164.荒唐無稽な現実 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
俺は第一黒ミサ塔の塔冠に立ち、マルセイユ西側の戦場全体が、血と灰にまみれて腐りかけた地図みたいに、足元でゆっくりと広がっていくのを見ていた。
第二塔はすでに形になっていた。
第一塔みたいに中軸から硬く突き刺さってくるわけでも、野戦陣地みたいに一気に輪郭を見せてくるわけでもない。腐りかけた肉の塊に近い。左翼街区の屋根線と建物の隙間からまず膨らみ始め、下から上へと、バラバラになった乾屍どもを一節ずつ串刺しにして繋ぎ直していく。元々散り散りになっていた盾手、短槍手、鉤を持つ祭兵たちが、その節拍の牽引を受けて三段式の前進線として再編成されていた。最前列は半盾半刃の近接突入組、中段は裂骨短槍を担いだ圧迫帯、最後尾は白袍をまとった高位単位——手を打ち、呪詞を唱え、隊列全体の拍子を取り直す専門の連中だ。
第三塔はもっと厄介だった。
海側から侵入し、霧と潮風の中に輪郭を育てていく。普通の建物が建つ速度じゃない。一夜にして地中から突き出てくる類の手品でもない。港沿いの倉庫、停泊用の吊り架、砕けた防波壁、湿った冷たい路面に沿って、周囲の空間を少しずつ自分の節拍の中に引き込んでいく。海の向こうから誰かが手を伸ばして、海岸線全体を市街地の中に折り畳んでいくみたいだ。まだ完全には立ち上がっていないが、その前方では封海道兵、鎖の白袍、重鉤阻断組がすでに前に出ていた。攻撃じゃない。扉を閉めているんだ。
第二塔が左翼で散兵を回収し終え、第三塔が海側で退路を封じ切ったら、俺たちが苦労して奪った第一塔は砲台じゃなくなる。墓標になる。
俺は双眼鏡を下ろし、耳機を押さえて口を開く。
「全線、命令を聞け。今は追撃の時間じゃねえ。全員、編制に戻れ。塔冠は射撃修正権を維持。市庁舎前広場は二級補給態勢に移行。左翼火線はバスの残骸の後ろまで縮め。海側南の路地はシュトゥルムシュライターで封じろ。越線した奴は自分で死ぬことになる」
耳機の中に短い確認応答が続く。
林雨瞳は市庁舎一階で物資の受け渡しを担当していた。声はまだ安定している。「内圏、了解。弾薬、包帯、火炎瓶を振り分け中。重傷者は先に地下室へ。立てる者は全員外圏に戻れ」
ヴィクトリアの返答はもっと短い。「シュトゥルムシュライターの右膝の供給圧は正常、左足首の封止補修も完了。K7のクレーンアームは待機中、車台は臨時換弾台として使える。風が要るなら出す」
バローロ神父は塔内の第二層にいた。声は燃え尽きる前の炭みたいだ。「第一塔内部は安定している。修女が節拍室を見張っている。中から鐘をひっくり返そうとする奴がいたら、俺が引きずり下ろす」
エリザヴェータは余計なことを言わなかった。耳機の中に笑いとも鼻息ともつかない短い音を一度残して、静かになった。こういう時に彼女が黙るのは、たいてい人間が歩く場所からすでに離れたということだ。
俺は最後に市庁舎の大広間の中央を見た。
馬三娘はそこに立っていた。
その目は生きている人間の目じゃない。黄泉の底に長く沈んでいて、今ようやく棺から引きずり出されたばかりの冷たい古井戸みたいだ。刀を急いで抜こうとするわけでも、誰を斬るか訊いてくるわけでもない。ただゆっくりと俺を一瞥した。その目が言っていることははっきりしていた——ようやく手札を出す気になったか、と。
反対側では、牛小琴が市庁舎の入口の半崩れの壁の後ろにしゃがんで、外圏の防衛線を作り直していた。
