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148.想定外  4

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

皮だけが骨に貼りついたような干からびた手。節には、色がすっかり変わった金属の輪がはめられ、手首には、今にも崩れ落ちそうな布切れが巻きついている。そいつが扉の縁をつかみ、一センチ、また一センチと押し開けていく。そのあとで、ようやく全身が、ゆっくりと姿を現した。


また、乾いた死体だ。


だが、さっき箱の中から引きずり出したやつより、もっと形が整っている。


そして何より、ずっと——「軍人」に近い。


そいつが身につけているのは、単純な白いローブじゃない。内側には硬化した古い装甲片を着込み、その上から白い長衣を羽織っている。胸には赤十字の痕跡がまだ残り、頭には尖った頭巾を被って、二つの黒い眼孔だけをのぞかせている。腰には短剣を提げ、手には旗竿とも槍柄ともつかない木の棒を杖にしている。全体的に見ると、本当に中世の墓穴から無理やり引きずり出してきた騎士の抜け殻そのものだった。


一番ゾッとするのは、そいつがフラフラしていないことだ。


ちゃんと立っている。


生前に受けた訓練をまだ覚えているみたいに、ピシッと。


「クソ。」俺は低く言う。「本当にサンプル付きかよ。」


乾いた死体は扉口に立ち止まり、こちらを見た。


その「見る」は、生きた人間のような視線の合焦じゃない。極めて不快な「前方受信」とでも言うべき代物だ。誰かの目に見つめられているというより、そこに残留している何かの「命令」にロックオンされたような感覚。


それから、そいつは手の木の棒を床に一度、打ちつけた。


ドン。


音は大きくない。だが部屋中の木箱が、同時にかすかな共鳴を返してきた。


全身の鳥肌が、瞬時に立つ。


これは単なる保存サンプルじゃない。


指揮用の母体だ。


ルシアは二度目の動作を待たず、即座に引き金を引いた。


一発目は胸、二発目は膝。乾いた死体の体がはっきりと揺れる。だが、倒れない。半歩前へ踏み出し、手の木の棒を持ち上げて、こちらへ何かの合図をしようとする動きを見せた。


その機会は、俺が潰した。


銃を上げ、頭巾の中央、二つの眼孔の真ん中に狙いをつけ、二発続けて撃ち込む。


パン!パン!


効果は即座だった。頭巾の後半部が吹き飛び、乾いた黒い破片、腐った布切れ、焼けた灰みたいな何かが後方へ散った。そいつはようやく支えを失い、前のめりに膝をつき、そのままゆっくりと倒れた。


倒れた瞬間、木箱たちの共鳴も、ぷつりと途切れた。


床に転がった乾いた騎士を見つめながら、俺の中でその答えが完全に固まった。


三万——口で言っただけじゃない。


動ける。


少なくとも一部は、本当に動ける。


ヴィクトリアが前に出て、しゃがみ込む。触れはしない。工具で首側の腐った布をそっと退かし、一瞥してから俺たちに言った。


「純粋に死体が動いてるわけじゃないわ。」


「どういう意味?」ルシアが問う。


「骨格と乾いた皮膚は古いもの、少なくとも数十年、下手したらもっと前ね。」ヴィクトリアは言う。「でも頸椎、胸骨、それと一部の関節には後から補強が入ってる。立たせて、歩かせるために、固定と接続をやり直した痕跡よ。自然に起き上がった屍体じゃなくて、人工的に整備された死人ね。」


それを聞いた瞬間、こめかみがピクピクし始めた。


上等だ。


今度は工芸まで完備されてる。


バローロ神父は身をかがめ、乾いた騎士の胸の内側の布地を一瞥して、露骨に顔色を悪くした。


「この裏地の布……古い祭服を裁ったものだ。」


俺は神父を見る。


「お前ら教会、本当に素材が豊富だな。」


今度こそ神父がこちらを睨んだ。だがその目に怒りはほとんどなく、むしろ自分が取り乱すのを必死に抑え込んでいる何かが滲んでいた。


「これは普通の冒涜じゃない。」神父は言う。「葬儀、苦行、軍事、十字軍の遺骸、教会の布地——それを全部ひとつの殻に混ぜ込んでいる。こんなものがマルセイユの街頭に公然と現れたとしたら……」


