158.援軍 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
レイチェルが去ると、俺はもう背中を見なかった。
戦場で一番無駄な動作は、見送ることだ。人を送り出して、命令を伝えて、後は自分が遠くから手を貸せるものじゃない。今の俺の前には塔がある。通り全体を邪教の祭場に変えた塔が。そして俺の隣には、まともな都市に同時に存在してはいけない四種類の戦力がちょうど揃っていた。こういう局面は滅多にない。生き残れるかどうかは運じゃない、役割分担で決まる。
まずエリザヴェータを見た。
半崩れの壁の陰に立ち、待機しているというより、場所が明るすぎると思っているみたいな立ち方だ。海風が吹き込んで、街の火光と黒ミサ塔スピーカーの歪んだ朗読が彼女の顔の横を掠めていく。瞼一つ動かさない。彼女は人間じゃないから、人間みたいに勇気を搔き集めて、恐怖を押さえ込んで、自分を言い聞かせて前に出る必要がない。黒ミサ塔を見る目は、人間が災害を見る目じゃない。もっと古い何かが、粗末な偽物を値踏みしている目だ。
「左側中段の死角はまだある」彼女が先に口を開いた。声は低く、伺いを立てる気配は微塵もない。「外層の朗読者は四から六人、塔底の牽引節点の方が上より重要。奪うなら正面から行くな。凡人が死にに行く道だ」
「凡人」と言う時の口調は平坦で、侮辱の意図もなければ、隠す気もない。それは彼女が気取っているんじゃない。人間の動き方、傷の受け方、躊躇の仕方を、最初から自分の世界の計算に入れていないだけだ。
頷いた。「お前が道を開ける。左側から入れ」
彼女が一瞥した。口の端の線がごく薄く動いた。笑いじゃない、この一言がまだ自分を侮辱していないと判断したような動きだ。
「ようやく頭を使う人間がいた」
無視して、修道女に向き直った。
マリア修道女は黒ミサ塔より静かだった。声が小さいんじゃない。彼女がそこに立つと、黒ミサに引きずられてべたついていた周囲の空気が、少しだけ澄む。神蹟じゃない、抵抗だ。通り全体が一方向に傾いている中で、彼女一人が反対側に立っている。勝ってはいない、でも譲ってもいない。
「前には出なくていい」俺は言った。「お前の仕事は人を打つことじゃない、あの塔の音を圧すことだ。俺たちが塔底に届いたら、あいつの儀式の皮を一枚剥いでくれ。祭壇じゃなく、機械に戻してやる」
修道女が頷いた。手の中の数珠は揺れていない。
「『礼拝』から『雑音』に引き戻す」と彼女は言った。
その一言は十分だった。的確で、十分に鋭い。
最後に神父を見た。
バロロ神父にブリーフィングは要らない。さっきからずっと塔を見ていた。外観を見ているんじゃない、構造を見ている。人を見る時とは違う目だ。人を見る時は裁くような目。塔を見る時は棺桶の寸法を測るような目だ。
「塔底はお前に任せる」俺は言った。
「最初からそうあるべきだ」
「すぐ上に突っ込む必要はない。塔底を開けて、牽引節点と左側の支持を断て。入れる状態にしてくれれば、次は別のことをやってもらう」
神父の灰白の顔に表情はなく、ただ平坦に一言返した。
「アーメン」
作戦はそれで決まった。
前置きなし、互いの鼓舞なし、「気をつけて」もなし。こういう隊が今さら信念を口に出す必要があるなら、とっくに死んでいる。
手を一振りして、四人で街角に残った遮蔽物に沿って前に切り込んでいった。
中央の黒ミサ塔はまだ押している。
近づくほど、これが一体のものじゃないと分かる。病んだ人間たちが極めて大きな悪意で縛り上げた秩序だ。塔底前方の牽引群はもう単純な引き索隊じゃなく、二列に分かれて斜めに地面を這う屍と邪教徒の混成引行列になっていた。守護者はさらに外側に半円形の可動壁を張り出し、盾面を互いに噛み合わせながら、完全に密着させるんじゃなく、後列の穿刺者が槍を補える隙間を意図的に残している。護教騎士は塔身の両翼をゆっくり踱き、長竿を時折持ち上げ、傾け、押し下げて、塔全体の呼吸を調整しているみたいだ。
四面スピーカーの黒ミサはまだ流れている。
