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165.生配信 1

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

二号黒ミサ塔が倒れた後、左翼の街区一帯は、巨大なハンマーで思い切りぶん殴られたみたいに、まず全体が震え、それからゆっくりと音を吐き出し始めた。


木骨が折れ、裂鐘が砕け、カルトと乾屍が一緒くたに灰の中へ埋まり、煙塵が汚れた壁のように街路に沿って外側へ押し広がっていく。岳家軍(がっかぐん)は塔が倒れたからといって無闇に追撃したりしない。まだ包囲線を締めている。大盾手が逃走口を一つずつ塞ぎ、長戟手と勾鎌槍が煙の中から飛び出してくる残兵だけを専門に掬い上げ、神臂弓は屋上と高窓で拍を補おうとするカルト節点を清除し続ける。左翼全体はもう交戦じゃない。処理作業だ。


俺は一号塔の塔冠に立ち、双眼鏡を手に、まず左翼を見て、それから海側を見た。


三号塔はまだ立っている。


二号塔が倒れたからといって手を引く様子はない。むしろ自分が局面を支える最後の骨になったと悟ったかのように、海霧をさらに凶悪に吸い込んでいる。封海道兵と障板隊はまだ南街口への探りを続け、鎖鏈カルトもより高い位置に角度を求め始めた。俺の足元の一号塔鐘室では、バッローロ神父とマリア修女が交代で干渉拍を叩き続け、あの歯の根が浮くような不快なリズムを一段ずつ引き裂いている。エリザヴェータは高所に漂う錯覚のように、ときどき人がいるはずのない場所からふっと姿を見せては、次の瞬間にカルトが一人、窓の縁か吊り足場か崩れた壁から落ちていく。


局勢は少し落ち着いた。だが、本当に「少し」だけだ。


双眼鏡を下に向け、K7の補給線がまだ綺麗か確認しようとした矢先、イヤホンが「カチッ」と鳴って、プライベートチャンネルに切り替えられた。


公開通話でも戦術通話でもない。プライベートだ。


俺は眉をひそめた。


「なんだよ」俺は言う。「こっちは今、野次馬中……じゃねえ、戦況観察で忙しいんだが」


イヤホンの向こうが一秒静かになり、リン・ユートンが明らかに白目を剥いたのが声だけでもわかった。


「自分で笑ってる。よく言うわね」


「なら本当に用があるんだろうな。」俺は双眼鏡を海側に向け直した。「じゃないと、後で忙しくなったとき、真っ先に公開チャンネルに放り込むぞ」


「……ちょっとした厄介事よ」


その間の取り方で、俺は本能的に視線を三号塔から市政廳(しせいちょう)の方向へ戻した。


本当にヤバい事態なら、あいつはこういう口調にはならない。この言い方で「ちょっとした厄介事」とオブラートに包むときは、大抵、人が死ぬようなトラブルじゃない——死人よりも鬱陶しくて、処理するのに無駄な時間を食う類のやつだ。


「どんな厄介事だ」俺は聞いた。


「マルセイユ市長」


俺は一秒黙った。


「まだ逃げてなかったのか」


「逃げてない」


「それだけは市長らしいな。」俺は言った。「それで?」


リン・ユートンがまた少し間を置いた。


下から足音が聞こえ、何かを引きずる音、フランス語で悪態をつく声が混じっている。明らかに話しながらまだ仕事をしている。それが余計に嫌な予感を呼んだ。


「市長の周りに、記者チームがついてる」


俺はゆっくりと双眼鏡を下ろした。


ああ。


クソデカい厄介事だ。


塔冠に立ったまま、俺はさっき倒れたばかりの左翼二号塔の廃墟と、まだ牙を伸ばしている海側三号塔とを見比べて、この世界がようやく黒ミサ塔とも乾屍騎士団とも岳家軍とも違う、もっと厄介なものを送り込んできたと思った。


