186.バストーニュ 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
フランス人が最も得意なことの一つは、ろくでもない出来事を理念の話に仕立て上げることだ。
パリはまだ燃えている。街の煙も、政府の顔も、記者の喉も、そして誰かが意図的に押さえつけて本当には爆発させないようにしている言葉も、全部まだ宙吊りのままだ。本来なら今が、混乱に乗じて最短ルートを突っ切り、アクセルを踏み抜いて、脱税でもするようにフランスから逃げ出す一番賢いタイミングだ。
でも俺はフランス人じゃないし、ヨーロッパの政府が一番機能不全でいてほしい瞬間に、急に良心を取り戻して間抜けになるとも信じていない。
だから幹線道路は使わなかった。
臆病からじゃない。官僚システムへの最低限の敬意だ。
連中に反応がないと思えば思うほど、次のインターチェンジでサプライズを用意してくる。ヨーロッパ人は特にこういうサプライズが好きだ。臨時検問、車線分流、交通調整、地方祭りの誘導、臨時安全協定。どれも文明的に聞こえるが、実態は高視認性ベストを着た罠だ。
二台の車が前後に並んで、誰にも意味を読まれたくない暗号の二文節のように、フランス北東側からベルギー国境へとじりじりと滑っていった。
先頭は黒いMercedes-Benz Vito Tourerだ。この車の一番厄介なところは、生まれつき「ファミリーカー」に見えることで、家族のアルバムには載せたくない人間を隠すのに向いている。俺が運転席に座り、両手でハンドルを握り、前方には自分で反射する田舎道が続いていた。後部座席には、どこからどう見ても休暇に行くようには見えない面々が乗っている。
助手席は林 雨瞳で、膝の上に地図を二枚広げていた。一枚は紙、もう一枚はタブレットのオフラインルート図。彼女はこういうときに特に、声を上げないまま地雷原を抜けさせてくれる人間に似ている。
二列目は窓側に希、隣に葉 綺安。葉 綺安はバックミラーを確認しながら、後方についてくるK7とシュトゥルムシュライターのヘッドライトを睨んでいた。希はコートを抱えて、口は悪いが今は騒ぐタイミングじゃないと分かっている猫のように丸まっていた。
三列目はレイチェル、エリザヴェータ、ヴィクトリア。三人が一列に並んで、車内の空気には三種類の沈黙が切り分けられていた。レイチェルの沈黙は刃の背のようで、エリザヴェータのそれは書きかけの診断書のようで、ヴィクトリアのそれはお前が失敗するのを静観するが教えてはやらない、ある種の宗教のようだった。
後ろのK7には、公関記者チームのクレール、レミ、ジュリアンが乗っている。
常に確認しなくても、ぴったりついてきているのは分かった。あの三人は護衛じゃない。報道業界が長年の職業的損傷から培った動物的本能だ。事態が腐りかけると嗅ぎつけたら、勝手に張り付いてくる。
車内は最初、静かだった。
感傷的な静けさでも、出発前の殺気を帯びた静けさでもなく、長い迂回路の後で全員が互いの呼吸のリズムに改めて慣れようとしている静けさだ。
俺はこういう時間が嫌いじゃない。本当に面倒なのは騒がしさだ。騒がしいということは、まだ誰かが希望を抱えていて、道理を説こうとして、議論しようとして、自分の方が合理的だと相手を説得しようとしているということだ。俺たちの段階まで来ると、みんな大体分かっている。合理的かどうかより、生きているかどうかの方が大事だと。
しばらくして、先に口を開いたのは希だった。
「本当に疲れないの?」
人の心より狭く舗装されたような支道を見ながら、俺は返した。「今ここで疲れたと言ったら、代わりに運転してくれるか?」
「しない」