詰まった機関銃を一丁横に放り投げ、片手で木製の戸棚を二つ引きずり、入口右側を斜め掩体に作り替える。それから接収した短銃、銃剣、弾薬箱を三山に分けて積ませた。突撃の準備じゃない。俺たちの後背を釘付けにしているんだ。あの古参の差配の気質は前にも見た。誰かのために退路を固め始めたときは、意味は一つだけだ——前で大きなものが動く、後ろを乱すな、ということだ。
俺は下に向かって口を開く。
「牛小琴、内圏はお前に任せる。市庁舎の門線を突破するものは、生きていようが死んでいようが、全部門の外に釘付けにしろ。K7をお前の視界から外すな。ヴィクトリアがあれを移動工位として使う」
牛小琴は顔を上げなかった。弾薬箱を一箱、足で蹴って掩体の後ろに滑り込ませながら言う。「わかったよ。あんたは前で自分の鬼を放ちな。あたしは後ろで扉を閉めとく」
俺は頷いて、馬三娘を見た。
「お前の番だ」
彼女はすぐには動かなかった。
市庁舎の大広間、玄関廊下、広場、塔の外でまだ断続的に銃声が続いている街区まで、誰かが手で押さえたみたいに、全てが一拍だけ遅くなった。音が消えたんじゃない。全員がある一瞬に本能で気づいたんだ。俺たちの側から、何かが出てくると。
馬三娘はゆっくりと頭を上げた。
気合いを入れるわけでも、見得を切るわけでも、舞台の上での起手の型を見せるわけでもない。ただその肉体をまっすぐに立て直した。長い年月の間に埋もれていて、今ようやく再び立てられた古い旗みたいに。次の瞬間、口を開いた。
「起きよ!!!!」
叫びじゃない。
命令だ。
その一声が放たれた瞬間、市庁舎広場の砕けた石畳がまず震えた。次に路地の角。次に建物の中。次に俺たちの足元。
最初に俺が見たのは正面じゃなかった。
左側の、半分しか壁が残っていない焼け落ちたアパートの二階だ。その部屋には焦げた机と椅子と、窓の縁に引っかかって焼け縮んだ乾屍が一体いるだけのはずだった。馬三娘の声が落ちた後、その乾屍の隣の壁の角が膨らみ始めた。壁の漆喰が、内側から誰かが肩で押し出しているみたいに、一層ずつ割れていく。まず一本の腕が出てきた。とっくに腐り果てているはずの宋式の籠手を着けていて、それでも指の骨は完全だった。続いて顔の半分。土と灰と古い血と壁の泥が塗り込まれていて、元の顔立ちはわからない。そいつは叫ばず、もがかず、ただ静かに壁の中から一歩踏み出した。地面に足が着いた瞬間には、もう長槍が手の中にあった。
二体目は路面だった。
ロケット弾で抉れた後、埋め戻しに失敗した穴の中央で、石畳の下から黒い指の関節が一列浮かび上がった。それらの手は上に向かって掻き回すんじゃない。土の中で整列しているみたいに、一本ずつ地面を支えて、下から自分を押し上げていく。最初に出てきたのは盾だ。現代の透明な防暴盾じゃない。木芯に鉄を張った古い歩兵盾で、表面は泥と亀裂だらけだ。続いて肩、兜、甲片、槍の石突き。一列の兵士が、掛け声もなく、騒ぎもなく、路面から立ち上がった。まるで最初からその道の下で眠っていたみたいに。
三体目は下水道からだった。
海側の爆破で割れた排水溝の蓋がまず自分で横に滑り、底から湿った臭い黒風が吹き上がってきた。近くで弾を換えていたフランス警察の二人が、危うく引き金を引きそうになった。まず旗竿が突き出てきた。旗布はとっくに腐り落ちていて、黒ずんだ布片が何本か井戸の口で揺れるだけだ。それから一人ずつ、兜をかぶり槍を持った兵士が、井戸の壁を踏んで這い上がってきた。生きている者の敏捷さじゃない。死んだものの正確さだ。どこを踏み、どこを掴み、上がったらどの方向に展開するか、全て一切の迷いなく実行される。何百何千回と繰り返してきたみたいに。
四体目は部屋の中からだった。
