164.荒唐無稽な現実 3
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
それだけで、左翼の岳家軍全体が動き始めた。
烏合の衆が押し寄せるんじゃない。霊怪映画みたいに一斉に湧き上がるわけでもない。本当に戦場を踏んで、陣形と間合いというものを知っている軍隊が展開する動きだ。前列の大盾手は一直線に押し上げるんじゃなく、三層に分かれる。最前列が主街路を押さえ、第二列が側路を断ち、第三列が穴埋め要員として残り、二号塔前衛が抜け出せる口を一つずつ塞いでいく。後ろの長戟手は盾壁の隙間に合わせて立ち位置を調整し、長短を交互に、前二後一で並んで、どの戟先も味方の肩線を越えて目標に届くようにする。
さらに遠い屋上と残骸ビルの中では、神臂弓も射界を切り替え始めていた。
もともとは邪教徒節点だけを専門に狙っていたのが、今は二組に分かれた。一組は引き続き高階誦読手と拍伝え単位を点名し、もう一組は射角を下げて突撃迎撃の準備に入る。あの重厚な弓臂が壁頭に一列ずつ据えられていく様子は、武器というより、老練な職人たちが街区を屠場に改装しているように見えた。
その光景を見ながら、俺は小声で一言こぼした。
「なるほど。重騎対策の陣を先に敷くことは知ってるんだな」
馬三娘は死人を叫び起こして放置するタイプじゃない。指揮している。しかも陰司の玄学なんかじゃなく、不気味なほど成熟した戦術論理で。
それなら向こうも反応するはずだ。
案の定、二号塔がすぐに動いた。
左翼の奥で大盾手と長戟手に圧迫されて収縮していた活屍騎士団が、突然それ以上内側に縮むのをやめた。外縁の邪教徒節点が新しい拍点を受け取ったように一斉に半歩後退し、ごく狭い通路を開ける。そして後方でずっと投入されていなかった重装乾屍騎士たちが、前へ押し出し始めた。
俺が最初に見えたのは槍だった。
一列に並んだ平端長槍。
乱雑に振り回すんじゃない——整然と水平に構え、脇に挟んで、全部の穂先が前を向いている。続いてカイトシールドと鎖帷子が、霧と灰塵の中で一枚ずつ光を拾い始めた。最後に馬。あの馬はもうとっくに生馬じゃない。皮肉は黒ずみ、眼窩は空洞で、胸腹は鉄線で縫い合わされている。それでも突撃の姿勢はそのままだ。二号塔前衛が開けた隙間の中で整列し、今にも押し潰してくる腐った壁面のように構えていた。
十字軍騎士の壁式突撃。
資料でも読んだし、映画や図版でも見た。だが今日が初めてだ——本当に人が死ぬ、しかも死に方がとことん不格好な戦場で、これを生で見るのは。
「左翼、承圧準備。」俺は即座に命令した。「全地上射手、前列の長槍を撃つな、馬の頭も撃つな。原案通り節点を清除しろ。第一波は岳家軍に食わせろ。K7は動くな、補給線を維持しろ。シュトゥルムシュライターは左翼支援禁止、南線に立ち続けろ。エリザヴェータ、突撃の後ろの邪教徒を全部見張っておいてくれ」
エリザヴェータはごく軽い「うむ」一声だけ返した。
そして二号塔がその重騎を解き放った。
映画の中の熱血突撃なんかじゃない——死体が断末魔に全体重を叩きつけてくるような感覚だ。まず街全体が震え、次に馬蹄音、甲冑の衝突音、崩れた壁から落ちる灰の音が一塊になった。乾屍騎士たちは鬨の声を上げない。上げる必要がない。奴らが頼りにしているのは重量と速度と前列の平端長槍だけで、それだけで街を丸ごと引き裂いていく。
普通の人間がこれを見たら、慌てる。
普通の歩兵なら騎士の胸、兜、盾面に向けて本能的に撃ちまくり、そのまま踏み潰される。
岳家軍は違った。
大盾手がまず沈んだ。
塔の上からははっきり見えた。恐怖じゃない——動作だ。最前列の大盾手は突撃が一定の距離まで迫ったとき、一斉に盾の角を地面に押しつけ、重心を後ろに落とし、盾壁を低くて厚い衝撃吸収の斜面に変えた。第二列の盾手は盾をやや持ち上げ、後方への視線と飛散の軌道を塞ぐ。その後ろの長戟手は騎士の顔を見ない。上を突かない。本当にあの古い言葉通りに、仰ぎ見ることなく、馬の足だけを専門に狙った。