「じゃあその質問、フランス精神に満ちてるな」
林 雨瞳が思わず少し笑ったが、顔は上げず、地図の上をペンで一点叩いた。
「この先二つ目の分岐を右に入って、大通りには出ない」
「分かってる」
「分かってるならいい。もし大通りに出たら、あなたが本気で警察に会いたいんだと疑うから」
「ヨーロッパの警察には何の偏見もない」と俺は言った。「ただ自己紹介を繰り返す手間が省きたいだけだ」
後ろからレイチェルの淡い一言が飛んできた。「それ自己紹介じゃなくて、事故前の状況説明でしょ」
「お前もフランス精神があるな」と俺は言った。
「イギリス育ちよ」
「それはもっと悪い。お前らはただ、事故前の状況説明を遺書みたいに書くだけだ」
車内で誰かが低く笑い声を漏らした。いい兆候だ。まだ全員の神経が最悪の状態まで張り詰めていないということだ。
俺たちは意図的に高速道路も大型サービスエリアも避け、ルート全体がナビと喧嘩しているような道を選んだ。システムが推奨するルートから意図的に外れるたびに、タブレットの地図が再計算を始める。文明社会が自由意志に対して最後に行う、虚しい抗議のようだった。
道路の両脇は、荒れた農地になったり、低い林帯になったり、灯りの消えた農家が数棟並んだりした。こういう場所は監視を隠すにも死体を隠すにも向いている。ヨーロッパの田舎の一番面白いところはそこだ。いつも穏やかに見えて、穏やかすぎて、今見えているのが風景なのか、誰かの祖父の世代が残した失敗した処理場なのか、区別がつかない。
葉 綺安が不意に後ろを振り向いた。
「K7がライトを点滅させてる」
林 雨瞳がイヤホンのコードを引き抜いて車載通信機に繋ぎ、俺に渡した。接続ボタンを押すと、レミのタバコで焼き切れたような声がすぐに飛び込んできた。
「前を直進するな」と彼は言った。「左の道は見た目が悪いが、中身はきれいだ」
「きれいってどういう意味だ?」
「右の道に、壊れたふりをしてるくせに仕事したそうな車が二台いる」
クレールの声が割り込んできた。レミよりさらに冷たい。「道標もある。活動分流、臨時駐車、歴史ガイドツアー。早すぎる時間帯ね」
前方を見ると、確かに臨時案内板が数枚立っていて、夜の中で白く反射していた。文字は派手で、町の自治体と地方観光協会が合作で犯した間違いのような見た目だ。普段ならただ醜いだけだが、隠したいものがあるときは、突然それが脅威に変わる。
「了解」と俺は言った。「左に入る」
「了解」
ハンドルを微かに切ると、Vitoは滑らかに古い細道へと入った。タイヤが砂利を踏む音が、車体の下で骨を削っているように乾いた音を立てた。K7もすぐ後に続いてきた。ヘッドライトが明滅して、気の短い幽霊が後ろをついてきているようだった。
「気づいてるか」と希が窓の外を見ながら言った。「ヨーロッパってこういう場所、記念イベントが多いよな」
「そうだな」と俺は言った。「死人が多すぎて、何かやっておかないともったいない気がするんだろ」
「口が悪すぎる」
「口が悪いんじゃない。この大陸が血を観光地に変えるのが上手すぎるだけだ」
その言葉の後、車内がしばらく静かになった。
俺が説得したからじゃない。間違ったことを言っていないと、全員が分かっているからだ。
バストーニュみたいな場所は、そもそもこういう偽装に向いている。旗を何本か掲げて、ガイドツアーを組んで、再現集会を開いて、老兵の子孫を呼んでスピーチさせて、地酒とスープを観光客に売れば、歴史は一時的にきちんと処理できるものに見えてくる。
問題は、歴史というのは本当に処理されたことなど一度もなく、ただ押さえ込まれているだけだということだ。埋め方が足りない死体と同じで、天気が変わるか誰かが意図的に掘り返すかすれば、まず臭いから正体を暴き始める。
