↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
572/585

165.生配信 5

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

命令が流れても、ライン全体から歓声は上がらないし、映画みたいなバカげた雄叫びもない。本当にまだ生きていて、まだ戦える連中はもう分かっている。第三黒ミサ塔は、もはや俺たちと「どっちがより凶暴か」を競っているんじゃない。自分自身と「どっちがゆっくり死ねるか」を競っているだけだってな。


まずは外輪を見る。


岳家軍の大盾手が海側の大通りと二本の路地を完全に封鎖していた。盾面を一枚ずつ重ねるように押し当てて、街区そのものを棺の蓋に釘付けにしていく。長柄手は盾の後ろに立ち、穂先が出せるギリギリの隙間だけを空けておく。塔の外肋の隙間から何かが這い出てきたら、まず脚を突き刺し、倒れたところで喉と眼窩に二撃目を入れる。勾鎌手は上を狙わない。膝や足首、腰の高さから垂れ下がってくる半死の鎖と木肉の筋膜だけを、ひたすら引っかけては、一節ずつ引きちぎっていく。神腕弓はさらに後方。射手たちは半跪きになり、矢をばら撒くことはしない。まだ高所でもがいている節点の白衣と吊り鐘の支架だけを、正確に撃ち抜く。一斉に弦が鳴る音は短く、乾いていて、遠くで誰かが指を一列ずつへし折っているみたいに聞こえた。


馬三娘(マー・サンニャン)の方からの返答は早かった。土の中から掘り出したばかりの石みたいに冷たい声だ。


「外輪は封鎖済み。奴らが悲鳴を上げるにも、まず私の許可が要る」


「上等だ」俺は言う。「さらに五メートル詰めろ。突くな、焦るな、踏ん張らせるな。腕を伸ばしたら腕を落とす。足を上げたら足を折る」


「了解」


そう答えると、外線は本当に縮み始めた。


一斉に突撃するんじゃない。輪そのものが、ゆっくりと押し込まれる。盾が先に動き、戟がその後ろから圧をかけ、神腕弓はさっき俺が修正した節点順に撃っていく。第三塔の外殻には、もともと肋骨ともマストともつかない海側の支柱が何本か残っていたが、それも輪の締め込みと一緒にどんどん短くされていく。まるで巨大な獲物が罠に前脚を突っ込んでしまい、挟み罠に噛まれたまま、まだ死にきれずにもがいているみたいだ。一回転がろうとするたび、自分で自分を引き裂いていく。


俺は双眼鏡を突破口の中へ押し込む。


先頭隊はすでに第一層内肋を固めきっていた。


黒塔の第一層は、外から見ていたときよりさらにおぞましい。血まみれだからじゃない。構造そのものが気持ち悪い。あそこは部屋というより、通路とアーチ肋、鐘梁と死体架をわざと無理やり繋ぎ合わせた消化管だ。木は木じゃなく、鉄は鉄のままじゃない。たくさんのものが「自分が建材なのか死体なのか、まだ決めかねている」状態で止まっている。岳家軍の大盾手たちは第一層の肋骨の間に三角形のデッドスペースを作り、短兵隊は盾の縁を踏み台にして左右へ切り込んで、そこから生えてきた鉤手、短斧、半身の白衣を一つずつ片付けていく。


問題は、第二層への入口だ。


そこは、わざととしか思えないほど狭い。


正面だけ見れば扉。でも一歩入れば、ただの扉じゃなくて、上へ向かって絞られていく喉管になっている。左右の肋木が斜めに交差し、頭上にはまだ完全には切れていない内側吊り鎖が二本ぶら下がっている。第二層の連中は下まで突撃してはこない。その入口だけを死守して、自分たちを鉄と肉の栓みたいに押し込んでいる。外から撃てば、肋木の角に弾を食われる。中から押せば、頭上から潰されやすい。こういう場所が一番タチが悪い。見た目は派手じゃないくせに、効果だけは抜群だ。


