161.局面打開 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
第二層の分拍輪を俺たちが固定した後、第三層の入口はすぐには開かなかった。
まず五秒間、沈黙した。
その五秒は銃声よりうるさかった。黒塔の骨格全体が軋んだ。木の肋骨が内側に縮み、鉄条が外側に突っ張り、喉を掴まれた獣が空気を無理やり飲み込もうとしているみたいだ。上の割れ鐘はもう元の節拍で打ち下ろさない。ただ遅れた、病んだ、喘ぎ声を帯びた余震だけが主軸を伝って降りてきた。普通の機械が出す反応じゃない。生き物が熱に浮かされているみたいだ。
俺は第二層の祭台の後ろに立って、第三層の入口を見据えた。
入口は扉じゃない。白漆喰、血布、鉄の肋骨で包まれた喉管だ。上が狭く下が広く、両側に半人の高さの内向き護板があって、上がろうとする者を自然と中央線に押し込む。中央線の正面には三つの逆さ吊りの鉄香炉が下がり、鎖の長さが意図的に胸の高さに合わせてある。その奥に両側一列ずつ、半分隠れた小さな射口がある。外の街道に向けたものじゃない。階段を撃つための射口だ。顔を上げた者は真っ先に目を持っていかれる。
これは急造の防衛線じゃない。この塔が最初から持っていた第三層の防御機構だ。
第三層は単なる一フロアじゃない。鐘室の外環であり、黒塔全体が初めて「頭脳」を持ち始める場所だ。
「入口は漏斗だ」俺は言った。「護板が中央に絞り込み、香炉が突撃を阻み、両側の射口が交差する。奥にもう一つの節点がある、でなければこんな配置はしない」
バロロ神父は俺の右後ろに立っていた。左腕の刀傷からまだ血が滲んでいるが、彼は全く感じていないみたいだ。逆さ吊りの三つの香炉を一瞥して、階段両側の陰影を見た。「射口は少なくとも四つ。後ろの人間はすぐには頭を出さない」
「先に俺たちを中に入れる」俺は言った。
「それから中に閉じ込める」と彼は返した。
「そうだ」
下では、マリア修道女の声がまだ主軸を伝って上に這い上がっていた。調子は不安定だが、効いている。黒塔は本来第三層以上から下へ節拍を打ち下ろす構造だ。今は第二層を俺と神父が固定し、第一層には彼女が自分の病んだ拍を灌ぎ込んでいる。指令の連鎖で完全に機能しているのは第三層だけだ。つまり第三層は自己防衛を急いでいる。自己防衛を急ぐものは大抵、二種類の過ちを犯す。一つは早撃ち、もう一つは最初から書き込まれた手順に頼りすぎることだ。
敵が凶暴なのは怖くない。怖いのは、敵がまだ冷静なことだ。
エリザヴェータは第三層入口の左上、ほとんど見えない木の肋骨の外側にしゃがんでいた。塔内の陰影に貼りついた黒い亀裂みたいだ。人みたいに呼吸せず、人みたいに立たない。ただわずかに頭を傾けて、壁の向こうで肉と骨が互いに擦れ合う音を聞いているみたいだった。
「中に八体」と彼女は言った。「いや、九体。守護者が二体、一体は重い。短槍穿刺者が三体。朗読者が三体。それと一体、違うものがいる」
「違うもの、どんな匂いがする?」俺は聞いた。
彼女の口の端がわずかに動いた。この質問がまだ辛うじて合格点だという顔だ。「金属、古い血、煮詰めた骨油、それと少し……神に選ばれたと思い込んでいるものが持つ特有の臭みね。他より高い場所に立って、動いていない。でも他の全員がそれを待っている」
「指揮官か」
「あるいは祭司。妾にとってはどちらでも同じ、どうせ死ぬのだから」