「今夜は本当にホテルに入るだけ?」とヴィクトリアが後ろから聞いた。
「他に何がある」と俺は言った。
「その顔、寝るだけのつもりに見えない」
「この顔は元から観光向きじゃない」と俺は言った。「でも今夜は仕掛けない。まず場所を見て、人を見て、誰が必死に普通のふりをしているかを見る」
林 雨瞳がそのタイミングでタブレットを向けてきた。新しく引き直したルートが表示されている。
「この先、国境に近づくけど正式な検問所じゃない」と彼女は言った。「旧道の支線で、抜けたら市街には入らず、南南西の外縁を回って。あなたが探してるモーテルはその辺にある」
「Mercier Motelか?」
「そう」
「名前がひどいな」
「だからあなたに向いてる」
俺は一瞥した。「今日は調子がいいな」
「あなたが運転してるときの方が、生きてる人間に見えるから」
その一言には返せなかった。言い負かされたわけじゃない。正確すぎたからだ。
運転というのは、俺にとってずっと乗っているより楽だ。支配欲じゃない。他人の右足に命を預けるのが嫌なだけだ。特に今みたいなときは、ハンドルそのものが一種の主権だ。どこへ向かうかを決めることが、相手に追わせるか、待たせるか、空振りさせるかを決める。
三十分近く経って、ようやく仏ベルギー国境付近に差し掛かった。
劇的な検問所もなく、大型の探照灯もなく、銃を持った係員が書類を求めて近づいてくることもなかった。今どきのヨーロッパの国境の一番厄介なところはここだ。静かであればあるほど、安心できない。
道路脇に言語切り替えの標識が増え、地方行政単位の看板が並び、手前よりさらに「何もない」感じの公路が続くだけだ。国境を越えたというより、ある種の官僚的な語調から別の官僚的な語調に入り込んだような感覚だった。
「入った?」と希が聞いた。
「入った」と俺は言った。
「なんか儀式感ゼロ」
「止められたかったのか?」
「そういうわけじゃないけど」
「それがヨーロッパ式の幸福だ」
俺たちは止まらず、速度を大きく落とすこともなかった。Vitoはそのまま一つの国から別の国へと滑り込んだ。肋骨の隙間を刃が通り抜けるように、外からは何も見えず、中だけが静かに滲み始める。
後ろのK7も滑らかについてきた。
葉 綺安がバックミラーを見て、不意に言った。「前に灯りがある」
「どんな灯りだ?」と俺は聞いた。
「住宅じゃない。イベント会場みたいな感じ」
俺も見えた。
遠く、前方の低い斜面の向こう側に、周囲より格段に明るい区域があった。光は一点に集まっているわけじゃない。面として広がっていて、誰かが仮設の賑わいを闇の中に無造作に敷き広げたようだった。こういう光り方は大抵二種類のどちらかを意味する。地元の祭りか、地元のトラブルか。今の俺たちがベルギーにいて、しかもバストーニュ近郊だということを考えると、両方同時だと思った方がいい。
「あれがさっき言ってた祭り風のやつ?」と希が聞いた。
「たぶんそう」と林 雨瞳が言った。「規模は大きくないけど、外から来た人間を引き込むには十分」
「商売上手だな」と俺は言った。
「地元観光に何か個人的な恨みでもあるの?」
「ない」と俺は言った。「ただ、誰かが理由もなく戦争を記念するとは思っていない。テントを張って、チケットを売って、ガイドツアーを組み始めたら、その裏には必ず別の何かがある」
「例えば?」
「例えば、人数を数えている人間がいる。顔を探している人間がいる。どう見ても観光客じゃないのに観光客のふりをしている人間を見張っている人間がいる」
車内がまたしばらく静かになった。