だからこそ、三十秒が要る。


「自分たちはまだ塞ぎきれている」と思わせる時間が。


三十秒が過ぎたところで、俺は再び口を開く。


「バローロ神父。鐘の拍を短く。塔心じゃなく、入口左側の肋架を叩け。崩すな、足を取れ」


耳機の向こうから、いつもどおり酒をひっかけてからミサを始めるような、しゃがれた声が返ってくる。


「君は毎回、冒瀆を土木工事みたいな言い方で頼んでくるね」


「今やってるのは、正真正銘土木工事だろ」俺は返す。「シスターは?」


マリア修女が回線に入る。神父よりもさらに落ち着いた声だ。


「割れ鐘の余韻なら入れられるけど、四発まで。五発目で第一層も一緒に落ちる」


「四つで足りる。四発の間にこじ開ける」


俺は再び海側へ切り替える。


「ヴィクトリア」


風のノイズの中から彼女の声が返ってくる。背後では、圧縮エーテルの風が金属の縁をかすめる鋭い鳴きが混じっていた。


「聞こえてる」


「風はもう中に吹き込むな。塔の外殻に沿わせて流せ。煙と灰と木屑を上へ持っていけ。第二層入口の輪郭を出したい」


「了解」少し置いてから、彼女が一言足す。「シュトゥルムシュライターなら、まだ前に半ブロック詰められる。K7も、もう一回だけ送れるわ」


「K7は破砕弾と鉄鉤、それから最後のロケット弾を送れ。シュトゥルムシュライターは主街に入るな。外側に立って壁やってろ。今日わざわざ二足ゴーレムに穴掘りを教える必要はない」


K7の運転手の声が、場違いなくらい素直な調子で割り込んでくる。


「了解。やっぱり今日も俺に運送屋やれってパターンだよね」


「他に何がある。自分を騎士だとでも思ってんのか?」


「俺の車の方が高いんだけど?」


「ならスピード落とせ。自分で自分を骨董品にするんじゃねえ」


彼は鼻を鳴らし、それ以上の無駄口は叩かなかった。


俺はさらに高所に目をやる。


エリザヴェータは第三塔の突破口右上の残った肋骨片の外側にしゃがみ込んでいた。夜の空間に打ち込まれた一本の釘みたいに。どこを壊せばいいか、あいつに指示する必要はない。高位の節点白衣が何人残っているかも、どこにいるかも、動けばあいつが先にたどり着く。大仰な段取りは好まないくせに、要所に立っている人間を世界から消し飛ばすのは大好きだ。まさにそのためにいる。


「右上の節点、二つ。任せる」


回線の向こうは静まり返った。二秒ほどしてから、ようやく気のない声が返ってくる。


「相変わらず、仕事の選別がいいこと」


「じゃあ記者に頼もうか?」


「いいわよ。その代わり、カメラは先に妾に寄越せ」


その一言が終わるのとほとんど同時に、双眼鏡の視界から右上の残肋の影が一つ消えた。吹っ飛んだんじゃない。そこに「いた」という事実そのものが、突然なかったことになった。二人目は逃げようとしたが、死角から引き摺り出され、そのまま外骨格に叩きつけられて、一瞬だけぶら下がってから、下の霧と火の中へ落ちていった。


塔冠の後ろは、しんと静まり返る。


市長は何も言わない。クレール・モローも何も言わない。カメラはまだ俺の背中と、その向こうで輪を締め上げられていく黒塔を映している。それでいい。文明世界は今は静かにしていろ。先に文明じゃない方を片付けさせろ。


「全線、注意」俺は言う。「第二層入口、開口プロセス開始。内部の盾隊は半歩下がって、投擲弧を空けろ。短兵隊は火炎瓶を構え。外線の神腕弓、第三射は左上の内側吊り鎖だけを狙え。長柄持ちは出口を押さえろ。飛び出してきたやつから串刺しだ。馬三娘、外輪をさらに二メートル詰めろ。中の残りの空気を、もう少し搾り出す」


「詰める」彼女が答える。


「神父。一拍目」


次の瞬間、遠くの第一塔下層から、鈍い鐘震が響いた。


普通の鐘の音じゃない。瀕死の鉄鐘に、鉛の塊を無理やり押し込んでから、斧の背で殴りつけたような音だ。遠くまで澄んで届くのではなく、狙った一点にだけ正確に刺さる。釘が一本、第三塔の左肋に向かって打ち込まれたみたいに。双眼鏡の中で、その部分の内部構造がわずかに歪む。


