声。
「ああ」俺は言った。
「あれ、何?」
「風土病だ」
俺がそう言い終えた時、三発目の銃声が来た。
今度は残影を撃ったわけじゃない。
弾丸は遊歩道脇の新しい木製の案内板をかすめ、パキンという音と共に一部を吹き飛ばした。木屑が舞い上がり、近くにいた子どもが悲鳴を上げた。
現場は一気にざわついた。
だが、まだ完全なパニックではない。
今の音がイベントの演出なのか、悪戯なのか、それとも本物の銃撃なのか、まだ誰も理解できていなかったからだ。
俺はまず身を低くし、一番近くにいた希の腕を引いて、低い土手の陰に引きずり込んだ。葉 綺安、林 雨瞳、エリザヴェータもそれぞれ遮蔽物に身を隠した。
少し離れた場所にいたクレアたちの反応も早かった。レミはジュリアンを太い木の幹の裏に押し込み、クレアは低く這いつくばりながら、目はまだ林の境界線を見ていた。
「どっち?」彼女が距離越しに聞いてきた。
「十一時の方向、木立の上縁」俺は言った。「少し高い位置だ。古い銃、単発」
「なんでわかるの?」
「この場所の人間が自動火器を配備されてるわけないからだ」
冗談じゃない。
音も間隔も合っている。
自分が高い位置にいるとわかっている奴。焦る必要がないとわかっている奴。下にいる人間がまだ自分を本物の狙撃手だと認識していないとわかっている奴が、ゆっくりと試している音だ。
これが俺の嫌いな部分だ。
本格的な攻撃じゃない。試探だ。
試探してくるということは、相手がただの残留映像なんかじゃないとわかる。純粋な残影はただ映像をリピートするだけで、現場の反応を観察したりはしない。
俺はハンドガンを抜いたが、すぐには撃たず、まず林の境界線を見た。
静かだ。静かすぎる。
だが、じっと見つめていると、ある一本の松の木の後ろの影が、他よりも硬いことに気づく。まるで誰かがそこに自分を釘付けにして、1944年の忍耐力で、2026年の馬鹿な観光客たちがどうやって伏せ方を再学習するのかを見物しているみたいだった。
レミがようやく口を開いた。
「クソッ、こりゃリエナクトメントじゃねえ」
「今日初めて、ジャーナリズムらしいまともな台詞を吐いたな」俺は言った。
あの道路標識が吹き飛んだ時、今日のこの事態をもう「地元の特色」で誤魔化すことはできないと悟った。
金属の破片が雪面をかすめて飛び、そばの枯れ木に当たって細かい乾いた音を立てた。空砲じゃない。暇を持て余した歴史マニアが本物の銃で山の中でごっこ遊びをしているわけでもない。空砲が2026年の道路標識に拳大の穴を開けるわけがないし、塗装された鉄板を缶詰みたいにめくり上げることもない。その一撃はあまりにも容赦なく、まるで俺たちの立ち位置の構図が悪いからと、ついでに修正してくれたような鮮やかさだった。
俺は重心を低く落とし、左手で体を支えながら、右手はすでにあの冷たい風が吹き出してきた林の境界線へと銃口を向けていた。
「伏せろ。英雄を気取るな」俺は声を押し殺して言った。
後ろの連中の反応も悪くない。クレアは俺が口を開くのとほぼ同時に雪の中へ身を投げ出した。姿勢は綺麗じゃないが、生き残るのにカメラ映えは必要ない。レミはカメラバッグを抱えて雪解け水が作った浅い溝に転がり込み、ジュリアンは半テンポ遅れて、あやうく次の弾丸のために頭のサイズを測らせるところだった。葉 綺安は反対側の低い石壁の陰から半寸だけ顔を出し、すでに答えを知っている報告書を見るような冷たい目つきで林線を測っていた。
二発目はすぐに来なかった。
それがかえって腹立たしい。
本当に戦争を知っている奴は、相手に少しの想像の余地を残すのが一番好きだ。外したと思わせておいて、実はこちらがどう動くかを見ている。ただの残響だと思わせておいて、実は射角を修正している。ヨーロッパにはもう博物館とワッフルと道徳心しか残っていないと思わせておいて、木の後ろから八十年前のライフルで、時代を超えた納税とは何かを教えてくれる。
