154.ナイト型 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
高架道路が夜明け前の灰白い空の下を前へ伸びていた。力任せに引っ張られて、今にも千切れそうな鋼索みたいだ。 車の流れはとっくに死んでいる。前方三百メートル以内、セダン、ミニバン、トラック、パトカー——全部がありえない角度で路面に詰まっている。車頭を市内に向けているものもあれば、車尾を市内に向けているものもある。大半は横向きで、誰かが意図的に道路全体をねじ曲げたみたいだ。
シキは助手席に座り、ドアの肘掛けに手を当てたまま、黙っている。
葉綺安は後席でわずかに身を乗り出し、フロントガラス越しに、じわじわと締まっていく街の外縁を見据えていた。
ここからもうマルセイユの外周の建物が見えていた。昼の光が全てを鮮明に照らし出している。高架橋の下に散らばる人の群れ、ランプの入口に捨てられたスーツケース、横倒しのバイク、衝突してまだ煙を上げている民間車両二台、そしてもっと遠く、外環道路に沿ってゆっくりと押し進んでくる数本の白い線。
道路の白線じゃない。
白ローブだ。
「止めて」葉綺安が言った。
運転していた男がすぐにブレーキを踏んだ。車体は砕けたガラスと灰の上を半メートルほど滑ってから止まった。彼は彼女たちの知り合いじゃない。国境付近から無理やり繋いだ臨時の運転手で、ハンドルを握る両手に力が入りすぎて指の関節が白くなっている。昨日の夜はまだ封鎖を迂回して荷物を運んでいただけの地元の男が、今や二人の東洋人女性を災害の核心へ運ぶ臨時ドライバーになっていた。
シキが先にドアを押し開けて降りた。
風は乾いていて、焦げたプラスチックと塩水の港区の臭いが一緒に吹き込んでくる。彼女は高架の護壁の脇に立って下を見下ろした。外環の側道はもう避難ルートじゃない。強制的に市内へ逆流させられている川みたいだ。 人、車、救急ユニット、散在する軍警察——刻意に開けられたいくつかの穴から、固定された方向へ押し込まれていく。
難民が自然に作り出した渋滞じゃない。
強制的に作られた流れだ。
「穴を開けてる」シキは言った。
葉綺安も降りて、彼女の隣に立った。今日は普段みたいに感情を顔に出していない。全体が冷たく、平坦だ。 その平坦さは落ち着きじゃない。あまりにも多くの計算を一本の線に圧縮した後の、あの平坦さだ。
「穴じゃない、収束よ」葉綺安は言った。「外周は全部塞いでいない。意図的にいくつかの通れる道を空けて、人と車を市内へ追い込んでいる。包囲して殺すんじゃない。絞り込んでいるのよ」
シキは何も言わず、ただ手を上げて外環のさらに遠い方を指差した。
「あっちを見て」
高架の外側、半壊した交差点のスロープ下方で、いくつかの集団が動いていた。
距離があって顔は見えないが、輪郭だけで十分だ。
前列は三列の白ローブ。間隔は均等で、歩調は一定、速くはない。同じリズムを踏んでいるみたいだ。 各列の前方に、分厚い四角い影がある。盾だ。だが周士達が地下で描写していたものより高く、幅も広い。人を丸ごと覆えるほどの大きさだ。 盾の後ろから、斜め上に突き出た長柄武器が見える。槍か戟の類で、柄が非常に長い。地下鉄や通路には向かないが、街路やスロープへの圧線には最適な長さだ。
さらに後方には、引きずった跡がある。
タイヤじゃない。補給用パレットでもない。
何か重いものが、アスファルトの上を強引に引きずられて、断続的な白い擦り傷を残している。
運転手も車を降りて、一瞥してから小声で悪態をつき始めた。
「あれ、警察じゃないよな?」彼は訊いた。
「そう見える?」シキが訊き返した。
男は黙った。