今度はもっとはっきり聞こえた。逆転した祈祷文だけじゃない、意図的な群衆の応答が入っている。信徒がどこで低く唱和して、どこで声を揃えて応えて、どこで泣き声や呻き声を出すか、全部あらかじめ録音されている。軍警や市民が近づくと乱れやすいのも当然だ。これは理解させようとしているんじゃない。引き込もうとしているのだ。
手を上げて隊形を低くして、三人を連れて半面の落地窓が震えで砕けた薬局の廃墟に入った。中は砕けたガラス、倒れた薬棚、こぼれたアルコールと解熱剤だらけだ。黒ミサ塔の低音が店内のまだ砕けていない小瓶を絶えずかすかに鳴らしていて、歯が震えているみたいだった。
カウンターの後ろにしゃがんで、割れた窓枠越しに塔を見た。
この角度から、エリザヴェータが言っていた左側の死角が確かに存在するのが分かった。完全に見えないわけじゃないが、牽引群、外付け護板、左側の副支架の遮蔽が重なって、塔上の朗読者にも前方の守護者にも視界が利かない一角が生まれている。普通の人間がそこから突っ込めばやはり死ぬ。だが先に観察点を潰す人間がいて、塔底を押さえる人間がいれば、入れる。
低く言った。「塔の左に突破口がある。まず目を潰して、次に足を潰す」
エリザヴェータは俺を見ていなかった。嗅いでいた。
比喩じゃない。本当に何かの獣みたいに、わずかに頭を傾けて、街の灰、血、焦油、海風、屍臭、アルコールの揮発と人間の恐怖を鼻端に流し込んでいた。誰かいるかどうかを確かめているんじゃない。どの「生きているもの」を先に処理すべきか、選り分けているのだ。
「上層の二人はまだ警戒している」と彼女は言った。「中段の朗読者は思考停止、大した価値はない。塔底の左護板の後ろに穿刺者が三人隠れている。一人が他の二人より高い、小頭目だろう。右側に守護者が二人、外の通りに完全に向いていない。スピーカーのリズムを聞いている、殺しやすい」
「殺す」という言葉がひどく軽かった。服の糸くずを指で弾くくらいの軽さだ。
一瞥した。
「左護板の後ろの三人、お前が先に片づけろ」
ようやく塔から視線を戻して俺を見た。目の中に、渋々認めたような傲慢さがある。
「ついてこられるといいわね。塔全部を私に剥かせないで」
言い返さず、時間を前に進めた。
「修道女、彼女が動いたらスピーカーを圧し始めてくれ。静かにしなくていい、乱れさせるだけでいい」
「分かった」
「神父、第一波は塔に入らない。塔底の牽引節点と左側の支持を断て」
「分かった」
それから三つ数えた。
誰も三、二、一とは返さない。こういう隊に同期の掛け声は要らない。
エリザヴェータが先に動いた。
「走る」という表現は失礼だ。人間みたいに重心の移動と足運びのリズムに頼った動き方じゃない。影が自分でより近い道を選んで、薬局の砕けた窓枠の縁から滑り出して消えた。速いだけじゃない、存在感が薄くなる。次の瞬間には横転した冷蔵車の残骸の後ろに張りつき、三秒後には別の倒れた路障の脇にいた。
街の邪教徒はすぐには気づかなかった。人間のやり方で警戒していたからだ。角度を見て、正面を見て、足音を聞いて、大きな動作を捉えようとする。エリザヴェータはそのどれも与えない。
それから最初の上層観察者が死んだ。
大した場面じゃない。塔身左中段の白い輪郭が横を向こうとした瞬間、喉のあたりが一瞬暗くなって、そのまま後ろに仰け反って動かなくなった。二人目の朗読者は隣がもう死んでいることにさえ気づかず、まだ口を動かし続けていた。エリザヴェータが塔の骨格の隙間から伸びた黒い腕みたいに、その顔面を直接塔内に押し込むまで。
叫び声はない。
スピーカーの音がほんの一拍だけ乱れた。
その一拍で、修道女がすぐ繋いだ。
大声で叱りつけるわけでも、芝居がかって手を掲げるわけでもない。ただ薬局の崩れた壁の後ろに立って、ごく短く、ごく安定したラテン語を唱えた。声は大きくない、でも真っ直ぐだ。釘を一本、黒ミサのあのべたついた音の層に無理やり打ち込んだみたいだ。
四面スピーカーは止まらなかった。でも汚れ始めた。
物理的な損傷による歪みじゃない。リズムが完結しなくなった。引き伸ばされるべきある音節が突然短く切れ、後に続くはずだった群衆の応唱が半拍遅れ、人の頭を下に引っ張っていたあの統一された拍に、初めて亀裂が入った。