「二拍目」


もう一度、震えが走る。


第二層入口左側の肋架が一寸だけ外へ捻じれた。一寸。それで十分だ。同時に神腕弓の第三射が一斉に放たれ、俺がさっき指定した角度どおりに矢が滑り込む。まだ千切れていない内側吊り鎖と、その奥で押さえについていた死体二体に、まとめて釘を打ち込む。鎖が引き千切られた拍子に、中で入口を塞いでいた塊全体が左へ流れた。


「三拍目」


三発目が入るタイミングで、俺は今度は内側の先頭隊に命令を出す。


「火炎瓶、左一右二。投げたら頭を下げろ。結果を見るな」


三本の火炎瓶が第一層の盾の陰から放物線を描いて飛び出す。味方の兜を掠めるようにして、ぎりぎりで第二層入口に滑り込んでいく。ああいう場所での火は、誰かを焼き殺すためのものじゃない。既にぎゅう詰めになっているものを、もっと詰まらせ、もっと混乱させ、もっと「見えなく」するための道具だ。ガラスが砕ける音は、ほとんど炎に飲み込まれて消えた。そのすぐ後に、短い悲鳴のようなものが重なる。人というより、湿った杭の芯が急に燃え上がった時に上げる声に近い。


「四拍目」


四つ目の鐘震が走った瞬間、入口左縁がとうとう半分崩れ落ちた。


大穴になったわけじゃない。ただ、きっちり塞がれていた喉の入口に、斜めの三角形が一つ、無理やり穿たれた。だが、戦場じゃその半身分の幅で全てが変わる。岳家軍の大盾手がすぐさま盾を斜めに押し込み、破口へと楔のようにねじ込む。短兵隊は盾の角に体を沿わせて滑り込み、後ろの勾鎌持ちがまだ垂れ下がっている二本の鎖を引っかけて引き倒す。中で入口に詰まっていた連中は、自分たちの残骸と鎖と燃える木片に足を取られ、一瞬だけ動きが止まる。その一拍あれば、俺には刃を差し込む時間がある。


「内部。第二層入口、強奪開始」俺は言う。「取るのは門だけだ。奥は競争するな。盾が前、斧が後ろ、戟は膝を狙え。真っ先に奥へ突っ走ったやつは、後で俺が真っ先にどなりつける」


耳機の中で、短く揃った応答が並ぶ。


直後、第三塔の中の音が変わった。


さっきまでは、ただの足掻きだった。今のは、水面下に押さえつけられた人間が、本格的に水を飲み始めた音だ。


最初の岳家軍の大盾が、斜めに第二層の破口へ噛み込むのが見えた。盾の角が、焦げた残肋を叩き折る。背後に短斧兵が密着して続き、頭は狙わない。膝の関節と肩の根元だけを叩き折る。第二層の連中は、こんな狭い入口での近接戦じゃどうにもならない。短斧と鉤鎌と、半分に折れた槍の柄でむやみに突き返すしかない。だが連中が暴れれば暴れるほど、入口は詰まる。入口が詰まれば、外からの増援は差し込めない。引きたくても引けない。引けないまま、背後では馬三娘の外輪がさらに一段締まって、塔全体から残りわずかな呼吸空間をさらに奥へと追い込んでいく。


これが挟殺だ。


英雄同士の刺し合いじゃない。構造と、リズムと、空間と、火力と、風向き。全部まとめて使って、首を絞める。


「ヴィクトリア、今だ」


海風が、瞬時に向きを変えた。


さっきまで外殻に沿って上へ流れていた煙と炎が、彼女に頭を撫でられたみたいにして、両側へ払いのけられる。第二層入口の上に、煙の陰に隠れていた残りの節点が、骨の露出した布切れみたいに浮き出る。俺は一瞬も止まらない。


「エリザヴェータ」


「見えておる」


高所の二つの影が、ほとんど同時に「切れた」。正確に言えば、本来そこに「立っているはずだった場所」が二つ、同時に空白になった。空いたものが、次の瞬間にやっと落ちていく。第二層入口の上辺は高位の援護を失い、中で踏ん張っていた連中は、一瞬だけ、蛍光灯の下に突然晒されたゴキブリみたいに身をすくめた。


