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167.黒塔と白い壁 3

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

だから彼女は下を向いて、その一文を一字一字書き取った。


「三番目の質問です」彼女は言う。「今夜、全欧州のニュースがあなたの言葉を三秒だけ流せるとしたら、どの一文を残しますか?」


この女は刃の当て方を知っている。


長い話はパリで切り刻まれることを知っている。記者が最終的に守れるのは、骨を洗い流されていないいくつかの文だけだということも。


俺は二秒考えた。


「この一文を流せ」俺は言う。「昨夜俺が崩したのは黒塔だ。今日、彼らが崩そうとしているのは語り方だ。どっちの方が危険か、先に間違えるな」


彼女はそのまま書いた。今度は止まらなかった。


それでいい。これが綺麗な言葉じゃなく、警告だと分かっている。


四分はそろそろ終わりだと思っていたが、彼女はペンを止めて顔を上げ、さらに声を落とした。


「最後の一問、答えなくていいやつです」彼女は言う。


「数え方が柔軟ですね」


「記者はみんなそうです」彼女は言う。「パリがあなたに静かな部屋を用意したとして、鍵がかかって、窓が閉まっていて、水と書類と録音機だけが置いてあったとしたら――あなたはその部屋に入りますか?」


今度は俺はすぐには口を開かなかった。


これは政治的な質問じゃない。この質問は精度が高すぎる。彼女がさっき思いついたとは思えない。


たぶん彼女はマルセイユからずっと観察していて、俺が静かすぎる閉じた空間を嫌うことに気づいていた。表面は安全に見えて、実際には人間と時間を一緒に切り離すあの種の部屋を嫌うことに。彼女が聞いたのは「軟禁が怖いか」じゃない。「自分で入っていくか」だ。この二つは全然違う。


「答えなくていいですよ」彼女は言う。


俺はそれでも答えた。


「入る」俺は言う。


彼女が少し意外そうにしたが、口を挟まなかった。


「その部屋が、彼らがどう切り込んでくるかを知る唯一の方法なら、入る」俺は言う。「でもその部屋を信用はしない」


彼女のペン先が一瞬止まって、それから静かに「ん」と言って、その言葉を仕舞い込んだ。


その時、四分は本当に終わっていた。


横の女性官員がもう半歩前に出て、この幕間を終わらせようとしていた。


クレールは引き伸ばさなかった。ただ、全員が彼女が退くと思ったタイミングで、ポケットから小さな蓋付きのブラックコーヒーを取り出して、俺の前に差し出した。


熱くない。温かい。たぶん前の移動中にもう準備していたものだ。


「取材道具じゃないです」彼女は言う。「パリを今にも噛み砕きそうな顔をしている。とりあえず一口飲んで、最初のラウンドで落ちないようにしてください」


俺はそのコーヒーを二秒見た。


この仕草は大げさじゃないし、安っぽい人情味もない。彼女は俺の世話をしに来たんじゃない。ただ、マルセイユからパリまで押し込まれてきた人間が次に起こしやすいのは崩壊じゃなく、鈍化だということを分かっている。人が鈍ると、答えが他の人間に拾われて書き換えられやすくなる。彼女はそのバージョンを見たくない。


そういう判断は、たいていの善意より価値がある。


俺は受け取った。


「タイミングの選び方が上手い」


「仕事です」彼女は言う。「それと少しだけ自衛。自分が追いかけている人間が最初の会談で標本にされるのは見たくない」


「自分の仕事の立ち位置、健全ですね」


「パリよりは少しだけ」


俺は一口飲んだ。正確に苦い。砂糖なし、フランス人が何でも綺麗に包もうとするあのミルクの味もない。それでいい。


俺は空のカップを彼女に返した。


「モローさん」


「はい?」


「さっきの三つ、今夜そのまま流したら、相当な数の人間に嫌われる」


彼女はカップの蓋を閉めて、表情は変えなかった。


「それなら、まだ記者らしくやれているということです」


その一言が終わると、彼女は自分から半歩下がった。それ以上質問もしないし、「道中お気をつけて」みたいな役に立たない祝福も付け足さない。この先の道が順調なはずがないと分かっているからだ。彼女はただ自分のやるべきことをやり、残せるものを先に釘で留めて、俺をさらに奥へ進ませた。