林の奥から風が吹き抜ける。湿った土、樹脂、それに、長年封じ込められていた古い金属の蓋が突然開いたような匂いが混ざっている。その匂いはよく知っている。現代の機械のオイルの匂いじゃない。観光用戦車をメンテナンスした後の、プロモーションビデオみたいに綺麗なディーゼルの匂いでもない。泥と雪と血と火で一緒に漬け込まれたような鉄の匂い。まるで戦場そのものが缶詰になっていて、今ようやく誰かがそのプルタブを引き抜いたような匂いだ。
俺は待った。二秒、三秒、四秒。
三発目は来ない。
「人は見えたか?」俺は聞いた。
「完全な人間じゃない」葉 綺安が低く返した。「肩のラインだけ。さっき左側の折れた頂のトウヒの後ろにいた。動き方が現代人じゃない」
「現代人じゃないって、どういう意味だ?」
「長生きする気のない人間の動き方」
笑いそうになったが、こらえた。こういう時に笑うと、後ろの連中が俺の精神状態がようやく履歴書に見合ってきたと思い始める。
クレアがカメラを胸に抱えて小声で聞いた。「撤退する?」
「撤退しなかったら二発目をもらうために残るのか?」俺は言った。「まず引く。車まで戻る。一直線に走るな。二人一組で交互に動け。向こうがまだ見てると思って動け。なぜなら、大抵の場合、本当に見てる」
レミが浅い溝から半分だけ顔を出した。「さっきの……あの米軍の影はどうなった?」
「死んだ」俺は言った。
「なんでわかる?」
「俺たちより上手に死んだからだ」
誰もそれに続かなかった。現場の空気がようやく「もしかしたら変な出来事かも」から「わかった、俺たちは本当に幽霊の管轄区域を踏んだかもしれない」に移行した証拠だ。
俺が先に動いた。勇気があるからじゃない。ポジションが最悪だったからだ。このまま伏せていても、突然いいポジションになるわけじゃない。半分地面に埋まった排水石の縁に沿って後方へ滑り、二本の低木と、何かを記念するために存在しているようで実際には銃弾を防ぐためにしか役立たない木製の案内板を遮蔽に使った。雪面が靴底に踏まれてキュッキュッと鳴る。普段なら冬の音に聞こえるが、今は遺書の下書きみたいに聞こえた。
葉 綺安が俺の斜め後ろについてくる。二人の距離は近すぎず遠すぎず。近すぎればまとめて死ぬ。遠すぎればフォローが間に合わない。この距離を、文明社会における信頼の最終限界点と呼ぶ。さらに後方では、クレアとジュリアンがレミを支えながら右側へ迂回し、来た道をなるべく戻らないようにした。今日唯一の朗報があるとすれば、向こうのドイツ人の先輩が機関銃を持ってこなかったことだ。さもなければ俺たちは今頃、地元の土産物屋でポストカードになっていたはずだ。
林道の曲がり角近くまで退いた時、俺は目の端で雪の上に小さく捲れた新しい痕跡を見つけた。人間の足跡じゃない。何か重いものが引きずられた跡で、細く、まっすぐで、断続的だった。縁には、一度溶けかけてから急速に白く固まった氷の殻が残っていた。しゃがんで指で触れると、指先に異常な冷たさが噛みついてきた。
単純な寒さじゃない。
この地面が今しがた、この季節にも、この時間にも、いや、この年代にさえ属さない何かに轢かれたような感触だ。熱を持ち込むんじゃなく、周囲の正常な温度ごと引きずって消えていった。
「見えた?」葉 綺安が聞いた。
「見えた。履帯みたいだが、履帯そのものじゃない。履帯の遺影だ」
彼女はそれ以上何も言わず、その痕跡を写真に収めた。この女のいいところは、判断を横取りしないで証拠だけきちんと残してくれることだ。悪いところもある。彼女が黙る時は、たいてい本当にまずい状況の時だ。
臨時駐車スペースに戻ると、他の連中の顔色はもう遠足を続けたそうな色ではなかった。希が真っ先に駆け寄ってきた。「何があったの?さっきの音、本物?」
