160.冒涜 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
威嚇じゃない。嫌悪だ。
右手を伸ばし、五指を前の朗読者の下顎に直接突き込み、指先を口腔から上に押し上げて、顔全体を後ろに折り開かせた。もう一人が振り返って二歩逃げた瞬間、黒衣がその背中に貼りついた。武器は使わない。人間サイズの敵に武器を使うことを、彼女は根本的に見下している。ただ相手の後頸を手すりに押しつけた。一度だけ。木の手すりは折れなかった。頸椎の方が先に折れた。
こういうものを敵の後方に置けば災いだ。俺の側に置いても福じゃない。今はたまたま目の前で役に立っているだけだ。
「エリザヴェータ、左廊で食い込みすぎるな」俺は言った。「角まで掃討して、一体生かして案内役にしろ」
彼女は手すりの上にしゃがんで、口の端に細い血の線を引いたまま俺を一瞥した。「そなたがまだ使えるのでなければ、妾はこの層の廊下を全部自分の胃に収めていたわ」
「食事のメニューは戦い終わってから選べ」
彼女が鼻を鳴らした。了承の意だ。
第二層の主廊を一瞥した。第一層より長く、攻城塔に押し込まれた病んだ礼拝堂らしさがさらに強い。両側は壁じゃない。木の肋骨、鉄条、古い祭布、白漆喰を混ぜて作った偽壁で、小さな牛頭の鉄牌と指を切った血布がびっしり釘で打たれている。数歩おきに外向きの小さな射口があって、本来は塔外への制圧用だが、今は内部に風を通す穴になっている。主廊の中段が一段高くなっていて、祭壇みたいだが上に置かれているのは聖物じゃない。割れ鐘の伝動架だ。四本の連結棒、二つの分拍輪、そして第三層へ向かう主軸が一本。これが第二層の関鍵節点だ。ここを落とせば、第三層以下の節拍は自分の足で歩くしかなくなる。
問題は、向こうもそれを知っているということだ。
「神父、中央から祭台を押さえろ」俺は連結棒の架台を指した。「俺がお前の前後を組む。修道女、第一層の節拍を上に灌ぎ続けろ、上下で拍子をずらせ。エリザヴェータ、左側の上縁から朗読手と伝令手を圧せ、奴らを立て直させるな」
「ようやく人の言葉になったな」エリザヴェータは言った。
マリア修道女は返事をしなかった。一層半のあの奇妙な境界に留まって、自分の声と黒油と経文をこの塔の喉に詰め込み続けている。声は大きくないが、一句唱えるたびに外の四つのスピーカーのうち一つが半拍遅れる。相手の心臓に砂粒を一粒ずつ押し込んでいくみたいだ。目立たない干渉だが、内部の指令の歯車を噛み違えさせるには十分だ。
第二波の反撃は両端から同時に来た。
中央主廊の前方、守護者二体が盾を構えて押してきた。盾の後ろは穿刺者じゃなく、短兵器を持った邪教徒が三人。盾面で視線を塞いでから、下の隙間に滑り込んで脚を切り、腹を割き、喉を刺す。右廊にも動きがあった。穿刺者二体が壁沿いに主廊への斜め角度を取りに来ている。側面から主廊を死角にしようとしている。
こういう局面で火力だけに頼るのは駄目だ。距離が短すぎる。隊形が崩れれば最初に死ぬのは自分たちだ。
すぐ半歩後退して、主廊の入口を神父に譲った。バロロ神父は俺を見なかった。靴底が木板を擦る音を聞いただけで、どこに立つべきかを分かっている。前に出て、鉄みたいな体で中央線を封じた。鎖を前に、聖書を後ろに——狭い刑場を専門にする老い熟れた処刑人みたいだ。最初の盾が突っ込んできた時、彼は真正面から受けなかった。半寸だけ体を斜めにして鎖を盾の把手に絡め、そのまま下に押さえた。相手は道を開けたと思った。でも足が前に引き出されてバランスを崩した。その瞬間、俺は神父の左肩の外側から銃口を差し込んで、盾の下から露出した脛骨にスラッグ弾を叩き込んだ。骨が折れた瞬間、盾壁の一角が自分で崩れた。