最初の接触は、俺が想像していたよりずっと醜かった。
先頭の乾屍戦馬三頭が盾壁に激突したとき、音は濡れた杭を石臼に叩きつけるようだった。最初の大盾は割れたが、砕けなかった。次の瞬間、盾の後ろから勾鎌槍が二本、斜め下から突き出した——人を狙うんじゃなく、馬の前脚だけを引っかける。脚が引っかかった瞬間、後ろから麻扎刀と大斧が補った。派手な技なんか何もない。ただ斬る。
脚を斬る。
膝を斬る。
踝を斬る。
一刀で足りなければ二刀目。二刀目で足りなければ後ろの長柄斧が三刀目を補う。
その光景は見苦しいが、恐ろしいほど効果的だった。最初の一頭が倒れると、後ろの二頭が乱れる。後ろが乱れると、平端長槍の突撃の勢いが全体で引き裂かれる。左側の一騎の乾屍騎士がちょうど槍先を盾の隙間に送り込んだ瞬間、坐下の馬の前脚を麻扎刀二本が同時に断ち、人も槍も盾も前方に転倒し、地面に着く前に側面から大斧が鎖帷子の肩線に叩き込まれた。
鎖帷子は斬撃は防げる。だがこういう粗暴な鈍重な叩き割りにはあまり耐えられない。
もう片方はもっと凄まじかった。
一騎の活屍騎士が第一の盾面をかろうじて突き破り、馬の半身が人の壁に押し込まれた。だが岳家軍の歩兵は上半身を一切見ない。長刀三本、勾鎌一本、短斧一柄が同時に馬腹と後脚に向かった。その馬は悲鳴すら上げず、後半身から先に崩れた。騎士が落ちてもまだ起き上がろうとすると、隣から大斧が顔面に直接落ちてきた。兜が潰れ、人も静かになった。
英雄の一騎打ちなんかじゃない。
成熟した軍隊による重騎兵の解体作業だ。
双眼鏡でずっと追いながら、俺の頭の中にあったのはただ一つの考えだった——この連中、本当にこういう相手を殴り合いで潰した経験がある。伝説でも神話でもない。完全に戦術として体に刻まれている。
「左翼屋上射手、後方節点の点名を維持しろ。」俺は言った。「正面の衝突に注意を持っていかれるな。突撃に息を継がせるのは、邪教徒どもだ」
言い終わるか終わらないかのうちに、二階の鐘楼跡の陰で裂鐘を持ち上げたカルトが一人、腕を持っていかれた。
屋根のひさしの外側を、白い影が一本の線のように滑り降りたのが見えた次の瞬間、そのカルトの腕がなかった。裂鐘が落ち、自分の仲間の頭を潰す。エリザヴェータは一瞬もそこで止まらず、そのまま体を翻して、さらに高い影の中へ消える。今日の俺とあいつの連携は単純だ。俺が節点を見つけて呼ぶ。あいつが潰す。ロマンはないが、効率はいい。
左翼正面の騎士突撃は、第二段で完全に詰まった。
弩陣が開いたからだ。
さっき射界を替えた神臂弓が、ようやく本格的に口を開く。単発の点射じゃない。列ごとの斉射だ。第一列はまだ速度を維持している外縁の騎士を、第二列は穴を埋めに突っ込んでくる第二線を、第三列はその後ろで再び拍を合わせようともがいているカルトを狙う。分厚い弓肢が発する音は、古い板を続けざまにへし折るみたいな乾いた音で、放たれた矢の仕事ぶりは、もはや槍に近い。
一騎の乾屍騎士が胸を射抜かれ、そのまま仰向けに馬から飛び落ちた。
別の一騎は盾の角をちょうど上げかけたところで、矢が盾を貫いて腕ごと胴体を馬鞍に縫いつける。
さらに後ろでは、一頭の戦馬の肩の窩を矢がぶち抜き、前への勢いだけはそのまま、脚だけが言うことを聞かなくなって横倒しになり、後続の二頭をまとめて巻き込んだ。
重騎が一番恐れるのは、死ぬことじゃない。乱れることだ。
乱れれば、後ろが前に突っ込み、前が倒れれば、後ろの長槍が味方自身の杭になる。
岳家軍の歩兵が狙っているのは、その一瞬だ。前で受け止め、後ろで長戟と勾鎌槍を馬の脚の下に差し込み続ける。上半身なんか見ちゃいない。奴らの視界にあるのは、脚、腹、鞍の下、槍の柄、そして落馬したあとのわずかな隙間だけだ。騎士が一人落ちると、すかさず重歩兵が補刀に駆け込み、大斧、分厚い長刀、短槍を代わる代わる叩き込んで、立ち上がらせる余地を一切与えない。