市庁舎の向かいの食堂、ガラスは全部砕け、中には法軍の死体が二体と引っくり返った机と椅子が積み重なっているだけのはずだった。馬三娘の声の後、机の下からゆっくりと一列の軍靴が伸び出してきた。現代の靴じゃない。木みたいに硬い古軍靴で、砕けたガラスだらけの床を踏む音が乾いていた。それから一群の兵士が影の中から立ち上がり、もともと誰もいなかったその食堂を埋め尽くした。彼らは突然現れたんじゃない。ずっとそこにいたのに、今ようやく見ることを許された、という感じだ。
さらに多く。
至る所にいた。
倉庫の裏口、浴室の鏡の前、地下駐車場のコンクリートの柱の陰、コンビニの冷蔵庫が倒れた隙間、乾屍に叩き潰されたバスの車体の下、ホテルの廊下の突き当たりにある灯りのない部屋、さらには真っ二つに断ち割られた馬の死体の下。戦場の廃墟だとばかり思っていたあらゆる場所から、兵士たちが静かに歩み出してきた。
岳家軍だ。
舞台の上の忠魂でも、金色に輝く神兵天将でもない。
戦い終えた後に、埋められ、忘れられ、名前を間違えられ、後世の人間に伝説として語られてきた、あの死者たちだ。鎧は傷み、布は黒ずみ、顔には土がついているものも、傷があるものも、半分だけ骨になっているものもいる。だが一列に並んだ瞬間、その軍気は鉄条みたいに硬かった。鬼哭神号もなく、熱血の掛け声もなく、ただ何万という足が、この時代の路面を踏み直した。
そして数はまだ増え続けていた。
塔冠から外を見ると、最初に目に入ったのは市庁舎前の二本の路地だった。次に左翼街区。次に海側。次にもっと遠くの建物の隙間と路地の奥。その兵士たちは街全体の様々な層から浮かび上がり、それまで生者と乾屍だけのものだった戦場に、強引に第三の勢力として割り込んできた。一千じゃない、一万でもない。塔上の視点から大まかに数えただけで、見えている範囲だけですでに十万を超えていた。後ろにはまだ本格的に姿を現していない者たちがいて、建物の影の中に輪郭だけ押しつけて、前の列が開くのを待っている。
乾屍騎士団が初めて乱れた。
あいつらは異常なものを見慣れていない訳じゃない。だが奴らが慣れているのは、召喚された異常だ。主がいて、鐘があって、号令に従う異常だ。岳家軍は違う。この街のあらゆる人がいるはずのない場所から自分で立ち上がり、戦場の地権全体を強引に回収していく。先頭の乾屍騎兵がまず腐った馬を止め、後ろの斬鉤持ち、長槍持ちの乾屍騎兵が前進の拍子を失い始めた。第二塔の左翼外周で、ようやく再編成を終えたばかりの白袍の隊列のいくつかが、本能的な後退さえ見せた。死を怖れているんじゃない。壁から、地面から、井戸から同時に湧き出てきた軍隊に、どう手をつければいいかわからないんだ。
俺はそいつらに見続ける余裕を与えなかった。
「全線、跟進!」
俺は耳機に向かって怒鳴った。
「第一塔の射撃修正権は変わらない。左翼の全火力、目標を第二塔外周の白袍拍手組と高位誦読手に変更。まず節拍を乱すことを優先、前列の死体に弾を無駄にするな。海側の火線は封海道兵の脚だけ打て。ヴィクトリア、風を出せ、K7を走らせろ。牛小琴、内圏を締めろ。動ける奴は全員、岳家軍と一緒に三十メートル前進。岳家軍の第一列の盾線から離れるな、追い越すな」
戦場がすぐに動き直した。
第一塔の鐘室で奪い取った節拍機構を、バローロ神父が短・短・長の干渉拍として叩き直す。岳家軍を制御するためじゃない、誰もあんなものを制御できやしない。第二塔の再編節奏を乱すためだ。外周の白袍高位単位が乾屍騎士団を再び一本の線に繋ぎ直せないようにする。俺は塔冠で射撃修正を続ける。まだ立って手を打とうとしている奴、隊列の中で裂鐘杖を持ち上げようとしている奴を見つけるたびに、座標を下に流す。広場、バスの残骸、屋根の狙撃位、K7の車台の射手が一斉に噛みつく。一斉射撃じゃない、段階的に食い込んでいく。まず手を打つ、次に膝、次に首。補充が追いつかないようにする。
