162.反撃 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
俺が打っているのは人間じゃない。この街区の次の一分間がどう死ぬかのリハーサルを取り仕切っているんだ。
「市庁舎、注意。右一騎がお前たちのほうに転じた。左二騎は塔の根元を狙っている、放っておいていい。俺の塔で食う」
言い終えて塔内チャンネルに切り替える。「バローロ、南偏東の伝音で、二長一短。『前方開路』のふりをしろ」
神父は理由を訊かず、直接やる。
鐘令が変わった瞬間、まだ節拍で動ける邪教徒と守護兵が本能的に両側に開いた。この開き方で、廃車と死体の山の後ろに隠れていた右路の護教騎士が市庁舎正面の火線に完全に晒された。
「今だ」俺は言う。
広場正面の火線が一斉に光った。
K7、シュトゥルムシュライターの銃架、二組の軍警ライフル銃座、リン・ユートンが作ったばかりの左翼二線目の銃座が、同時にその騎士本体と乗り物の脇腹に集中した。こういう高位単位は防護が厚くて、直接騎士を打ってもすぐには倒れないことがある。だが複数人が複数の角度から圧をかければ、どこかに本来晒してはいけない場所が生まれる。一ラウンド目では倒れなかった。二ラウンド目で乗り物の左側の肩帯と前胸の白袍が丸ごと引き剥がされた。三ラウンド目、一発だけ明らかに重い弾丸があった。K7から来たはずだ。乗り物の眼窩を直接貫いた。その塊が広場口の手前で横転し、背中の護教騎士が投げ出された。まだ立ち上がろうとしている。
シキが動いたのは、そのときだ。
正面からじゃない。さっき回収に行った短いルートを踏んで、横転車と路障の影を縫うように切り出した。番刀が火光の中で一度だけ光った。護教騎士が半跪きの姿勢を作ったところで、膝の後ろが先に断たれ、続いて首と肩甲の継ぎ目でもう一度光った。彼女は止まらなかった。振り返って三刀目を補うこともなく、命令通り最初の横転車の後ろに退いた。
それで十分だ。
高位単位は死ねないわけじゃない。ただ死に方が間延びすると、周りの人間がその引力に引き込まれる。
「よくやった、退け」俺は言う。
シキは短い「うん」だけ返した。
北西の塔の根元側では、左二騎の護教騎士が第一塔外周の死体の山に近づいていた。進みながら、自前の短鐘と旗語で周辺の守護兵の最小単位を再編しようとしている。市庁舎を直接叩くつもりじゃない、塔を切りに来ている。第一塔が敵の手に戻ったら、俺が今までやってきたことは全部無駄になる。
俺はエリザヴェータに目を向けた。
彼女は俺が何を言おうとしているかわかっていて、先に口を開く。「今度はいいか?」
「今度はいい」俺は言う。「一番左のやつを食いに行ってくれ。塔の根元に入れるな。一番右のやつは俺が塔で処理する」
彼女の目にようやく一瞬の光が宿った。人間の熱血とは違う。鎖を外すことを許された捕食者の、晴れやかな愉快さだ。
「やっとじゃ」
瞬きより速く消えた。
下に飛んだんじゃない。塔冠の外骨格に沿って斜めに滑り出し、黒塔の外壁を夜の影が剥がれ落ちるみたいに降りていく。ああいう動き方は、見た人間が本能的に「おかしい」と感じる。重力も関節の制約も、彼女には関係ないみたいだからだ。左側の護教騎士はまだ守護兵に短障を積ませる指示を出していた。エリザヴェータはすでに、その頭上の伝音管の影の中に降り立っていた。声もなく、叫びもなく、先に乗り物を殺すこともしない。ただ片手を騎士の兜の頭頂に乗せた。貴婦人が礼儀を知らない従者の肩を押さえるみたいに。
騎士が気づいたときには、もう遅かった。
彼女は落下の勢いそのままに、騎士の上半身を乗り物の背中から後ろに引き剥がした。単純に引き落としたんじゃない。片足がまだ鐙に引っかかった状態で後ろに反らせた。脊椎がその場でおかしな角度に折れた。乗り物が嗄れた声を上げて振り向こうとした瞬間、エリザヴェータのもう一方の手がすでにその眼窩に差し込まれていた。二つの動作はほぼ同時に完結した。護教騎士は形になった命令一つ出せないまま、塔の根元の影の中に引きずり込まれた。