「K7、破砕弾を突破口外縁まで。ブームは射線に入れるな。ロープだけ第一層に投げろ」


「もう着いてる」K7が返す。「たまにお前、世界中が自分より遅いと思ってるだろ」


「たいていの場合、事実だ」


「マジで、お前が今まで死んでないの、あっち側にコネでもあるからだろ」


「あるさ。しかも、そこそこ太い」


俺は、K7の巨体が海側のバリケードの陰をゆっくり切り抜けていくのを見た。ブームが二箱分の破砕弾と鉄鉤を第一層外縁にそっと下ろし、すぐさま引き戻される。車体全体が主射界に踏み込むことはない。妙に職業意識の高い倉庫係みたいだ。違うのは、普通の倉管は投石機の横でバックしないってことぐらいだ。


「第一層、破砕弾二組。第二層右下の肋根に直接貼り付けろ。貼ったらすぐ盾の後ろまで下がれ。外線は同時射撃の準備。三、二、一――貼れ」


その後の十秒は、忙しいくせに、驚くほどクリーンだった。


二組の破砕弾が押し上げられ、第二層右下の、一番邪魔な二本の承肋にがっちり噛みつく。神腕弓は第四射に入り、破口の周りで顔を出したものを全て、その場から釘で縫い付けていく。外輪の長柄持ちはさらに半歩押し込まれ、肋木の隙間から抜け出そうとする残りの兵だけを狙って突く。馬三娘の方から、不意に報告というより判決みたいな短い怒鳴り声が聞こえ、その直後、塔の脇へ退こうとしていた枯れた騎士たちの列が、彼女の隊にまとめて押し返され、掃き掃除みたいに戟の森の中へ掃き込まれる。


「爆破」


第二層右下の肋根が吹っ飛んだ時、音そのものは意外と小さかった。むしろ長年溜め込んでいた骨の空気を、一気に抜いたような感触だ。


入口右下の縁が、中へ向かって大きく沈む。


第一層と第二層の間にあった、半身を斜めに捻ってやっと抜けられる隙間が、ようやく盾も斧も、人間も通せる通路になった。火と煙と木屑と黒布と鎖が一緒くたに中へ崩れ落ち、中でまだ死守しようとしていた連中は、自分たちの崩落に足を取られて、あっという間に動きが乱される。整理する暇なんて、最初から与えるつもりはない。


「内部、第二層を丸ごと奪取」俺は言う。「言うまでもねえが、取るのは『層』だ。『心臓』の取り合いをするな。大盾が上がり、短斧が左右を掃除、勾鎌で転ばせて、後ろから戟。第二層を俺たちのものにする。英雄の墓場にするんじゃねえ」


耳機の向こうで、短く鋭い「了解」が幾つも叩き込まれる。


次の瞬間、第三塔の第二層全体が、挽き臼の中に押し込まれたみたいに変わっていった。


俺は双眼鏡で、その押し込みを最後まで追いかける。


大盾持ちが先に進み、盾の縁が火花を散らしながら前へ押す。第二層は第一層より少しだけ広いが、それでも「二列で睨み合う」程度しか幅がない。中で待ち構えていた黒甲の短斧兵たちは、ついに正面から受けて立つしかなくなったが、さっきと同じ問題を抱えたままだ。空間が足りない。外輪が締まりすぎている。退路はない。高位の節点も消えた。エリザヴェータが最後の吊り鎖節点を引き剥がした瞬間、第二層上空は屋根を剥がされたみたいに開き、外線の火力が斜めに切り込めるようになった。神腕弓はもはや入口だけでなく、第二層の奥そのものを狙い撃ちにする。一射ごとに、あの塊がさらに一段小さく縮んでいく。