葉綺安はしゃがんで、護壁の隙間の後ろにスマホのカメラを当て、できる限り拡大して撮影した。画面は激しくブレているが、それでもいくつかの重要な細節は掴めた。その白ローブの部隊は、市内に直接突入するのではなく、外周に沿って平行に進んでいる。少し進むたびに一度止まり、方位を確認しているみたいだ。 止まるたびに、後方の誰かが引きずられていた重物の角度を調整し直す。
「測距よ」葉綺安は言った。
「え?」
「道を探しているんじゃない。どこにもっと大きなものを置くか見ている。」彼女は立ち上がり、表情は相変わらず平坦だった。「地下から浸透して、歩兵が圧力をかけて、外周で場所を選ぶ。この順序は、軍隊そのものよ」
シキはその数本の白い線が夜明けの光の下をゆっくり移動するのを見つめ、肩が知らず知らず強張っていった。
「周士達はこの答えを好まないでしょうね」
「もうとっくに分かってる。ただ証拠がなかっただけ」葉綺安は言った。
その時、風の中にまた鐘の音が混じってきた。
市内のような、誰かが死ぬ直前に鐘の綱を掴んで離さないみたいな乱打じゃない。外周のこの鐘の音は断続的で、しかも単一の方向から来ていない。左から三打、止まる。右前方から二打、止まる。さらに遠くから長い一打——見えない糸で複数の鐘楼を繋いで、一枚の網を張っているみたいだった。
シキは数秒聞いてから、顔色がさらに悪くなった。
「これは脅しじゃない」彼女は言った。
葉綺安が頷く。
「伝令よ」
二人はそれ以上何も言わなかった。こういう時は、一言多く言っても現実に注釈を付け加えるだけで、何も軽くならない。
高架の下方で突然、短い爆発音がした。大きくはない。手榴弾かガスの小規模な引火だ。数秒後、側道の出口から人の波が一気に逆流してきた。救急隊員二人、子どもを抱えた女性、スーツケースを引きずった老人、灰まみれの若者数人。全員が走っているが、外へではなく、市内へ向かって走っている。
外ももう安全じゃないからだ。
シキはその人波が交差点のスロープ下を突き抜けていくのを見ていて、最後尾に白ローブが三体いることに気づいた。急いで追いかけようとはしていない。二十メートルほど後ろを、一定の速度で付いていくだけだ。まるで家畜を追い立てるみたいに。
胃がずんと沈んだ。
「人を追い立ててる」
「ええ」葉綺安は言った。「市内へ追い込んで、瓶頸に追い込んで、医療ラインに追い込んで、地下の入口に追い込む。動けるものを全部、同じ場所に押し込んでいる」
言い終わると、彼女は撮影した映像と座標を素早く一つのデータパッケージにまとめ、周士達の私用暗号チャンネルに直接送信した。
シキはそこで通信機を取り上げ、もう一度発信した。
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二回目の報告を受け取ったのは、ちょうどケミカルライトを配り終えた時だった。
設備区は静かだった。安全だからじゃない。シャフトの口を開けたら、言葉は意味を持たなくなると全員が分かっているからだ。 工兵が照明スタンドをもう少し内側に調整した。緑白色の光が半開きの防火扉とシャフトの縁に落ち、床の血の轍を暗色の、粘りついて離れない縄みたいに照らし出した。
接続ボタンを押すと、シキの声の前に風の音が届いた。
「外周に着いた」彼女は言った。「外周は単純な包囲封鎖じゃない。白ローブは外周全体を塞いでいない。意図的に穴を開けて、難民と車の流れを市内へ誘導してる。家畜を追い立てるみたいに」
俺は口を挟まなかった。
「新しい編制もある」今度は葉綺安の声が続いた。「外周に、より大きな盾列と長柄武器ユニットが出現。後方に重物の引きずり痕。市内に直接入ってくるんじゃなくて、ずっと外環に沿って平行に動いてる。測距と場所の選定をしてるみたいだ」