「右だ」俺は叫んだ。
神父が即座に左に体を寄せ、中央の入口を半三角形に封じた。これが俺と彼が組める部分だ。言い切る前に、どこに空間が要るかを彼は知っている。
右廊の穿刺者がすでに身を乗り出していた。角度を換える時間がない。空になったショットガンを一体目の顔面に投げつけた。そいつは反射的に頭を傾けた。半拍だけ遅れた。十分だ。鎌を手すりの内側から振り出して槍桿に引っ掛け、こちらに引いてから下に押さえた。槍先が木の手すりに刺さって動かなくなった。二体目の穿刺者が補填の刺突を繰り出そうとした瞬間、エリザヴェータが上から降りてきて、踵からそいつの槍を持つ肩の上に乗った。彼の背中にぶら下がる黒い刑具みたいだ。
すぐには殺さなかった。
相手の耳元に顔を寄せて、俺には聞き取れないフランス語を低く言った。召使いがワインをこぼしたことを咎める時みたいな、高慢な口調で。それから両手を左右に分けた。その穿刺者の下顎と鎖骨が、それぞれ別の方向に向かった。
血が黒衣に散ったが、ほとんど見えない。
彼女が俺の鎌で槍を止められている残りの穿刺者を見た。夜に、まだ震えている獲物を見つけた目だ。「次はそなたの番じゃ」
そいつは本当に一歩退いた。
速さに怯えたんじゃない。理解したからだ。これがエリザヴェータを人混みに放り込んではいけない理由だ。彼女の圧迫感は殺しの巧みさから来るんじゃない。目の前の存在に同族の概念を一切当てはめていないことから来る。人間は憎み、恐れ、殺しに昂ることがある。彼女にはない。ただ評価して、引き裂いて、捨てる。役に立たない部品を解体するみたいに。
右廊が二秒空いた隙に、中央の祭台へ直接押した。
第三波が一番激しかった。ようやく第二層の本命の単位が出てきた。上位の守護者が二体、盾は厚く、面罩に小牛頭の銅牌が打たれている。その後ろは普通の穿刺者じゃなく、短槍と円形の肘盾を持った近接型が二体。廊道の中で貼りつくように穿插してくる専門の形だ。さらに後ろに朗読者が三人、唱えながら鉄鎚で祭台の側面の拍板を叩いて、第三層へ節拍を送り返している。
「奴らが中継を再起動しようとしている」俺は言った。
「なら拍板を壊せ」神父は言った。
「いや、朗読者を先に打つ。拍板は残す」俺は伝動架を一瞥した。「後で俺たちが使う」
この一言でマリア修道女がようやく笑い声を上げた。細くて乾いた笑いで、骨盤の中でナイフを研ぐみたいな音だ。「そうね、残して。奴らの鐘を、私たちの病気にする」
中央の守護者がもう三歩以内まで来ていた。俺も神父もこれ以上退かない。退けば主廊を明け渡すことになる。
カービン銃を背中に回して、鎌と拳銃に持ち替えた。狭い廊道では長い火器は相手に掴まれる取っ手になるだけだ。一番手前の守護者が盾を横に押しつけて視線を右に逸らそうとした。正面で受けない。右に半歩切って盾を胸の前で擦らせ、左手で盾の縁を引っ掛けて体ごと貼りついた。後ろの短槍手がすぐ盾の横から刺突を繰り出した。俺の方が一歩早く、拳銃を盾の隙間に押しつけて発砲した。銃口炎が目の前で弾け、相手の眼球が砕ける熱気まで感じた。
守護者を俺が引きつけた隙に、神父が入ってきた。