「これが鉄浮図にぶつけたときの手管ってやつか……」俺は低く呟いた。
歴史学者じゃねえが、戦術は読める。それで十分だ。
二号塔もそれは理解しているらしく、すぐに手を替えようとした。後方からカルト二小隊が側道を抜けて出てきて、失速した騎士団をもう一度斜めの楔形にまとめ直し、まだ投入していない騎士たちを側面から盾列に突っ込ませようとする。これが決まれば、左翼はやっぱり貫通される。
そうはさせない。
「K7車台、右二の窓枠のカルト、撃て」俺は座標を打つ。
K7上の二人の射手がほぼ同時に撃ち、ガラスと石片が飛び散り、カルト二人のうち一人は胸に風穴を開け、もう一人は肩と首の境目からもぎ取られた。
「屋上四号点、左後ろの路地口、第二組だ」俺は続ける。
狙撃位からの一発で、三人目のカルトが階下へ叩き落とされる。
その同じ瞬間、エリザヴェータが別のビルの雨覆いの下から飛び出し、壁に張り付くように滑っていき、そのまま四人目のカルトを路地の口から闇の中へ引きずり込んだ。あそこは狭い。俺に見えたのは足が二度ほど痙攣したのと、その後の静寂だけだ。
二号塔の二回目の補拍も、こうして潰された。
そのとき、馬三娘がようやく次の動きを見せた。
左手を、すっと左側に押し下げる。
ただそれだけで、左翼の奥からさらに新しい部隊が姿を現した。
歩兵じゃない。騎兵だ。
今日の主役はずっと歩兵と弩陣だと思っていたが、どうやらあいつは削り合いだけで終わらせる気はないらしい。左翼もっと外側、爆撃でぐちゃぐちゃになっているはずの路地の奥から、蹄の音が聞こえてきた。乾屍戦馬みたいな軽くて腐った音じゃない。もっと重くて、もっと整ったリズムだ。背嵬騎兵が数隊、別々の街角から切り出してきて、正面からぶつかるんじゃなく、ちょうど十字軍騎士の突撃が失速して露出した側腹だけを狙って潜り込んでいく。
先頭に一騎、誰よりも低く身を伏せて、槍先の勢いだけで通りごと貫きかねない突進をしているのが見えた。反対側からは腕が人間の範疇を外れて太い騎兵が一騎、馬に短兵器と重い得物を山ほどぶら下げて、ぶつかるもの全部を叩き潰す勢いで突っ込んでいく。あれが岳雲かどうか、向こう側で突っ込んでいるのが楊再興かどうかなんて、どうでもいい。戦場で一番大事なのは名前じゃない。出ている結果だ。
結果は——十字軍騎士団の終わりだった。
すでに神臂弓にかき乱され、歩兵に脚を斬られ、長戟に刺し貫かれてズタボロの突撃線に、背嵬騎兵の側面からの一突きが加わる。構造全体が一発で砕けた。まだ馬に跨っている何人かの乾屍騎士が槍を回そうとするが、前には盾、横には突っ込んできた騎兵、後ろには味方の腐った馬と屍の山が詰まっている。向きを変えた時点でぐちゃぐちゃになり、そのまま死ぬ。
左翼でもっとも危険だったあの重騎突撃は、この時点で攻勢とは呼べなくなり、ただの屠殺作業の後半戦になっていた。
「全地上ユニット、騎兵は追うな。戦果も奪うな。原案通りラインを守れ。」俺はもう一度釘を刺す。「岳家軍に締めさせろ。うちは節点の掃除と補給線の維持と南線の安定だけだ」
わざとここまでハッキリ言う。人間は局面が好転し始めた瞬間に一番馬鹿をやらかしやすい。特にこんな珍妙な光景を目の前で見せられると、血が勝手に熱くなる。だが俺に欲しいのは熱血じゃない。勝ち筋ができ上がりつつある今、その形を壊さないことだ。
そのとき、イヤホンにレイチェルの声が入った。
「外側から、ノイズが入り始めた」
「どんなノイズだ」
「逃げた市民。」と彼女。「もう封鎖線の外まで抜けた人が何人もいる。フランスの警察ネットワーク、ローカルラジオ、プライベートのチャット……全部で流れ始めてる。黒い塔、歩く死馬、古い鎧の東洋軍隊、それから通りを塞ぐ大きな機械。話は滅茶苦茶だけど、拡散速度は速い」