「特殊効果かどうか聞いてるなら、答えはノーだ」俺はVitoのサイドドアを開け、後部座席の機材ケースを引き出した。「今日誰か死ぬかどうか聞いてるなら、答えは今のところ肯定文に向かって努力中だ」
林 雨瞳は車に寄りかかって、タブレットを手にしていた。画面には昨夜後半から今朝にかけての監視カメラのスクリーンショットが映っていた。余計なことは言わず、そのまま画面を俺に向けた。
「3時11分から3時16分、宿の後側の温度が一帯で下がった」と彼女は言った。「局所的な冷点じゃない。一本の線だ。まるで誰かが地図にナイフで一本切り込みを入れたみたいに。あなたたちが今朝出発した後、この線は林区の方向に延びた。十分前、つまり最初に接触した時間に、線の先端に高頻度の跳動点が現れた」
「高温?」
「違う。高ノイズ。サーモグラフィーがそこで読み取り値を乱した。判定不能の何かに当たったみたいに」
レミはカメラをエンジンフードに乗せ、さっきの素材を再生しながら口の中で何かをつぶやいていた。自分に心理的リハビリを施しているみたいだった。クレアはマイクをノートパソコンに繋いで音波図を引き出した。ジュリアンは横に立って手をポケットに突っ込み、珍しく質問を急いでいない。記者が黙っている時は、成長したか、怖気づいたかのどちらかだ。職業を考慮すれば、後者を選ぶ。
画面の中で、短時間だけ現れた米軍の残影が木々の間を二歩走った。姿勢は乱れているが、でたらめに逃げているわけじゃない。遮蔽物を探しているようにも見えるし、何かから逃げているようにも見える。次のフレームで、彼の肩が突然前方へ激しく引っ張られ、見えないハンマーで殴られたように倒れた。それと同時に、現実世界の案内板が同じ瞬間に爆ぜた。
1944年に死んだ人間が、1944年のやり方で、もう一度死んで、ついでに2026年の公共物を壊していった。こういう国際的かつ時代横断的な連携は、EU補助金の申請書に書けば文化基金が下りるかもしれない。
「もう一度流してくれ」俺は言った。
レミが再生した。今度は倒れた米軍の影じゃなく、その奥の林の境界線を見た。弾が命中する半秒も前、画面の右上の隅を極めて薄い黒い影が横切った。薄く、速く、まるで誰かが焦げた定規で空中に一本線を引いたみたいだった。
林 雨瞳が俺の視線が止まったのを見て聞いた。「あれは何?」
「射角修正だ」俺は言った。
「どういう意味?」
「つまり、向こうは固定再生じゃないってことだ。観察している。目標判定をしている。射撃修正をしている。残響は案内板を狙って補射なんかしない。案内板を狙って補射するのは、人間だ。あるいは、かつて人間だったもので、今は法律を守る気がなくなったやつだ」
車の周りに沈黙が降りた。
本当につらいのは、幽霊に遭遇することじゃない。幽霊なら民間伝承も宗教も、祖母の寝物語も、全部逃げ道を用意してくれている。怖がってもいい、信じなくてもいい、お祓いに行ってもいい。一番厄介なのは、戦術習慣を保持したままの幽霊に遭遇することだ。それはつまり、ただ怖がらせたいだけじゃなく、勝ちにきているということだ。
俺はバストーニュ外縁の林地を見上げた。昼間の光がすべてを観光パンフレットみたいに照らしている。木々、雪、古い道、なだらかな丘、遠くに見える復刻塗装の車まで、観光客に撮ってもらうために配置されたみたいだ。ヨーロッパはこういうのが得意だ。歴史を展示ケースに入れて、多言語の説明板を貼って、隣でホットワインと記念バッジを売る。人間が並んでチケットを買いさえすれば、戦争は自動的に教育素材に格下げされると信じているかのように。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