メディアだ。


しかも、市長のお供として正式にご到着のやつ。


俺は自分でも笑えてくる質問を口にした。


「撮るなとは言ったか?」


言った瞬間に、俺は先に笑った。


笑いは喜びじゃない。普通の人間の理性が、自分の口から馬鹿なことが出てきたのを見た瞬間、羞恥の本能として最後に絞り出す反応だ。


十生に一度あるかないかの光景を撮るなと記者に言うのは、強盗に「盗むな」、放火犯に「火遊びするな」、強姦犯に「やめとけ」と言うのと同じで、人間性に対する無駄な幻想だ。特に今、マルセイユの外はとっくに爆発しているはずだ。二号塔が倒れたあの一撃で、フランスどころかヨーロッパの半分が察しただろう。ここが普通の暴動でも単純なテロでも、港でカルトが花火を打ち上げているだけでもないことを。


マルセイユ全体が死んだ十字軍に包囲されている。


街の中から黒い塔が生えた。


中国から来た古代軍隊が十字軍を正面から押し潰している。


南街口には圧縮エーテル喰いの二足魔偶(にそくまぐう)が陣取り、広場の脇にはクレーンアームトラックが弾薬を運び、鋼板を吊り上げ、掩体を補修し、高所では人間じゃない女が屋根の縁を伝ってカルトを解体している。


この騒ぎは、あの連合艦隊2.0がルーマニアに押しかけたときよりよほどでかい。外側ではどれだけの役人が冷や汗をかき始め、辞表のテンプレを探し始め、あるいはとっとと責任の押し付け先を探し始めているか、想像もつかない。こんなとき、たった一言の「撮影禁止」で片が付くと本気で思うくらいなら、三号塔が自分から海に歩いて入って勝手に溺れ死ぬのを信じてやったほうがまだマシだ。


リン・ユートンがイヤホン越しに、冷たい一言を足す。


「自分で笑って、よく私に聞けるわね」


「俺が笑ったのは、自分にまだちょっとだけ純情が残ってるのに気づいたからだ」俺は言う。


「それは純情じゃなくて病気」


「その病気でここまで生き残ってるってことは、この病気は役に立つってことだ」


話しながら、市政廳の方向を見る。


下の様子は、すぐにあいつの言葉と一致した。市政廳前の広場、右側に確保されたばかりの安全区の縁に、戦場とまるで調和しない集団ができていた。ちゃんとしたジャケットを着てはいるが、そのジャケットじゅうに灰と血飛沫をつけた何人か、その中に、真っ白な髪で、今にも自分の得票数を丸呑みしそうな顔をした老爺、さらに彼の周りにはカメラ、ショルダータイプのカメラ、ブームマイク、防弾ベスト、そしてどう見ても「現場に着いてから、自分が地獄のサブクエストに飛ばされてきたと理解した」顔をしている記者の群れ。


あの男は、説明抜きで見ても、マルセイユ市長で間違いないだろう。


フランスの地方政治になんて、これまでまるで興味はなかった。だが今、ほんの少しだけなら、こいつを見直してもいい気分になっている。この街の外は死体で埋まり、中には黒い塔が生え、海辺では十字軍がまだ湧いている。それなのに、最初に消えたのではなく、記者を連れて火線に近づいてきた。こいつは本当に肝が据わっているか、あるいは、事態がすでに「今さら隠れても無意味」なレベルだと悟って、自らカメラの前に出てきたかのどちらかだ。


どちらにしても、俺にとっては厄介に違いない。


一度レンズが入ってきてしまえば、戦場は戦場だけではいられない。口を持ち、名前をつけられ、馬鹿みたいな見出しに切り刻まれ、外にいる馬鹿どもが、自分勝手な妄想で補完し始める。


俺はイヤホンを押さえたまま、すぐには返事をしなかった。


海側の三号塔では、障板兵の一隊が倉庫裏の路地に沿って南街口を探っているところで、シュトゥルムシュライターが膝を軽く沈めた。ヴィクトリアは、すでに受圧方向を計算に入れている。K7はまだ広場西側の死角に止まっていて、クレーンアームは垂れ下がり、車台のクルーは入れ替わり、新しい弾薬箱が外縁に運び込まれたばかりだ。ニウ・シャオチンの守る内圈に乱れはなく、馬三娘(マー・サンニャン)はまだ市政廳の前縁に立っている。岳家軍はあいつの指揮の下で、見えない定規で測ったみたいに、一列ずつ海側へと再配置されていく。