それでいい。


少なくとも、ドアの向こうで待っている連中よりはずっとマシだ。


***


パリ外圏の安全引き継ぎポイントから内務・安全系統の臨時会談室まで。その間にあるのは、三枚のドア、二本の廊下、一度の身元確認、二基のエレベーターだけだった。


だがその距離の設計だけで、どんな正常な人間でも、自分がもう正常な人間として扱われていないんじゃないかと疑い始めるには十分だった。


一枚目のドアはガラス張りで、透明で、カードをかざして開く。まるで「ほら、我々はこんなにオープンです」とでも言いたげに。


二枚目のドアは金属製で、不透明。中にはスキャンフレームと、無駄口を一切叩かない保安要員が二人。


三枚目のドアが一番正直だ。分厚くて、白くて、ドアノブまで埋め込み式になっていて、「自分はいつでも出られる」という錯覚を人に抱かせることを拒否した、現代建築の良心みたいな扉だ。


俺は一路案内されていた。押されもしない。触れられもしない。


それがかえって、護送らしさを際立たせていた。


本当に洗練された護送に、乱暴さは要らない。ただ、周囲にある全ての合理的な選択肢を一つ残らず先に消しておけばいい。そうすれば人間は自分で前へ進む。そのたびに、こう思い知らされながら。今自分が進んでいるこの方向は、自由だからじゃない。この層の手続きでは、まだ「拒否する」という選択肢が配られていないだけだ、と。


保安検査の時、彼らは俺の外套の内ポケットの新しいスマートフォンには触れず、ただ一時預かりを求めた。旧端末はとっくに死んでいて、取り出す価値すらない。イヤホン、ペン、ポケットに押し込んであった皺くちゃの現場メモも、一緒に白いトレイに入れた。保安官は、まだマルセイユの灰を少し残している俺のイヤホンを見て、半秒だけ止まった。これが昨夜何を指揮していたのか、分からないのだろう。それでいい。分からないままでいろ。


スキャンフレームを抜ける時、場違いな比喩がふと浮かんだ。


昨夜、俺は一号塔の上から、第三黒ミサ塔を一層ずつ解体していった。 今日はパリが、俺をここへ送り込みながら、一層ずつ解体している。


ただ黒塔が解体していたのは、骨とリズムだ。パリが解体しているのは、距離と選択肢と、自分の立ち位置への実感だ。


白い塔。


この街の内部にも、塔がある。 ただ色を、綺麗に塗り替えているだけだ。


二本目の廊下は一本目より長く、壁面は吸音材で覆われていて、足音が反響しない。こういう設計は普通、高級会議センターか心理評価エリアか、中で何を話しているか外に知られたくない場所に使われる。どれも好きになれない。照明は均一で、人間味がないほど均一だ。壁には窓も絵もなく、時間の手がかりになるものは一切ない。左側には十メートルおきにドアが並び、脇には小さな数字とアルファベットのコードが貼ってある。人を分類する前のサンプル室みたいだ。


歩きながら俺は思った。パリも実は黒塔とそれほど変わらない。


黒ミサ塔は死者と鐘と木骨と鎖と悪意を同じ空間に押し込んで、まとめて動かそうとする。 パリのこのシステムは権限と機密と手続きと安全保障と礼儀を同じ廊下に押し込んで、これを秩序だと信じ込ませようとする。


違いは、前者の方が誠実だということだ。 少なくとも、最初から牙を剥いてくる。


エレベーターで下へ降りる時、中にいたのは俺と、あの連絡官と、最初から最後まで一言も喋らない安全要員だけだった。壁はステンレスで、ぼんやりとした反射に今の自分が映る。外套はマルセイユのままで、洗ったが完全には落ちておらず、袖口には少し焦げた縁が残り、襟元には取れない折り目がついている。目の下には隈、髪は乱れていて、全体的にフランス内務・安全系統との会合に出る人間というより、事故現場から拾われて、そのまま次の事故に放り込まれた人間に見えた。


案外、的を射ている。


エレベーターのドアが開いた瞬間、初めて本当の「パリ屋内」の匂いがした。


香水でも木材でも高級カーペットでもない。空調と紙とプリンタートナーとミネラルウォーターのプラスチック封膜、それにごく薄い消毒液の匂い。この匂いが好きじゃない。たいてい二種類の場所でしか嗅がないからだ。病院のある種の階層と、政府が自然の痕跡をできるだけ残したくない会議区画。


