163.整合 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
第一の黒ミサ塔が俺の手に落ちた後も、マルセイユは静かにならなかった。
死に方が変わっただけだ。
黒ミサが途絶え、四面の伝音管がもう腐った経文を街中に流し込まなくなった。それでも街区は息をつけなかった。むしろ逆だ。あの音に押されて動いていた群衆、軍警、市民、負傷者、技術者、そして俺たちのようなもう廃鉄寸前の連中まで、全員が突然一つのことに気づいた。もう誰かがお前の死に方を決めてくれる時代は終わった。次にどう生きるかは、お前自身が決める番だ、と。
俺は塔冠の視線窓の後ろに立っていた。右耳はまだ耳鳴りが続いている。さっきの爆裂鉤弾は俺を吹き飛ばしはしなかったが、鼓膜と肩を一緒に半壊させた。海の方から風が吹き上がってくる。焦げた木材、海塩、血の臭い、死体の油の匂いを全部混ぜて、もともと黒ミサを歌うために作られたこの塔冠まで運んでくる。塔の外の路地は燃えていて、塔の下の邪教徒はまだ錯乱した拍子の中でぐるぐる回り、市庁舎の方は殴られながらもまだ硬く脈を打ち続ける心臓みたいで、息は乱れているが、まだ動いている。
それで十分だ。
耳機を押さえ、まず葉綺安を呼ぶ。
「市庁舎、状況報告」
雑音の中にまず金属箱を引きずる音が混じり、それから葉綺安の声が来た。いつもより声質が硬い。感情を全部奥歯の裏に押し込んだみたいだ。
「広場外周の火線は成形済み。南西口と北の路地口は今のところ安定。K7の荷台は半分整理済み、補給品、部品、予備銃、医療キットを区画ごとに再配置。クレーンアームが二台目の横転車を北側の路障にするために移動中。林雨瞳は左翼の二線目銃座を三段に拡張した。希は第一回収分の使用可能装備を持ち帰り、今三分間の態勢立て直し中。シュトゥルムシュライターは持ちこたえているが、左脚の荷重偏差はまだある。ヴィクトリアは持つと言っているが、走れるかどうかは保証しないと」
俺は双眼鏡を持ったまま塔の上から市庁舎広場を見下ろす。
K7は広場のやや後方に停まっていた。前線でも突撃位置でもない。汗をかきながらもまだ踏ん張っている、無骨で頼れる骨格みたいな位置だ。車頭を崩れた壁の後ろに斜めに隠し、荷台は全開で、中はもう乱雑な箱の山じゃない。誰かが几帳面に区画を切り直していた。弾薬、工具、負傷者応急処置、剥ぎ取った敵の防具、回収可能な部品、修理待ちの武器。クレーンアームが爆風で歪んだ民用小型車を吊り上げ、ゆっくりと横向きにして広場北側の路地口に嵌め込んでいく。下では軍警と市民技術者が手振りで指示を出し合い、別の一組は荷台に寄りかかって弾倉を交換し、銃を拭き、包帯を巻いていた。
シュトゥルムシュライターは広場前段のやや右に立っていた。死体の山から引きずり出されて、ようやく立ち上がり直したばかりの魔偶みたいだ。車でも戦車でもない。二本の太く重い脚が割れた石畳を踏み締め、膝関節と腰部外側の装甲には明らかに後付けの補修跡がある。脚の付け根の近くに巻かれた圧縮エーテルの拘束環が、薄い冷たい光を放っている。静止しているときでも、死んだものには見えない。上半身全体がわずかに前傾みを帯び、呼吸を繋ぎ直されたばかりのゴーレムが次の命令を待っているみたいだ。ヴィクトリアとその仲間たちが、かつて人の魂を燃料にしていた老兵器を、圧縮エーテルで動くように強引に改造した。それだけで、路地で邪教徒を十人斬り倒すより、ずっと価値がある。
「よし」俺は言う。「次の話、よく聞け。MG42の北大西洋条約規格化、今すぐ優先順位に入れる」
耳機の向こうが一瞬静まった。
聞き取れなかったんじゃない。聞き取れた全員が、俺のこの一言が何を意味するかわかっているからだ。
葉綺安が先に返す。「今やるのか?」
「今完成させるんじゃない、今から順番に並べ始めるんだ」俺は言う。「モーゼル弾はあとどれくらい残ってる?」
今度は林雨瞳が引き取った。背景音がもっと騒がしい。明らかに補給の積み替えと銃座の調整を同時にこなしながら動き回っている。「完全な弾帯はあまり残っていない。バラして組み直せばあと数ラウンドの制圧射撃はできるが、長時間の主火力としては使えなくなる。このまま打ち続けたら、MG42はすぐ見るだけで使えない銃になる」
「だからK7に軍械工位を一つ開く」俺は言う。「ヴィクトリア、聞こえてるか?」