今度は俺の言い方がきつかったからじゃない。全員があの光を見ていたからだ。遠すぎて今すぐ圧力をかけてくるわけじゃないが、十分に知らせてくる。バストーニュは眠っている小さな町じゃない。今夜は目を覚ましていて、ただどんな顔で俺たちを迎えるかをまだ決めていないだけだ。
俺はそちらへは向かわず、予定のルートに沿って外縁を回り続けた。
この辺りの地形は、アルデンヌの古戦場特有の雰囲気が濃くなってきた。雄大というより、どこか歪んでいる。林地と低地が入り組み、道路は何かに何度か切り刻まれた末に無理やり舗装されたような感じだ。いくつかのカーブを曲がると、突然異様に黒い木立が広がっていて、道そのものもそこには近づきたくないと思っているようだった。
こういう場所は、人を隠すにも、車を隠すにも、年代を隠すにも、何かと都合がいい。
「ここって幽霊が出そうじゃない?」と希が不意に言った。
「ヨーロッパでそうじゃない場所がどこにある」と俺は返した。
「その答え、誠意がなさすぎる」
「正直に言ってる。この大陸には、自分のところに幽霊が出るとまだ認めていないだけの場所が多すぎる」
エリザヴェータがようやく口を開いた。声は誰かの検死を始める前に手を洗うときのように淡かった。
「匂いが違う」
「何の匂いが?」
「この辺り」彼女は窓の外の漆黒の木立を見つめた。「死の気配が重いんじゃない。歴史が密すぎる」
俺は振り返らず、アクセルを少し緩めただけだった。
意味は分かった。
場所によっては、問題は死者の数じゃない。死に方、命令、撤退、死守、誤判断、放棄、遅延、裏切り——そういったものが同じ土地の上に長く積み重なりすぎて、土地自体が消化するのを諦めている。バストーニュはおそらくそういう場所だ。
そして俺たちは今、胃が弱いと知りながら、わざわざ夜食の時間に踏み込んでいく連中だ。
K7がまた点滅した。
今回は通話じゃない。クレールが後方から並走してきて、窓を半分下ろした。俺も少し開けて、冷気を入れた。並走しながら、彼女は一言だけ投げてきた。
「この先二キロ北に検問所がある。偽物」
「どうして分かる?」
「本物の検問所はもっと退屈な顔をしてる。偽物は目立ちたがる」
「その一言、気に入った」
レミが運転席から補足した。「あと路肩に立ってる、民兵ボランティアっぽい二人組の靴が新しすぎる」
俺は頷いて、了解の合図を送った。K7はすぐに後方へ引いた。
これが今の俺が記者チームに対してかろうじて満足している理由だ。口は多いし、手も多いし、機材はさらに多い。でも少なくとも一つのことは学んでいる。情報は、質問より値打ちがある場合があるということを。
さらに数キロ進むと、道が下り始め、それからゆっくりと上がった。坂の頂上で一瞬だけ、遠くにバストーニュ外縁の輪郭が見えた。完全な形じゃない。点在する灯りと道路の切れ目、それから明らかに人工的に設けられた明るい区域がいくつか。
あの明るさが厄介だ。都市の普通の賑わいじゃない。「今夜はイベントがありますよ、もう少し近づいてみてください」という招待状みたいな光り方だ。
でも本当に危険なのは、明るい区域そのものじゃない。その隣の、ちょうど暗くて、でも通過する車のナンバープレートを読むには十分な場所だ。
「次は俺が運転する」と林 雨瞳が不意に言った。
「え?」
彼女が俺を向いた。「最後の区間はあなたが入れ」
俺は少し笑った。「それは運転の権限を尊重してるのか、疑い深さを尊重してるのか?」
「両方」彼女はタブレットをこちらへ引き寄せた。「それにあなた、自分らしく停められないのが一番嫌いじゃなかった?」
それは否定できなかった。
最後の区間の入り方、停め方、角度の残し方——これは些細なことじゃない。特に見知らぬ落脚点では、駐車そのものが先手になる。
