159.黒ミサの塔を制圧せよ 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
扉が開いた瞬間、最初にぶつかってきたのは人じゃない。匂いだ。
単純な屍臭でも、湿った木材の黴や焦げた油脂のようなありふれた悪臭でもない。血、鉄、古い香灰、湿った木材、動物の脂、腐った布、汗の垢、そして一番気持ち悪いもの——何度も使い回された祈りの空間の匂いが混ざっていた。普通の教会にもああいう匂いはある。蝋、木、布、埃、人群れの息が混ざって、時間が経つと静けさの層として沈んでいく。だがこの塔の中に静けさはない。本来礼拝堂に属するべきその層を血と焦油に浸して、動く木鉄の箱に詰め込んでいる。
だから扉を開けた瞬間に分かった。これはスピーカーをいくつか吊り下げた攻城器じゃない。
意図的に邪教の器官として作られた、移動する礼拝堂そのものだ。
エリザヴェータが先に入った。
扉を体当たりで開けるわけでも、蹴り破るわけでもない。かんぬきを本来の荷重位置から外し、扉板が内側に一寸緩んだ瞬間には、もう俺の視界の正面から消えていた。あの移動方式は厄介だ。本能的に影を追いたくなるが、視線を半秒でも奪われれば、本当に見るべき入口を見落とす。
だから彼女は見ない。扉の中を見る。
第一層の空間は広くないが、意図的に天井が高く作られている。塔底左側のこの点検兼装填口から入ると、中柱に直通するのではなく、やや狭い前室になっていた。両側の壁は壁じゃない。木製護板と鉄の肋骨で組まれた内層構造で、逆十字、小さな鉄牌、煙で燻された祈りの布切れ、節ごとに繋がれた骨の束がびっしりと釘で打ちつけてある。骨の中には人間のものもあるが、そうでないものも混じっている。天井の低い位置から鉄籠に包まれた小さな灯りがいくつか垂れ下がり、火は普通の黄色ではなく、汚れた油を混ぜたような病的な白だ。壁際には蓋の開いた木箱がいくつかあり、中身は弾薬じゃない。束ねた白布、蝋垂らし、鉄釘、そして文字がびっしり書き込まれた羊皮紙の巻物だった。
前室の中央には短い卓が立っている。
供卓でも作業台でもない。その両方を混ぜ合わせたものだ。上には開かれた黒革の書物が置かれ、横に鉄鎚、鉗子、皮剥ぎナイフ、蝋の垂れた杯盞、小型の金属匣が並んでいる。匣の側面からは導線が何本か引き出され、壁の中に這い込んでいた。朗読、供物、修理、拷問器具、スピーカーを全部同じ線で繋いでいる。
扉の向こうの三体がようやく振り返った。
エリザヴェータはすでに一体を仕留めていた。
文字通りの噛みつきじゃないが、その光景が与える感覚はそれに近い。前室右側の高い斜め支架に張りつき、木と鉄の構造に本来貼りつくはずのない黒い影みたいになっていた。扉に一番近い朗読者が頭を完全に回し終わる前に、喉が先に開いた。綺麗に切られたんじゃない。声を出せる部分を取り外されたのだ。血はあまり出ない。エリザヴェータが手を下す時、人間よりずっと、どこを押さえれば血の噴出を遅らせられるかを知っているからだ。
二体目が叫ぼうとした瞬間、神父が入ってきた。
バロロ神父は狭い通路には向かないが、高さがあって、支えがあって、ぶつかる硬い点がある室内構造には非常に向いている。扉をくぐった瞬間、前室全体に攻城槌が押し込まれたみたいになった。左手の鉄鎖で相手の前腕を封じ、右手の聖書を横から顔面に叩きつけて、顔を上げかけていた朗読者を卓の角まで吹き飛ばした。
「悔い改めよ」
歯と鼻骨が一緒に黒革のページに砕け散った。
三体目は朗読者じゃない。エリザヴェータの言った通り、リズム管理の担当らしい。祭服はより完全で、胸には数珠というよりカウンターに近いものを下げ、腰には短い鉄杖を差している。前の二体より反応が速く、入口には向かわず、直接壁の銅製レバーに手を伸ばした。
俺の方が半拍早かった。