「ずっと聞いてる」ヴィクトリアの声には金属の反響が混じっていた。まだシュトゥルムシュライターの左脚の拘束板の下に潜り込んでいるみたいだ。「魔偶の面倒を見ながら、老ドイツの狂った銃を救って、なおかつ射手の顔を吹き飛ばさないようにしろと。随分と信頼してくれるのね」
「信頼してなければ最初から頼まない」俺は言う。「北大西洋条約規格化は今すぐ完成させなくていい。今この瞬間から、互換性のある部品、使える工具、転用できる変換方式、給弾帯、銃身、ガス圧関連の予備部品、全部K7の工位に先に並べておいてくれ。市庁舎のこのラウンドが落ち着いたら、すぐ着手できるように」
彼女は半秒沈黙した。俺が投げつけた問題の山を、一つひとつ処理できる部品に切り分けているみたいに。
「わかった」と彼女は言う。「時間をくれ。それと人手も」
「了解だ」俺は言う。
この言葉を言い終えた瞬間、戦場全体がようやく正しい形になってきた気がした。
俺たちはもう死ぬのを待っているんじゃない。戦場にある全てのものが、あとどれだけ生きられるか、あとどれだけ撃てるか、あとどれだけ使えるかを、一つひとつ並べ直している。MG42の北大西洋条約規格化はかっこいい話でも、強化の話でもない。戦場に生き残るために戦場が絞り出した答えだ。モーゼル弾が尽きたら、その銃はこの戦いから退場する。俺はまだ退場するつもりがない。だからその銃にも退場させるわけにはいかない。
視線を塔の下に戻す。
第一の黒塔を鐘令と修女の病んだリズムで縛りつけてから、周辺の低位単位はまだ混乱の中にいる。だが混乱は崩壊じゃない。ただ一時的に新しい頭を失っているだけだ。本当に厄介なのは、完全な拍子がなくても動き方を覚え始めた高位単位だ。
北の路地の奪塔組は一ラウンド叩かれた後、地面には鉤索に引っかかったままの死体が二体ぶら下がっている。エリザヴェータが残したのは死体だけじゃない、警告だ。夜風が吹くたびに、黒灰色の外套をまとった二つの塊が外壁でゆらゆらと揺れる。生き残った奪塔組の残兵は砕けた壁と廃車の陰に退いて、もとの直線攀登法で塔に近づこうとしなくなった。だが去ってもいない。それはつまり、後ろにまだ何かがいるということだ。
そして時間はそう長くはないだろう。
「エリザヴェータ」俺は低く言う。
彼女は塔冠外側の、人が立てるとは思えないほど細い鉄枠の上にいた。黒衣が風に押しつけられ、高いところを離れようとしない影の一枚みたいだ。振り返らず、ただ淡く応じた。
「うむ」
「北の路地の残兵は放っておいていい。外を見て、新しい頭を探してくれ」
「もう見ておる」彼女は言う。「お主ら人間の問題の一つは、命令をいつも手遅れになってから言うことじゃ」
相変わらず口が悪い。だが目はいい。そして自分の目がいいことを自覚している。それは気が合うより、ずっと大事なことだ。
俺は返事をせず、直接神父を呼ぶ。
「バローロ、鐘令を維持しろ。三短一長を味方識別に使い、二短二長で塔下の再集結を継続妨害しろ。修女の状況は?」
「生きている。まだ歌っている」神父の声が下層の主軸の傍から上がってくる。落ち着いていた。塔の神経系統と一戦交えてきたとは思えないほどに。「一、二層の節拍を制御できる病んだリズムに引き伸ばした。まだきれいとは言えないが、使える」
「使えれば十分だ」俺は言う。「やりすぎないように目を光らせてくれ。この塔、もうしばらく使いたい」
「見ている」
信頼できる。神父が神がかっているからじゃない。バローロという人間が本来ブレーキだからだ。物事を良くする力はないかもしれないが、腐るのが速すぎるのを止める力は確かにある。
広場外周から新しい銃声が連なった。
乱射じゃない。修正後の短点射だ。市庁舎側はもうリズムに乗っている。俺は塔冠の視線窓から南西に視線を流し、翻覆したバスの後ろから新しい線を引き出そうとしている守護兵と穿刺者の混成残隊を見つけた。完全な拍子は持っていないが、盾と長槍で空間を死角に切り分ける方法はまだ知っている。これが本当の厄介だ。ただ突進してくるだけのものは殺しやすい。隊形を組める連中は、人を食う。
「市庁舎、南西口の横転バス後方。守護兵二、穿刺者五、後ろに邪教徒の残群。まず槍を打て、次に脚を打て。盾は最初に触るな」俺は言う。
「了解」葉綺安が返す。