俺は目の前の下へ沈む暗闇を見たまま、何も言わなかった。デュヴァルが俺の右に立って、俺の顔色を見るなり、いい知らせじゃないと察した。
「盾はどれくらいの大きさだ?」俺は訊いた。
「地下で見たものより高い」葉綺安は言った。「上半身全体を覆えるくらい、二人が重なれるくらいの幅がある。細部は見えないが、その場で拾ってきた防具じゃない。あの形状は、最初から街路の圧線用に設計されたものよ」
俺は目を一度閉じた。
分かった。
地下の盾・槍・弓は、ただの前菜だ。
城外のあの部隊こそが、街全体に見せつけるための牙だ。
「鐘の音もある」シキが通信を引き取った。「乱打じゃない。ポイントを定めてる。伝令に使ってる」
「了解」俺は言った。
「周士達」葉綺安がまた俺を呼んだ。
「話せ」
「外周で測距しているなら、次に来るのは人型ユニットだけじゃないと想定しておいた方がいい」
俺は笑ったが、その笑いに温度はなかった。
「最初からそう想定してる」
「それならいい」彼女は言った。「もう少し先まで進む。市内に入る前にもっと大きなものが見えたら、先に送る」
通信が切れると、デュヴァルが口を開いた。
「彼女たちは何を見た?」
「外周は内側より包囲に近い」俺は通信機を胸元に収めた。「地下、歩兵、盾と槍、そして外周での測距。あいつらは人を殺し尽くしたいわけじゃない。戦場を作り上げようとしている」
隣の若い将校は理解できていない顔だったが、バローロ神父だけがゆっくりと上半身を俺の方へ向けた。
「より大きな盾列ですか」神父は言った。
「重物の引きずり痕もある」
神父は防火扉を一度見下ろし、聖書の表紙の上で指を半秒だけ止めた。
「では、奴らより先に下の隙間を縫い合わせなければなりません」神父は言った。
俺は頷いた。
「降りるぞ」
工兵が扉の下に挟まっていた壊れた台車の車輪を取り除くと、防火扉は内側へすっと開いた。下から冷たい空気が一気に湧き上がってくる。湿ったコンクリート、鉄錆、血、医療廃棄物が一緒に腐っていく臭い。ただの腐敗臭じゃない。本来なら人を救うはずの通路が、屠殺場として使われ続けてきた臭いだ。
俺が先に降りた。
旧メンテナンスシャフトの梯子は、壁に溶接された古い鉄製のはしごだ。表面は湿気でべたついていて、踏み込むたびに滑る。ケミカルライトを下へ投げると、緑色の光が井戸の底まで跳ねていった。途中、乾いた手のひらの血の跡がいくつか照らし出され、側面の配管に引っかかった布の切れ端も見えた。
デュヴァルが俺の後に続く。その後ろに憲兵二人。バローロ神父が最後に降りたが、神父が梯子に乗った瞬間、シャフト全体の音が変わった。 重い体格が古い金属に乗る鈍い音が、一段一段下へ伝わっていく。古い時代の攻城槌を、ゆっくりと井戸の中に降ろしているみたいだった。
半分ほど降りたところで、シャフトの底の半開きの整備扉の向こうから、衝撃音が一度響いた。
鈍い音だ。
乱打じゃない。重量のある何かが鉄板に当たって、引いた音だ。
全員が同時に止まった。
俺は手を上げて後ろを制し、銃口を先にシャフトの底へ向けた。次の瞬間、二度目が来た。今度はもっとはっきりしていた。衝撃音の後に引きずる音が続く。金属か防具が床面を擦って通り過ぎるような音だ。
単体の白ローブが出す音じゃない。
デュヴァルが声を落とした。「聞こえたか?」
「ああ」
「何に聞こえた?」
「扉の向こうで、誰かが隊列を整えてる音だ」俺は言った。
その一言で、後ろの憲兵二人の顔が瞬間的に真っ白になった。
俺は慰めなかった。慰めたって意味ねえ。自分が何を怖がってるか把握してる方が、よっぽど現実的だ。