周辺の守護兵が本能的にそちらを一瞥した。一瞥だけで、退き始めた。
これが彼女の価値だ。
単純に多く殺すことじゃない。
塔と鐘と儀式しかないはずのここに、教義をまったく気にしない何かが自分たちを食っている、ということを、高位単位に初めて知らせることだ。
彼女が作り出したその一瞬の失序を、俺は無駄にしない。
「塔内、命令を聞け」俺は言う。「神父、南偏西の伝音で二短二長。『塔下回収』のふりをしろ。修女、病んだリズムを維持しろ。連中に鐘令の真偽を確認させるな」
神父が直接叩く。
修女が下でリズムをさらに歪ませる。
結果は上々だった。残る塔の根元右側に接近していた護教騎士が、まだ押しを続けようとしていたところに「塔下回収」に近い鐘令が聞こえて、明らかに迷いを見せた。この塔が本当に奪われたのか、それとも単なる鐘令の乱れなのか、判断できていない。高位単位が一番怖いのはこういう不確かさだ。誤判断すれば、戦死じゃなく、自分たちの機構に飲み込まれることになる。
この半秒があれば、打てる。
もう市庁舎の火力は使わない。塔を直接使う。
第一塔の三層目と鐘室には、もともと街路に向けた小さな射口と予備の火器台がいくつか残っていた。塔に踏み込んだときから頭に入れていた。今は塔が俺のものだから、当然使う。
鐘室に残されていた鐘監の護衛用の短カービンを掴み、塔冠の西側射口まで駆け戻る。右路の護教騎士は焼け爛れたバンの後ろに停まり、塔の根元外周の守護兵を再整列させようとしていた。角度は悪くない、距離も近い、光量も足りる。
先に乗り物を打つ、騎士本体は後だ。
一発目は肩に入った。乗り物が少し揺れる。二発目は首側面の白袍の中の何かの束帯を貫いた。固定していた防護布が緩んで、騎乗単位の下半身を固定していた骨格構造が露出した。三発目でようやく騎士を狙う。胸じゃない、頭でもない、脇の下だ。どんな上等な甲冑でも、そこには隙間を作らざるを得ない。弾丸が入った瞬間、騎士はまず固まり、それから後ろに仰け反った。
まだ倒れない。
「タフだな」俺は低く言い、四発目を面頬と頸甲の継ぎ目に補う。
今度は倒れた。
塔の根元外周の最後の明確な護教騎士が片付いた後、第一塔周辺の敵の高位単位にようやく本当の断層が生まれた。だが高位単位が死ねば、次の階層のものが出てくる。そんなことはわかっていた。
案の定、三十秒も経たないうちに、もっと北の街区で新しい反応が見えた。
第二の塔じゃない。まだそこまで来ていない。
先に来たのは人間だ。
黒灰色の外套をまとい、胸に倒鐘の標章を下げた一隊が、二棟の建物の間の狭い路地から切り出してきた。盾はない、騎乗もしない、掛け声もない。それぞれの背には折り畳み式の梯子と鉤索を組み合わせたような短い架台を背負い、手には短銃と鉤斧を持っている。数は多くない、十数体。だが隊形は整然として、移動は静かで、目標は非常に明確だ。
塔だ。
「奪塔組だ」俺は言う。
エリザヴェータはいつの間にか塔冠の縁に戻っていた。口元にまだ少し拭いきれていない血がある。「ようやく、送り込まれるだけじゃない連中が来たのう」
「急いで下りるな」俺は言う。「こいつらは一人で食うもんじゃない。全体の連動を試す材料に使う」
彼女が俺を一瞥した。また俺が嫌な人間の軍官みたいなことを言い始めた、と思っているのが顔に出ている。だが反論はしない。
すぐに市庁舎に切り替える。
「イェ・キアン、新しい目標に注意。北偏西の路地、倒鐘標章の黒灰色外套、約十二体、鉤索と折り畳み架台を携行、第一塔が目標。普通の邪教徒じゃない、奪塔組だ。K7は直接打つな、俺の修正報告を待て。シュトゥルムシュライターは広場北側に半車身転じて、銃架で路地の退路の出口を抑えろ。リン・ユートン、左翼銃座から近距離に対応できる二人を分けて、漏れてくるやつを拾う準備をしろ」