路肩が少し広くなった場所で車を寄せ、葉 綺安と素早く入れ替わった。誰も余計なことを言わず、後ろのK7も自然に死角を作る位置へずれた。
運転席に戻った瞬間、確かに自分に戻った感じがした。
「そうそう」と後ろで希が言った。
「何が?」
「さっきまで運転手みたいだったのが、今は面倒を探しに行く人の顔になった」
「ありがとう」と俺は言った。「今のところ一番褒め言葉に近い」
しばらく進むと、ようやくその場所が現れた。
最初に見えたのはモーテルの建物じゃなく、白い光だった。
二十四時間営業のガソリンスタンドが、給油ノズルも看板もガラスドアも駐車枠も、全部手術台のように照らし出していた。あの白い光が一番厄介だ。温かくもなく、不気味でもない。ただひたすら実用的で、通り過ぎる人間全員にこう告げているようだった。ここでお前のことを理解する必要はない。給油して、精算して、生き続けろ。
モーテルはその白い光の隣にあった。
二階建て、L字型。外壁の色は夜と光に一緒に洗い流されて、長年にわたって雨と排気ガスと安物の洗剤に交互に虐げられてきたような見た目だ。看板は外に掲げられていて、いくつかの文字は光り、いくつかは半死半生で、経営者自身が「営業中」という状態にさほど熱意を持っていないことが伝わってくる。
Mercier Motel。
一目で分かった。ここは俺たちに向いている。
十分に汚くて、十分に明るくて、十分に道路に近くて、車を隠しやすくて、ただ通りかかっただけだと誤解させやすい。
本当に優れた隠れ家というのは、最も豪華な場所じゃない。誰も真剣に記憶しようとしない場所だ。
「うわ」と希が窓の外を見て言った。「ここ、不倫の現場撮影に使われそうなモーテルそのものじゃない」
「違う」と俺は言った。「こういう場所は不倫以外にも三つの用途がある」
「何?」
「長距離ドライバーの仮眠、カップルの喧嘩、それから同じ車に乗るべきじゃない十人が、ただ寝に来ただけのふりをすること」
今度は林 雨瞳まで笑った。
「どこに停める?」と彼女が聞いた。
俺はすぐに答えず、ゆっくりと敷地内へ滑り込んだ。
駐車区画はそれほど広くないが、十分だ。まずモーテルの正面玄関、窓、二階廊下の外側手すり、ガソリンスタンドのガラスの反射、それから後方の木立に接する暗がりを確認した。最終的にVitoをL字駐車区画の内角に収めた。車頭は外向き、左側からモーテルの入口が見え、右側でガソリンスタンド方向の反射光を拾える。
こうしておけば、夜中に出る必要が生じてもバックしなくていい。
正面から写真を撮られても、車内はそれほど映らない。
後方から近づかれても、死角が少ない。
K7もすぐ後に入ってきて、少し外側の位置に停まった。素早く出られて、なおかつ今すぐ何かに突っ込もうとしているようにも見えない。
レミの駐車のセンスは悪いが、職業病だけはある。それだけは認める。
エンジンが止まると、世界が半秒だけ静かになった。
それから深夜の音が少しずつ戻ってきた。ガソリンスタンドの冷蔵ケースの低い唸り、遠くの道路を時おり車が通り過ぎる風切り音、モーテルのどこかの部屋の水道管の振動、それから駐車枠の白線に光が当たるときの、感情のない明るさ。
ドアを開けて外に出ると、軽油と湿った地面と安物の洗剤が混ざった冷気が来た。文明社会が疲労のために発明した、統一された処方箋のような匂いだ。
クレールがK7の方から歩いてきて、まずモーテルを一瞥し、それからガソリンスタンドを見た。
「ここ、本当に醜い」
「だから安全なんだ」と俺は言った。
「あなたが安全って言うたびに、私は不安になる」
「それは世界にまだ期待があるからだ」