自分の装備を改めて確認した。拳銃はマガジンが一本半。カービン銃は二本。腰の後ろに短槍手から拾った短刀。鎌の刃は二箇所欠けているが、まだ切れる。ショットガンは第二層に置いてきた。第三層のこの狭さでは、長い銃は相手に掴まれる取っ手になるだけだ。
「戦い方は変えない」俺は言った。「でも順番を換える。神父は最初に中央線に入らない、まず左に切って香炉を弾き飛ばせ。エリザヴェータ、上縁を行け。射口に頭が出たら頭を潰せ、頭がなければ手を潰せ。中がどう開火するかを見たい。修道女——」
下に向かって声を上げた。
マリア修道女の歌声が一拍止まった。何かが下で首を傾けて俺の言葉を聞いているみたいだ。
「俺が第三層に入ったら、第二層の節拍を半拍上げろ」俺は言った。「止めるな、ずっと圧し続けろ。上にいる連中が一息するたびに、床が自分に反抗していると感じさせたい」
下から彼女の細い笑い声が届いた。「いいわ。立っていられない教会にしてあげる」
「もう一つある」俺は言った。「俺が『軸を封じろ』と叫んだら、第一層の乱拍を全部上に灌ぎ込め。塔全体が上下の節点を一時的に失うようにする」
「それはかなり痛い」と彼女は言った。
「最初から痛くさせるつもりだ」
彼女の笑い声がさらに嬉しそうになった。
神父を一瞥した。
彼は俺を見ていない。鉄鎖を何重にも巻き直して、最後に金属の聖書が手の中に落ちた。骨を砕くために鋳られた鉄の塊みたいに。こういう時に仲間への情を語る必要はない。語っても意味がない。俺が知りたいのはただ一つ、俺が踏み出した時に左隣のこの男が外れないかどうかだ。答えは、外れない。
手を上げて、三、二、一と示した。
一は言わなかった。
そのまま突っ込んだ。
第三層の入口の最初の罠は射口でも香炉でもない。一番平らに見える二段の木の階段だ。右足を踏み込んだ瞬間、木段の下で金属が外れる鋭い音がした。踏み抜いたんじゃない、起動させたのだ。俺は即座に左に体を倒した。次の瞬間、入口右壁の内側から短矛が二本猛勢で飛び出し、俺が元いた位置の胸の高さを貫いた。これは最初の一人を殺すためじゃない。反対側に躱わせて、左の射口の交差線に送り込むための仕掛けだ。
「右壁に飛び矛!」俺は怒鳴った。
バロロ神父の方が速かった。躱すんじゃない。鎖を投げて最初の逆さ吊り香炉に絡め、強引に左上に引いた。香炉の中では油脂と樹脂を混ぜた黒煙が燃えていた。傾いた瞬間、火と灰の塊が左側の射口の前に直接降り注いだ。壁の向こうから低い怒鳴り声がした。自分で用意した煙と火に焼かれた者がいる。
エリザヴェータはすでに動いていた。
入口を通り抜けたんじゃない。左上の木の肋骨に沿って潜り込んだ。四肢が骨節の制限を受けない四つの鉤みたいだ。左側の最初の射口から手弩が半分顔を出した瞬間、射口の上方から黒い影が一筋垂れて、弩を持つ手が丸ごと引き摺り出された。壁の向こうで文章になる前に途切れた悲鳴がした。弩が落ちた時、前腕が半分ついたままだった。
その隙に俺は中央線から滑り込み、右側の護板に体を貼らせながら内側に切り込んだ。
第三層の前室は第二層より低く、より圧迫感がある。頭上の梁が内側に向かって意図的に傾けられていて、立ち上がると自然に胸が圧迫される感覚がある。両側の射口の後ろは単純な人間じゃなく、木の肋骨の内側に嵌め込まれた半閉鎖の小室で、前方に素早く倒せる鉄板がある。交戦中に射手を守るためだ。さらに奥では、中央線が三つの香炉と二つの半人高の低い柵で折れ線状に切られている。直進できない。左右に縫うように進むしかない。遅ければ両側から殺される。速ければ正面の重装が待ち受けている。
教本通りの近距離屠殺ラインだ。