状況はまだ、俺の手の中だ。


そして今、新しい問題は「勝てるかどうか」じゃない。「見物人に見られながら勝てるか」と「その邪魔をさせないか」だ。


俺は五秒考えた。


カルト一人が死ぬのにも十分な時間だし、指揮官が判断を下すのにも十分な時間だ。


「よし」俺は言った。


リン・ユートンがすぐに食いつく。「何がよし?」


「その記者とカメラマン、まとめて上まで連れてこい」


「どこまで」


「屋上」


「本気で言ってる?」


「他にどうしろってんだ。」俺は双眼鏡を上げ直し、三号塔を一瞥してから、市政廳の場違いな来客たちに視線を移した。「撮るなら、VIP席で撮れってんだ。下で首なしハエみたいに飛び回らせるな。それに、市長に入口で、あとで俺が尻拭いしなきゃならなくなる馬鹿な演説をさせるな」


リン・ユートンは二秒ほど黙った。


「その決定、完全に頭おかしい人の発想に聞こえるんだけど」


「世界がここまで狂ってるんだ。」俺は言う。「俺はただ、いいカメラ位置くらいは先に押さえとくさ」


あいつは小さく笑ってから、すぐに声色を仕事モードに戻した。


「階段ラインを掃除しないと」


「掃除しろ」


「塔内二階、まだ血と肉片だらけよ」


「よく見て歩けって言っとけ。踏んだら、それはそっちの労災だ」


「市長の連れが、全員ちゃんとルールを守るなんて到底思えないけど」


「だったら、これから覚えてもらう。」俺は言う。「まず、いくつか伝えろ。ひとつ目、鐘と線と木の枠と符板には一切触るな。ふたつ目、外縁には近づくな。みっつ目、俺が喋ってるときに割り込むな。よっつ目、吐き気がしたら風下に吐け。塔の上に吐くな」


「ほんとにここを展望台だと思ってない?」


「違う。」俺は海側から市政廳へと視線を戻し、平坦な声で言う。「ここを(ふるい)にする。撮りたいなら、まずここまで上がって、自分が立っていられるか試せ」


あいつは、多分そこで俺の狙いを理解した。


情報が外へ漏れるのは、もう止めようがない。記者チームが押しかけてくるのも止めようがない。なら、いっそ俺の視界の中に引き込んでしまったほうがマシだ。ここの足元に立たせ、俺が見せたいものを見せ、俺が聞かせたい話だけを聞かせる。これはインタビューじゃない。物語の手綱を奪い返す行為だ。


ぶっちゃけてしまえば、戦争の終盤では、「誰が最初に喋るか」だって戦術のうちだ。


「わかった。」リン・ユートンが言う。「じゃあ、そこまで上げる段取りは自分で考えて。市長の連れには、歳いってるのが二人いる。上まで登り切れる保証はしない」


俺は一号塔塔冠の縁を見下ろし、それから市政廳本館の屋上を見た。


普通の状況なら、市政廳の屋上から一号塔までは遠くはないが、落ちれば十分死ねる空隙がある。常人は塔の内部階段を使って上るしかなく、遅いし狭い上に、二階の血と黒い油にまみれた区画を抜けなければならない。記者チーム一行を通すルートとしては、あまりにも雑で、あまりにも事故りやすい。