バロロ神父は華麗さとは無縁だ。二歩以内に入った瞬間、最も純粋な鈍器の暴力になる。鎖で二枚目の盾の上縁を引いて手前に引き寄せ、聖書を同時に下から上へ、相手の喉頭と顎の継ぎ目に叩き込んだ。その守護者がまだ倒れていないうちに、神父の肩が突っ込んで、後ろの短槍手ごと祭台の側面に押しつけた。左手の五指が開いて、家畜を掴むみたいに短槍手の面罩を掴み、その頭を伝動架の鉄の角に叩きつけた。一度。二度。三度目には面罩の中にもう顔はなく、歯を詰め込んだ磁器の壺を砕いたような音を残して、赤白が混ざった塊だけが残った。
こっちも余裕はない。
銃口で目を潰した短槍手がまだ死んでいなくて、逆手に刃を持って俺の大腿内側を狙ってきた。膝を前に送って刃を防具の縁で滑らせ、鎌の柄頭を手首に叩きつけた。刃が落ちた。踏みつけて、銃口を鎖骨の窩に押しつけて撃った。二体目の邪教徒が死体の後ろから飛び出してきた。祭礼用の短斧を持っていて、刃に乾いた蝋と髪の毛が貼りついていた。俺の首を狙ってきた。頭を下げて躱し、斧刃が偽壁に食い込んで半秒止まった。半秒で、エリザヴェータが後ろからその脊椎を半分引き剥がした。
俺を助けたんじゃない。
そいつが邪魔だっただけだ。
「人間の廊道設計は本当に狭い」彼女は手の血を払いながら、祭台の後ろを一瞥した。「朗読者が三体、鐘奴が一体、後ろにいる」
「鐘奴は残せ」俺は言った。
「そなたはいつもうるさいものを残すのう」
「後でそいつにうるさくさせるから」
彼女が顎を上げて、嘲りに近い笑みを浮かべた。「よかろう。では妾は道を引き裂くだけにしてやる」
次の瞬間、彼女は祭台の側面の手すりを越えた。跳ぶんじゃない、掠める。黒衣が割れ鐘の赤い光の中で広がり、礼拝堂に入ってはいけない夜の獣みたいだ。後ろの三人の朗読者はまだ拍板を叩き、黒ミサを唱えていた。一人目の喉が彼女の指先に貫かれた。二人目が逃げようとした瞬間、彼女は拍板の縁を一踏みして壁面を横に滑った。長い髪と黒衣がほとんど音を立てず、その男の首が捻られる時の骨の爆ぜる音だけが残った。三人目はようやく背を向けてはいけないと気づいて振り返り、鉄の経冊を彼女の顔に叩きつけた。エリザヴェータは躱さなかった。鉄冊が頬の横を掠めて細い線を引いた。ただゆっくりその男を見た。相手がようやくまともな反応をしたことへの、わずかな興味を持った目で。
「少しは面白い」と彼女は言った。
それから手を伸ばして鉄の経冊を掴み、本ごと手ごと、相手の胸に押し込んだ。
俺は祭台の後半が乱れた隙に、神父と一緒に関鍵節点に押し込んだ。
割れ鐘の伝動架は思ったより大きかった。主軸が第三層から垂れ下がり、中空の木の肋骨を貫いて、第二層の分拍輪に繋がっている。横には人力推進桿の組み合わせがあって、主軸が不安定になった時に人力で節拍を維持できるようになっている。さっきの朗読者たちがやっていたのはそれだ。今はほぼ全滅して、鐘奴が一体残っている。両耳を鉄釘で穿たれ、胸に小牛頭の銅牌を打たれて、まだ機械的に推進桿に触れようとしていた。
一蹴りで倒して、銃口を額に押しつけた。
「第三層はどう開く?」
口の中が血だらけで、文章にならない。ただ繰り返す。「鐘室……拍を鎖す……塔冠の視線……」
「十分だ」俺は神父に顔を上げた。「第二層の節点はこの分拍輪だ。落として固定しろ、壊すな」
バロロ神父はすでに理解していた。鎖を分拍輪の外周に何重にも巻き付け、折れた槍桿を歯の隙間に噛ませて、輪架全体を強引に固定した。金属が金属を噛む、歯の根が浮くような鋭い音がした。完全に止めるんじゃない。不快で、アンバランスで、拍が遅れる形でしか動けないようにする。外の四つのスピーカーが即座に深刻な拍のずれを起こした。遠くから塔内に伝わってくる、街全体が咳き込んでいるみたいな音だ。