「神父、中央線は折れ角を打て、止まるな!」言い終わる前に、拳銃で右側の第二射口に二発連続で撃ち込んだ。
射口の中に人がいる。だが殺すためじゃない、頭を引っ込めさせるためだ。二発が鉄板の縁で火花を散らし、右側が半秒静まった。半秒あればバロロ神父が体ごと最初の低い柵に突っ込むには十分だ。彼は乗り越えるんじゃない、直接叩き割った。肩と聖書で内側の道を開けながら進む。左側の二つ目の香炉が振れ戻ってきて、ちょうど彼の顔を掠めようとした。彼は頭一つ動かさず、鎖を上に絡めて香炉の鎖を絞め殺し、そのまま宙で止めた。
前方から最初の守護者が出てきた。
普通の守護者じゃない。第二層の連中より重い。盾面は木骨に鉄を包んだものじゃなく、厚い木板、鉄条、骨板を丸ごと釘で打ち合わせた一枚で、中央に小牛頭の銅飾りが突き出している。防御だけじゃなく、突撃にも使える。盾を上げると同時に全体重で前に押してきて、後ろに短槍の穿刺者が二体続いた。槍の長さは普通の穿刺者の半分しかないが、この距離にはそれで十分だ。
「重守護者だ!」俺は叫んだ。
神父はすでに見ていた。
左に身を滑らせ、正面からの体当たりを一発かわす。同時に鎖は盾じゃなく、まっすぐ相手の左膝に巻きつけた。こういう重装甲が一番ビビるのは正面からの力押しじゃねえ——関節を奪われることだ。
守護兵がさらに一歩踏み出そうとした瞬間、神父が左脚を後ろに思いきり引き倒す。重心がその場でまるごと持っていかれた。俺はそこに畳みかける。拳銃を盾の縁下の隙間に押し当てて二発。一発目は太腿、二発目は股間の付け根。この位置じゃ胸甲は抜けねえが、下半身の制御をまとめてぶっ壊すには十分だ。
後ろの短槍穿刺者どもは性格が悪い。槍先は胸じゃなく、脇腹の下しか狙ってこない。典型的な廊下戦のやり口だ。
一本目の短槍が盾の端から床すれすれに俺のすねを狙って突っ込んでくる。跳んで避けられる距離じゃない。俺は右足を折れた低い手すりの残骸に乗せて持ち上げ、槍の穂先をブーツの裏すれすれでやり過ごす。すぐさま二本目が続く。今度は角度が高い。狙いは腹だ。俺は拳銃を前に突き出し、その槍の柄の内側に押し込んで軌道を殺す。同時に外側から鎌を引っかけるように振る。
鎌は本来、相手の武器を絡め取る道具じゃねえ。だがこんな場所じゃ、先に鉤がついてりゃ全部工具だ。
槍の柄が横に逸れた瞬間、神父のあの金属聖書が俺の右側から斜めに叩き込まれる。最初の穿刺者の顔面と面頬を、盾の裏にまとめて押し潰した。
二人目の短槍兵は退こうとした。だが退ききれなかった。
エリザヴェータがいつの間にか、そいつの背後の低い壁の上に立っていた。片足を欄干にかけ、下を見下ろす。自分からまな板の上に這い上がってくる肉の塊でも見るような目で。彼女は血に濡れた袖口を、わざわざ整える余裕さえある。
「お主らは、すぐ後ろへ下がりたがるのう」と妾は言う。「まるで背後に誰か助けに来る者でもおるかのように」
彼女は片手でそいつの頭頂を押さえ、もう一方の手で下顎を掴み、左右に開くようにひねる。頭は完全には裂けなかったが、頸椎が先に折れ、全身から力が抜けた瞬間、彼女は死体をゴミでも捨てるみたいに横へ放り投げた。
ちょうど左側三つ目の射口の視界に死体が転がり込む。壁の向こうには、まだ発砲しようとしていた奴がいた。仲間の頭が後ろ向きになっているのを見た瞬間、引き金の動きが半拍遅れる。エリーゼはその半拍を使って、自分の体を射口の中に滑り込ませた。
横向きで一人通るのがやっとの隙間だ。
彼女は人じゃない。