カービン銃をこういう室内で撃つと耳が死ぬほどうるさいが、効く。一発目が手の甲を穿ち、二発目が肩窩に入って、体全体を木の肋骨に叩きつけた。レバーに触れる機会を与えず、二歩前に出て銃口を胸に押しつけてもう一発。完全には倒れず、まだ何かを唱えようと口を開きかけたところに、エリザヴェータが高所から降りてきて、つま先でその喉を踏み、体重をかけた。
その人間を見ることすらしない。
「下等なものに空気を汚させるな」と彼女は言った。
威圧的な演技じゃない。彼女が本当に一番面倒だと思っているのは、敵の存在そのものじゃなく、敵がうるさいことなのだ。
修道女が最後に入ってきた。
彼女が入った瞬間、前室の鼓膜に張りつくような黒ミサの残響が変わった。小さくなったんじゃない。意図的に古びて神秘めかした汚い布の一角を、誰かが勢いよく捲り上げたみたいになった。地面の血も、エリザヴェータが踏んでいる人間も見ない。まず卓、書物、金属匣、壁の導線を見て、最後に俺が手順を断ち切った銅製レバーに視線を止めた。
「拍子の制御、この層にも分岐点がある」と彼女は言った。
すぐ目を向けた。「断てるか?」
「断てる」彼女がしゃがんで、卓上の黒革の書物が開いているページを一瞥した。普通の聖句じゃない。拙劣に書き換えられたラテン語の一節で、周囲には停頓、アクセント、応唱、増幅倍率が細かく書き込まれている。「でもただ砕くだけじゃ駄目。砕けば乱れるだけ。半分黙らせて、半分乱す。そうすれば外の人間がもっと不快になる」
それでいい。それが俺の欲しいものだ。
銃口で二方向を指した。
「神父、前室を片づけたら扉を守れ。エリザヴェータ、奥を探れ、第一層のコアを見つけろ。欲しいのは節点だ、殺した数じゃない。修道女、ここの音をまず絞れ」
エリザヴェータが目を上げた。その傲慢さはほとんど生まれつきのものだ。
「ようやく私にまともな命令ができるようになったわね」
言い終わる前に動いた。
いや、消えた。
前室右奥に内側へ向かう斜めの梯子がある。狭い。整備員や朗読者が上下するための通路だ。エリザヴェータは一段目を踏まなかった。側面の鉄肋骨を手で掴んで身を翻し、奥の薄暗い空間へと入っていった。見せつけるためじゃない。人間が設計した通路を素直に使うことを、純粋に嫌っているだけだ。彼女にとって梯子は、短命な種族が体力を節約するための道具に過ぎない。
神父はその間に前室で最後に痙攣していた朗読者を完全に処理し、短卓を蹴り飛ばして扉の内側右に斜めに噛ませ、半身を隠せる即席の遮蔽にした。それから鉄鎖で扉後ろの死体二体を引き摺り、点検口の内側に積んだ。
「外からすぐ押し返してくる」俺は言った。
「分かっている」彼は聖書を膝の上に立てた。これから叩く鉄床を置くみたいに。「お前たちは奥へ。俺が口を守る」
修道女はすでに動いていた。
刃物を取るわけでも、線を引き抜くわけでもない。まず卓上の黒革の書物を閉じて、裏返し、背表紙を下にして卓の端に押しつけた。奇妙な動作だが、すぐ意味が分かった——見たくないんじゃない、その間違ったリズムをこれ以上参照物として機能させないためだ。次に卓脇の蝋垂れ杯を取り上げて、中の腐臭のする黒い油蝋を金属匣の側面に直接流し込み、数珠で導線の一本を絡めてから、低く経を唱え始めた。
その声は安定していて、狭く、祝福というより外科手術みたいだった。
壁の四本の導線が次々と震え始めた。物理的な揺れじゃない。リズムが狂った時の痙攣だ。外のスピーカーが即座に影響を受けた。辛うじて大きな枠組みを保っていた黒ミサが、突然鈍刀で拍子を滅茶苦茶に切り刻まれたみたいになった。遠くから守護者の盾がぶつかり合う音が聞こえる。塔外の部隊もすでに適応できなくなっている。
「この層は分拍をやっている」修道女は言った。「コアじゃないけど重要。ここを落とせば、塔の左側と下半分が先に制御を失う」
「制御を失うだけじゃなく、足手まといにできるか?」
修道女が俺を一瞥した。温和な修道女の目じゃない。帳簿をよく知っている人間が、同じく計算できる人間を見る時の目だ。
「できる。少し時間をちょうだい」
頷いて、エリザヴェータを追って奥に入った。
