146.反撃 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
俺たちがバルセロナに着いた時、まだ夜は明けていなかった。
街の縁にかかる、夜と夜明けのあいだのあの灰色は、もともと気分のいい色じゃない。特に一時間前まで山の中で家畜みたいに追い立てられていて、その一時間後には、さらに多くの人間を死なせるかもしれない数枚の地図と一本の銀鍵を抱えて国家機構の前に戻らなきゃならないときには、その灰色はなおさら、死体安置所の壁にしか見えない。
ルシアが急きょ送ってきた新しい座標に車を滑り込ませる。場所は元のあの行政ビルの正面玄関ではなく、裏側の地下出入口だった。ゲートが二重、顔認証が三段、型番を訊く気にもなれない車止めが一列。車を停め終えるより先に、外から人間が近づいてきた。
轄区の警察じゃない。
さっきまで、拳銃に手を置いて、意味のない質問ばかり並べていたあの地元の連中でもない。
この一団は身なりがきれいで、表情はむしろ薄い。立ち位置を見ればわかる。普段、門番をしている人間じゃない。門が破られた後に、中の人間を「生かすか、殺すか」に分ける役目の方だ。
一人が運転席側の窓際に来て、ガラスを二度ノックした。
俺は窓を数センチだけ下ろした。
相手はまず俺を見て、次に助手席のバローロ神父を見て、最後に後部座席をちらりと見た。
「セニョール・ジョウ?」
「今さら本人確認なら、そちらの情報機関は相当しんどそうだな」俺は言った。
相手は笑わず、一歩退いた。
「警監がお待ちです」
「ちょうどいい」俺はエンジンを切り、センターコンソールの横に置いていた銀鍵の薄いケースを手に取った。「こっちも訊きたいことがある。今度の会議室のコーヒーが、相変わらず不味いままかどうか」
林雨瞳が先に降りた。防水袋はいつも通り、彼女が持つ。ヴィクトリアは工具バッグを提げて、まるで壊れたアンティーク時計を直しに来ただけみたいな静かな動きで続く。バローロ神父は降りるときにドア枠に手をかけた。平地に出て初めて、自分がさっきまでどれだけ胃を締め上げていたか自覚したらしい。
案内役は一言も無駄を言わず、まっすぐエレベーターへと導いた。
普通のエレベーターじゃない。
普通のエレベーターなら、乗る前にもう一枚、金属製のドアを通されることもないし、中にすでに二人、無言で乗っていて、手首の内側が膨らんでいて一目で銃だとわかる、なんてこともない。
乗り込んだ後、俺はエレベーターのボタンを一瞥する。
階数表示はない。
色の違うランプが三つだけだ。
思わず、くっと笑いが漏れた。
案内役が俺を見た。「何か?」
「いや」俺は言った。「ただ、単純なことを映画みたいにしたがるのが好きなんだなと思って」
相手はやはり笑わない。
この国の国家機構の欠点の一つは、全員が顔をしかめすぎなところだ。生まれたときから、表情を二種類しか教わっていないみたいだ。疑いと、不機嫌。
エレベーターは下へ。
ドアが開いて、俺が最初に目にしたのは、ハビエルではなかった。
壁だ。
一面の壁に、ホワイトボード、写真、地図、フローチャート、そしてさっき印刷されたばかりでまだ熱が残っている現場写真の拡大が、隙間なく貼りついていた。修道院の平面図、山区林道のキャプチャ、モンカダ郊外のあの倉庫兼オフィスの空撮、別名義の会社で登録されたコールドチェーンや物流の拠点図、血痕の流れをトレースした図、そしてあのひどく不格好な牛の頭のシンボル。
ドア口に立ったまま二秒ほど眺めて、ようやく少しだけ胸のつかえが下りた。
これが作戦テーブルだ。
さっきまでの会議室みたいに、一人一杯の冷めたコーヒーで、全員が座って互いの顔色を伺い、「誰が先に良心と秘密を吐くか」を待つ場所とは違う。ここは議論するところじゃない。「今夜誰がドアを蹴破り、明日の朝誰が死ぬか」を決める場所だ。
ハビエルは長机の向こう側に立っていた。袖は肘までまくり上げ、ジャケットは見当たらず、ネクタイも緩めている。本人は依然として岩の塊みたいだが、昼間の「手順を守る国家警察トップ」だった時より、今のこの石には少し火が回っている。
俺を見るなり、開口一番がこれだ。
「思っていたより早かったな」
「そっちも、思っていたより『仕事ができる人間』に見える」俺は返した。
ハビエルは怒らなかった。
ただ一度頷き、テーブルの上を顎で示した。
「物だ」
俺は歩み寄って、銀鍵の入った薄いケースを先にテーブルに置き、林雨瞳に合図して防水袋を置かせた。部屋の空気が一瞬だけ静かになる。銀鍵も地図も、見た目がそんなに大げさなものだからじゃない。今夜のあの山、修道院の死体の山、そして工業区でさっき片付けられた七体の遺体——全部が最終的にここへ戻ってきていると、全員が知っているからだ。
ルシアは壁際に立って、新しい資料の束を抱えていた。目の下の隈はさっきよりさらに濃い。彼女は疲れを顔に出すタイプじゃないから、そんな彼女の疲れが一目でわかるということは、今夜どれだけのものが動いているかの証拠だ。
彼女は俺の手のケースを見た。
「開けて」
「これだけギャラリーがいると、なんか献上式みたいで落ち着かないな」俺は言った。
「望むなら、拍手させてあげてもいいけど?」ルシアは言った。
「やめてくれ。拍手なんかされたら、こいつまで自分を主役だと勘違いし始める」
