154.ナイト型 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
高架側道の切れ目は、思ってたより狭かった。
シキたちの車は入っていったんじゃない。ねじ込んだんだ。
前方に横転した冷凍トラックがランプウェイの半分を塞いでいて、荷台の扉が開けっ放しで、中の発泡スチロール箱、砕けた氷、魚の血がアスファルトに流れ出し、生臭さと焦げたプラスチック、ブレーキパッドの匂いが混ざり合って、外圏封鎖線全体を腐った鍋みたいに煮詰めていた。左は放棄された民間車、右は力ずくでなぎ倒されたガードレール、その外は半壊した高架の斜面。市内に入るには、廃車二台の間のかろうじて一台分の隙間を磨り抜けていくしかない。
運転手はもう汗だくだった。
「これ以上進んだら戻れませんよ」と彼は言った。
「最初から戻るつもりはない」シキは前の隙間を見据え、平坦な声で言った。
イェ・キアンは返事をせず、さっき撮った外圏編制の写真を拡大したり縮小したりしていた。画面の白衣の盾列は距離と熱波で少しぼやけてたが、その整然さだけは滲まなかった。整然であればあるほど、この状況では屍群に見えなくなる。命令に見えてくる。
「右のあのスロープ」彼女が突然言った。
運転手が戸惑う。「あれは施工用の仮設道路ですよ」
「今は違う」イェ・キアンはスマートフォンをしまった。「今は、まだ詰まってない唯一の隙間よ」
シキが彼女の指す方向を見た。高架下の、もともと工事車両や保守作業員用のコンクリート仮設道路。今は廃棄された鉄骨とプラスチックコーンが半分を埋め、残り半分には衝突で廃車になった小型車が二台斜めに挟まって、手のひら分しか開いてない扉みたいになってる。さらに厄介なのは、その「扉」の前に白衣が三体、外圏のガードレールに沿ってゆっくり前進してきてることだ。
巡回じゃない。
人の流れが自分たちの望む方向に動いてるか確認してるような動きだ。
シキは車のドアを押し開けた。
「あなたたちは車にいて」と彼女は言った。
運転手がすぐ首を振る。「それは無理です、一人じゃ——」
「なら車でついてきて。でもクラクションは鳴らさない、自分で勝手にどこかへ突っ込まない」彼女は彼を一瞥した。怒ってないが、怒るより圧があった。「今この道は出口を探すためじゃない。生き口を探すためよ」
男は黙った。
イェ・キアンはすでに先に降りて、ガードレール沿いに仮設道路の方向へ歩いていた。速くないが一歩一歩が確実で、目は地面のタイヤ痕、擦り傷、散落物、血の流れた方向をずっと追ってる。シキがその隣について歩き、腰の短刀と医療ポーチにもう手がかかっていた。今はまだ重いものを使うつもりはない。外圏でこういう場所は、一度手を出したら人の流れ全体を怖がらせて、それまで抑えてたものが全部崩れる。
高架下の人流はまだ市内へ向かって流れ込んでいた。
娘を抱えた父親、スーツケースを引く老人、車椅子を押す看護師二人、手に包帯を巻いた若者数人、全員が同じ内側の幹線道路に向かって押し込んでる。誰も左右を見る余裕がない。左右はどちらも道じゃなく、ただ死に方が違うだけだから。
その三体の白衣が動いたのはその時だった。
一番近くの人間に飛びかかるんじゃなく、仮設道路の入口に横一列に並んで、この隙間も人を追い込む経路に組み込もうとしてるみたいだった。
イェ・キアンが足を止めた。
「見えた?」と彼女は言った。
シキが短く答えた。
「あいつら、臨機応変に動いてるんじゃない。最初からここを回収するつもりだった」
一体目の白衣が前に踏み出した時、シキはすでにその死角に入っていた。背が低く体重もないが、ガラス片と油汚れと血水だらけのこの路面では、大振りな動きをする人間よりむしろ使いやすい。正面からぶつからず、斜めに半歩切り込んで、短刀を逆手に持ち、刃先を相手の下顎の下から上へ送り込み、口腔の奥に正確に突き刺した。その白衣の頭が後ろにのけ反り、動作が完了する前に刃を引き抜いて、反手で首の横にもう一撃。