俺は双眼鏡を下ろさず、そのまま答えた。
「今は放っとけ。やつらの口を管理してる暇はない」
「私もそのつもり。」レイチェルが言う。「ただ、もう抑えは利かないってだけ伝えておく」
「抑えられないなら、しばらくは飛ばせておけ。」俺は言う。「俺が塔を折ってから、世界に文句を言われに行く」
虚勢じゃない。順番の問題だ。今、本当に人を殺すのはニュースじゃない。塔だ。
そして、その塔に手をつける時間が来た。
左翼の街区で、岳家軍の第二波重火器が配置に就き始めたからだ。
最初に目に入ったのは三弓床弩だった。
神臂弓みたいに器用に窓の中に隠すことはできない。あれは馬鹿みたいに大きい。複数人で担ぎ出し、据え付け、角度を合わせなきゃならない。岳家軍の二組が地下駐車場の出口から床弩を押し出し、元々は軽歩兵しか通れないと思っていた側道に沿って前へ送る。台座を据え、弩肢を持ち上げた瞬間、あれは巨大な鉄骨の魚が噛みつこうと背を丸めた姿になった。撃ち出すのは矢じゃない。槍だ。木造構造を釘付けにし、厚板を貫き、工事そのものをまとめてぶち抜くためのやつ。
馬三娘が、もう一度手を上げる。
三弓床弩は、まだ動いている騎士団の残りではなく、ゆっくりと二号塔そのものへ向きを変えた。
その瞬間、あいつがやろうとしていることがはっきりわかった。
「全線、岳家軍の攻塔に合わせろ。」俺は命じる。「一号塔の鐘室はカウンターで拍を乱せ。神父とシスター、二号塔のリズムを全部めちゃくちゃにしろ。左翼の全射手は塔の基部の窓と外付け節点を重点で抑えろ。エリザヴェータ、塔の外の高所は全部片づけろ。K7は弾を運び続けろ、止めるな」
バッローロ神父はイヤホン越しに一言だけ言った。
「叩く」
次の瞬間、一号塔の中にある、さっき俺たちが奪い取った裂鐘システムが鳴り始めた。澄んだ鐘楼の音じゃない。明らかに狙って外している、不快な邪魔拍だ。短く、短く、長く、途切れて、また短く。その音は音楽というより、別の塔の神経を金槌でぶっ叩いているような響きだった。
二号塔が、目に見えて反応した。
外付けの木骨と鐘楼のフレームが微かに震え、塔の前にいたカルト節点たちの動きが、一拍だけ乱れる。その一拍を待っていたみたいに、三弓床弩が火を噴いた。
第一射が放たれたとき、音は俺の想像よりも控えめだった。
本当に怖いのは命中のほうだ。
車軸みたいに太い弩矢が、二号塔外周の斜めに伸びた支柱に突き立ち、その半分近くまでめり込んだ。塔本体がいきなり倒れることはなかったが、外付け構造がその一角ごと内側へ潰れた。第二射はさらにえげつない。もっと低い角度から撃ち込まれ、外付けの回廊と欄干を一帯まるごと引き剥がし、カルト三人と乾屍二体をまとめて路上に叩き落とした。
そして、消防署から押し出された重型投石機も、ようやく陣地についた。
どうしてあんな場所にいたのかは、今もわからない。ただ、そこにある以上は使う。
十数人の岳家軍が、その投石機の周りで手早く段取りを進めている。誰かが釣り合い錘を押さえ、誰かが綱を引き、どこから持ってきたのかもわからない大石や崩れた壁の塊を、発射用の袋に次々と詰め込んでいく。全体の動きは、何百回もリハーサルしたことのある班の仕事そのものだ。二人組が消防署の入口に立っていたフランス語標語の割れた石板をこじ上げて、同じように中に放り込んでいるのまで見えた。
思わず口元が緩む。
「いいねえ。フランスの消防署まで弾にするのかよ」
ヴィクトリアがイヤホン越しに鼻を鳴らした。「今さらそこを不思議がるわけ?」
「違う。」俺は言う。「やっと見てて気持ちよくなってきただけだ」
投石機の第一射が放たれた瞬間、左翼一帯の空気が一度、ぐいっと引き延ばされたみたいになった。
