158.援軍 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
黒ミサ塔は単純に「入ってきた」わけじゃない。一塊の間違った秩序が、城外からマルセイユの血管の中に無理やり引き摺り込まれてきたのだ。前方の守護者、穿刺者、護教騎士は、さっきまでまだ兵士に見えた。黒ミサ塔が火線に押し込まれた瞬間、全部が器官に変わった。盾壁はその肋骨になり、長槍は外に突き出す神経になり、護教騎士は先行して地形を踏み固める前脚になった。牽引索を引く邪教徒と屍群に至っては、この化け物を街の中に引き摺り込む筋肉そのものだ。
俺と神父が守っていた断裂夾層は、「戦える狭い口」から「黒ミサ塔の足元の排水溝」に成り下がった。
この差は大きい。
前者はまだ戦場だ。後者はもう、祭壇の下の隙間だ。
スピーカーは鳴り続ける。
音量が上がったわけじゃない。近くなったのだ。その違いは現場にいる人間にしか分からない。遠くの黒ミサは風みたいなものだ。近くの黒ミサは手だ。耳を通り過ぎるんじゃなく、直接脳みその中に伸びてきて、辛うじて掴んでいたものを一つずつ引き剥がしていく。方向感覚、距離感覚、果ては「今は逃げるべきか伏せるべきか」という本能まで、一皮ずつ剥いでいく。
上の街面ではまだ散発的にフランス警察が応戦していた。銃声は最初こそ揃っていたが、しばらくすると乱れ始めた。同じラインにいるはずなのに、発砲のリズムが三つのグループに割れているみたいだ。単純な緊張じゃない。黒ミサ塔が奴らの拍子を書き換えているのだ。
崩れた壁に背を預け、上を見上げた。
塔がまた近づいていた。
この角度から、底部の鉄装甲板が石畳を削って散らす火花が見える。前方の牽引群が肩と背中に食い込んだ索で刻まれた深い痕が見える。塔身中段のスリットの中で、白い人影が動いているのも見える。守護者でも穿刺者でもない。朗読を維持し、リズムを維持し、この機械全体を「まだ儀式に見せる」ために塔の中に残されているものだ。
こいつが一番気持ち悪いのは、高さでも遅さでもない。
人が引き、索で引き摺り、木と鉄で無理やり組み上げておきながら、神蹟のふりをしているところだ。
左前方の裂け目に顔を出した邪教徒に一発撃ち込んで、折れた槍ごと押し返してから、神父に言った。「あいつはもう攻め込んでるんじゃない」
バロロ神父が左手の鎖を引き絞り、別の死体を俺たちの前に引き摺って障害物にした。
「宣告している」と彼は言った。
「そうだ」
灰混じりの唾を吐いて、もう一度上を見た。
街の景色がもう、あいつに飲み込まれ始めていた。横転した車両、路障、折れた信号機、震えで割れたショーウィンドウ、路面を転がる救急箱とベビーカー——さっきまでは全部、「街が崩れていく」証拠だった。黒ミサ塔が入ってきた瞬間、それらが全部あいつの舞台装置に変わった。制御を失ったのが偶然じゃなく、誰かが意図して敷き詰めた背景セットみたいに。
遠くでは、逃げ遅れた市民が何人か、触れられてもいないのに先に膝をついて頭を抱えていた。泣いているのか、吐いているのか、祈っているのかも分からない。こいつの恐ろしさはそこだ。まだ潰していないうちから、お前を自分の画の一部にしてしまう。
耳機に突然、短い外海のノイズが割り込んできた。
市庁舎側でも、フランス警察の周波数でもない。底のノイズがもっと湿っている。風が金属の殻を抜け、海水が艇体を叩いて跳ね返る音が混じっている。俺が口を開く前に、向こうが先に喋った。
「周士達」
山口多聞だ。
あの古い海軍の硬い声。とっくに沈んでいるはずなのに、死人の口調で話すことを頑として拒否している男の声だ。
「よりによってこの時間帯か」俺は言った。
「そっちが忙しいのは分かってる、だから手短にする」一拍置いた。背景に低いエンジンの振動がある。「船団は連れてきていない。この街の見せ場を横取りするつもりもない。三人だけ送る」
目を細めた。
「誰だ?」