ヴィクトリアの側も動き始めた。
風を直接敵に向けて吹かせるわけじゃない。そんな単純な話じゃない。彼女は風圧を何本かの斜め通路に切り分け、戦場全体に俺たちだけが辛うじて読める補給回廊を臨時に引いた。K7はその風の中を走る。あの大型クレーン車は突撃もしないし、人を撥ねもしない。ただ自分がやるべきことを正確にこなす。車尾を開けて弾帯を配布し、重い箱を運び、倒れた鉄板を吊り上げて左翼の側面掩体に作り替え、十五メートル前進して圧縮エーテル(Compressed Aether)のボンベを二本、シュトゥルムシュライターの後ろに届ける。車台の射手は上に伏せて撃ち、撃ち終えたら頭を下げて弾を換える。クレーンアームが一回転して、半焼けの小型トラックを引きずり、側路の入口に横向きに置いて新しい遅滞障害にする。
これが機動支援だ。
英雄じゃない、道具だ。だが道具は正しい時に使えば、英雄より価値がある。
シュトゥルムシュライターも動いた。
履帯車じゃない。圧縮エーテルを食う二足歩行の魔偶だ。ヴィクトリアが供給圧を補充した後、海側の路地口から三歩前に踏み出した。一歩ごとに路面の砕石が弾け飛ぶ。封口の位置からそう遠くには出ない。ただその重い機体で、第三塔の前衛が割り込もうとしている狭い通路を押さえる。海側から乾屍騎兵の一隊が防波壁の残口から切り込もうとした。先頭の腐った馬が砕けた壁に跳び乗った瞬間、シュトゥルムシュライターの一踏みで、胸郭ごと馬の頭がコンクリートの亀裂に沈んだ。後続の封海道兵が即座に左右の壁際に回り込もうとしたところで、エリザヴェータが動いた。
二階の崩れた窓から白い影が飛び降りるのを、俺は一瞬だけ見た。
次の瞬間には、白袍の高位誦読手の首から上が消えていた。血はすぐには噴き出さなかった。あいつの体の中にある液体は、もうとっくに血とは呼べないものだからだ。エリザヴェータはその屍体の肩を踏み台にして、人間が取るとは思えない低い姿勢のまま、海霧の方向を一瞥した。追わない。ただ第三塔の前衛に告げているだけだ——お前たちが入ってくるなら、妾はこれほど近い場所で待っている、と。
その圧迫感は速く伝わった。
乾屍は震えて怖がったりしない。だが失誤する。側路から潜り込もうとしていた白袍の鎖手二体の動きが、明らかに半拍遅れた。その半拍で、屋根の射手が一体を撃ち倒し、もう一体は岳家軍に路地の中に引きずり込まれ、二度と出てこなかった。
岳家軍が展開し始めた。
この軍が一番恐ろしいのは、突然数が多くなることじゃない。数が増えた瞬間に、隙間がなくなることだ。前列の盾兵が乾屍騎士団外周の突進線を受け止め、中段の長槍兵が続いて押し込んでいく。首を取りに行かない、地盤を押す。後列の弓兵は少ないが、放つ矢は誰かを射殺すためじゃなく、まだ拍を取り直そうとしている白袍の節点を専門に釘付けにするためだ。高位誦読手が立ち上がろうとするたびに、矢が飛ぶ。殺せなくても、押さえ込む。
さらに後ろには、騎兵がいた。
大通りを突撃してくるんじゃない。もっと遠い路地の網の中から、自分で近づいてくる。まず蹄鉄の音が聞こえ、次に影が見え、最後にその騎兵の一列が、もう塞がれたと思っていた路地口からゆっくりと転がり出てくる。馬は全て死馬だ。甲冑をつけ、音もなく、鼻孔から熱い息が出ない。騎兵の槍先は低く構えられ、敵の胸を狙っているんじゃなく、隊列の接ぎ目を狙っている。この連中は切り線というものを知っている。彼らが現れた瞬間、第二塔の左翼でようやく再編成を終えたばかりの乾屍前衛の一段が、中段から真っ二つに割られた。