二体目がガードレール脇から飛びかかってきた。
イェ・キアンは武器を抜かず、半歩前に出て、その手首を掴んで下に押さえ込み、飛びかかる勢いに乗せて上半身を不自然な角度に折り、膝で脇膝を蹴った。骨が折れる音は高架下でそれほど大きくなかった。乾いた、干からびた木を折ったような音だった。
三体目の白衣は突っ込んでこず、むしろ半歩退いた。
見ていた。
生きてる人間の見方じゃない。距離と風向きを測るような、何かを判断してる停止だった。次の瞬間、くるっと向きを変えて、仮設道路奥の工事廃材と遮蔽板の後ろに潜り込んだ。
「位置を報告しに行った」イェ・キアンが言った。
シキはすでに追いかけていた。
施工仮設道路に踏み込んだ瞬間、ここが昨夜まで誰かに守られてた場所だとわかった。地面には散らばった空薬莢、ちぎれた止血帯、踏み潰された反射ベスト、折れた警棒が転がってる。遮蔽板の向こうから短い摩擦音がして、シキは考える間もなく体を横に逃がした。
矢が耳の脇を掠めて飛んでいき、後方のトラック車体に突き刺さった。
シキの目が細くなった。
「外圏にも弓手がいる」
イェ・キアンはすでに二本目の矢の起点を見ていた。叫ばず、ただ手で指した。シキがその方向に切り込んでいくと、工事廃材の山の後ろに白衣が一体半しゃがんでいて、その後ろにもう一体が矢を引き絞ろうとしていた。二体とも地下にいるような散発的な狙撃手じゃない。入口の死角に意図的に潜んで、仮設道路を通ろうとする人間を狙い撃ちにしてる。
これが意味することは一つだ。
偶然ここを通りかかったんじゃない。
封鎖をしてる。
シキは地面に転がってたコーンを蹴り上げた。一体目の白衣弓手がその囮に本能的に腕を上げて防いだ隙に、シキはすでに密着して、短刀で弓を持つ手の腱を切り、膝で胸骨を歪めた。二体目が弦に矢をつがえようとした時、イェ・キアンが横から折れた施工用鉄筋を拾い上げて、その肘に思い切り叩き込んだ。前腕が逆方向に折れた。
運転手がようやく仮設道路の入口に車をゆっくり磨り込ませてきた。
地面に倒れた白衣を見て、さっきより顔色が悪くなってる。
「あなたたちは一体……」
「余計なことを聞くな」シキがまだ痙攣してる白衣をガードレール脇に蹴り退けた。「前へ」
車頭が少しずつ仮設道路に入り込んでいく時、イェ・キアンが突然振り返り、外圏のもっと遠い方向を見た。
あの幾つかの盾列がまだ動いていた。
ただ今回は単純に平行前進するだけじゃなかった。一番外側の列が内側に折れ始めてる。後方の何か、もっと遅くて重いもののために道を空けてるみたいに。夜明け前の灰白い光の中で、引きずられてた重物の端が時々、暗い金属光沢を反射するのが見えた。多くないが、冷たかった。
イェ・キアンの目が微かに変わった。
「シキ」
「見てる」
「補給品じゃない」
「わかってる」
二人ともそれ以上は言わなかった。今は言葉にしたところで解決できるものじゃないから。
仮設道路の突き当たりは下り坂のサービス道路につながっていて、路面がマルセイユ外圏の工業地帯の縁へ向かって沈んでいく。そこはまだ完全に主戦場になってはなかったが、主戦場の匂いはすでにあった。もっと多くの廃棄車、もっと多くの臨時障害物、もっと多くの軍警混成部隊、そしてもっと多くの、かつては都市機能を担ってたが今は残骸だけになったもの。倉庫の外壁が一か所打ち破られていて、中でフォークリフトが途中で止まってる。交差点の信号はまだ点滅してるが、誰も気にしない。遠くに憲兵の装甲車が一台止まっていて、砲塔は動かさず、ただ掩体として使われていた。
シキは通信機を取り出し、俺の私用周波数に繋ぎ直した。
「外圏に切り込んだ」彼女は言った。
俺の側から返ってきたのは街の騒音じゃなく、もっと空虚でこもった反響音だった。地下だ。