井戸底まで降りると、整備扉の向こうの通路には非常灯が二つだけ点いていた。ちらつく不安定な光が、床を引きずられた血の輪痕を、まるで生きてるみたいに明滅させている。左の壁面には工具で叩き刻んだ印がいくつかあって、矢印が医療補助通路を指していた。その脇には黒ペンで殴り書きされたフランス語が一行。
右の扉を開けるな。
俺は右の扉なんか見向きもしなかった。
こういう時、壁に書かれた警告ってのは考えるためじゃない。バカをやるなって覚えとけって意味だ。
俺たちは補助通路を前に押し進んだ。足音は殺してたが、奥から流れてくる雑音は消せない。誰かの荒い息、押し殺した泣き声、車輪が床を引きずる音、金属同士がぶつかる音。そして遠くから、不規則に響く一発一発の打撃音。その音は何重もの壁を隔てて聞こえるせいで妙に歪んで、同じ通路じゃなく、もっとデカい空洞で反響してるような感じだった。
バローロ神父は最後尾を歩いていたが、まるで黒い鉄杭を隊列の背中に打ち込んだみたいな圧迫感を放っていた。誰も勝手に振り返らないし、本気で後退もしない。振り返れば、緑の光の下で石膏像みたいに見えるあの顔と目が合うからだ。
最初の生存者は二枚目の防火扉の向こうで見つかった。
中年の看護師で、左脚が横転した小型薬品カートの下に挟まれていた。傍らには十二、三の少年が丸まっている。少年の胸は乾いた血まみれだったが、傷の位置からして大半は自分のじゃない。誰かを引きずって逃げてきた時についたやつだ。看護師は俺たちを見るなり、まず焦点の合わない目をして、それから人間の言葉を思い出したみたいに口を開いた。
「後ろに……後ろにまだ……」
俺がしゃがんでカートを持ち上げ、デュヴァルは少年の様子を見に行く。少年はまだ生きてたが、ショックがデカすぎて、看護師の袖を掴んだ手がどうしても離れない。
「何人だ?」俺は聞いた。
「七、八人」看護師は息を荒くしながら答える。「医者も二人、重傷者を押して北の補助室に退避して。前の鉄扉を閉めたら、あいつらがずっと叩いてきて、叩いてきて……それから右からも音がして、もうそこにいられなくて……」
「あいつら?」
「白衣。一人二人じゃない、一列よ」彼女の震えがひどくなった。「盾を持ったやつ、長いのを持ったやつ、後ろには撃ってくるやつも。あいつら、止まるの。前の列に下がれって合図して、また別の列が前に出てくる。まるで……まるで訓練されてるみたいに」
いいな。
下の線はまだ生きてる。
しかも散兵じゃない、編制だ。
その時、通路の突き当たりから銃声が一発響いた。
単発。
乱射じゃない。最後の一発を意地で絞り出したような、あの重い単発。
俺とデュヴァルは顔を見合わせ、同時に立ち上がった。
「二人を先に井戸口まで送れ」俺は憲兵に言った。「道中、右側の扉は絶対に開けるな。影を見たらまず叫んでから撃て」
憲兵二人が看護師と少年を支えて立たせる。バローロ神父は動かず、ただ半歩横に退いて道を空けた。少年が神父の脇を通る時、全身が目に見えて縮こまった。この黒い大男が後ろの屍群と大差ないって、本能が叫んでるんだろう。神父は一秒だけ目を落とし、低い声で言った。
「上へ行きなさい」
少年はぽかんとして、それから本当に看護師の袖を離し、井戸口の方へ歩き出した。
俺たちは前進を続ける。
奥へ行くほど、通路の痕跡は荒れていく。酸素ボンベ、散乱した注射器、ひっくり返った医療箱、途中で放棄された担架。壁際には医療スタッフの制服を着た遺体が二体、喉と顔を滅茶苦茶に引き裂かれて倒れていた。一体は手に救急ハサミを握ったまま。刃が欠けてるところを見ると、死ぬ前にあれで何かを本気で刺したんだ。
前方の非常灯がふっと消えた。
通路が暗闇に沈む。
次の瞬間、突き当たりに別の光が走った。照明じゃない。矢の尾羽の火が暗闇を一閃したんだ。
「伏せろ!」俺は怒鳴った。
矢は俺を狙ったんじゃない。灯りを狙った。