「左翼、跟進!突撃じゃない、圧せ!」
俺は口令をもう一度叩き込む。
広場外周の人間たちがようやくリズムを掴んだ。フランス警察、フランス軍の残兵、俺たちが連れてきた人間、それから掩体に張り付いて頭を上げることさえできなかった地元武装まで、岳家軍の歩調に合わせて前に押し出し始めた。突然熱血になったからじゃない。前に本当に盾線があって、最初の波を代わりに受けてくれているからだ。銃口を突き出して、俺が指定した節点を潰していけば、地盤を一メートルずつ取り戻せる。
牛小琴は後方をさらに固く締めた。
俺は市政廳の門内ラインで、あいつが最後の隙間を塞ぐのを見ていた。分厚い木製の両開き扉を平らに倒させ、その後ろに土嚢を詰め込んで、交差点に撃てる機関銃を一挺据え付ける。側面の窓から這い入ろうとした何体かの乾屍を、あいつは鹵獲した短柄斧で直接叩き返した。半歩も前に出ず、顔を上げることさえほとんどなかったが、内圈全体の秩序があいつの手の中で骨組みを取り戻していく。負傷者はどこへ、弾切れはどこで補給するか、誰を前線に戻し、誰を先に止血するか——誰も勝手な動きはしない。
あれは優しさなんかじゃない。規律だ。
そして馬三娘は、まだ元の場所に立っていた。
「起きろ」と一声叫んだだけで、それ以上は何もしていない。それでも街全体がまだあいつに応えている。岳家軍がありえない場所から次々と現れてくる——まるでこの街が最初から奴らの骨を埋めた地であったかのように、今はただ戦いが時を得て、全員が部隊復帰しただけだとでも言うように。
俺はようやく腑に落ちた。なぜあいつが急いで刀を抜かねえのか。
今日あいつがやるのは将を斬ることじゃない。門を開けることだ。門さえ開けば、後ろの死人どもは勝手に歩き出す。
二号塔が噛みつかれ始めた。
外周の白袍節点が俺たちと岳家軍の二重圧力で一つずつ潰れていく。拍を失えば、あとは本能で踏ん張るしかない。乾屍騎士団は本来、戦場に整然とした死線を押し出すのが最も得意だ。だが岳家軍は正面からぶつかるんじゃなく、あらゆる場所から同時に押し込んで、死線全体を膨らませ、凹ませ、そして断ち切る。すぐに二号塔の前方に、ひどく不格好な空白地帯ができた。俺たちの火力でこじ開けたスペースじゃない——奴ら自身の前衛が丸ごと剥がれて、内側の骨組みが露わになった跡だ。
三号塔も圧力を感じ取ったのか、予定より早く動いた。
海霧の中からまず鎖を引きずる音が響き、続いて重い木枠が持ち上げられる衝撃音。もう封海道兵だけじゃ足りねえと見て、さらに奥の重封部隊を前に押し出してきた。門板ほどもある黒木の障板を担いだ連中で、表面には折れた骨と鉄符がびっしり打ち付けてある。狙いは見え見えだ——海側に直接死の壁を立てて、岳家軍と俺たちの地上部隊の推進を真っ二つに断ち切るつもりだ。
俺は即座に命令を飛ばす。
「海側、最優先で障板の担ぎ手を狙え! シュトゥルムシュライターはその場で圧を受けろ、追撃禁止! K7、予備鋼索を回せ。クレーンアーム、障板の台座を引き倒す準備だ。エリザヴェータ、海側の高階節点は任せた」
返事は三秒もかからず戻ってきた。
ヴィクトリアが答える。「了解。風向きが変わるわよ。あんたの連中を勝手に走り回らせないでね」
俺は塔冠の縁を掴んで南を見る。本当に風が変わっていた。街路を横切っていた風圧が突然沿岸沿いに転じて、海霧を一面、三号塔の前方へ押し流していく。見栄えのためなんかじゃない——奴らの目を潰すための風だ。