「どこまで入った?」
「工業地帯の外縁、南港還流線と外環サービス道路の交差付近」シキは遠くでゆっくり位置を空けてく盾列を見ながら言った。「外圏の白衣編制はそっちの地下より厚い。入口の封鎖部隊はすでに弓手付きで、遠くの大盾が折れ角を始めてる。後ろに引きずってるものはまだ全体が見えないが、普通の重装歩兵じゃない」
俺は地下通路の、矢で半分ぶち壊された灯カバーの下に立って、前方の盾列の屍体から視線を外した。
俺たちはさっき第一層を突破した。
代償は大きくないが、良くもない。デュヴァルは左肩を矛先に掠められて服が一筋裂けて血が出てるが多くはない。後ろの憲兵の一人は脚に矢が刺さって、壁に寄りかかりながら歯を食いしばって折れた矢を自分で引き抜いてる。もっと前の補助室の鉄扉の向こうにはまだ生きてる人間がいて、さっきの一発はたぶん、あの中でまだ動ける最後の一人が撃ったやつだ。
そしてもっと奥では、一定間隔で、人間にしては重すぎる叩打音がまだ続いてる。
「重物に車輪はあったか?」俺は聞いた。
「下の部分が完全には見えなかった、引きずり痕が乱れてる」今度はイェ・キアンが答えた。「でも一つだけ確かなことがある。臨時で持ち上げてきたものじゃない。外圏のあの隊列が、あいつらのために道を空けてる」
俺は少し黙った。
「了解。急いで主幹線に突っ込むな。まず生きてる軍警のノードと、まだ使える側路を探せ」
シキが短く答えた。
「そっちは?」
俺は通路奥の半開きの補助室鉄扉と、扉の隙間の底からゆっくり滲み出てくる新しい血を見た。
「地下にまだ七、八人の生存者がいる。前は完全な盾矛弓の封鎖。さらに奥の扉を叩いてるやつは、普通の白衣の音じゃねえ」
「持ちこたえて」
「うるせえ」俺は言った。「お前らが入城する前に外圏をちゃんと見極めろ。最初から仕掛けられた歯車にいきなり突っ込んでほしくねえからな」
シキは言い返さず、ただ「わかった」とだけ言って、通信が切れた。
通信機を胸元に押し込み、俺は前に出た。
デュヴァルが俺を一瞥する。「外は?」
「牙が生え始めた」
彼の顔色がさらに悪くなる。だがそれ以上は言わない。今の状況で、一言の中から一番大事な三文字だけ拾えれば、それで足りる。
俺は補助室の鉄扉の前に立ち、まず耳を澄ました。
中で誰かが荒い息をしている。
一人じゃない。
押し殺した声で話している奴もいるが、内容までは聞き取れない。
俺は指の関節で扉を二回叩き、間を置いてから、トントンー、トントン、トンと、二長一短。
すぐに中から、トン、トンー、トンと二短一長が返ってきた。
生きてる。
「扉を開けろ」俺は声を落として言った。「全開にするな、人一人くぐれるぐらいの隙間だけだ」
中が二秒ほど静かになり、それから錠前がゆっくり動いた。地下で聞くその音は、誰かがペンチで歯を一本一本引き抜いているみたいに響く。鉄扉が手のひら一枚分ほど開いた時、まず目に入ったのは、銃を握りしめて血の気が引いている片手で、その後ろに血と煤でぐしゃぐしゃになったフランス人男の半分の顔が続いた。年はそう高くなく、制服は病院の警備と臨時の武装がごちゃ混ぜになったようなスタイル。右耳の周りは乾いた血で固まっていた。
男は俺と、その後ろのバローロ神父を見て、一瞬、完全に目の焦点が抜けた。それからようやく、現実と人の形が頭の中で繋がったらしい。
「あなたたち、上から来た人間か?」
「今のところは、そういうことにしとけ」俺は扉を内側にもう少し押し広げる。「中は何人だ?」
「六人がまだ生きてる、一人は危ない」彼は言った。「医者が二人、婦長が一人、負傷者が三人。元は九人だった」
俺はその隙間から中に身を滑り込ませた。