低く言った。「行くぞ」
神父が先に出た。
今度は地下夾層で狭い通路を守っていた時とは違う。街面での神父の戦い方は、自分で標的を選ぶ装甲車みたいだ。黒い戦術祭服の裾が砕けたガラスと灰塵を掃き、左手の鉄鎖が一振りで、まだ完全に反応しきれていない邪教徒の首に絡みつく。下へ引き絞る——相手が完全に倒れる前に、神父はすでに胸元に体当たりして、そのまま塔底の護板に叩きつけていた。
「懺悔せよ、悪党め」
右手の聖書が続けて振り下ろされる。
頭を狙わない。まず索を握る手、次に肩甲骨、それから顔面。そうすれば牽引節点が死ぬ前にまず力を失う。塔前の牽引群が乱れれば、塔全体の前進リズムが狂う。神父はよく分かっている。
俺は神父の右後方から切り出し、カービン銃二発で左護板の縁から顔を出した穿刺者を先に潰し、さらに一歩前に出て牽引の太索と引き手の肩に直接発砲した。この戦いに浪漫は要らない。塔を奪うなら、まず歩けなくしてやる。牽引群が断たれ、支持点が乱れれば、黒ミサ塔の「荘厳さ」が一皮剥ける。残るのはただの機械だ。
前方の守護者がようやく反応して、盾を構えてこちらに押してきた。正面でぶつからない。体を捻って正面を躱し、銃口を一番厄介な隙間——脛と盾底の間——に直接押しつけて引き金を引いた。弾道は綺麗じゃないが、距離は十分だ。脚が砕けて盾面全体が左に倒れ、後ろの穿刺者の視線をちょうど塞いだ。
神父が鎖を投げ、倒れた盾の縁に絡めて引き剥がす。金属板全体が引き戸みたいに掲げられ、塔底左側の構造がようやく露出した。
初めて黒ミサ塔の「足」を近距離で見た。
比喩じゃない、本当の足だ。下段の鉄装甲板の後ろには、木、鉄、索、骨を混ぜ合わせた支架があり、外側に宗教紋章と白漆喰を塗って告解亭か聖龕みたいな気味の悪い形に仕上げてある。中には可動踏板、点検口、垂れ下がった太索、そして意図的に用途を分かりにくくした遮蔽板がある。純粋な古代攻城器でも、純粋な邪術でもない。設計がある。誰かが工学を邪教儀式に奉仕させている——それが一番気持ち悪い。
その時、スピーカーが突然震えて、左側の音が完全に崩れた。
俺が撃ったんじゃない。エリザヴェータだ。
彼女はすでに塔側面の骨格を伝って中段まで登っていた。梯子を掴んでいるんじゃない。壁面に対して独自の理解を持つ壁虎みたいに。黒い長衣が一閃して、狭いスリットから半身を乗り出し、片手でスピーカー後方の露出した金属支架を掴み、もう一方の手で何かを配線と固定具の間に捻り込んだ。
次の瞬間、左側スピーカーが歯を抜かれるような鋭いハウリングを吐き出した。
塔周辺の邪教徒が全員乱れた。
何人かは恐怖からじゃなく、「あってはならない」からだ。奴らにとってあの塔は攻城器じゃない、宗教的な器官だ。器官が自分で悲鳴を上げ始めるということは、神託が出血したのと同じだ。
エリザヴェータは下で自分を探している邪教徒どもを見下ろして、その表情は殺意というより、露骨な苛立ちだった。
「劣悪な模倣品ね」彼女は低く言った。
距離はそれなりにある。本来なら聞こえないはずだ。だが彼女の言葉は俺に向けても、敵に向けてもない。塔そのものへの講評だ。長く生きすぎた非人の存在が、組み間違えた骨董品を値踏みしているような声だった。
それから彼女は降りた。
飛び降りたんじゃない。塔中段の支持架から身を翻し、護板の外縁を軽く踏み、まだ反応しきれていない穿刺者の肩を踏み台にして、塔底左側支架の後方に滑り込んだ。そこには元々穿刺者が三人潜んでいたが、今動けるのは二人だけ。もう一人は首の角度がおかしくて、すでに死んでいた。
短い黒い影が二度交差し、抑え込まれた骨の砕ける音がして、長槍の先が護板の後ろから飛び出して地面に刺さった。二人目の穿刺者が振り返って槍を繰り出そうとしたが、エリザヴェータは武器を拾うことすらせず、片手で顔面を掴み、もう片手で手首を逆に折って、椅子を解体するみたいに人間を分解した。
着地した時、灰塵さえほとんど舞わなかった。
軽いんじゃない。地面を自分と同じ類のものだと思っていないからだ。