「フランスが爆発する。」俺が続きを引き取る。


「フランスだけじゃない。」ルシアが言う。「ヨーロッパ南線全体の世論、教会、治安、国境、過激派組織、全部が同時に爆ぜる。」


「だったら街に入れるな。」俺は言う。


口に出した瞬間、自分でも分かってた。言うのは簡単だが、実際にやるのはスプーンで津波を止めようとするようなものだ。


でも、まず使える一言を言っておかないといけない。


部屋の中の短い混乱が収まると、後続の人員が次々と封鎖と記録撮影を引き継いでいった。俺は黒板の前に立ち、あの欄目を改めて一通り眺める。


先行白袍隊、死軍後列、南門、港区視点、早朝、都市先見……


このC.A.L.F.(カルフ)連中は、こっそり死人をマルセイユに忍び込ませようとしているわけじゃない。


マルセイユを使って、公開虐殺の前に「見せ物」をやろうとしているんだ。


ふと思いついて、俺は手錠を掛けられた幹部の方へ顔を向けた。


「お前らの先行白袍隊——本当の生きた人間か、それともやっぱり屍か?」


男は血を吐き、こちらを見て、不快な笑みを浮かべた。


「見に行けば……分かるだろ……」


今回は殴らなかった。


答えはだいたい見当がついていたから。


先行白袍隊は高確率で生きた人間だ。C.A.L.F.の中でも頭が動いて、命令を実行でき、隊列の組み方や雰囲気の作り方を心得ている連中。前を歩くのは、誘導、煽動、扉を開け、恐慌を作り出し、障害物を処理し、宗教的なシンボルを操るため。後列の乾いた騎士たちこそが、街を圧し、異象を演出するための「死軍」の本体だ。


これで全部つながる。


なぜ先に街に姿を見せ、それから教会に口を開かせるのか。


都市の住民、警察、記者、市役所、港湾が全員、白袍の隊列が押し寄せてくるのを目の当たりにした後で、あり得ないはずのものが後ろから続いてきたとき——その恐慌は、もう「異端」の一言で蓋できるものじゃなくなる。


俺はゆっくりと息を吐き、頭の中で次の一手を組み立て始めた。


まずハビエルに通知。 次にフランスへ。 バローロ神父の方は、今すぐヴァチカンへ連絡を入れさせる。地方教区経由の鈍足ルートじゃなく、あいつが持っている異端審問局の直通ラインで。