補助室は本来、小型の医療物資と移動機材の中継所って扱いだったはずだが、今は誰かが救護ステーション一式を洗濯機に放り込んで三回回したみたいな有様だ。ストレッチャーが横倒しになり、止血帯と点滴スタンドが絡まり合い、隅には顔色が紙みたいに灰色の負傷者が一人、腹を厚いガーゼの束で押さえつけられたまま横たわっている。血はまだ滲んでいた。反対側には医者が二人座っていて、そのうち一人は空になった拳銃のマガジンを握りしめていた――さっきのあの一発の持ち主だろう。
「外の連中、まだ扉を叩いてるか?」俺は聞いた。
「前の一団はさっき、少し下がった」警備員が言う。「下がったって言っても、撃退されたわけじゃない。交代に近い。奴ら、こっちの弾がもうすぐ尽きるのをわかってる」
「さらに奥で、扉を叩いてるモノはなんだ?」
その一言で、部屋の中でまだ意識のある連中全員の表情が変わった。
空マガジンを持っていた医者が口を開く。声は紙やすりみたいに掠れている。
「全体像は見てない」彼は言った。「見えたのは、前の白衣の連中が自分たちで左右に割れて、道を空けたところまで。それから通路の突き当たりの方から、鉄の何かが床を擦る音がし始めた。槍でも盾でもない、もっと重いものの音だ」
婦長が小さな女の子を抱え込んだまま、ふっと口を挟んだ。
「それから、馬」
空気が一気に重く沈んだ。
俺は彼女に目を向ける。彼女の視線はぶれていない。錯乱して意味のわからないことを口走ってる感じでもない。ただ、疲れ果てているだけだ。一語一語が骨の隙間から絞り出されてるみたいな疲労。
「見たのか?」
「影だけ」彼女は言った。「灯りを撃ち落とされる前に、壁に影が映った。すごく高い。前の方は馬の頭みたいなんだけど、普通の馬よりずっと遅く、まっすぐ歩いてた。生き物かどうかは、わからない」
後ろでデュヴァルが低く罵った。
俺は振り返らなかった。
俺も、それが見間違いじゃないとわかってたからだ。
白衣の死兵どもは、今やること一つ一つを、軍隊に近づけてきている。地下には盾と槍と弓が揃って、さっきは騎乗した指揮個体まで確認済み。外圏では、もっと大きなもののために列を割っている。だったら、そのうちの一種類――より完成した騎乗か重装ユニットを地下の幹線通路に押し込んでくるのは、不可能じゃない。ただの狂気だ。
そして狂気そのものは、元々問題にならない。
秩序さえ伴えば、その狂気は延々と機能し続ける。
「歩ける奴から先に出ろ」俺は部屋の全員に言った。「歩けない奴は応急固定。交代で担ぐ準備しろ。外の連中、こっちにくれる時間は多くない」
「君は前に出るつもりか?」空マガジンの医者が聞いた。
「前に出なきゃ、お前らは上にすら辿り着けねえ」俺は言った。
このタイミングで、バローロ神父がようやく中に入ってきた。
あの巨体が一歩入ってきた瞬間、元々広くもない補助室は、さらに狭くなった気がした。その感覚はわかりやすい。ほぼ満杯の箱の中に、黒鉄の塊を一つ丸ごと押し込んだような圧だ。負傷者と医療スタッフが、ほとんど同時に顔を上げて彼を見る。何かを言ったからじゃない。こういう場所に、体積も気配も常識外れの人間が突然増えれば、嫌でも目が吸われる。
神父は部屋を一巡見渡し、小さな女の子の顔で一秒ほど視線を止めてから、通路の方へと目を移した。
「ここには二人残せ」彼は言った。
「俺に指図してるつもりか?」デュヴァルが眉をひそめる。
「告げているだけだ」バローロ神父は聖書を左腕の下に押し戻し、右手の鎖を一巻き垂らしながら言った。「奴らがもう一度押し上がってきた時、この扉の前で役に立つのは二種類だけだ。人を運べる者と、殺せる者だ」
デュヴァルは二秒ほど神父を見つめ、それから口論はしなかった。
神父が正しいとわかっているからだ。
俺はこの部屋で唯一まだ読める平面図板を手繰り寄せ、ざっと目を走らせる。前の通路を北にあと三、四十メートル行くと三叉路がある。左は旧連絡廊、右は設備用通路、真ん中がさらに深い補助エレベータ井戸区域に繋がっている。扉を叩いているモノは、たぶんそのエレベータ井戸の向こう側にいる。