二本の矢が立て続けに天井の灯カバーと左壁のランプに突き刺さり、ガラス片と火花が飛び散る。残りの通路が一気に三分の二暗くなり、俺たちの手のケミカルライトと遠くの青白い非常灯だけになった。
「弓手だな」デュヴァルが歯噛みする。
「わかってる」
二射目は灯りじゃなく、俺たちの位置を測りに来た。俺は壁の角を掴んで前に転がり、耳の脇を矢が掠めて後ろの薬品カートの残骸に刺さった。デュヴァルが反対側から点射を返すが、位置を制圧するのが精一杯で、後列には届かない。
これが地下で一番胸糞悪いところだ。
盾兵、矛兵、弓手を限られた空間にきっちり詰め込んで、各層が速さなんか求めない。ただこちらを前に進ませないことだけを目的にしてる。
「神父!」俺は一声叫んだ。
それで十分だ。
バローロ神父が後ろから踏み出してくる。重いブーツがガラス片と注射器を踏み砕き、鈍い音を立てる。突撃じゃない。ただ重く、確実に前へ圧をかけていく。最初の矢は胸の祭服と内側装甲の境目に当たり、貫通せず、布を激しく揺らしただけだった。
神父は頭一つ下げない。
二本目の矢が顔面を狙った時、左手の聖書を上に持ち上げた。分厚い黒鋼の表紙が矢柄を直接叩き折る。折れた矢尻の半分が壁を擦って飛び、後方の扉枠に突き刺さった。
次の瞬間、鎖が出ていた。
派手に振り回すんじゃない。真っ直ぐだ。
鎖が前列の盾の端を叩きつけ、金属音が通路で爆発的に響いた。前列の白衣はこの距離で直接盾列を叩いてくるとは思ってなかったらしく、前段のリズムが半拍崩れた。俺はその半拍でケミカルライトを前に投げた。緑の光が飛んでいく時、通路奥の光景を照らし出す。
三枚の大盾。
盾の後ろに長矛が四本。
さらに後ろに白衣の弓手が少なくとも二体。
右側には何か重いものを引きずりながら後退する人影。
見えれば十分だ。
「左盾の下縁!」俺は叫んで、手の銃を先に撃った。
弾は床面すれすれを走り、一番左の盾の下縁の隙間に直接潜り込んだ。盾の後ろの何かが脚を折り、盾全体が横に傾く。デュヴァルがすぐ火力を補って、二枚目の盾も揺さぶった。
バローロ神父がその瞬間に切り込んだ。
まるで黒い重機みたいに、一枚目の盾が傾いた角度に沿って踏み込む。鎖が先に盾の後ろから突き出た矛桿に絡みつき、一引きで人ごと矛ごと引き歪め、左手の聖書がそのまま盾の後ろから半分露出した顔面に叩き込まれた。
「悔い改めよ」
ドン。
二撃目はもっと低く、下顎に入った。
「アーメン」
その白衣が後ろに倒れ、後列を巻き込んで崩した。二本目の長矛が神父の脇腹を突くが、神父は一歩も退かず、肩甲で上に弾いて矛先を逸らし、鎖を返して矛桿に絡め、下に押さえつけた。矛全体が扉枠と盾の間に挟まって動けなくなる。周囲が一瞬で詰まった。
こういう時、混乱はこちらのチャンスだ。
俺は二歩前に詰め、死神の鎌が掌から滑り出て、右側から頭を覗かせた弓手に向けて横薙ぎに振り抜いた。刃が肩から首を掠めた時、大した音はしない。濡れた布を引き裂くような、ねっとりした音だけ。デュヴァルの弾が三枚目の盾の後ろの奴を後ろに吹き飛ばした。
通路のさらに奥から、もっと重い衝撃音が響いた。
人が倒れる音じゃない。
もっと大きく、もっと硬い何かが、さらに奥の鉄扉の向こうで、前に一度体当たりしたような音だ。
立っている全員の動きがその瞬間止まった。
俺の頭に、外圏で引きずられていたあの重物の影が浮かんだ。
まだ来てない。
だが、もうすぐだ。
俺は地面の白衣を蹴り飛ばし、さらに奥の暗闇に沈む通路を一瞥した。
前にはまだ生きてる人間がいる。
そして後ろからは、もっと軍隊に近い何かが、こちらに向かって歩いてきてる。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