マリア修道女が下の層でその節点を受け取り、逆流を始めた。
彼女の声が主軸を伝って上に這い上がり、病気を帯びて、どんな正常なミサにも属さない歓喜を連れて、第一層ですでに俺たちが汚染した節拍を、第二層の新しく固定された輪組に無理やり押し込んだ。この時ようやく彼女の役割が分かった。補助じゃない、後方支援でもない。この塔の神経系統を配線し直しているのだ。手はまだ動き、足はまだ歩けるが、全ての命令が震えを帯び、遅れを帯び、自傷の傾向を帯びるように。
中央主廊が二秒静まった。
本当の静けさじゃない。第二層で立って反撃できるものが、一時的に全滅しただけだ。
しゃがんで鐘奴の頭髪を掴み、俺たちが固定した分拍輪を見させた。「第二層の指揮は誰だ?」
瞳孔がすでに散っていた。唇が震えて、一語だけ出てきた。「……鐘監」
「死んだか?」
返事はなかった。一発撃って、問いを終わらせた。
エリザヴェータは祭台の後ろに立っていた。黒衣に砕けた血と木屑が散っていたが、それでも全体としては肉の山から出てきたばかりとは思えないほど整っていた。頰の横を鉄冊が掠めた細い傷を指先で軽く触れた。人間が傷を確認する動作じゃない。上位の捕食者が獲物に残された爪痕に、わずかな新鮮さを感じている動作だ。
「第三層にはもっとある」と彼女は言った。「鐘油、焼けた骨、生きた人間の恐怖が嗅ぎ取れる」
「生きた人間?」俺は聞いた。
「少なくとも一人。死に方を覚えていないだけの祭品かもしれないけれど」彼女の口の端がわずかに上がった。「そなたが十分速ければ、悲鳴を上げる前に間に合うかもしれないわ」
彼女がこれを言う時、冗談の色は一切ない。
立ち上がって、素早く確認した。
弾薬はもう一層分は戦えるが、無駄は許されない。拳銃はマガジンが一本半。カービン銃は二本。ショットガンはもう持ち歩くのに向かない。鎌の刃は欠けているが、まだ使える。神父の左前腕に短刀で一筋引かれた傷があった。深くない、力に影響しない。マリア修道女の方から助けを求める声は聞こえない、まだ安定している。エリザヴェータは……消耗品として数えない。彼女はただ、もっと空腹になっていくだけだ。
「第二層節点、落とした」俺は言った。「神父、槍桿と鎖をここに残して分拍輪を鎖せ。修道女が逆拍の維持を引き継ぐ。エリザヴェータ、半層先に上がって第三層の入口の構造を確認しろ。深く入りすぎるな、一人で宴会を始めるな」
エリザヴェータが俺を一瞥した。その目には非人の高慢がほとんど丸ごと書いてあった。お前に言われなくても分かっている、と。
それでも頷いた。
「周士達、もし第三層に本当にまともな獲物がいるなら、妾より先に死ぬでないぞ」
言い終わるが早いか、彼女はすでに祭台の後ろの斜め梁の上に身を翻していた。火光に逆らって上へ泳いでいく、一筋の影みたいに。
バロロ神父は最後の槍桿を歯車に噛ませ、緩まないことを確認してから振り返った。「上はもっと狭くなる」
「分かってる」俺は拳銃を押し直し、倒れた短槍手の予備ナイフを拾って腰の後ろに差した。「だからもっと速く行く」
下でマリア修道女が歌い始めた。普通の人間がついていけるリズムじゃない。まともな教会が許す音階でもない。だがその声が主軸を伝って上に這い上がる時、黒い塔全体が震えた。力を増しているんじゃない。熱に浮かされているのだ。
第二層の関鍵節点は、もう俺たちの手の中にある。
そして第三層が、俺たちに引き剥がされるのを待っている。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