斜め梯子の先は第二層じゃなく、塔の中心柱を半周する細長い内廊だった。前室よりさらに気持ち悪い。両側はもう単純な護板じゃなく、意図的に礼拝堂の内廊を模して作られている。木板には偽のアーチ天井が一区画ずつ焼き付けられ、その中に白い布切れと乾いた血痕が吊るされている。床は鉄釘で祈祷紙を一枚一枚打ちつけて帯状の通路にしてあった。歩くたびに、文字が書き込まれた紙を踏み破ることになる。一歩ごとに祈りを踏ませるよう、誰かが意図的に作ったのだ。
内廊の突き当たりから規則的な打撃音が聞こえていた。
金属対金属。速くはないが、安定している。心臓に鎚を外付けしたみたいな音だ。
木の肋骨の後ろに身を寄せ、先を覗いた。
奥は半開きのコア区画だった。区画というより、鐘楼の内部と機械室と祭壇を一つに縛り合わせた異様な空間だ。中央には太すぎる中心柱があり、外側は木で覆われ、鉄の箍と符文板が何重にも嵌め込まれている。柱の中段からは四組の伝動アームが伸び、それぞれ四面のスピーカーと上層プラットフォームに繋がっている。柱底には低速で回転する分拍輪組があり、輪組の外周に鉄鎖で拘束された銅鐘がいくつか吊るされている。大きくはないが、一格回転するごとに、意図的にくぐもらせた打音を発する。
これが塔の第一層コア節点だ。
総コアじゃない。だが十分に致命的だ。
黒い頭巾を被った二人が輪組の脇を守っている。一人は回し手、一人が鉄鎚で節拍を叩いている。その後ろにさらに三人が半跪半座で、柱身下方に嵌め込まれた金属口に向かって低く唱えている。あの金属口が、この層の儀式音を塔体全体に送り込む管道だろう。
そしてエリザヴェータは、すでにその上にいた。
中心柱の側面の陰に逆さにぶら下がり、片手で鉄箍を掴み、長い外套を一筋垂らしている。本来教会の梁に棲むべき夜行獣みたいだ。下の邪教徒は誰一人気づいていない。人間の視点で守ることに慣れすぎている——扉を見て、平面を見て、正面を見る。エリザヴェータはそのどの方向にもいない。
彼女が見下ろして俺を一瞥した。その目には、俺が遅いという苛立ちすら滲んでいた。
唇は動いていないが、待っているのが分かった。
命令を待っているんじゃない。俺が馬鹿なことをしないのを待っている。
手振りで三点を指した。左の回し手、中央の打鐘手、奥の朗読口。
彼女が見終わって、ごく軽く頭を傾けた。その姿勢は恐ろしく高慢だ。「了解」じゃない。「ようやく要点を見たわね」という態度だった。
半歩引いて、外に向かって低く呼んだ。「神父」
すぐには入ってこない。斜め梯子の口から応じた。
「言え」
「第一層のコアを見つけた。輪組、打鐘、朗読口だ。まず回し手と節拍を断つ、それからこの層を完全に絞る」最後の一句は半音上げて、修道女にも届くようにした。
修道女の声が前室から安定して届いた。「こっちはもう左下半分の分拍を遅らせてある。あなたたちが動けば、外はもっと乱れる。早く」
よし。
もう一度コア区画を見た。
エリザヴェータはまだ中心柱の陰にぶら下がっている。その光景は徹底的に反人間的だった。ホラー映画的な意図的歪みじゃない。人間の関節、重力の習慣、羞恥心といった制限を根本から受けていない姿勢だ。高い場所にいて、上から見下ろし、相手が顔を上げる前に誰を殺すか決めるために生まれてきたような存在だ。
そして今の彼女は明らかに、その高度差を楽しんでいる。
下の打鐘手がまた一打した。
その鈍い響きが中心柱を伝って広がり、黒ミサ塔全体が一緒に汚い息を吐いたみたいになった。
銃を肩に押し当て、左の回し手の肩甲骨を狙った。もう一方の手は腰後ろの手榴弾に触れているが、まだ使うつもりはない。この層は爆破して乱すんじゃない。奪うのだ。
第一層コア節点を落とせば、黒ミサ塔の左半分と下段のリズムがまず跛を引く。俺たちの本当の奪塔が、ようやく始まる。
前方を見据えて、低く吐き出した。
「動け。第一層を先に取る」
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