「修道女、証人、吸血鬼」彼は乾いた声で言った。「小艇で旧排水渠の外海死角を抜けた。今、最後の区間に入っている。まだ息があるなら、迎えに出ろ」
黒ミサ塔を見上げ、それから夾層の亀裂から僅かに見える海側の反光に目をやった。今この瞬間は厄介だ。最初の黒ミサ塔が恐怖を打ち立てたばかりで、正面の火線が一番粘っている。俺と神父はまだ塔を引き延ばしている最中だ。そこに山口がこのタイミングで人を送り込んでくる。タイミングが悪いとは言えない、むしろ良すぎるくらいだ。黒ミサ塔があと二段階前に進めば、海側の死角だって安全じゃなくなる。
「上陸地点は?」俺はすぐ聞いた。
「旧石堤の下の整備艇スロープだ。お前の前にある救急車横転の街角から南西に切って路地に入れ、突き当たりに半壊した手すりと封鎖された展望台がある。そこから下りろ」山口は言った。「長くは停まらない。人を引き渡したら、小艇は離岸する」
「敵に見られてるか?」
「今はまだない」と彼は言った。「だがあの黒ミサ塔の音響干渉がもう海面に向かって広がり始めている。五分後も気づかれないとは保証できない」
五分。十分でもあり、足りなくもある。
神父を見た。「人を迎えに出る」
神父は誰かとも、それだけの価値があるかとも聞かなかった。ただ前方で再整列する守護者と穿刺者を一瞥してから、鉄鎖を手首に巻き直した。
「三分、ここを守る」と彼は言った。
「五分以内に戻る」
「三分と言った。交渉じゃない」
「じゃあ俺の方が楽観的だと思っといてくれ」
立ち上がりながら、もう一度外を確認した。
黒ミサ塔はさらに厄介な位置まで来ていた。底部の牽引群が二列に分かれて壁際を沿うように引き始めていた。正面からの一直線の推進が、より安定した楔形に変わっている。もう前進だけじゃない。しっかり腰を据えられるノードを探している。一度腰を据えられたら、スピーカーの制圧範囲はより安定し、護教騎士と守護者の配置も整う。側面から入り込むコストが跳ね上がる。
つまり、今迎えに行かなければ、後では行けなくなる。
残りの弾と手榴弾を最速で振り分けた。ショットガンは神父の手の届く場所に残す。カービン銃は背負う。鎌はそのまま。それから積み上がった死体と大盾の障害物を踏み越え、亀裂から這い出して、右側の半崩れの壁に沿って海の方向へ走り出した。
地上に出た瞬間、黒ミサ塔が地下から見ていたよりずっと汚いと分かった。
街面全体が震えている。爆発の震えじゃない。継続的で、低周波で、胃の中のものが絶えず上に押し上げられる震えだ。四面の巨大スピーカーが交互に邪典の朗読を注ぎ込み、通り沿いの窓枠、看板、手すりが全部共鳴している。火災警報器、車の警報音、負傷者の呻き声、フランス警察の怒鳴り声、全部が背景に押し込まれた。前を見上げた時、最初に目に飛び込んでくるのは敵じゃない。塔だ。
ランドマークみたいだ。
動いてはいけないものが、動いている。
塔身の上半部には鉄籠で覆われた灯りがいくつかあり、その光の色が冷たくて、プラットフォームに立つ邪教徒たちを教会の壁画から歩み出た死人みたいに照らしている。無秩序に立っているわけじゃない。ある種の序列に従って異なる高さに配置されていて、前を見る者、側面を見る者、頭を垂れて唱える者、スピーカーと索を担当する者がいる。その構造全体が、原始的でありながら精緻だ。中世の攻城器械と現代の心理戦装備を、頭のおかしい連中が一緒に縛り上げたみたいに。
これが本当の恐怖だ。
怪物が口を開けているんじゃない。「どうやって一つの街を、自分から先に膝をつかせるか」という学問を、一台の機械に仕立て上げた人間がいるということだ。
余計に見ている暇はない。半崩れの外壁と廃車の陰影に沿って南西に切った。途中に逃げ遅れた軍警が何人かいた。止まらず、「市庁舎の方向に撤退しろ、中央通りには近づくな」と一声だけかけて通り過ぎた。今は一秒も自分のものじゃない。