「了解」彼女の返答は速い。
俺は黒灰色の外套の一隊を見続けた。動き方が正しい。急がず、乱れず、路地口の両側で二秒止まり、明らかに塔の上の火力点と射界を確認している。それがわかるということは、前の護教騎士連中より、ずっと市街地の拠点奪取に向いている。
いい。なら先に目を潰す。
「K7、路地口の右壁の三つ目の窓枠、人一人分短い位置で一ラウンド打て」俺は言う。
イェ・キアンはすぐに実行した。今度は人を打つんじゃなく、建物を打つ。壁面が爆ぜ、砕けた石と木枠が丸ごと落ちて、奪塔組の一番前の二体の頭と肩に直撃した。連中は乱れない。すぐに壁に張り付き、前進組と後退散開組の二段に分かれた。
「シュトゥルムシュライター、半車身左に修正、退路を抑えろ」俺は言う。
ヴィクトリアの弾線が一掃すると、路地の後半分は瞬時に砕石と火花と土煙に変わった。これは何人殺すかって話じゃねえ。退路を完全に塞ぐためのものだ。奪塔組はもう前へ進むしかなくなる。
「よし」俺は言う。「林雨瞳、左翼の二人は奴らが路地口を出るまで撃つな。早まって位置を晒すなよ。希は待機。エリザヴェータ——」
「わかっておる」彼女は唇の端の血を舐めとる。その目に、あの人外特有の高慢さが再び浮かび上がった。「奴らが半ばまで這い上がってきたところを、上から一枚ずつ摘み取ってやろう」
「そうだ。速さはいらねえ。恐怖を植え付けろ」
彼女は笑った。今度は、心底からの愉悦だ。
黒灰色外套の奪塔組が動き出す。前衛二体がまず鉤を放ち、鉤索が第一塔の外骨格に食い込む。後ろの二体が即座に短梯子を架け、さらに三体が短銃を構えて塔上の射口へ牽制射撃を撃ち込んできた。火力は重くないが、角度がいやらしい。人が潜んでいそうな影ばかりを的確に狙ってくる。こいつらは力任せの突撃をしに来たんじゃない。塔を近接戦の空間に変えに来たんだ。
だが生憎だったな。今この塔には俺がいる。
「神父、三層目北側の射口二つから火器台を交互に使え。同時には撃つな」
「承知した」
塔内の二つの火器位が即座に応射する。連射じゃない、抑制の効いた交互の点射だ。目的は制圧じゃない。相手に「塔上には分散した火点が二つしかない」と誤認させるためだ。奪塔組は案の定釣られて、前衛はさらに安心して鉤索伝いに上へ這い登り始めた。
奴らが塔身の中段まで登ってきたところで、俺は口を開く。
「エリザヴェータ」
「うむ」
彼女は塔冠から身を翻した。
飛びかかるのでも跳躍するのでもない。黒塔の皮膚から剥がれ落ちた影みたいに、相手の最初の鉤索を逆向きに滑り降りていく。先頭の奪塔組員が上方の火点を確認しようと顔を上げた次の瞬間、人間とは思えないほど白い顔が逆さまに目の前に現れていた。自分を同じ種族だとまったく思っていない冷たい無関心が、はっきりと見て取れるほどの至近距離で。
そいつは息を呑むことしかできなかった。
エリザヴェータはすぐには殺さない。まず片手でそいつの顔の側面を掴み、もう一方の手で胸元の鉤索を握る。まるでそいつの体にぶら下がった黒い絞縄だ。彼女は相手の目を見据え、一語一語区切って告げた。
「上は、妾の場所じゃ」
それから引き裂いた。
一人目は落とさなかった。彼女はわざと死体を鉤索に吊るしたままにした。まだ血の滴る警告板として。後ろの二人目が手を離して飛び退こうとしたが、彼女のほうが速い。片足でその手首を踏みつけ、宙吊りにする。三人目がちょうど短銃を構え直した瞬間、塔内北側の射口から正確な一発が鎖骨を貫いた。鉤索の中段が一気に混乱に陥った。
路地口では、林雨瞳が配置した二名の近距離射手も火を開いた。塔身を狙うんじゃなく、奪塔組後段の接応と補鉤担当を狙う。前・中・後の三段が同時に圧を受けて、整然としていた黒灰色外套の一隊が一瞬でバラバラに分解された。