「馬三娘、外牽骨架はあと何節残ってる?」俺は訊いた。


「海側に二節、街側に一節半」彼女は答える。「街側の半節は、もうほとんど奴らのものじゃなくなってる」


「なら街側から先に崩せ」


「了解」


次の一分で、外輪の投石機がついに再び口を開いた。


消防署から引っ張り出してきたあの重型投石機は、ここまでずっと南宋から時代を間違えて迷い込んだ老職人みたいな働きぶりを見せていた。騒がず、焦らず、でかいものが必要な瞬間にだけ、正確な場所へ石を送り込む。今回は塔心も高所も狙わない。俺が事前に調整しておいた角度だけを忠実に守り、街側に残った最後の一節半の生きた外牽を叩く。一発目の石が外層の木骨に亀裂を入れ、二発目がその裂け目に食い込み、三発目が落ちた瞬間、外牽の一節全体が膝を後ろへ蹴り折られたみたいに、ぐしゃりと崩れ落ちた。


第三塔全体が、街側へ一瞬傾いだ。


その一瞬で、塔内二層でまだ踏ん張っていた連中が、同時にバランスを崩す。


「今だ」俺は言う。「外線、全面圧迫。内線、もう一格前進しろ。止まるな」


二層は、その直後に陥落した。


格好よく旗を立てたわけじゃない。誰かが飛び込んでボスの首を刎ねたわけでもない。ただひたすら地味で、残酷で、退屈な話だ。息ができる隅が一つずつ潰され、踏ん張れる骨格が一本ずつ抜かれ、逃げ帰れる道が一寸ずつ塞がれていく。黒ミサ塔なんてものは、そもそも生き物じゃない。ただ何らかの悪意が、生き物っぽい形に無理やり継ぎ合わせただけの代物だ。その悪意が依存していたリズムと、承肋と、外牽と、節点と、火力と、空間を全部取り上げれば、残るのは腐敗だけになる。


「二層、確保完了」先頭隊から報告が入る。


「よし。三層へは突っ込むな」俺は言う。「外からもう一締めかける。塔全体を自重で崩落させる。お前らが道連れになる必要はねえ」


背後で、誰かがようやく息を呑んだ。


振り返らなくても分かる。塔冠にいる人間の観客たちが、ようやく戦況に追いついたんだ。市長も今頃になって理解しただろう。俺がさっきカメラの前で一句一句話していたのは、見世物じゃなく解体作業だったってことを。クレールのカメラマンはまだ撮り続けている。レンズが向きを変える微かな機械音が聞こえる。いいぞ、撮り続けろ。世界はこれをちゃんと見ておいた方がいい。後で誰かが「まず二週間、会議で引き延ばせばよかった」なんて寝言を言い出さないようにな。


俺は公共周波数を開いた。


「パリがまだ見てるなら、記録しておけ」俺は言う。「第三黒ミサ塔、第二層奪取完了。外輪封鎖済み、内部挟撃継続中。残ってるのは塔心と上層、それと自分がもうすぐ終わるって事実を認めたくない僅かな意地だけだ」


耳機の中が静まり返る。


数秒後、返答はパリからじゃなかった。教皇庁の暗号回線が先に繋がった。声は神父でも修女でもない。俺の知らない老人で、イタリア訛りが飾り気なく重い。


「ジョウ氏、教皇庁は確認した。現場処置権は、引き続き貴殿が保持せよ」


俺は双眼鏡を覗いたまま、笑わなかった。


「事が終わる前に、人間の言葉を使える機関があるとは珍しい」


向こうが少し間を置く。この皮肉を公式記録に含めるべきかどうか、判断しかねているらしい。最終的に、賢明にも飛ばした。


「フランス政府も、間もなく同様の声明を出す」


「なら急がせてくれ」俺は言う。「こっちは今日もう二つ半崩してる。プレスリリース待ちをする暇はない」


塔冠の後ろで、誰かが笑いをこらえた。おそらくカメラマンだ。クレールは笑わなかった。彼女は大抵の人間より反応が早い。自分が今立っているのは、歴史と工事現場が混ざり合った場所だと分かっているはずだ。


俺は双眼鏡を第三塔へ戻した。


二層を奪った瞬間から、塔心が露出し始めていた。

「とても面白い」★四つか五つを押してね!


「普通かなぁ?」★三つを押してね!


「あまりかな?」★一つか二つを押してね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。