「塔底左側、片づいた」彼女は言った。テーブルをようやく拭き終えたような口調で。
俺はすぐ神父を連れて前に出た。
修道女もこの時押し上げてきたが、最前線には出ない。爆裂した路面と横転した車頭の間に立ち、塔身上半分を視界に収めつつ、塔底からの第一波反撃に飲み込まれない位置を選んでいる。口から出るラテン語は速くも急いでもなく、ただひたすら安定している。黒ミサ塔のスピーカーはさっきまで外に伸びる腕みたいだったが、今その腕が痙攣し始めていた。整然として苛立たしかった朗読の拍が、だんだん歯の根が合わない震えみたいになっていく。
人間がこの音を聞けば少し楽になるだろうが、俺には分かっている——これだけじゃ足りない。スピーカーが乱れても、表皮が乱れただけだ。塔を奪うには、底に入らなければならない。
神父はすでに塔の足元に取りついていた。
目の前にあるのは普通の敵じゃない。黒ミサ塔前方の、半分儀式で半分工学の牽引と護持の構造体だ。普通の人間なら「どう解体するか」を考える。神父は違う。「どこが一番脊椎に近いか」をまず探す。
鉄鎖を巻きつけて、左側の副牽引索を引っかける。綱引きはしない。斜めに引いて、索を支持の角鉄に自分で擦らせる。続いて聖書を横向きに振り、告解龕の形に作られた木製護殻を叩き割る。板が割れて、中に現れたのは聖像じゃない。固定具と血まみれの鉄鉤だ。
「冒瀆だ」修道女が後ろで冷たく言った。
「工学だ」俺は返した。
どちらも正しい。
前方でようやく護教騎士が左翼に圧力をかけてきた。
この一角の異常を察したのだろう。あの骨馬が砕けた街面を踏む拍子は、前の守護者や穿刺者とは全然違う。強いからじゃない。自分が節点だと分かっているからだ。左に向き直り、長竿を低く構えると、前の守護者三体がすぐに護送式前進に切り替わり、俺たちを塔足から引き剥がそうとしてきた。
神父に怒鳴った。「騎士と絡むな、先に塔底に入れ!」
神父は返事をせず、直接半歩前に出て、飛びかかってきた邪教徒を索ごと引き倒し、後頭部に聖書を叩き込んでから、その死体を踏み台にして塔底左側に開いた隙間に体を押し込んだ。そこには外護板と支架の間に半ば隠れた小さな扉がある。正式な扉じゃない、点検と装填のための口に近い。正面から見ればほとんど気づかない。塔底左側のこの位置からなら、かんぬきと内側の蝶番がちょうど見える。
エリザヴェータはすでに扉の脇にいた。
片手を扉板に当て、半秒ほど頭を傾けて聞いた。扉の向こうに人がいるかどうかじゃない。自分が直接処理する価値のあるものが何体いるかを選り分けているのだ。
「中に三体」彼女は言った。「朗読者が二体、リズム管理が一体みたい。血がとても遅い。頭もね」
こういう言い方をする時の彼女は、明らかに非人の視点だ。戦術用語でも、ホラー小説的な誇張でもない。本当に血流と呼吸、匂いと微振動から、扉の向こうのものを「遅い」と「もっと遅い」に分類している。
扉の脇に身を寄せ、素早く周囲を確認した。
左側の護脚は片づいた。神父は扉の前。修道女は黒ミサ塔左半部のスピーカーの儀式感をすでに滅茶苦茶にしている。前方の守護者と護教騎士がこちらに押し返してくるまで、あと数秒。この数秒で、入る。
声を落とした。
「エリザヴェータ、お前が最初の口を開けろ。神父は続いて左を掃討。修道女は扉に入らず、外で音を圧し続けろ。この塔を内側から黙らせる」
エリザヴェータは俺を見もせず、ごく軽く鼻を鳴らした。ようやく少しは退屈しない仕事が回ってきたような音だ。
指がかんぬきにかかる。その姿勢は人間が扉を開けようとするものじゃない。夜行性の獣が獲物の肋骨をこじ開けようとする時のそれだった。
カービン銃を肩に押し当て直し、神父の右後ろに立った。
外では、黒ミサがまだ壊れながら歌い続けている。
前方では、護教騎士の骨馬がすでに向きを変えた。
塔底の中には、次の瞬間自分が死ぬことをまだ知らない三体がいる。
血と灰と焦油と海風が混じった空気を一口吸い込んで、低く言った。
「開けろ。塔を奪るぞ」
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