だが高位単位の本当に厄介なところは、乱れてもなお、その混乱の中から好機を見つけ出せることだ。
一番後ろの、外套がやや長い奪塔組員が一体、塔にも登らず退きもしていなかった。路地口の内側で半跪きになり、背中から折り畳み架台を下ろして素早く小型投射器を組み上げる。ロケットでも弩でもない。爆裂鉤弾を高所に撃ち込むための専用機具だ。狙いは明らかに塔冠の伝音管か視線窗だ。
「北の路地最後尾、投射器だ!」俺は怒鳴る。「K7——」
K7を待っている暇はねえ。
俺が自分で撃つ。
塔冠の短カービンを下に向ける。一発目は投射器の脚架に当たり、逸れた。二発目はそいつの肩を撃ち抜いたが、それでも爆裂鉤弾は発射された。短い索を引きずりながら、塔冠右側の伝音管めがけて飛んでくる。
エリザヴェータは外壁、神父と修女は塔の中だ。俺に選択肢はねえ。
俺は全身で飛び込み、鐘室から持ち出した割れ鐘錫杖を上段に構え、伝音管に直撃する寸前の爆裂鉤弾を強引に半尺だけ弾き逸らした。
半尺で十分だった。
鉤弾は主伝音管を外れ、塔冠の外骨格に当たった。爆発は大きくないが、距離が近すぎる。砕けた木屑、鉄片、焼けた骨釘が顔と肩に吹きつけてくる。右耳の聴力が即座に半分になり、肩は鉄鍋で殴られたみたいに痺れた。
「クソが」俺は悪態をつきながら、とにかく体を支えて立ち上がる。
神父の声がすぐに耳機に飛び込んできた。「まだ生きているか?」
「悪くねえ。右耳は一時的に半死状態だ。伝音の主管は無事だ」
「それで十分だ」
俺は振り返り、北の路地の最後尾にいた投射手に三発目を叩き込む。今度は当たった。そいつは小型投射器もろとも壁の隅に転がり込んだ。
だが危機は去っていない。爆発音が響いた瞬間、北側の街区全体が、さらに上の階層のスイッチを押されたように反応したからだ。遠くで散発的だった守護兵が加速して収縮を始め、俺の死角になっているいくつかの路地からも、新しい鐘令の反響が聞こえてくる。第一塔からじゃない。もっと遠く、もっと深く、まだ視界に入っていないどこかからだ。
第二塔、第三塔はまだ本格的に姿を現しちゃいない。
だが奴らのシステムは、すでに遠くで目を覚ましている。
わかってる。敵の高位からの反撃は、ここからますます本格的になるだけだ。
俺はまだ耳鳴りのする右耳を押さえ、視線を市庁舎と第一塔の間の交戦エリア全体に引き戻す。広場の火線は安定している。K7は撃てる。シュトゥルムシュライターもくたばっちゃいない。希は刀を持って短い射線で残敵を刈り取り、葉綺安は補給点を本物の戦術拠点にまとめ上げた。林雨瞳の二線目の銃座もようやく形になってきた。塔内では神父と修女が節拍を押さえ、エリザヴェータは外壁をあらゆる奪塔者にとっての屠殺坂に変えている。
上等だ。
ならここから先は、ただ守り抜くだけじゃない。
押し返す。
俺は全チャンネルに切り替える。声を極力平坦に抑え、全員が余計なことを考えず、確実に理解できるようにする。
「全単位、聞け。第一塔はこれより観測砲台に移行する。市庁舎は補給と火力の要だ。今この瞬間から、全火力は俺の射撃修正に従え。まず第一塔外周五十メートルを掃討し、その後、北の路地、斜め路地、広場の三方向に向けて段階的に押し返す。敵の高位単位はすでに奪塔組と護教騎士の残隊を投入してきた。この先さらに厄介なものが来る。遠くを追うな、散開するな、今俺たちが勝ったと思うな。これはまだ、刃の下から首を引き抜いただけだ。笑うのはまだ早い」
一秒置いて、全チャンネルがまだ生きているのを確認する。
それから塔の下で、まだ錯乱した拍子の中にいて、まだ拍子を取り戻そうと足掻き、俺たちの火線に一寸ずつ削られていく敵の群れを見下ろして、最後の一言を添えた。
「ここから先は、俺が引き金を引く。この街区全体でとどめを刺す。反撃開始だ」
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