レミが車のドアを叩き閉めて、両手をポケットに突っ込んで周囲を見渡した。
「向かいのガソリンスタンド、二十四時間か?」
「そう見える」
「補給できるのはいいが、向こうも補給できるのが悪い」
「だんだん普通の人間になってきたな」
ジュリアンは俺たちの会話に加わらず、まず防犯カメラの位置を確認し、次に二階廊下を見て、最後に駐車場の照明の角度を確認した。この人が将来墓碑銘を持つとしたら、おそらくこう書かれる。死の直前、バックアップ完了済み。
葉 綺安は車を降りると即座に一周して、タイヤ、車体後部、トランクの開口角度を確認した。動きは無駄がなく、ここがモーテルの駐車場じゃなく臨時集結地であるかのようだった。
林 雨瞳が俺の隣に立って、一緒にあの半点灯の看板を見た。
「ここでいい」
「ああ」
「何を考えてる?」
俺はモーテルを見て、隣の罪悪を消毒しているような白いガソリンスタンドを見た。
「考えてたのはな」と俺は言った。「ある場所が十分に汚くて、十分に明るくて、十分に面倒の近くにあるなら、それは普通、避難場所じゃない」
「じゃあ何?」
「面倒が、ひと休みする前にふらっと選ぶ落脚点だ」
後ろから希が顔を出した。「あなた、チームの士気を上げるのに向いてない人だよね」
「上げてる」と俺は言った。「早めに失望させておけば、後で崩れにくい」
ヴィクトリアが後ろで小さく鼻で笑った。
エリザヴェータはモーテルの裏手にある、さらに暗い空き地と木立だけを見ていた。目は静かで、すでにそこに注釈を書き込んでいるようだった。
「まずチェックインする」と俺は言った。「今夜は動かない。部屋を割り振って、何か食べて、交代で見張る。記者チームの車は機材を全部降ろすな。半分は車に残せ。メインチームは必要なものだけ部屋に入れて、残りは触るな」
「今の喋り方、学校の教官みたいだった」と希が言った。
「違う」と俺は言った。「俺の方が教官より役に立つ。モーテルのどこが死体を隠すのに向いてるか知ってるから」
「三言に一回は死体の話をするのやめてくれない?」
「本物が出たらやめる」
クレールが眉間を揉んで俺を見た。「あなたみたいな人、普通の国だったら本当に嫌われるタイプ」
「だから今ベルギーにいる」
俺は全員を連れてモーテルの入口へ向かった。ドアのガラスに俺たちの姿が映った。十人、バラバラで、疲れていて、道中の埃と言いかけのままの話を引きずっている。急ごしらえの旅行グループにも見えるし、どの国も自分が目撃したと認めたくない組み合わせにも見える。
いい。普通の人間から遠ければ遠いほど、こういう場所に向いている。
入口に差し掛かる直前、俺は最後に振り返って駐車場を見た。
Vitoが内角に収まっていた。開けたくない棺のように黒い。
K7が少し外側に、警戒しているふりをしていない野良犬のように止まっている。
向かいのガソリンスタンドの白い光はまだ点いていて、夜の一区画を過剰に清潔に切り取っていた。さらに遠くには、バストーニュ外縁の半分眠った半分起きている暗さが広がっている。
今夜は静かに見えた。
自分がいずれ何かが起きると知りながら、とりあえず先に荷物を部屋に運ばせてくれる小さな町のように、静かだった。
ドアを押すと、暖房と安物の芳香剤が一緒に顔に飛び込んできた。文明社会の最後の、あまり役に立たない羞恥のベールのようだった。
「行こう」と俺は言った。「先にチェックインする」
モーテルのロビーに踏み込む直前、俺はもう一言付け加えた。
「今夜まだ死人が出なければ、この迂回路は正解だったということだ」
今回は誰も笑わなかった。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