だが今、俺の手元には、さっき奪い取ったばかりの黒ミサ塔が一座ある。


そしてこいつの最大の長所は、「まともな建築基準になんか従わない」ところだ。


俺は別の回線を押し、鐘室に直通を入れる。


「神父」


バッローロ神父の声が、軽い金属の余韻を帯びてすぐに戻ってきた。「聞いている」


「一号塔の外殻構造、もうちょっとだけ借り増ししてもいいか?」


あいつはすぐには答えなかった。明らかに何かを確認している。


二秒ほど経ってから、ようやく口を開いた。


「何をする気だ」


「出迎えだ」


今度はあいつが黙り込んだ。


イヤホンの向こうで、マリア修女まで笑い声を上げた。爪でガラスを引っ掻くような、ひどく乾いた笑いだ。


「黒い塔を客引きに使う気?」修女が聞く。


「客引きじゃない。記者のお出迎えだ」


「そっちのほうがもっと最悪ね」


「うるさい。できるかできないかだけ答えろ」


バッローロ神父がようやく返してきた。「できる。塔の外骨格に、まだ半分生きてる支持肋が一区間ある。下層の拍を変えて、市政廳(しせいちょう)側に少し傾かせれば、接続肋を一本吐き出せる。見た目は最悪だし、橋と呼べる保証もないがな」


「人が立てれば十分だ」


「市長が落ちたらどうする」


「それはフランス民主主義から厄介事が一個減るってことだ」


修女の笑い声が今度はもっと大きくなった。


俺も口の端が少し動いたが、声色は変えなかった。


「やれ。一号塔を寄せろ」


「本当に頭がおかしいな」バッローロ神父が言う。


「ごちゃごちゃ言うな。五分以内に人が渡れる道を作れ」


鐘室から金属がぶつかる音と鎖を引きずる音が響き、続いてレバーを引く音と裂鐘の短い反拍が続いた。足元の塔全体が、すぐに反応した。地震みたいな乱れた揺れじゃない——本来動いてはいけないものが、ゆっくりと動き始めたときの、あの不気味な震えだ。外殻のまだ生きている木骨と黒鉄の支持肋が軋み始め、巨大な獣の関節を誰かが力ずくで捻っているような音を立てた。


俺は塔冠の縁に立ち、市政廳に面した側の外殻がゆっくりと膨らみ、伸び、下へ探るように動いていくのを見ていた。


橋じゃない。


塔の胴体から骨が一本生えてきたみたいだ。


黒い木肋が鉄条と敲き乱された鐘骨に混じり合いながら、一節ずつ外へ突き出し、空隙を越えて市政廳の屋上へと伸びていく。下ではまだ銃声が続き、海側では霧が湧き、左翼には死体が散乱している。俺は今しがた奪い取った黒ミサ塔の上に立ちながら、その塔が酔っ払いみたいに横へ傾いて、人を迎えるための骨の橋を生やすのを見ていた。


この世界、もう本当に救いようがないんだろうな、と思った。


だが救いようがないなら、とりあえず記者を上げてから考えればいい。


俺はプライベートチャンネルに切り替え、リン・ユートンに声をかけた。


「上がる準備をさせろ」


市政廳の屋上へゆっくりと伸びていく黒い骨肋を見ながら、一言つけ加えた。


「一号塔を寄せて迎えに行く」


---


市長とその記者チームが一号塔に登ってきたとき、俺の最初の感想は「面倒だ」じゃなかった。


こいつら、よく本当に上がってきやがった、だ。


一号塔が伸ばした黒い接続肋はまだ微かに脈打っていて、完全に死んでいない骨のようだった。人が踏み込むたびに、塔が重さを少しずつ内側に吸い込み、細かな軋み音を立てる。普通の人間がこういうものの上を歩けば、まず足の裏が溶けそうになり、それから頭が後悔し始める。


市長が塔冠を踏んだ瞬間、さっきより顔がさらに一段白くなっていた。風のせいでも高さのせいでもない。この化け物が一体何なのか、ようやく間近で見たからだ。裂鐘、黒木、鉄の肋材、乾いた血、叩き乱された後もまだ壁面に残っている符線。これは宗教的な名所じゃない。俺たちが力ずくで奪い取って、まだ洗い流す暇もない敵の火力制御拠点だ。


後ろの連中も似たようなものだった。


カメラマンは機材を抱え、音声担当はブームマイクを握りしめ、プロデューサーが二人、足を踏み外しそうになりながら歩いてくる。文明世界から戦場に蹴り落とされたばかりの観光客みたいだ。ただ、一番前にいた女性記者だけが違った。ショートヘア、ジャケットの袖口に灰がこびりつき、イヤホンのケーブルが襟元に絡まっている。目がずっと動いていた。叫ばない。無駄な質問もしない。