臨時会談室は廊下の突き当たりにあった。


ドアの外に表札はなく、記録担当者が一人、通訳が一人待機していて、それに国家安全保障系の法務顧問らしき女性が一人いた。彼女は書類の束を抱えていて、紙の端はきっちり揃っているが、目だけが二時間も眠れないまま叩き起こされた人間特有の乾きをしていた。彼女は俺を見ると、まず外套を、次に顔を、最後に俺の空になった両手を確認した。さっきの幾つかのドアの間で、リストにない何かを拾ってきていないか確かめるように。


「周さん」彼女は言う。「これより第一ラウンドの臨時状況会談を行います。この間、全ての内容はフランス側で完全に記録されます。国際的な宗教または外交上の機微に触れる場合は、別途分流を行います」


「分流という言葉まで、医療廃棄物の処理みたいに聞こえる」


彼女は受けず、ドアを開けただけだった。


入って最初の一瞥で、俺はこの部屋が嫌いだと確信した。


部屋は大きくない。長方形で、窓がない。壁は真っ白で、綺麗すぎて、ここで一度も耳の痛い真実が語られたことがないかのようだ。テーブルは薄いグレーの会議テーブルで、中央には未開封の水が四本、ティッシュボックスが数箱、録音機器が二台、それに空調の吹き出し口か盗聴孔か判然としない黒い点が一つ。椅子は座り心地が良さそうに見えるが、背もたれの角度が絶妙に調整されていて、長く座っていると無意識に前傾姿勢になる。壁に時計はない。当然だ。本当に時間を支配したい人間は、時計を壁に掛けて客に見せたりしない。


テーブルの向こう側には、すでに資料が三束置かれていた。


一束目のラベル:Marseille Incident – Preliminary Structure Assessment 二束目:Operational Actors & Non-State Assets

三束目が一番面白い。表紙にはこう印刷されていた:Subject: Zhou Shida


結構だ。


名前まで主語にされた。


パリは正式に、俺を自分たちの文章の中に組み込み始めた。


俺は椅子の前まで歩いて、すぐには座らなかった。


連絡官が斜め後ろに立ち、相変わらず絶妙に礼儀正しい口調で言った。


「ご覧の通り、ここはあくまで臨時会談室です。正式な場所は現在手配中です」


「残念だ」俺は言う。「もうここで十分、人を切り刻む準備が整っているように見えるが」


彼は受け流して、続けた。


「まずは少しお休みください。第一ラウンドのメンバーが数分後に入室します」


俺はその椅子を見て、さっきクレールが最後に投げた質問を思い出した。


パリがあなたに静かな部屋を用意したとして、鍵がかかって、窗が閉まっていて、水と書類と録音機だけが置いてあったとしたら――あなたはその部屋に入りますか?


入った。


ここが、奴らの最初の一太刀がどこに落ちるかを見極められる唯一の場所だから。


それでも、この部屋を信用はしない。


俺は最終的に座った。椅子は案の定、体を少し前へ押し出してきた。結構だ、座り方まで指定してくれる。テーブルの水には手をつけず、ティッシュにも触れなかった。資料は一束目の最初のページだけめくった。


フランス人は時々異常に早い。現実が先に逃げ出すのを恐れているみたいに。彼らはすでに昨夜のマルセイユの出来事をブリーフィング言語に圧縮していた。三つの異常高構造体、出所不明の歴史型武装、宗教儀式残留物の疑い、国際生中継による世論の制御不能、地上火力と非正規協力ユニットの一時的統合。綺麗に書かれている。綺麗すぎて、昨夜がただの高度な消防訓練だったみたいだ。


二ページ目をめくると、自分の名前が四角い枠の中に入れられていて、周囲にいくつか矢印が伸びていた。


Local Tactical Coordination

Unknown Ritual Interface Capability

Non-State Armed Asset Command Relationship

Potential International Religious Link


俺はその単語を眺めて、笑いそうになった。


昨夜、俺は一号塔の上で双眼鏡を握って塔を崩す指揮をしていた。 今日、パリは四本の矢印と四角い枠で、あの夜全体を一枚の紙に収めようとしている。


官僚の度胸は、時々幽霊より常軌を逸している。


ドアの外から、かすかな足音が聞こえてきた。


一人じゃない。 少なくとも四人。 そのうち一人は歩調が安定していて、主賓席に座り慣れた人間の足音。一人は少し早く、たぶん助手か記録係。もう一人は半拍止まった。おそらく表情を整えている最中だ。


俺は資料を閉じて、少し背もたれに寄りかかった。


さあ。


黒塔は崩した。 今度は、白い壁の番だ。


そして俺のパリへの信頼は、今のところ、きっかりゼロだ。

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