今度火を開いたのは広場左翼の新しい銃座だ。ライフル三丁、路障の上に据え付けた軽機関銃一挺、シュトゥルムシュライターの右腕脇に吊るされた重型補助火器一門が、ほぼ同時に噛みつく。一ラウンド目は全滅を狙わず、前列の穿刺者の槍の軌道だけを正確に断ち切った。長槍が逸れた瞬間、守護兵の盾は追従する掩護を失う。二ラウンド目でK7の車頂に伏せていた観測射手が割り込み、一発ずつ、晒された膝、足首、脇の下を拾っていく。
これだ。これが火線の連動だ。
シュトゥルムシュライターは前に出ない。ただそこに立ち、両脚を広げて、自分を重圧点として機能させる。広場の中央線に突っ込もうとするものは全員、あの圧縮エーテルを食う老ゴーレムに踏み潰されるリスクを計算しなければならない。ヴィクトリアが生贄兵器を制御可能な戦力に改造した。その改造の一番の価値は見た目の派手さじゃない。ただ立っているだけで地形を変えることだ。
南西口を押さえたところで、エリザヴェータが口を開いた。
「北だ」
二語だけだった。
俺はすぐに向きを変える。
北偏西のもう少し遠い街区から、新しい鐘の音が聞こえてくる。
第一塔じゃない。修女が歪ませた病んだリズムでもない。もっと遠く、もっと低く、もっと整った鐘令だ。音はまだ節奏の内容を聞き分けられるほど近くはないが、すでに不快な秩序感を帯びていた。遠くで誰かがゆっくりと脊椎を叩いているみたいな感覚だ。
俺は半秒黙った。
ついに来た。
全員に知らせるんじゃなく、まず市庁舎の内部判読ラインに切り替える。
「レイチェル、いるか?」
彼女の声はすぐに入ってきた。軍人でも技術者でもない。最初から最後まで恐怖を堪えながら数字と図形を見続けている人間の声だ。「います」
「聞こえたか?」
「聞こえました」彼女は息を吸い込む。声がわずかに張っているが、まだ持ちこたえている。「第一塔の残響じゃないです。周波数と反響の分布が違う。別の主鐘です」
「第二塔か?」
「可能性は高いです」と彼女は言う。「ただ、左翼編成塔なのか、単純な随伴回拍塔なのかはまだ判断できません。もう一ラウンド聞かせてください」
「一ラウンドだけだ」俺は言う。
視線をさらに遠い北偏西の路地口に引き伸ばす。塔はまだ見えない。数棟の建物の向こうで火光が断続的に揺れ、煙の中で一般の建物の屋根線より高い黒い影がちらりと揺れてはまた隠れる。こういう見えないものが一番厄介だ。見えないと、人間は自分で想像で埋めてしまう。そして想像は常に実物より判断を遅らせる。
「葉綺安」俺は言う。
「いる」
「MG42の北大西洋条約規格化を優先リストに入れろ。K7の軍械工位の第一梯隊に記録するが、今は手をつけるな。まず使えそうな部品と工具を補給区から切り出して、ヴィクトリア専用で確保しておいてくれ。このラウンドが落ち着いたらすぐ着手できるように」
「了解」
「それと、馬三娘を準備させろ。ただし、まだ出すな」
今度は耳機の向こうがはっきりと静まった。聞こえなかったんじゃない。この一言が何を意味するか、全員がわかっているからだ。
馬三娘は穴埋めに使うものじゃない。銃座の補充でも、欠けた防衛線の穴塞ぎでもない。刀の鞘の中にある最後の一刃——早まって抜いてはいけないものだ。抜いた瞬間、局面が破れるか、戦い全体が別の次元に跳び上がるかのどちらかだ。早く使いすぎれば、後が空になる。
葉綺安の返答は遅かったが、揺れていなかった。「了解。ウォームアップさせる。出場はさせない」
「そうだ」俺は言う。「まだ待て」
言い終えた直後、北偏西からの鐘声が二ラウンド目を刻んだ。
今度は前よりはっきり聞こえた。
黒ミサの腐った経文みたいに脳に流れ込んでくる音でもなく、第一塔が今使っている乾いた軍号化した鐘令でもない。この音はもっと編成向けの拍子だ。二短、一停、三長、それからまた足音みたいに細かい連続の回打。これは宣告じゃない、整列だ。遠くで誰かが散り散りになった守護兵を一列ずつ引き戻し、穿刺者を人を食える隙間に再び押し込んでいる。
レイチェルがすぐに口を開いた。声は俺の鼓膜に貼り付くように入ってくる。
「左翼編成塔です」と彼女は言う。「偽の随伴回拍じゃない。失序した単位を回収しています。第一塔が中間節点で、あれが再整備塔です」
俺は一瞬目を閉じた。この一言を脳に刻み込むみたいに。
わかった。左の塔の機能が確定した。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