山口が言った道はすぐ見つかった。目印が分かりやすいんじゃなく、普通の人間が選ばない道だからだ。二棟の古い建物の間に挟まれた路地で、ゴミ箱、砕けたガラス、倒れた看板でめちゃくちゃに塞がれている。突き当たりには確かに、半壊した手すりとずっと前から廃棄されていたような展望台があった。その先の下が、石堤沿いの古い整備艇スロープだ。
海の匂いが上ってきた瞬間、スピーカーの音がかえっておかしくなった。
小さくなったんじゃない。海風に引き裂かれて、黒ミサにも残響が生え始めたみたいだ。スロープの入口に立って下を見ると、一艘の低くて黒い小艇が石堤の陰に張りついて停まっていた。艇体はほとんど光を反射しない。海水に長く浸かった鉄板みたいだ。灯りはなく、短い懐中電灯の光が一度だけ点滅してすぐ消えた。それから最初の人間が岸に跳び上がった。
エリザヴェータだ。
上陸の動きが人間のそれじゃない。影が先に石面を踏んで、それからゆっくり人の形に育っていくみたいだ。長い外套、細身、動きが軽い。黒夜が自分で場所を選んで腰を落ち着けたみたいな佇まいだ。二番目に上がってきたのはレイチェルで、彼女ほど鮮やかじゃないが、足手まといでもない。自分の小さな荷物を抱えて、顔色が白い。寒いのか、船酔いか、それとも街の中のあの、まともな世界に属さない音をもう聞いてしまったのか。最後に上がってきたのがマリア修道女だ。
彼女が船を降りた瞬間、この迎えは正解だったと分かった。
大した見栄えがあるわけじゃない。その気配だ。黒ミサ塔の音に皆が押し下げられている中で、彼女が岸に立った瞬間、全身から別のリズムを持っているのが分かる。光でも神蹟でもない。ただ、あの黒ミサに引きずられることが絶対にないと分かる安定感だ。今の戦場では、こういう人間は弾丸より貴重だ。
山口本人は上陸しなかった。艇の後方の陰から、顔の半分と煙草の火だけを覗かせた。
「届けた」と彼は言った。
俺は頷いた。「十分だ」
「海を忘れるな」山口が低く付け足した。「お前たちの街は今、一基目しか見えていない。それが全部とは限らない」
それ以上は言わなかった。俺も追わなかった。その一言だけで十分だからだ。山口はもっと知っている。だが今は全部を話す場面じゃない。彼の仕事は投送であって、語り部じゃない。
次の瞬間、小艇は石堤を離れた。この時代に存在してはいけないような黒い魚みたいに、外海の陰影に沿って滑り出し、あっという間に海面と黒ミサ塔の共鳴音に飲み込まれた。
視線を戻して、目の前の三人を見た。
「歩きながら話す」俺は言った。
そのまま引き返した。エリザヴェータが一番速いが、先頭には出ない。路地の角、高い場所、窓際の陰影を先に確認してから動く習慣があるようだ。修道女は中間にしっかりついて、レイチェルが後ろ、俺が最後尾を押さえる。この行軍の形は正しい。今一番大事なのは速さじゃない。黒ミサ塔に書き換えられ始めた街区の中で、バラけないことだ。
スロープを離れてすぐ、レイチェルが塔の音を聞いた。
足取りが明らかに一瞬乱れ、街の方向に顔を上げた。目に浮かんでいるのは恐怖じゃない。もっと悪いもの——聞き覚えのある音だと気づいた顔だ。
「普通の読経じゃない」と彼女は言った。声が少し掠れていた。「あれは節を重ねている。ただ人に聞かせているんじゃない、応答を構築している」
横目で見た。
「分かるように言え」
彼女が息を吸い、文を短くまとめようとした。
「最初の塔が中央の拍を打ち立てている。二つ目、三つ目の音源が合わさると、互いに呼応し始める。そうなった時、街区は包囲されるんじゃない——『封印』される」
その言葉は十分に気持ち悪かったが、意味は分かった。
「つまり今はまだ完成していない?」
「まだ」と彼女は言った。「今は主音源が一つだけだから、圧してくる感じに近い。二つ目、三つ目が入ってきた時に、『噛み合い』が始まる」
すぐには返さず、その言葉を頭の中に釘で打ちつけた。
これがレイチェルの価値だ。誰かと一緒に斬り合うために来たわけじゃない。この局面が「まだ引き延ばせる」から「完全に詰まる」に変わる瞬間を、俺に教えるために来たのだ。