巨大な石塊が鈍い破風音を引きずりながら、半街区を越えて、二号塔中段の外付け鐘架に直撃した。ど真ん中じゃない。だが十分だった。その一撃で、まず塔全体の音が変わった。それまでの、くぐもって、ねっとりして、何人もの死人が喉の奥をふさいだまま経文を唱えているような底鳴りが、突然一拍途切れた。続いて中段から大量の木裂と骨釘の飛散が爆発した。
「次だ」俺は言った。
大声を出す必要はねえ。全員が効果をその目で見ていたからだ。
第二波の三弓床弩が撃つ。
神臂弓は塔外の節点清除を続ける。
エリザヴェータは高所で、まだ補位しようとするカルトどもを一人ずつ片づけていく。
一号塔の鐘室では、バッローロ神父とマリア修女が奪い取った裂鐘システムを使い続け、二号塔の安定していた拍をどんどん滅茶苦茶に叩き乱している。
投石機の第二弾が発射袋を離れたとき、俺は塔冠からでも見えた。二号塔の塔基付近でまだ再編を試みていた活屍の残党が後退し始めるのを。恐怖じゃない。奴ら自身もわかっているからだ——塔がもう持たないと。
今度の石はもっと低く当たった。
塔基外側の太い支柱構造に、直接ぶち込まれた。
まず木とも石ともつかない鈍い音。
続いて外付けの骨組み全体が外側へ膨らむ。
そして——裂けた。
双眼鏡の中で、俺は二号塔の塔身がほんのわずかに傾くのをはっきり見た。本当にほんの少しだ。だがこういう代物を相手にしてきた奴なら誰でも知っている——少し傾けば、それで十分だ。特にこの手の、邪な拍と外付け骨組みと大量の付属構造で支えられている塔は、一つの重要な受力点が歪んだ瞬間から、修理じゃなく連鎖崩壊が始まる。
そのとき、馬三娘が手を前へ押し出した。
岳家軍が全線で即座に半歩押し上げる。
突撃じゃない——包囲の締め付けだ。大盾手が逃走路線を全部塞ぎ、長戟手は這い出ようとする乾屍の残党だけを専門に叩き、背嵬騎兵は二号塔の外周を回りながら、補塔や撤退に使えそうな継ぎ目を全部踏み潰していく。この女、左翼全体を一気に飲み込もうとしているんじゃない。二号塔が倒れるとき、中のものを誰にも救い出させないためだ。
この女、俺よりえげつねえ。
こういうえげつなさは、嫌いじゃない。
「全線注意!」俺はイヤホンに向かって怒鳴った。「二号塔が倒れるぞ!左翼の味方は全員、掩体二つ分後退しろ。射界は保て、下敷きになるな!K7は止まれ、前に出るな!南線は維持!どのユニットも見物のために持ち場を離れるのは禁止だ!」
この瞬間に一番ありがちな死に方は、明らかに勝っているのに、塔がどう倒れるか見たくて立ってはいけない場所に立って、肉塊に変わることだ。
味方にそんな馬鹿な死に方はさせねえ。
投石機の第三弾が空へ舞い上がった。
石塊はボロ布と灰と、どこから来たかもわからない鉄鎖の半切れを引きずりながら、空中にひどく不格好な弧を描き、すでに傾いていた二号塔の中段に重く叩き込まれた。
今度は、塔がもう耐えなかった。
まず中段全体が内側へ縮んだ——誰かが内側から背骨を引き抜いたように。
続いて上層の鐘架と外付け回廊が脱節し始め、大量の木骨、鉄符、黒布、裂鐘、そしてカルトどもが、腐った歯みたいに一塊ずつ剥がれ落ちていく。
最後に本体だ。
二号黒ミサ塔が全体で左前方へ傾き始めた。
一気に崩れ落ちるんじゃない——まず傾き、それから引きずられ、それから崩れる。倒れながら、塔は実に耳障りな長い音を発し続けた。何千人もの死人が同時に舌を引きちぎられるような音だ。その音は左翼の街区を貫いて、俺の足元の一号塔まで震えさせた。次の瞬間、塔全体が自分の前方に広がる、すでに打ち砕かれた戦場に崩れ落ち、灰と骨と木屑と黒煙が混じった一枚の壁を巻き上げ、通りの半分を飲み込んだ。
左翼の拍が、断たれた。
俺は塔冠に立ったまま、双眼鏡を下ろさず、まだ渦を巻いている煙塵を見つめながら、静かに息を一つ吐いた。
「二号塔、倒れた」
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