ここから人間を上に出す一番堅い手は、元の道を無理やり後退することじゃない。前方の三叉路を先に奪って、通路の節点をこっちの「門」に変えることだ。
俺は図板を元の位置に戻した。
「デュヴァル、お前は憲兵一人とこの警備員をここに残して、中を守れ。まず負傷者を固定。動ける奴は、まだ車輪の回るストレッチャー、薬品カート、酸素ボンベを全部扉の後ろに積み上げて、第二層の障害物を作れ。もう一人の医者は俺について来い。前の三叉路の扉とスイッチを現物で覚えろ」
「俺が?」その医者がきょとんとした。
「さっき最後の一発を撃ったのはあんたってことは、まだ気持ちが折れてないってことだ」俺は彼を見た。「今は学歴より、度胸のある人間の方が使える」
彼はそれ以上何も言わず、空のマガジンを放り捨て、床に倒れていた金属製の点滴スタンドを拾い上げた。
外の通路から、また衝撃音が響いた。
今度は一発じゃない。二発続けてだ。
一発目は重く。
二発目は、さらに重い。
補助室の鉄扉全体がかすかに震え、扉枠から細かい粉塵が落ちた。
部屋の中の何人かの呼吸が、一斉に乱れる。女の子が泣き出したが、声が大きくなる前に、婦長が片腕で頭を肩に押し付けて塞いだ。
バローロ神父が扉の前に半歩進み出た。
大きな動きはない。ただ、そこに立っただけだ。
それだけで、扉の前の空気が押し潰されたみたいに重くなる。
彼は見下ろすように鉄扉を見つめ、声量は大きくないのに、信じられないほど安定した声で言った。
「悔い改めよ」
外から、返事が返ってくるはずがない。
だがこの言葉は、外に向けてじゃない。
この中に、まだ生きている連中に向けての一言だ。
意味は単純明快だ。扉はまだ立っている。人間はまだ息をしている。なら、儀式はまだ終わってない。
俺は銃を握り直し、扉の脇に身を預けた。
「開扉の用意だ」俺は言った。
デュヴァルが思わず声を荒げる。「正気か?」
「今すぐ開けるんじゃない」俺は、扉の下から新しく滲んできた灰色の粉を見ながら言った。「次に奴らがぶつかってきて、前列を立て直すまでの二秒。その二秒で外に出て、三叉路を奪う。もたつけば、後ろのもっと重い奴が、そのままここまで乗り込んでくる」
医者と警備員の顔色が同時に真っ白になる。
それでも誰一人、反論はしなかった。
俺の言っていることも、結局は正しいからだ。
ちょうどその時、胸元の通信機がまた震えた。
今度はシキの声じゃない。外圏から届いた新しい映像データのパックだ。
開いてみて、一枚目の写真で、まぶたが自然と重くなった。
イェ・キアンが外環のサービス道路から撮った遠距離の側面写真だった。画面の中で、二列の大盾が左右に割れ、その間に、さらに深い影が一本、縦に伸びている。距離と朝の光の角度のせいで、細部は潰れている。だが輪郭だけで足りる。
高い。
細い。
前方が持ち上がっている。
下は歩兵の二本足のシルエットじゃない。もっと長く、真っ直ぐに伸びた荷重構造みたいなものがある。
騎乗にも見える。
あるいは、重い何かを高い車台に載せた先導ユニットにも。
写真の下に添えられたイェ・キアンのコメントは、一行だけだった。
外圏、進路開放開始。内外、同期の可能性高。
俺は画面を閉じ、顔を上げてバローロ神父を見た。
彼もちょうど、俺を見ていた。
もう言葉は要らない。二人とも同じことを理解していた。
外圏で道を空けているなら、地下のこれは、ただの試し叩きじゃ終わらない。
奴らは、より「軍隊」に近い何かを、内側に送り込もうとしている。
俺は通信機を胸元に押し戻し、深く息を吸ってから、補助室の全員に向かって言った。
「次の一撃が止んだ瞬間、外に出る」
まるで聞きつけたみたいに、扉の外のソイツが、三度目を叩きつけてきた。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