元の通りに戻った時、黒ミサ塔の輪郭がまたはっきりしていた。修道女が初めて正面からそれを見上げた。目に驚きはない。嫌悪だ。腐水を聖水として使う偽の教会を見るような目だ。
「よく作り込まれている」と彼女は言った。
「褒めてるのか?」俺は聞いた。
「違う」修道女の口調は平静だった。「私が言いたいのは、これは急造じゃないということ。準備されたものだから危険なの」
エリザヴェータもその時口を開いた。声は低い。
「塔身左側の中段に死角がある。スピーカーの外付け支架に露出した接続点。上層の朗読者は護教騎士じゃない、下より防護が薄い」彼女が目を上げて俺を見た。「守るだけが目的じゃないなら、あれには入れる」
一瞥して、すぐには返さなかった。
いい。吸血鬼は一目で、塔が触れないものじゃなく、どこから触れるかを見抜いた。
だが今は全部話す場面じゃない。まず半崩れの街区まで引き返して、神父と俺が元々押さえていたラインの後方で合流する。バロロ神父は人が戻ってきたのを確認すると、人数と顔だけ一瞥した。理由は聞かない。修道女を見た時も表情一つ変えなかった。海辺から突然修道女と吸血鬼が増えても、彼にとっては今日のリストにまた二項目追加されただけのことらしい。
最短で状況を説明した。
「最初の黒ミサ塔が腰を据えた。後ろにまだあるかどうかは今は置いておく。レイチェル、市庁舎に戻れ」
彼女が顔を上げた。「今すぐ?」
「そうだ、今すぐ」俺は遠くの、街区全体を祭場に変えつつある塔を指した。「ここに残っても見ているだけだ。市庁舎に戻れば役に立てる。葉綺安、林雨瞳、ヴィクトリア、希が全員あのラインにいる。三つのことを伝えろ」
指を立てて、一つずつ言った。
「一つ目。最初の塔は中央の拍を打ち立てているだけで、全部じゃない。後から二基目、三基目の音源が出てきても、新しい敵として見るな。『封印の錠が噛み合う』前兆として見ろ」
「二つ目。馬三娘の『軍勢』は今じゃない。三つの音源が本当に噛み合い始めて、最後の逃げ道が閉まりかけた時に動かせ。開く目的は掃討じゃない、一本の通路を無理やり引き裂くことだ」
「三つ目。市庁舎に準備させろ、観戦じゃなく受け入れの準備だ。K7、シュトゥルムシュライター、軍警、市民、負傷者の動線、全部『軍勢が動いた時、どのラインを繋ぐか』で組み直せ」
レイチェルは飲み込みが速く、頷きも速かった。以前みたいに宥める必要がある様子じゃない。それでいい。
隣の、さっきまでまだ生きていたフランスの警官に目を向けた。肩に応急の包帯を巻いて、顔色は悪いが頭はまだ動いている。
「お前、彼女を市庁舎まで連れて行け」
彼はすぐ少し背筋を伸ばした。「了解です」
「中央通りは通るな。裏路地、建物の中、階段でもいい。彼女を生きたまま葉綺安の手に渡せれば任務完了だ。途中で散発的な邪教徒に当たっても戦うな、避けろ。どうしても避けられなければ、倒れるまで撃て」
警官は頷いた。余計なことは言わない。
レイチェルが最後に一つだけ聞いた。
「あなたは?」
目を上げて、前方の黒ミサ塔を見た。スピーカーはまだ歌い、守護者と穿刺者はまだ通りを一寸一寸あいつの領土に変えている。
修道女、神父、吸血鬼が今、俺の隣にいる。
頭の中の作戦は、もう半分形になっていた。
「俺?」俺は言った。「マルセイユで歌えるのは自分だけだと思ってるあの塔に、そうじゃないと教えてやる」
それ以上は言わなかった。警官に手を一振りした。
「連れて行け」
レイチェルが一秒だけ俺を見た。俺が次にやるのが守りの戦いじゃないと分かったような目だ。余計なことは言わず、すぐに振り返って警官と一緒に裏路地へ切れ込んでいった。
背中が砕けた壁と点滅する警灯の死角に消えるまで見送ってから、視線を戻した。
前方、最初の黒ミサ塔はまだそこにある。
そして俺の隣には、ようやくあれに触れられる人間が揃った。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