こういうタイプが一番やっかいだ。


野次馬じゃない。細部を記憶して、帰ってから解体して、こっちの世界を他人にもわかる言葉に翻訳してくる人間だ。


俺は全員を内側に寄らせ、塔冠の外縁から最低二歩は離れさせた。


「ルールをもう一度言う。」俺は全員を見渡して口を開いた。「一つ目、塔の上のものには何も触るな。鐘も骨格も鉄条も、床の黒いやつも、壁のカビみたいなやつも、全部触るな。二つ目、外縁に近づくな。三つ目、俺が命令を出しているときに割り込むな。四つ目、吐くなら風下に吐け。五つ目、落ちたやつは俺が助けに行かない」


市長が眉をひそめ、官僚的な威圧で俺を黙らせようとした。


「あなたは一体——」


「わかってる。」俺は遮った。「市長だろ。おめでとう。今は静かにしていてくれ。海の向こうの塔は、あんたが上がってきたからって自動降伏はしてくれないんでね」


言い終わった瞬間、イヤホンにヴィクトリアの声が入った。


「海側の霧の壁が南に引っ張られた。三号塔の外牽骨格が収縮し始めてる。扉を閉めようとしてる」


俺は双眼鏡を目に押し当てた。


海側の一帯が、ゆっくりと蓋の閉まる棺桶みたいになっていく。三号黒ミサ塔は二号塔みたいに街区を再編して再構築するタイプじゃない——海霧、吊り足場、鎖、障板、死体を全部自分の体内に編み込んで口を閉じる、絞り込み装置だ。港区外縁にまだ完全には崩れていない倉庫、クレーン、係留施設の骨格が、全部そいつの拍に引き込まれていた。海辺に立っているんじゃない。海辺そのものを自分の外殻にしている。


そして今、岳家軍(がっかぐん)がそいつを包み始めていた。


俺は記者チームのほうを見ずに、そのまま命令を下した。


「全線注意。三号塔への主制圧に入る。馬三娘(マー・サンニャン)、外線を半周締めろ。塔に急いで貼りつくな、先に海側と倉庫区の退路を封じろ。大盾手は主街路を断て、長戟手は両翼を走れ。神臂弓は全部仰角を半段上げ、高位の鎖鏈カルトと吊り鐘手を優先で清除しろ。床弩は外牽骨格から打て、塔心は今は触るな。まず風穴を開けさせる」


声は落とさなかった。


わざと聞こえるように喋った。


どうせ全員ここに上げたんだ。都市伝説みたいな映像を撮らせるつもりはない。ちゃんと見せる。俺たちが中世テーマパークを開催しているんじゃないと、少なくともそれだけはわかるように。


海側の戦場がすぐに動き始めた。


馬三娘は市政廳の前縁に立ったまま、半個戦区越しに手を上げて動線を調整する。自分は出ない。この段階ではもう、あいつは節度だ。岳家軍はあいつの指揮の下で、幽霊の波濤じゃなく、軍隊として動いている。大盾手が海堤と主街路の交差点に一枚ずつ入り込み、港区全体に新しい壁を設置するように並んでいく。長戟手は盾の後ろに隠れ、前に出ようとしない。封海道兵が押し上げてくるその瞬間だけを待って、戟先を送り込む。背嵬(はいぐい)騎兵は正面には出ず、もっと外側の路地と埠頭の切れ目を回り込んで、三号塔外縁で海上に縮もうとする残部に噛みついていく。


この戦い方は、見栄えが悪い。だが正しい。


先に退路を封じ、次に節点を切り、最後に塔を抜く。


後ろの女性記者が、とうとう堪えきれずに小声で聞いてきた。「あなた、いつもこうやって指揮するんですか?」


俺は振り返らなかった。


「違う。」俺は言う。「普段はもっと静かだ」


冗談だと思ったらしい。


違う。普段の戦場には、黒い塔と岳家軍と外国の市長とカメラが同時に俺の周りを取り囲んだりしない。


---


同じ頃、パリの首相府地下会議室の空気は、マルセイユの塔頂よりもよほど安置室に近かった。


長テーブルの片側には、フランス首相、内務省、外務省、国防系統のいくつかの顔色が一様に悪い高官たち。反対側には急遽呼び出されたEU駐仏代表。壁の大型スクリーンは複数の画面に分割されていた。マルセイユ外縁の無人機からの断片的な信号、SNSで爆発的に拡散している短い動画、地方局から切り取ったライブ配信の断片、そしてマルセイユ市政廳からの不安定な専用回線。