そして俺たちは、白袍を纏い、十字を掲げ、どんなマフィアやテロよりも汚い「死者の東征」を止めに行く。


ルシアがそのタイミングで俺の横に来て、整理したばかりの重要書類を数枚、手に押し込んできた。


「全部把握した?」


「だいたいな。」


「なら分かってるはずよ。これはあたしとハビエルがフランス政府に通報して終わりにできる話じゃない。」


「分かってる。」


「あなたが行く。」


俺は彼女を一瞥する。


「それ、疑問文じゃないよな?」


「違う。」


俺は苦笑した。


「上等だ。少なくともお互いの時間を節約することを覚えた。」


ルシアは笑わない。ただ黒板の「三万」という数字を見据えたまま。


「ジョウ・シーダー。スペインのこの案件は、ここに至って、もう単独の殺人事件じゃない。」


「それも分かってる。」


「なら準備しておきなさい。」彼女は言う。「フランス側が最初に信じなかったとき、ここで見つけたこれが、あなたが奴らの目をこじ開けるための最初のレンガになる。」


俺は手の中の書類、台帳のページ、写真を見下ろし、防弾ベストが急に少し重くなった気がした。


荷物が増えたからじゃない。


この瞬間から、フランス側が信じようと信じまいと、もう完全に見て見ぬふりはできない——それが分かりきっているからだ。


書類を机に戻し、最後にもう一度だけ、あの白袍の列、床に倒れた乾いた騎士、黒板のあの忌々しい数字を目に焼きつけた。


三万。


他の誰かから聞いたなら、ゼロを二つ多く書いたんじゃないかと疑ってかかっただろう。


だが今、この数字は目の前にある。しかも全部が揃っている。動員命令、ルートマップ、サンプル、衣装、標準装備表、フランス南部の納骨庫名簿、工業地区とリトリート施設の支援清掃ポイント、山中の誘導鐘音システム……


ハッタリじゃない。


ずっと前から、準備していた。


俺は低く一言罵ってから、イヤホンを押さえた。


「ハビエル。」


すぐに返事が来る。


「話せ。」


マルセイユと書かれた地図を見ながら、俺は一語一語、区切って言った。


「今すぐ修道院の後処理、S.O.M.B.R.A.の回収、地図の原本用途——全部後回しにしろ。C.A.L.F.(カルフ)側から死人の軍団が掘り出された。数は三万、マルセイユへ向かっている。数体のゾンビじゃない、どこかのイカれた坊主が墓地で遊んでいるわけでもない。衣装あり、先導あり、ルートあり、ノードあり、先行白袍隊あり——編成の整った乾いた屍兵の軍団だ。」


イヤホンの向こうは黙って聞いている。


俺は続ける。


「今この瞬間から、これは殺人事件の延長でも、異端拠点の掃討でもない。」


「戦区予警だ。」


その言葉を言い終えた直後、遠くの地面から、ごくかすかな底鳴りが聞こえてきた。


地下室の音じゃない。


バルセロナという街が、外でまだ普通に息をしている音だ。車は走り、海風は吹き、人は眠っている。だがこの地下では、もう誰かが三万体の死人を掘り起こして、別の街へ送り込む準備を整えている。


妙な感覚だった。


井戸の底に立って、外の空がまだ明けていないと分かっている。でも別の場所では、もう誰かが刃を研いでいる。


俺は黒板から視線を外し、ルシアとバローロ神父の方を見た。


ルシアの目は、次の手順、通報、越境、緊急展開作戦を弾き出している。


バローロ神父の目は、まったく違う。


あの乾いた騎士の死体を見ている。白袍を見ている。盗用された十字旗を見ている。「汚染」から「宣戦布告」に変わってしまったものを、目の当たりにしているような目だ。


上出来だ。


少なくとも今回は、あいつもついに事態の規模を直視した。


俺は出口へ向かって歩き出しながら、言葉を続ける。


「一番重要な資料から封鎖しろ。活口は殺すな、フランス側が顔合わせに使うかもしれない。神父、上に連絡する準備をしろ。ルシア、お前はハビエルと一緒にフランスを叩き起こせ。あっちが極端な宗教集会扱いで片づけようとするなら、俺が直接この白袍とサンプルを市長の机に叩きつけに行く。」


ルシアが後ろから問いかける。


「どこへ行くの?」


俺は振り返らない。


「上で少し息をしてくる。」


「それで?」


俺は厚い扉の前まで歩き、足を止めて振り返る。白袍がずらりと並んだあの部屋を、最後にもう一度見た。


「それから、マルセイユだ。」


どう見ても明らかだ。今はフランスが俺たちを待ってくれる状況じゃない。


俺たちが、あの死人どもより先に着かなきゃならない。


しかも今回は、はっきりしてる。


もし遅れたら——フランスは爆ぜ、教会は狂い、政府は崩れ、港は地獄になる。


だから、遅刻は厳禁だ。

「とても面白い」★四つか五つを押してね!


「普通かなぁ?」★三つを押してね!


「あまりかな?」★一つか二つを押してね!

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