壁の向こうから短く詰まった、やけに密度の高い音の連なりが炸裂する。あれはもう殴り合いの音じゃない。生き物を小さすぎる箱に押し込んで、無理やり押し潰し、逆向きに折り曲げて押し潰していく音に近い。悲鳴が長く続くことはなかった。エリザヴェータは獲物を長く叫ばせるのを嫌う。うるさいからだ。
俺はそっちに意識を割かない。
三層目の前室はただの入口にすぎない。本当の厄介ごとはその奥だ。
重守護兵が倒れ、中線全体にようやく一瞬の空白が生まれる。俺は一つ目の低い欄干を飛び越え、その先の主廊を見据えた。
三層目の主廊は二層目とはまるで別物だ。二層目が礼拝堂だとすれば、三層目は「宗教の皮を被せた殺戮装置の配管」。
左右の壁にはそれぞれ三つの内側に引っ込んだ壁龕がある。本来そこに置かれるのは聖像なんかじゃなく、白衣の誦読手が立つ位置だ。各壁龕の前には半分だけの跳ね上げ式遮板があり、必要とあらば一瞬で銃架や銃眼に化ける。
主廊の中央にあるのは祭壇じゃない。さらに上の鐘室へと通じる承軸だ。その周囲を三つの小さな伝令鐘が囲んでいる。それぞれの鐘の下には長さの違う引き綱と拍板がぶら下がっている。一度に叩き壊さないかぎり、命令は延々と下層へ流れ続ける仕組みだ。
その承軸の手前に、三層目の本当の守り手が陣取っていた。
さらに分厚い白衣をまとい、肩と背に鎖と銅牌をぶら下げた高階誦読官が中央に立ち、その左右に重守護兵が一人ずつ。さらに外側に短槍兵が四人。二人が前、二人が後ろで菱形に陣を組んでいる。壁龕の中にはまだ少なくとも三人の誦読手がいて、手に持っているのは本じゃなく短い鉄槌だ。
これが第三層の防御機構の核心だ。重盾で中線を押さえ、短槍で至近距離の切り返しを封じ、壁龕の誦読手が拍と伝令を叩き出し、中央の誦読官が承軸と鐘室の開閉を制御する。
ここは俺たちが「勝つ」ための階じゃない。誰であれ踏み込んだ奴がここで死ぬように作られている階だ。
「中央のやつ、生きたまま最後まで残すな」と俺は言う。
「承知している」と神父。
「神父は右の盾を食え。俺が左の槍を崩す。エリザヴェータは壁龕掃除、最後に中央を落とす」
「てっきり一番お値打ちの獲物は自分の取り分にするのかと思うたが」
左側の射口の奥から彼女の声が返ってくる。次の瞬間にはすでに主廊上部の梁に姿を見せていた。
「お前のほうが速いからな」と俺。
「やっとその事実を認める気になったかえ」
まるでようやくテーブルマナーを覚えた召使いを渋々褒めてやる貴族みたいな口ぶりだった。
俺は息を大きく吸い込み、そのまま中央の誦読官の足元にある一番手前の伝令鐘へ一発ぶち込む。
狙うのは人間じゃない。まずは「節点」だ。
弾は鐘の腹に当たり、貫通こそしなかったが鐘全体を大きく震わせる。今まさに振り下ろされるはずだった一撃がそこで逸れた。主廊全体の刻んでいた拍子がその瞬間からおかしくなる。
こういう時、機械よりも人間のほうが「乱れ」に弱い。
左右の短槍兵四人が同時に動いた。だが動いた瞬間、さっきまでの「精密な同期感」はきれいに吹き飛んだ。
「今だ!」俺が怒鳴る。
俺は左へ。 神父は右へ。 エリザヴェータは上へ。
それが俺の描いていた形だ。
左側前列の短槍兵は俺が角度を切ったのを見るなり、主廊の欄干沿いにぴったりと槍を滑らせて突き込んでくる。距離が短すぎる。腕も悪くない。俺は槍先の速さと勝負する気はなかった。床に転がっていた折れた欄干の半分をつかみ、バットでも投げるみたいにそいつの顔面めがけてぶん投げる。
そいつは反射で腕を上げて受けに行き、その瞬間突き線が途切れた。