どの画面も、同じことを言っていた。


もう抑えられない。


しかも、普通の意味での「抑えられない」じゃない。


テロなら、フランスの体制はどう語るか知っている。暴動なら、EUは責任の切り分け方を知っている。超自然現象なら、バチカンは厳粛そうな顔の作り方を知っている。問題は、今マルセイユから送られてくる映像の中に、死んだ十字軍と黒い塔と中国古代の軍隊と動く二足機械が同時に映っていて、現地のフランス官僚が今も自分がどの歴史的狂乱映画の撮影現場に出勤しているのか説明できないでいることだ。


首相は画面を睨みながら、EU予算書を丸ごと飲み込まされたような顔をしていた。


「バチカンを繋げ」と彼は言った。


外交顧問が頷き、別の回線が点灯した。


数秒後、スクリーンに顔色の悪い高位聖職者が映し出された。正装はしていない。黒い長衣を一枚羽織っただけで、どこか別の炎上中の会議から無理やり引っ張り出されてきたのは明らかだった。


「バチカンとしての正式見解が必要だ」フランス首相が言った。


その聖職者はスクリーンの中のマルセイユ海側の黒い塔を見つめ、二秒沈黙した。


「正式見解は後ほど。」彼は言った。「非公式の見解で言えば、あの塔の上に立っている男が本当にジョウ・シーダーなら、今はあの人の邪魔をしないほうがいい」


首相の顔がさらに険しくなった。


「あなた方は彼を知っているのか?」


「あなた方より少し前から。」聖職者は言った。「それと、バッローロ神父も現場にいるなら、フランス政府が今一つ余計なことをしなければ、死者がその分減るかもしれない」


会議室が短い沈黙に包まれた。


EU代表が眼鏡を押し上げた。何も聞かなかったふりをしたいが、なぜバチカンが黒い塔の頂上に立つアジア人の男を庇うのか、どうしても知りたいという顔をしていた。


首相が息を吸った。


「台湾代表処と、中国大使を繋げ」


内務大臣が首を傾けて彼を見た。「両方呼ぶのか?」


「両方だ。」首相は言った。「どうせ今やフランス全土が、マルセイユで中国の古代軍が十字軍と戦っているのを知っている。国会に対して形式上の敬意くらいは示さないとな」


この一言で、会議室の誰も笑わなかった。


真実に近すぎたからだ。


---


「K7、南側の副通りに二つ目のコンテナを引きずれ。」俺は言う。「塔前の射角に自分を晒すな。クレーンアームは使い終わったら縮めろ。お前は今日、工務だ。主役じゃない」


イヤホンから短い返答が返ってくる。


K7は海側の街区の中をのっそりと動いていた。自分が重いこと、自分が貴重なことをわかっている老牛みたいに。決して前に突っ込まない。車頭は半壊した壁体の陰に隠したまま、クレーンアームと車尾だけで仕事をする。鋼索を振り出し、横転したコンテナ車の残骸に引っかけ、低速で引き起こして海側の副通路を丸ごと塞ぐ。後ろから岳家軍(がっかぐん)の大盾手が二人すかさず入り込み、隙間を埋める。


「よし。」俺は言う。「副通路は封鎖完了。シュトゥルムシュライターはその場で維持、追撃禁止。ヴィクトリア、南口が抜かれたら直接踏め」


ヴィクトリアがイヤホン越しにあっさり返してきた。「ようやく、あれに足があるのを思い出してくれたのね」


俺は無視して、視線を三号塔に戻す。


床弩の第一波はすでに当たっていた。あの馬鹿みたいに大きい弩矢は人を射るためじゃない。構造に対して道理を説くためのものだ。三号塔外側の海辺の吊り架が床弩に断ち切られると、外牽骨格全体が、肋骨を一本引き抜かれた獣の体みたいに、まず内側に縮み、それから下の層の、拍を伝え霧を引くための黒木の斜め支柱が剥き出しになった。