俺はケースを開けた。
中の銀鍵は黒い布の上に静かに横たわっていた。細長く、古く、ギザギザは普通の機械錠とは違う構造で、認証と開封を兼ねた古い「権杖の部品」に近い。銀の表面には細かい筋が入っているが、それは装飾じゃない。長年に渡って誰かが触れ続け、それでも丁寧に手入れされてきたものにだけ残る光沢だ。骨董屋の飾り物でもなければ、どこにでもある教会が簡単に陳列できる類のものでもない。
これは、本当に「多くの人間が殺意を覚える」種類の物だ。
林雨瞳が防水袋を開け、中の地図を取り出して、伸ばしながらテーブルに並べた。
フランス。
ベルギー。
オランダ。
三枚の地図、三つの中継点。ほぼ全員の視線が、そこに押しつけられる。
バローロ神父は俺の後ろに立ったまま、口を開かなかった。
ヴィクトリアは地図に数秒だけ目を通した後、視線を横にずらして山区林道の図に移した。どの図が「今夜死人を出す図」で、どの図が「後日死人を出す図」か、よくわかっている実務家の動きだ。
ハビエルはすぐには銀鍵に手を伸ばさなかった。
この一点だけで、彼への評価が少し上がった。宗教遺物についての教養がどうこうではない。今は好奇心を満たしている場合じゃないとわかっているからだ。
まず、俺を見た。
「山の中で何があった? 最初から話せ」
俺は、山に入ってからの経過を通して話した。S.O.M.B.R.A.との接触、物の受け渡し、鐘の音、黒布、犠牲の羊、落とし穴、橋のたもとの鈴を持った男、冷凍車の検問、そして最後に国道へ飛び出したところまで。一から十まで。脚色はしない。必要ない。今夜はそれだけで十分、腐った芝居じみた出来事だったからだ。
橋のたもとの革エプロンの男のところまで来たとき、ルシアが口を挟んだ。
「そいつが現場指揮じゃないと、どうして言える?」
「言えない」俺は言った。「だが少なくとも使い捨てではない。使い捨ての駒は、あんな場所には立たないし、車に弾き飛ばされる直前に、こっちをああいう目で見たりはしない」
「どんな目だ?」ハビエルが訊いた。
「確認だ」俺は言った。「荷が柵の中に入ったかどうかを見ている目」
部屋の空気が一度止まった。
誰も、説明を求める必要はなかった。全員わかっていた。
ルシアがプリントアウトしたばかりの写真をテーブルの中央に滑らせた。
「これが工業区の二件目の現場」
俺は視線を落とした。
写真のフレームは倉庫オフィスの内部だった。仮に片づけられた作業通路、左右には金属ラック、床には希釈された血液が再び集まった暗い痕跡。画面の奥、一体の逆さ吊りの遺体がレンズに正対していて、その胸に書かれた文がはっきりと読めた。
牧人は自分の家畜を回収する。
俺はその一文を見て、思わず笑った。
可笑しいからじゃない。反吐が出るほどおぞましくて、人間の方が反応に困って笑う類いのやつだ。
「畜産業への愛が本当に深いらしい」
ハビエルが俺を見た。
「まだ笑えるか?」
「笑わなきゃ泣くしかないだろう」俺は顔を上げた。「コミサリオ、はっきりさせておいた方がいい。修道院の一波目は、物が取れずに逆上しての乱刃だった。でも工業区のこれは違う。物が手を変えたと確認した上での、系統的な口封じだ。これは二つのことを意味してる」
ハビエルは口を挟まなかった。
俺は二本の指を立てた。
「一つ目。S.O.M.B.R.A.が最終保持者じゃないことを、奴らはもう確信している。ゆえに影に対する執着は下がる。二つ目。今、奴らが狩っているのは、『この件を知っている人間』だ」
ルシアが続けた。
「ダミー会社、物資の中継ノード、買収された地元の協力者、影と接触した可能性のある仲介人、そして——」
彼女は俺を見た。
「あなたたちも」
「俺たちもだ」俺は言い切った。
ハビエルは両手をテーブルについて、少し前に身を乗り出した。その姿勢は見覚えがある。「やるか、やらないか」を迷っている時の姿勢じゃない。「どこから切り込むか」を決めているときの姿勢だ。
「つまり今は、証人保護の段階じゃないということか」
「最初から違ってた」俺は言った。「今でもこれを普通の事件だと思ってるなら、この部屋のホワイトボードは全部捨てた方がいい。どうせ使いこなせない」
室内にいる何人かの警官と情報要員が、揃って俺の方を見た。
知ったことか。
このレベルの案件で、まだ「怒らせたらまずいかな」とか気にしているなら、最初から関わらない方がいい。C.A.L.F.は、礼儀正しさで殺す人数を減らしてくれるような連中じゃない。
バローロ神父がようやく口を開いた。
「教会側の立場は単純だ。地図と銀鍵は、これ以上教区の体系には戻せない。どの地方組織にも、公然とは引き渡せない。少なくとも……本来の保管場所が再確認されるまでは、信頼できる二者の共同管理下に置く必要がある」
ハビエルが神父を見る。目はあからさまに苛立っていた。
「信頼できる二者?」
「国家と我々だ」神父は言った。
ルシアが鼻で笑った。
「今、一番信用ならないのがあなた方の宗教システムなんだけど。修道院の文書も、銀鍵と地図も、そこまで精確に狙い撃ちされたんだ。外部情報だけであそこまで行けるとは思えない」
言葉はかなりきつい。だが反論できる者はいなかった。
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