俺は一気に踏み込み、右手の拳銃で胸元に二発叩き込み、左手の鎌を下から腋の下にえぐり込ませる。骨に一瞬ひっかかる感触があったが、全身の体重を使って外側へ引き剥がすと、腕ごと胸板の半分まで裂けた。
そいつが崩れ落ちる頃には、後ろの二人目の短槍兵がすでに前へ出てきている。今度は胸を狙わず、横一文字に首を薙ぎにきた。
俺は前に倒れ込むように頭を下げるしかない。
槍先が耳のすぐ横をかすめ、熱い風を残していく。その勢いのまま俺は相手の足の間に突っ込み、肩で膝をはね上げる。腰の後ろに差していた予備の短刀を抜きざま、真上に突き上げる。
きれいな所作じゃない。きれいさなんか要らない。
刃を腹に通し、そのまま横にえぐる。相手は反射的にのけぞる。俺はそれに合わせて立ち上がり、まず頭突きで鼻梁を潰し、そのまま拳銃の尻でこめかみを叩く。
骨が砕ける音は、塔の鐘と同じくらい乾いていた。
右側はもっとひどいことになっていた。
バローロ神父は槍の線を切るとかそんな生ぬるいことはしない。右の重守護兵と短槍兵一人を、まるごと自分の間合いの中に引きずり込んでいた。
この男が一度距離を腕一本分のところまで詰めたら、その場の光景は基本的に目を背けたくなる類のものに変わる。
鎖が重盾の上縁に絡みつき、神父は後ろへ引かない。逆に自分のほうへ引き寄せ、盾面を強引に傾けさせ、そこへ肩から体当たりを叩き込む。
二人分の重量がぶつかり合い、主廊全体が一瞬震えた。
横から短槍兵が刺しに来るが、神父はそいつを片足で壁龕の中へ蹴り飛ばし、後ろの拍板ごと叩き倒す。そしてあの金属の聖書が振り下ろされる。まるで神学論争に終止符を打つためだけに鍛えられた鉄槌みたいに。
一度。二度。三度目の時には、その壁龕の短槍兵はただ痙攣を残すだけの肉塊になっていた。
エリザヴェータはと言えば、三層目の壁龕を自分の食卓に変えていた。
彼女は主廊を歩かない。承軸の外周、梁、壁龕の上方——もともと整備人や鐘を打つ奴隷用の細い木の梁を縫うように移動していく。
黒い衣が塔の内側の暗い赤い灯りをなめるように滑る。肉の身体という制限を本来受けてない生き物みたいに。
最初の壁龕では誦読手がまだ槌を振りかぶっているところに、上からぶら下がるように降りて、その顔面全体を片手でつかんで後ろへ反らせた。
二人目は退こうとした。エリーゼはわざわざ中に入ることさえしない。射口の隙間から片手を差し込んで、五本の指で適当に掴み、引きずり出したときには、その手には気管ごとついた首の一部が増えている。
三人目は多少は賢かった。叫び声を上げず、いきなり鉄槌を振りかぶって彼女に叩きつけてきた。
彼女は軽く首を傾けてそれをかわし、槌頭が背後の木壁を割るのを見届けてから、低く笑う。
「少なくとも一人くらいは、反抗することを弁えておるか」
その言葉が称賛だと気づいたときには、その誦読手の世界はもう終わっていた。
ようやく中央の高階誦読官が動く。
そいつは普通の誦読手じゃない。法衣の下には甲冑を仕込み、手に持っているのも本ではなく短い錫杖だ。杖頭は割れ鐘の形をしている。
正面から打ち合いに来るのではなく、その錫杖で承軸の側面をこんと一撃。
直後、三層目の主廊の下から低く詰まった歯車の音が連なって響いてきた。
次の瞬間、左右の壁龕の前にある遮板が一斉に手前へ倒れ込み、斜めの板になる。主廊の床では三枚の床板ががくんと下に沈んだ。
落とし板だ。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