「神父。」俺は鐘室の回線に切り替えた。「反拍を短短長断短に変えて、三号塔中段の反響を狙え」


バッローロ神父がすぐに返した。「わかった」


次の瞬間、一号塔の中の奪い取った裂鐘システムが、ひどく耳障りな拍を刻み始めた。鐘の音というより、鉄槌で骨を叩いているような音だ。それが塔身を伝って海側へ走り出す。三号塔中段の吊り鐘と鉄鎖が明らかに一拍乱れ、高所でまだ鎖を振っていたカルト数人の動きも鈍くなった。


「エリザヴェータ。」俺は言う。


「見えている。」ほぼ同時に彼女の声が戻ってきた。


そして高所から二人落ちた。


一人は吊り架から直接弾き出され、もう一人は喉の機能が突然なくなったみたいに、鎖を両手で掴んだまま二度痙攣して、そのまま下へ転落した。記者チームの若いカメラ助手がそれを見て、自分の魂を吐き出したみたいに顔が白くなった。あの女性記者だけは唇をわずかに引き結んで、俺の視線の先を見続けた。


もう彼女には、自分が単一の事件を撮っているんじゃないとわかっている。


この世界の説明書が引き裂かれていくのを撮っているんだ。


---


台湾駐仏弁事処の臨時代表は、完全に準備のないまま、パリの会議専用回線に繋がれた。


さっきまでマルセイユの在留台湾人の避難リストを処理していた。手元にはパスポートデータの半分と、家族が泣きながらかけてきた電話の記録の半分。そこへ突然、フランスの外交システムに引きずり込まれて、自分の格より何段も上のビデオ会議に放り込まれた。顔を上げたら、フランス首相、EU代表、バチカンの聖職者、そして顔色の悪い高官たちが並んでいた。


最初の反応は、回線を間違えたかどうかだった。


次の反応でようやく、画面の中の黒い塔と海辺の宋軍の陣形が目に入った。


三秒黙った。


「……弁事処には岳家軍はいません。」彼が最初に言えたのはその一言だけだった。


フランス首相の目元がひくりと動いた。


「あなたの弁事処に岳家軍がいるかどうかを聞いているわけじゃない」と彼は言った。


「それは良かった。」台湾代表は正直にほっと息を吐いた。「もし本当に今すぐあの軍隊を説明しろと言われたら、まず歴史学科に電話しないといけないので」


EU代表が思わず顔を横に向けた。


同じタイミングで繋がれた中国大使の態度は、まったく別の種類のゴミだった。


服装も整然、口調も整然、口を開いた瞬間からまず自分を切り離しにかかった。


「中国政府は、いわゆる『中国古代軍隊』を中華人民共和国の現代的立場と強引に結びつけるいかなる言説に対しても、厳正な反対を表明する。」彼は言った。「現在流布している映像は、編集、心理戦的操作、あるいは地域的パニック感情の増幅による産物である可能性が極めて高い。中国側は、フランス側が自制を保ち、虚偽の言説に引きずられないよう勧告する」


会議室で誰も返事をしなかった。


ゴミみたいな態度の一番腹立たしいところは、ゴミだとわかっていても、わざわざゴミと議論する気力が一瞬湧かないことだ。


先に口を開いたのは、バチカンの聖職者だった。


「つまり閣下は、マルセイユ沿岸で現在起きていることは、あなた方と無関係だと?」


中国大使の表情は微塵も変わらなかった。


「映像中のいわゆる『中国古代軍隊』を指しているなら、それはフランス国内の事案だ。中国側がコメントできる立場にはない」


台湾代表は別の小さい枠の中で、「これ一体何の会議なんだ」という顔をしていた。


フランス首相は三方の画面を見渡しながら、外交システム全体をマルセイユ港に投げ込んで埋めてやろうかという顔になっていた。

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