K7はその風に押し上げられた霧の幕の後ろをゆっくり動いていく。鈍重だが頼りになる鉄の魚みたいに、まず鋼索をシュトゥルムシュライターの足元に送り届け、もう一端を一番近い障板の残骸に引っ掛ける。海側の射手たちは霧幕の縁で点射を続け、頭を出した担ぎ手だけを狙い撃つ。
岳家軍も海側へ収束し始めた。
これこそが俺の本当の狙いだ。
奴らに乾屍を全部食い尽くしてもらう必要なんかねえ。戦場の外縁をきつく絞り上げて、敵の機動空間をどんどん狭めてくれればそれでいい。左翼の岳家軍はすでに第一段の包囲を完了し、二号塔前方の外側街区に沿ってさらに後方へ切り込んでいる。海側の連中は排水路、埠頭倉庫、防波堤の陰から波状に湧き出て、三号塔が押し出してきた封海道兵を押し返す。広場外縁でまだ推進している岳家軍は、くさびみたいに前へ打ち込まれ、乾屍騎士団の主力を市街中央に釘付けにする。
十万。
今なら信じられる。少なくとも十万はいる。
数えたからじゃない。街区全体が兵を吐き出しているのをこの目で見ているからだ。どの窓も、どの井戸も、どの路地も、どの空き家も——次の瞬間に一列の部隊を吐き出してもおかしくない。乾屍騎士団からしてみりゃ、これは伏撃なんかじゃない。街ごと裏切られたんだ。
二号塔と三号塔の間にあった互いを補い合う空帯が、今まさに縮んでいる。
俺は双眼鏡を振って両側の態勢を確認し、ゆっくりと息を吐いた。
「よし。その調子だ」
イヤホンの向こうは誰も喋らない。全員が、この針の穴ほどの機会に全力でねじ込んでいるからだ。
俺は命令を続ける。
「左翼部隊、無駄な追撃は全面停止。岳家軍の外輪郭に沿って動け。二号塔の外周に散兵を吸い戻せる穴を作るな。海側の射手全員、三号塔の障板部隊への点名を維持しろ。ニウ・シャオチン、内圈は二級戒備を保て。外に岳家軍がいるからって安心するやつが出たら困る。ヴィクトリア、K7は止めるな、風幕に沿って補給を走らせ続けろ。今日動くものは全部、俺の線の中に組み込む」
これが俺の一番得意な仕事だ。
英雄ごっこなんかじゃない。高いところに立って、冷静に、死ぬかもしれない全部のものを、まだ生き残れる形に並べ直す人間の仕事だ。
下では、馬三娘がようやく一歩動いた。
出撃じゃない。ただゆっくりと市政廳の正門前まで歩いて行って、岳家軍と乾屍騎士団で埋め尽くされた戦場を眺める。その顔に表情はない。まだ刃を入れていない肉の塊を見るような目だった。
あいつも待っているのはわかっていた。
二号塔と三号塔が外線に完全に断ち切られるのを。あの二つの黒ミサ塔が本当に孤立した節点になるのを。そうなって初めて、俺たちは塔を抜きに行く。今はまだじゃない。
今は、包囲だ。
塔冠から見下ろすと、岳家軍の外線はすでに内側へ収縮を始めていた。猛突進じゃない。安定した、一重一重の絞り込みだ。左翼が二号塔を包み、海側が三号塔に噛みつき、中間が乾屍騎士団の主力をぐちゃぐちゃの塊に押し潰す。本来なら拍と、塔同士の相互牽引で持ちこたえていた高階単位も、今は頭を出した瞬間に叩き潰される。節点が断たれるたびに、防線全体が凹んでいく。
二号塔が、孤立し始めた。
三号塔も、孤立し始めた。
そして俺たちは、ようやくこの戦を「三本の塔に挟み殺される」状況から「先に二本の塔を絞め殺す」状況へ引っ繰り返した。
俺は塔冠の冷たい石縁に手を押し当て、街区全体にじわじわ切り離されていく二つの黒い輪郭を睨みつけながら、イヤホンに向かって一言だけ落とす。
「全員準備しろ。次の段階——塔を抜く」
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




